不良番長

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不良番長』(ふりょうばんちょう)は、1968年からシリーズ化された日本映画主演梅宮辰夫製作東映。全16作品。

解説[編集]

東映東京撮影所の所長兼取締役・岡田茂が梅宮辰夫を売り出すため、ピーター・フォンダの主演映画『ザ・ワイルド・エンジェルス』や、ロジャー・コーマンのアメリカ映画『地獄の天使』をヒントに、日本でもオートバイを駆使した不良映画を製作しようと企画した作品[1][2][3]。『不良番長』という題名も岡田の命名[2]。従来のヤクザ映画と異なり、シリーズ初期は勧善懲悪ものの要素は薄く、主人公の神坂弘及び彼が率いる不良グループ「カポネ団」の面々の、己の快楽や欲望を満たすためにレイプ詐欺恐喝売春業の斡旋、ブルーフィルム製作等の悪事に手を染めるといった性格描写が、社会的アウトローのヤクザでありながら「正義感に熱く己の美学を貫くために悪事を許さない」勧善懲悪の形式に基づいた他のヤクザ映画の主人公たちと一線を画していた。

そのため、シリーズ初期においてはクライマックスの敵ヤクザとの抗争も、「堅気の人間を守る」、「仁義を貫く」、「恩人の仇討ち」、「理不尽な仕打ちに対する反抗」といった従来の作品に見られるヒロイズムに徹した観念は薄く、「仲間の敵討ち」もしくは「敵ヤクザとの利権争い」という側面を強調している。アクションは主人公が現代でいう暴走族に該当する設定から、バイクアクションを基本としており、アクション面でも他の作品との差別化を図っていた。

しかしながら、シリーズも回を追う毎に、当初の殺伐とした作風から、随所に下ネタやギャグ、社会風刺パロディを盛り込んだ方向性へと転換し、主人公たちの性格も当初の反社会的なダークヒーローとしての側面は薄まり、他のヤクザ映画作品の主人公同様の人情路線に、社会の底辺を生き抜くしたたかさや滑稽な側面を加味した性格へと変遷していき、結果的に作品全体のカラーが序盤と終盤では大幅に変更されたものとなった。シリーズ終盤では「四十になっても番長だ!」という名セリフが吐かれた。

全体的なカラーの変更に最も影響を与えたのは『送り狼』から参加した山城新伍で、このシリーズを通して披露された並外れたコメディリリーフぶりは、山城自身のターニングポイントともなった[4]

梅宮辰夫が1964年の『暗黒街大通り』までの硬派な役から突如、プレイボーイ、女を泣かす役に変身したのはこのすぐ後の『悪女』(1964年)からであるが[5]この方向転換を発案したのも岡田茂である[5]。岡田は普段の梅宮をちゃんと観察していて、梅宮の日常生活に近い役を当てた。「今度こういう台本でやってくれと言われた時、毎日の俺と同じじゃねえかって。特に抵抗はなかった」と梅宮は話している。「夜の青春シリーズ」などを挟んで「不良番長シリーズ」に至った[5]。1972年にクラウディア・ヴィクトリアと再婚し、梅宮アンナが産まれ、アンナを溺愛して撮影所でおしめを交換していたら、岡田から「ちょっと来い!」と呼び出され「お前何考えてんだ、プレイボーイの役やる人間が赤ん坊のおしめ換えてるんじゃないよ! 監督が怒ってあいつじゃ撮らないって言ってるぞ」と言われ1本映画が流れたことがあるという[5]

シリーズ中、5作を監督した内藤誠は岡田に「ロジャー・コーマンの『ワイルド・エンジェル』で映画をやるから観て来い」と言われ、脚本の野田幸男と一緒に観に行ったという[3]。内藤は当時がもうコーマンばかり観て『白昼の幻想』を観てヒッピー文化を研究し『不良番長 出たとこ勝負』(1970年)で「同じように暴走族を100台集めてバイクの集団を走らせた。映画の撮影なのでルールを守って走りましょうと言ったが、誰も守ってくれず、あれで初めてパトカーに連行された」と話している[3]

このシリーズのプロデューサー・吉田達は『不良番長』シリーズは、岡田には「よう出来た、オモロイなー!」と手を叩いて喜んでもらえたが、他の重役や良識を持ったスタッフからは嫌がられ、俊藤浩滋には「“不良番長”なんか作ってたらロクなプロデューサーにならないぞ!」と言われたという[3]

シリーズ[編集]

不良番長[編集]

1968年 公開 第1作

不良番長 猪の鹿お蝶[編集]

1969年 公開 第2作

不良番長 練鑑ブルース[編集]

1969年 公開 第3作

不良番長 送り狼[編集]

1969年 公開 第4作

不良番長 どぶ鼠作戦[編集]

1969年 公開 第5作

不良番長 王手飛車[編集]

1970年 公開 第6作

  • キャスト
    • 梅宮辰夫 (神坂弘)
    • 谷隼人 (タニー)
    • 山城新伍 (桜井保)
    • 鈴木やすし (ジャブ)
    • 神太郎  (ダンプ)
    • 菅原文太 (滝川)
    • 夏珠美 (ヨーコ)
    • 渡辺文雄 (大門)
    • 由利徹
    • 安部徹 (大崎)
    • 長沢純 (バイキング)
    • 榊原史子 (飯塚アキコ)
  • スタッフ
    • 監督 内藤誠
    • 企画 吉田達、矢部恒
    • 脚本 松本功、山本英明
    • 撮影 星島一郎
    • 音楽 八木正生
    • 助監督 伊藤俊也

不良番長 一攫千金[編集]

1970年 公開 第7作

不良番長 出たとこ勝負[編集]

1970年 公開 第8作

  • キャスト
    • 梅宮辰夫 (神坂弘)
    • 谷隼人 (タニー)
    • 山城新伍 (五郎)
    • 鈴木やすし (ジャブ)
    • 夏珠美 (おたま)
    • 大信田礼子 (尾高銀子)
    • 渡瀬恒彦 (噂のジョー)
    • 鈴木やすし (ジャブ)
    • 待田京介 (テル)
    • 安岡力也 (アパッチ)
    • 小松方正 (黒柳)
    • 安部徹 (大滝)
    • 大泉滉
    • 由利徹
  • スタッフ
    • 監督 内藤誠
    • 企画 吉田達、矢部恒
    • 脚本 松本功、山本英明
    • 撮影 中島芳男
    • 音楽 八木正生
    • 助監督 小平裕

不良番長 暴走バギー団[編集]

1970年 公開 第9作

不良番長 口から出まかせ[編集]

1970年 公開 第10作

不良番長 やらずぶったくり[編集]

1971年 公開 第11作

  • キャスト
  • スタッフ
    • 監督 野田幸男
    • 企画 矢部恒
    • 脚本 松本功、山本英明
    • 撮影 稲田喜一
    • 音楽 八木正生
    • 助監督 岡本明久

不良番長 手八丁口八丁[編集]

1971年 公開 第12作

  • キャスト
    • 梅宮辰夫 (神坂弘)
    • 山城新伍 (明智大五郎)
    • ピーター
    • 大原麗子 (立花夏子)
    • フラワー・メグ (ヨーコ)
    • 鈴木やすし (ジャブ)
    • 地井武男 (サッポロ)
    • 安岡力也 (アパッチ)
    • 室田日出男
    • 松原光二
    • 浜かおる (色川マヤ)
    • 松井康子
    • 園佳也子
    • 丹下キヨ子
    • 由利徹 (バイク屋)
    • 玉川良一 (神主)
    • 大泉滉
    • 安部徹 (大滝)
    • 待田京介 (栄次)
  • スタッフ
    • 監督 内藤誠
    • 企画 吉田達
    • 脚本 松本功、山本英明
    • 撮影 山沢義一
    • 音楽 玉木宏樹
    • 助監督 三堀篤

不良番長 突撃一番[編集]

1971年 公開 第13作

  • キャスト
    • 梅宮辰夫 (神坂弘)
    • 山城新伍 (石松)
    • 夏純子 (小川花子)
    • 小林千枝 (マユミ)
    • 鈴木やすし (ジャブ)
    • 安岡力也 (アパッチ)
    • 藤江リカ
    • 一の瀬レナ
    • 地井武男 (モグラ)
    • 佐山俊二
    • 大泉滉 (西山)
    • 花田達 (塚本)
    • 関山耕司 (都田)
    • 潮健児
    • 諸角啓二郎
    • 安部徹 (寺沢)
    • 藤原釜足 (小川徳之助)
    • 藤村有弘
    • 丹下キヨ子
    • 左とん平
    • 渡瀬恒彦 (カツ)
  • スタッフ
    • 監督 野田幸男
    • 企画 吉田達
    • 脚本 松本功、山本英明
    • 撮影 稲田喜一
    • 音楽 八木正生
    • 助監督 三堀篤

不良番長 のら犬機動隊[編集]

1972年 公開 第14作

不良番長 一網打尽[編集]

1972年 公開 第15作

  • キャスト
    • 梅宮辰夫 (神坂弘)
    • 山城新伍 (五郎)
    • ひし美ゆり子 (ヨーコ)
    • 真理アンヌ (真弓)
    • 安岡力也 (アパッチ)
    • 久保浩 (シック)
    • 鈴木やすし (ジャブ)
    • 室田日出男 (西島)
    • 堀田真三 (河合)
    • 八名信夫 (三木)
    • 誠直也     (サブ)
    • 大下哲矢
    • 花田達     (安田)
    • 内田朝雄 (大滝栄之助)
    • 京唄子・鳳啓助
    • 大泉滉 (酔客)
    • 由利徹 (牧師)
    • 福富太郎 (キャバレー太郎)
    • 藤竜也 (力石一)
    • 渡瀬恒彦 (新郎)
  • スタッフ
    • 監督 野田幸男
    • 企画 吉田達
    • 脚本 松本功、山本英明
    • 撮影 山沢義一
    • 音楽 八木正生
    • 助監督 小平裕

不良番長 骨までしゃぶれ[編集]

1972年 公開 第16作

  • キャスト
    • 梅宮辰夫 (神坂弘)
    • 山城新伍 (天草五郎)
    • ひし美ゆり子 (虎尾月子)
    • 太田美鈴 (北川奈美)
    • 藤山律子 (バンビ)
    • 安岡力也 (キック)
    • 久保浩 (ロック)
    • 鈴木やすし (サック)
    • 渡辺文雄 (大竹東一郎)
    • 花田達 (原)
    • 八名信夫 (高田)
    • 中田博久 (秋葉)
    • 花田達     (原)
    • 団巌 (記者)
    • 由利徹 (虎尾太郎左衛門)
    • 大泉滉 (新郎)
    • 谷本小夜子 (女中)
    • 丹下キヨ子 (新婦)
    • 小林千枝 (先生)
    • 植田灯孝 (土地の親分)
    • 藤竜也 (虎尾鉄男)
  • スタッフ
    • 監督 野田幸男
    • 企画 吉田達
    • 脚本 松本功、山本英明
    • 撮影 山沢義一
    • 音楽 八木正生
    • 助監督 福湯通夫

脚注[編集]

  1. ^ 東映キネマ旬報vol.2 2008年冬号、10-11頁
  2. ^ a b 『Hotwax 日本の映画とロックと歌謡曲 vol. 7』 シンコーミュージック・エンタテイメント、120-121、135頁。978-4-401-75111-2。
  3. ^ a b c d 杉作J太郎・植地毅(編著) 『東映ピンキー・バイオレンス浪漫アルバム』 徳間書店、1999年、109-110頁。ISBN 4-19-861016-9
  4. ^ 梅宮辰夫&内藤誠トークイベント(第1回 / 全2回) - Facebook
  5. ^ a b c d 映画秘宝』2014年11月号、洋泉社、 78-79頁。