三角形の中心

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三角形の心(さんかくけいのしん)とは、任意の三角形から一意的に求めることができる点の総称である。別に三角形の、あるいは比喩的に中心とも呼ばれる。

「五心」と呼ばれる点(内心外心重心垂心・傍心)が一般的に広く知られている。

心の定義法[編集]

三角形の心となる点は、以下のような方法で定義することができる。

3本の線の交点
3 頂点または 3 辺に対し指定された方法で引かれた 3 本の直線が 1 点で交わる(共点である)とき、その交点。共点であることを示すためにチェバの定理がよく利用される。
  • 垂心 - 3 本の高さ(各頂点からその対辺へ垂直に下ろした線分)の交点。
  • 内心 - 角の二等分線、3 本の交点。
  • 外心 - 辺の垂直二等分線、3 本の交点。
  • 重心 - 3 本の三角形の中線(各頂点とその対辺の中点を結ぶ線分)の交点。
  • 加重重心 - 各頂点とその対辺の内分点を結ぶ線分、3 本の交点。各頂点に各辺の比をいれかえた値の重りをつり下げるとつりあいの中心となる。
円の中心
特定の円の中心に当たる点。
  • 内心 - 3 辺に接する円(内接円)の中心。
  • 外心 - 3 頂点を通る円(外接円)の中心。
  • 傍心 - 三角形の傍接円の中心。
  • 六点円の中心 - 各頂点から下ろした垂線の足から他の 2 辺に下ろした合計6個の垂線の足を通る円の中心。
  • 九点円の中心 - 各辺の中点、各頂点からその対辺に下ろした垂線の足、垂心と各頂点の中点の 9 点を通る円の中心。
既存の点や線から導かれるもの
計量を最小にする点、特定の 2 点の中点、特定の線と円の交点など。
  • フェルマー点 - 3 頂点からの距離の和が最小となる点。
  • 九点円の中心 - 外心と垂心の中点に当たる点。

上で例にあげた内心や九点円のように、1つの点を複数の方法で定義することも可能である。

歴史[編集]

三角形の五心と呼ばれる代表的な5つの心は古くから知られており、ユークリッドの「原論」にも記述が見られる。

他の点の多くは、1678年チェバの定理の発表後に発見されている。この定理によって存在が容易に示される心は少なくない。代表的な心にジェルゴンヌ点などがある。

モーレーの定理の発表などもあり、19世紀から20世紀にかけて三角形の研究は広く行われた。この時期に発見された点にはブロカール点ド・ロンシャン点などがある。

その後も新しい心が発見されており、エヴァンズビル大学内のサイト「Encyclopedia of Triangle Centers」には2015年現在7500以上の心が登録されている。

心の名称[編集]

心の名前には、その心に関する研究をした人の名前が付けられることが多い。ナポレオン点ナポレオン・ボナパルトソディ点フレデリック・ソディのように、数学者以外の名前がつく例もある。

安島-マルファッティ点のように、日本人の名前が入っているものもある。

三線座標と重心座標[編集]

平面上の点を表す座標として三角形の各頂点に対して対称な座標を導入すると、心の位置を表すのに便利である。そのような座標として、三線座標と重心座標が使われる。

三線座標は、点を三角形の各辺からの距離を用いて表現する座標である。点Pが辺BCから hA・辺CAから hB・辺ABから hC だけ離れているとき、Pの三線座標を (hA, hB, hC) で表す。実際にはこの値を単純な比に換算したものが用いられる。実際の距離で示したものを絶対三線座標という。辺に対し三角形と反対側にある場合には、この数字は負の値をとる。

例:内心の三線座標は (1, 1, 1) であり、絶対三線座標は (r, r, r) である。ここで r内接円の半径である。

重心座標(en:Barycentric coordinate system)は、△PBCと△PCAと△PABの面積の比で表される。点Pの重心座標が (gA, gB, gC) のとき、

\vec P=\frac{g_A \vec A+g_B \vec B+g_C \vec C }{g_ A+g_ B+g_C }

が成り立つ。重心座標によって指定される点は、三角形の頂点 A, B, C に (gA, gB, gC) の質量を置いた時のいわゆる「加重重心」に相当する。

三線座標と重心座標の間には、gA : gB : gC = a hA : b hB : c hC の関係が成り立つ。ここで、a, b, c は 3 辺の長さである。

3 点の三線座標からなる行列式の値が 0 の場合、その 3 点は同一直線上にある。重心座標でも同様である。

主な心を三線座標・重心座標と共に示す[註 1]と以下のようになる:

記号[註 2] 名称 三線座標または hA = h(a, b, c)[註 3] 重心座標または gA = g(a, b, c) [註 3]
X1, I 内心 (1, 1, 1) (a, b, c)
X2, G 重心 (1/a, 1/b, 1/c) (1, 1, 1)
X3, O 外心 (cos A, cos B, cos C) (sin 2A, sin 2B, sin 2C)
X4, H 垂心 (1/cos A, 1/cos B, 1/cos C) (tan A, tan B, tan C)
X5, N 九点円の中心 (cos(B - C), cos(C - A), cos(A - B)) gA = a2(b2 + c2) - (b2 - c2)2
X6, K 類似重心 (ルモワーヌ点) (a, b, c) (a2, b2, c2)
X7, Ge ジェルゴンヌ点 (sec2(A/2), sec2(B/2), sec2(C/2)) (tan(A/2), tan(B/2), tan(C/2))
(1/(b+c-a), 1/c+a-b), 1/(a+b-c))
X8, Na ナーゲル点 (csc2(A/2), csc2(B/2), csc2(C/2)) (cot(A/2), cot(B/2), cot(C/2))
(b+c-a, c+a-b, a+b-c)
X13, X フェルマー点 (csc(A + π/3), csc(B + π/3), csc(C + π/3)) gA = a4 - 2(b2 - c2)2 + a2(b2 + c2 + 4√3×△ABC)
但し、△ABC = (1/4)√[(a + b + c)(a + b - c)(b + c - a)(c + a - b)]
X17, N 第1ナポレオン点 (sec(A - π/3), sec(B - π/3), sec(C - π/3)) gA = (sin A) hA
X18, N' 第2ナポレオン点 (sec(A + π/3), sec(B + π/3), sec(C + π/3)) gA = (sin A) hA
X20 ド・ロンシャン点 hA = cos A - cos B cos C gA = tan B + tan C - tan A
X175 第1ソディ点 hA = sec(A/2) cos(B/2) cos(C/2) - 1 gA = (sin A) hA
X176 第2ソディ点 hA = sec(A/2) cos(B/2) cos(C/2) + 1 gA = (sin A) hA
X179 第1安島-マルファッティ点 (sec4(A/4), sec4(B/4), sec4(C/4)) (sin A sec4(A/4), sin B sec4(B/4), sin C sec4(C/4))
X180 第2安島-マルファッティ点 hA = 1/t(B, C, A) + 1/t(C, B, A) - 1/t(A, B, C),
但し、t(A, B, C) = 1 + 2(sec(A/4) cos(B/4) cos(C/4))2
gA = (sin A) hA
X389 六点円の中心 hA = cos A - cos 2A cos(B - C) gA = (sin A) hA

また、(厳密な意味で)三角形の心ではないが重要な点の座標を以下に挙げる:

記号[註 2] 名称 三線座標 重心座標
A
B
C
頂点 (1, 0, 0)
(0, 1, 0)
(0, 0, 1)
(1, 0, 0)
(0, 1, 0)
(0, 0, 1)
IA
IB
IC
傍心 (-1, 1, 1)
(1, -1, 1)
(1, 1, -1)
(-a, b, c)
(a, -b, c)
(a, b, -c)
P1
U1
第1ブロカール点
第2ブロカール点
(c/b, a/c, b/a)
(b/c, c/a, a/b)
(ac/b, ba/c, cb/a)
(ab/c, bc/a, ca/b)
  1. ^ 各座標は、比が意味を持つ事、および、角A, B, Cと辺の長さa, b, cは互換であることから、表示は一意的でない。表中の座標の表記は一例である。
  2. ^ a b 記号は主に Encyclopedia of Triangle Centers に従う。
  3. ^ a b 心の三線座標・重心座標は、その対称性から triangle center function h(a, b, c) = (1/a) g(a, b, c) が存在して、三線座標 (h(a, b, c), h(b, c, a), h(c, a, b)), 重心座標 (g(a, b, c), g(b, c, a), g(c, a, b)) と書ける。

外部リンク[編集]