三幕構成

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三幕構成の見取り図[1]
ウェンデル・ウェルマンによるプロット・ライン・グラフ (一部追記)。
赤とオレンジは主人公が敵対者と衝突するシーン[2]

三幕構成 (three-act structure) は、脚本の構成の一つである。

三幕構成はストーリーを、設定 (Set-up)、対立 (Confrontation)[3]解決 (Resolution) の役割を持つ3つの部分 () に分ける[4]。3つの幕の比は1:2:1である[5]

幕と幕はターニング・ポイントでつながっている。ターニング・ポイント (プロットポイント) は、主人公に行動を起こさせ、ストーリーを異なる方向へ転換させる出来事である[6][7]

三幕構成は、映画およびドキュメンタリーなどの構成においては、国際的に主流である。一般的に、日本以外の国では、三幕構成のモデルに基づいて、それらの脚本が制作されている[8][9][10][注釈 1]

映画を3つの幕に分割することは、西洋演劇の三幕または五幕の構成を継承したものである[8]("歴史"の節を参照)。シド・フィールドおよびリンダ・シーガー英語版らは、物語を3つに分ける三幕構成の最古のものを、古代ギリシア時代 (またはそれ以前) に求めている[11][12]

三幕構成の枠組は1979年、映画に共通する基礎として、シド・フィールドによって理論化された。フィールドの教本 Screenplay: The Foundations of Screenwriting[注釈 2] は、世界22カ国語以上に翻訳され、数回の改訂を重ねている[13][注釈 3]

構成[編集]

三幕構成は「設定」「対立 (衝突)」「解決」の役割を持つ3つの幕から成り立つ[14][注釈 4]。全てのストーリーには、「発端」(Beginning)、「中盤」(Middle)、「結末」(End) がある[15][注釈 5]。三幕構成では、その3つの部分がそれぞれ3つの幕となっている[16]第一幕 (設定) では、誰の、何についてのストーリーであるのかが設定される[17]第二幕 (対立、衝突) では、主人公が自らの目的を達成するために、その障害と対立、衝突する[18][19]。第二幕の後半には、主人公が敗北の寸前まで追いつめられる[20][21]。そして、第三幕 (解決) では、ストーリーの問い、すなわち「主人公は目的を達成できるのか?」という問いに対する答えが明かされ、その問題が解決される[22][23]

第一幕の終わりと第二幕の終わりには、ターニング・ポイント (プロットポイント) がある[注釈 6]シド・フィールドによれば、ターニング・ポイント[注釈 7]とは、「アクション (行動) を起こさせ、物語を違う方向性に向かわせる事件やエピソードなど」をいう。ターニング・ポイントは主人公に関するイベントである[24]。劇的で大きな場合もあれば、そうでない場合もある。ときには台詞や決断のみである[25]。ターニング・ポイントの目的は、結末に向けてストーリーを前進させることである[26]

一般に、映画は最初のおよそ10分間において、主人公とその目的 (問題) が設定され、主人公の周囲に関する必須情報も紹介される (セットアップ)[27][28][29][30]。その直後のインサイティング・インシデント (引き金となる出来事) によって、ファースト・ターニング・ポイントが起こり[31][32][33][34]、主人公は別世界の第二幕に進む[35][36]。第二幕の中間のミッドポイントで、ストーリーは前半と後半に分かれる[37][38]。ミッドポイントでは、衝撃となる出来事が起こり、ストーリーは正反対に転換する[39][40]。そこから第二幕の後半を通して主人公の状況が悪化していく[41][42]。そして、主人公が最悪の状態に陥ったとき、セカンド・ターニング・ポイントで決断を迫られる[43][44]。そこで主人公が正しい決断をすることにより、続く第三幕での最後の試練に勝利する[45][46]

それぞれの幕の時間配分は、1:2:1である (これは古典的な比率にすぎない[47][注釈 8])[48]。このとき、第一幕がおよそ4分の1、第二幕がおよそ半分、第三幕がおよそ4分の1である[49]。映画は通常、2時間ほどの長さである[注釈 9](映像の1分は、脚本ではおよそ1ページになる)。第一幕は、開始から20-30分頃までの約30分間であり、全体の約25%である。第二幕は、20-30分頃から85-90分頃までの約60分間であり、全体の約50%である。第三幕は、85-90分頃から120分頃までの約30分間であり、全体の約25%である[50]。第一幕から第三幕のそれぞれは、再びさらに短く、ビギニング、ミドル、エンドの3つのパートに分割される[51]

三幕構成は、公式やルールではなく、見取り図 (パラダイム) であり、スタイルでしかない。したがって、具体的なページ数 (時間) は重要ではない[注釈 10]。ストーリーが構成を決めるのであり、構成がストーリーを決めるのではない[52][53]。脚本の構成とは、関連のあるイベントやエピソードを解決に向かうように並べ[54]レイアウトすることにより、全てを明確な一本のストーリーラインでつなぐツールである。そして、その目的は、ドラマとして最大の効果を得ることにある[55]。つまり、三幕構成は、ストーリーを伝えるために効果的な「フレームワーク」(枠組み) にすぎないのであり、独創性を奪う制限ではない[56]

なお、この項目では、ブレイク・スナイダー英語版の分類、すなわち「ブレイク・スナイダー・ビート・シート」(BS2)[57][注釈 11]を参考程度に掲載している。これにはフィールドの分類ほどの一般性が無いため[注釈 12]、あくまでもスナイダー個人の意見として扱っている。よって、スナイダーの分類に従う必要は全く無い点に注意が必要である。

第一幕 (設定)[編集]

オープニング[編集]

第一幕 (Act I ) は通常、メインキャラクターを固めるための説明に用いられる。彼らはどのようなキャラクターか、彼ら同士はどのような関係か[注釈 13]、彼らの住む世界はどのようなものか、といったことが第一幕で設定される[58]。通常、2時間映画の場合、第一幕のうち最初の10分ほどでこういったことが説明される。この冒頭10分 (10ページ) が全体で最も重要である。観客は多くの場合、最初の10分程度で映画の評価を決めてしまうためである。ここで退屈だったり、分かりにくかったりすると、観客は映画に集中することをやめてしまう[59]

この最初の10分間はセットアップ (set-up)と呼ばれ[60][61][62][63][注釈 14]、主人公が誰で (Who)、何をする物語で (What)、どのような状況なのか (Where) をすべて設定する[64][65][66][67]。ここでは、主人公を始め、メインストーリーの登場人物が必ず全て登場するか、その存在が示唆される[68][69]。主人公が敵対者と出会う場合もある[70]。また、主人公の目的や[71][72][73]、置かれている境遇が明確にされる[74][75][76]。そして、主人公が最終的に勝利するために足りないものが映像で描かれる[77][注釈 15]。こうして状況設定をした上で、今後の急展開の前兆が示され、伏線が敷かれる[78][注釈 16]。ただし、シド・フィールドは、あらゆることを最初の10ページ (10分) に詰め込みすぎると、逆効果になるとも述べている[79]

アナと雪の女王』('13) のセットアップは、アナとエルサの姉妹が氷の魔法で一緒に遊び、アナが事故に遭うシーンから始まる。アナはトロールの長老の力で回復するが、ここでアナの記憶が消されるため、エルサが自分を遠ざける理由がアナには分からなくなる。エルサ[注釈 17]は魔法の力をコントロール出来なくなり、その力からアナを守るために姉妹が引き離される。そして、両親の国王夫妻が海難事故で亡くなり、姉妹が途方に暮れるまでが、セットアップにあたる (脚本では1-11ページ[80])[81]。そこでは、主人公のアナ、姉のエルサ、氷売りのクリストフ (幼年時代)、トナカイのスヴェン、および雪だるまのオラフ (原型) といったキャラクターが登場する[82]

第一幕では設定の説明が行われる。一方で、フィールドによれば、台詞で説明がなされると、キャラクターがアクションしなくなり、ストーリーの展開もスローダウンするという。よって、映像作品は映像でストーリーを説明することが重要であるとしている[83]リンダ・シーガー英語版は次のように述べている。登場人物やストーリーを説明する上で、台詞はあまり必要でない。必要でない情報を盛り込んだ脚本には、観客は引き込まれない。必要な情報は、キャラクターの最も重要な部分を明らかにし、ストーリーを前に進める情報のみである。優れた説明のシーンは、明確、手短、シンプルである[84]

映画監督のアルフレッド・ヒッチコックは、「情報を表わす的確な映像があれば、シーンの数は最小限ですむ」と述べている。『羊たちの沈黙』('91) では、主人公が特別な任務を任されるシーンで告げられる理由はこれだけである。「君は成績もトップクラスだ。専攻も心理学と犯罪学だし」。 そして、ヒッチコックは、主人公が新婚であることを次のト書きのみで表現した。「花瓶に生けたバラのそばにカードが添えてある。『結婚おめでとう!』」[85]

  • バックストーリー
バックストーリー英語版 (backstory) は、最初のシーンが始まる前に主人公に起こった出来事である。主人公が冒頭のアクションに至った過程は省略され、それはバックストーリーに置かれる。バックストーリーによって、ストーリーの最初からアクションに入ることが出来る。このため、ストーリーの緊張感はオープニングから高くなる[86][注釈 18]
  • オープニング・イメージ (※スナイダーの分類)
オープニング・イメージ (opening image) は、ブレイク・スナイダー英語版によれば、映画の第一印象が全て決まる部分である。優れたオープニング・イメージは、どのような作品なのかがイメージでき、作品のスタイル、ジャンル、およびテーマなどが象徴される。それはまた、主人公の変化する前の姿を見せる場である。オープニング・イメージは最後のファイナル・イメージと一対になっており、主人公に起こった変化はラストで表される[87]。ここでは舞台となる場所や時代も設定される。作品の舞台がワイドアングルで映し出される場合が多いが、反対に、クローズアップから始まる場合もある[88]
アナと雪の女王』('13) は、雪の結晶の舞うタイトル・シークエンス (タイトルバック) から始まる (これは脚本には記されていない[89])。そこから湖の氷の下に視点が移り、氷売りが氷を切るノコギリが観客の視界に飛びこんでくる[81]。『アバター』('09) は、主人公を含む数百名の乗客が冷凍睡眠から目覚め、無重量状態の宇宙船内を漂う光景で幕を開ける[90]
  • セットアップ
セットアップ (set-up) では、ストーリーを理解するための要点が全て示される。セットアップは、誰の、何についての、どこが舞台の、どのようなジャンルのストーリーなのかを明確にする[91]。主人公の目的が与えられ、メインストーリーに登場するキャラクターも紹介される。このセクションは冒頭の10分 (長くても12分) であり、観客の興味を得られるかどうかの分岐点である[92][93]
  • 出会いと挨拶 (※ウェルマンの分類)
ウェンデル・ウェルマンによれば、セットアップの段階で、主人公が敵対者とプライベートで出会う場合がある (3分から10分)。ウェルマンはこれを「出会いと挨拶」と呼んでいる。主人公は危険を感じておらず、むしろフレンドリーな敵対者に関心を持つほどである。この時点では、まだ主人公は「普通の世界」にいる。ウェルマンは、冒頭で主人公とその友人たちが暮らす「普通の世界」を、可能な限り面白い世界として描いている。すぐ後に、主人公は敵対者によって、それとは正反対の危険な世界へと入りこむことになるからである[94]
  • テーマの提示 (※スナイダーの分類)
スナイダーによれば、テーマの提示 (theme stated) では、登場人物の誰かが作品のテーマに関することを口にする。普通、主人公でない人物が主人公に対して忠告する。主人公は言われたことの意味をよく分からないが、ストーリーが進むほどその言葉の重さを理解するようになる。ここでは脚本家の主張が代弁され、以降は、登場人物がそれに賛成か反対かで対立しながらストーリーが進行する。スナイダーは冒頭5分の時点で起こるとしている[95][注釈 19]
アナと雪の女王』('13) では、 頭の凍りついたアナを抱いた国王夫妻が、"The heart is not so easily changed, but the head can be persuaded." (心は頭ほど簡単には変わらない) と、トロールの長老から教えられる。つまり、アナは真実の愛を学ばなければならず、それがストーリーの中心となる。姉のエルサもまた、自らの優れた力を制御する必要があり、それには恐れが最大の障害となることを告げられる (p. 7.[96])[81][注釈 20]
  • セントラル・クエスチョン
セントラル・クエスチョンは、主人公の解決しなければならない問題である。これはセットアップの終わりに観客に対して行われる問いかけであり、その答えはクライマックスに Yes/No で与えられる[97]。この問いかけは、主人公の行動する「きっかけ」という目線から立てられる (例: 「X はダイヤモンドを取り返せるか?」「Y は彼女をゲットするか?」「Z は殺人犯を逮捕できるか?」など)[58]。すなわち、「主人公は目的を成し遂げられるのか」ということがクエスチョンとなるが、主人公の心理的な変化が目的となる場合もある。セントラル・クエスチョンは、ストーリー上の全ての出来事に関係する。セントラル・クエスチョンの設定によってセットアップは終了し、本当のストーリーを始める準備が出来る[98]。『アナと雪の女王』('13) のセットアップ (pp. 1-11., 前述) は、アナが閉ざされたドアの向こうのエルサに対して歌う "Do You Want to Build a Snowman?" (「雪だるまつくろう」) で終わる[99]
  • インサイティング・インシデント
インサイティング・インシデント (inciting incident, 引き金) または カタリスト (catalyst) [100]は、「ツカミ」となる事件であり、これは、その後に起こるファースト・ターニング・ポイントの引き金となる。それはオープニング (ときには1ページ目) に配置される。この出来事によって、(i) ストーリーが動き始め、また、(ii) 観客がストーリーに集中させられる[101]。インサイティング・インシデントは、原則として最初の10分から15分に置かれる (この「引き金」のシーンは全編にちりばめることも出来る)。このシーンは、会話よりも出来事や行動で描かれているほうがインパクトは強い[102]。たいていのヒット映画では、主人公が敵対者と最初に遭遇するのはこの辺り (開始10分頃) である[103]ストーリーが本当の意味で始まるのは次のファースト・ターニング・ポイントからである。インサイティング・インシデントは必要不可欠であるが、前振りでしかない[104]
例えば、『アナと雪の女王』('13) で、エルサの戴冠式の日が来て、城の門が開けられ、妹のアナが「生まれてはじめて」を歌い踊って喜ぶシーン (pp. 12-17.[105])[81]、『マトリックス』('99) では、ヒロインのトリニティが重力を無視して警官隊の包囲から脱出するシーン、『ロード・オブ・ザ・リング』('01) で、指輪が川底から見つかるシーン[106]、『シックス・センス』('99) の主人公が撃たれるシーン、『プライベート・ライアン』('98) のノルマンディー上陸のシーンなどが、インサイティング・インシデントである[107]
  • 第2の10ページ
セットアップが終わった後の「第2の10ページ」(開始10-20分) では、主人公に焦点が当てられる。セットアップが「誰の、何についてのストーリーなのか」を明確にしたのに対し、ここでは、「主人公はどのような人物なのか」ということが中心になる。主人公の人生の「ある1日」が示され、主人公のキャラクターや人間関係がより明らかになる。この1日は、狭い意味での「日常の1日」である場合もあれば、そうでない場合もある。主人公は行動的、決断的で、ほぼ全てのシーンに登場し、また、最初の10ページ (10分) の設定に応じて行動する。なおかつ、この間のストーリーは、第一幕の終わりのファースト・ターニング・ポイントに向かって広がり、前に進む[108]
アナと雪の女王』('13) では、セットアップ (pp. 1-11., 前述) の直後に、戴冠式の1日が描かれる。戴冠式の日の朝、城門が開放され、昼にアナのミュージカル・パートが始まる。このインサイティング・インシデント (pp. 12-17., 前述) に続いて、アナのハンス王子との出会い (pp. 17-19, 24-28.) や、エルサの魔力の発覚しそうになる戴冠の儀式 (pp. 19-20.) があり、夜のファースト・ターニング・ポイント (pp. 35-36., 後述) に至る。主人公のアナは、そのうち合計24ページに登場しており、登場していないのは1ページのみである (pp. 12-36.)[109]
  • 第3の10ページ
第2の10ページに続く「第3の10ページ」(開始20-30分) は、主人公をめぐる問題が具体的に何であるのかを、1つか2つ程度のシーンで明かし、その結果として起こるファースト・ターニング・ポイントで終わる[110][注釈 21]。『アナと雪の女王』('13) では、アナが山地に向かうファースト・ターニング・ポイント (pp. 35-36., 後述) の直前、アナのハンス王子との突然の婚約に怒ったエルサが、秘密にしていた魔法を使ってしまい、山地へ逃亡する。王国は魔法の暴走によって寒波に襲われる (pp. 29-34.)[111]。『シンデレラマン』('05) では、主人公のボクサーが、1シーン目で試合前に利き手の痛みを感じ、2シーン目には試合中にその手を複雑骨折し、それにより、3シーン目のファースト・ターニング・ポイントで、ボクサーとしてのライセンスをはく奪される[112]
  • 悩みのとき (※スナイダーの分類)
スナイダーによれば、悩みのとき (debate) では、主人公が自分の目標を実現できるのか疑問を抱き、十分に考えるという (12分から25分[注釈 22]、全体の約1/8)。これにより疑問の答えを見つけ、主人公は自信を持って試練に立ち向かう決心が出来るとする。スナイダーはこれを、前のインサイティング・インシデントと次のファースト・ターニング・ポイントをつなぐセクションであるとしている[113]

ファースト・ターニング・ポイント[編集]

第一幕の終わりでは、きっかけとなる出来事がダイナミックに起こり、主人公に直面する。主人公はこの出来事に上手く取り組もうと試みる。出来事は次のよりドラマティックなシチュエーションにつながる。これがファースト・ターニング・ポイントまたはプロットポイント I (first turning point または plot point I )である。これは、まず、(i) 第一部が終わる合図となる。さらに、(ii) 主人公の人生をがらりと変え、引き返せなくする[58]。なおかつ、(iii) 冒頭のセントラル・クエスチョンが再び示される[114]。ファースト・ターニング・ポイントから本当のストーリーが始まる[115]。それは通常、開始から20-25分または30分頃に配置される[116]

ここでは、それまでの状況が一変して、主人公のゴールが明確になり、その目標を達成するためのストーリーが始まる[78]。ファースト・ターニング・ポイントは、主人公の関係する何らかのイベントであり、ここから物語は第二幕に入る[117]。主人公は安定した日常から、危険にあふれた非日常へと足を踏み入れる[78]。二つの世界は著しく異なるため、自分から新しい世界に進む強い意志がなければならない。主人公は受け身のまま流されて第二幕に入ってはならない。自ら選択し、行動しなければ主人公ではない[118]。これは言わば森の中に分け入る入り口のシーンである。必ず敵対者との衝突が起こるが、通常、対峙するだけで「戦闘」にはならない。一方で、主人公は、敵対者が予想外で思いもよらない存在であり、これまでの方法では立ち向かえないことを知る。主人公は「普通の世界」を去ろうとしているのである。このため、ストーリーに最初の転換が起こる。続く数シーンでは、主人公が森の中、すなわち新しい世界で、「普通の世界」とは異なる人々に出会う[119]

ファースト・ターニング・ポイントでは、主人公の「ドラマ上の欲求」がそれまでとは変化する。このため、続く第二幕では、まず初めに、主人公の新たな「ドラマ上の欲求」が明らかにされる。『テルマ&ルイーズ』('91) では、親友テルマをレイプしようとした男をルイーズが射殺したことによって、「二人で週末の楽しい旅に出かけること」という欲求は、「二人でメキシコまで逃げること」へと変わる。これは、ファースト・ターニング・ポイントで主人公の「ドラマ上の欲求」が変化する例である[120][121]

アナと雪の女王』('13) では、アナが姉のエルサを追って雪山に向かうシーンが、ファースト・ターニング・ポイントに当たる (pp. 35-36.[122])[81]。『タイタニック』('97) で、ローズがジャックと出会い、船から飛び降りることを思いとどまるシーン[123]、『ロード・オブ・ザ・リング』('01) で、主人公フロドが指輪を運ぶために村を出るシーン[124]、『マトリックス』('99) では、主人公ネオが真実の世界に目覚めるための錠剤を選ぶシーン[125]、そして『スターウォーズ』('77) で、主人公ルーク・スカイウォーカーが旅立つことを決意するシーンなども同様である[126]

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第二幕 (対立、衝突)[編集]

第二幕 (Act II) は、"rising action" (上昇する展開) とも呼ばれ、一般に、ファースト・ターニング・ポイントで始まった問題を主人公が解決しようと努力する姿を描く[58]。主人公は、目指す目標の障害と戦って勝たなければならない[117]。一方で、その矢先、主人公は自分がますます悪化する状況の中にいることに気づく。理由の一つは、主人公が問題を解決できないように思われるからであり、それは、主人公の前に立ちはだかる敵対者に対抗するスキルをまだ持っていないためである。主人公は新しいスキルを得るだけでなく、より高い意識に目覚めなければならない。すなわち、主人公が苦境から抜け出すために何が出来るのかを悟る。そして、今度は自らを変える自覚を持つことである[58]

このようなキャラクターの内面の変化は、キャラクターの成長 (character development) またはキャラクター・アーク英語版 (character arc) と呼ばれる。それは一人では成し遂げられない。主人公は普通、良き指導者 (mentor) や共同主人公から助けられ、励まされている[58]

第二幕は「対立、衝突」(confrontation) であり[3][注釈 23]、登場人物が相次ぐ困難を乗り越え、「ドラマ上の欲求」を成し遂げようとする[127]。主人公の「ドラマ上の欲求」、すなわち最終目的が決まることにより、そのために乗り越えなければならない障害も自然に設定され、主人公はその障害に打ち克(か)つことが求められる[128]シド・フィールドによれば、第二幕においては、主人公の物理的または精神的な障害が4つ必要である[129]。そうして、主人公の試練はクライマックスに向けて、いよいよ困難なものとなっていく[78]

フィールドによれば、第二幕はミッドポイント (中間点) を境に前半と後半に分けられ、それぞれにサブテーマ (サブコンテクスト) が存在する。『タイタニック』('97) では、「ローズとジャックが互いを知ること」が、第二幕前半のサブテーマである。ジャックがローズの家族から夕食に招待され、二人が結ばれるまでを指す。また、第二幕後半のサブテーマは、「ローズとジャックが固い絆で結ばれること」である。ここでは、二人が生き残れるかどうかにストーリーの焦点が移る。ローズは一度は乗り込んだ救命ボートから降りて、愛するジャックのところへ行こうとする。これら第二幕の前半と後半の行動をつなぎ、ストーリーを進展させるものが、ミッドポイントでの氷山の衝突である[130]

すなわち、第二幕の前半、後半は、それぞれサブテーマとしてまとまり、それが第二幕全体のテーマ (コンテクスト) を形成している[131]。サブテーマ (隠れた意味や背景) がクリアになれば、ストーリーに必要なアクションも明らかになる[132]

フィールドによれば、サブテーマの次には、時間枠が設定される。時間枠の設定とは、映画の限られた時間の中で、どの程度の時間の流れ (1日, 1ヶ月, 1年, 10年など) を表現するのかを決めることである[133]。例えば、『アナと雪の女王』('13) の時間枠は、主人公のアナがミッドポイントの起こる氷の城 (後述) にたどり着くまでが2泊3日、氷の城から宮殿に戻るまでが1泊2日となっている[134][注釈 24]。サブテーマと時間枠によって、ストーリーの進む方向が定まり、ミッドポイントやセカンド・ターニング・ポイントにつながるアクションが明確になる[135]。第二幕は「対立 (衝突)」であるから、ここが不明確であると、対立 (衝突) が弱まり、ストーリーが動かなくなる[136]

フィールドはさらに、第二幕前半の中間、および第二幕後半の中間にあたるポイントを、それぞれ「ピンチ」(pinch, 挟むこと)[注釈 25]と呼んでいる。これらは、第二幕の始まりから終わりまでのストーリーをリレーする出来事である。ピンチのシークエンスは、ストーリーを前に進める行動または会話である。ピンチ I (開始45分) は第二幕の前半を、ピンチII (開始75分) は第二幕の後半を、いずれも一つにまとめ、ストーリーを前に進める[137]

第二幕は、全ての幕の中で最も長くなるため、「脚本の勢い」を保つために、後述する「アクション・ポイント」または「シーン・シークエンス」の用いられる場合がある。「脚本の勢い」は、あるシーンが原因となり、次のシーン (結果) を生むときに生じる。その生じたシーン (原因) は、また同様に新たなシーン (結果) を引き起こす。そうしたシーンとシーンの因果関係の連鎖が脚本における勢いであり、それによりストーリーは前進する[138]

前半[編集]

シド・フィールドは、この第二幕の前半 (first half) [3]の中間点に起こる重要な出来事 (45分) を、ピンチ I (pinch I ) と呼んでいる。ピンチ I は、第二幕前半の中心となるイベントである。それは、第二幕の前半を一つにまとめ、ファースト・ターニング・ポイントからミッドポイントまでのストーリーをつなぐ。『テルマ&ルイーズ』('91) では、逃走中のテルマとルイーズが、ピンチ I でヒッチハイカーのJ.D.を車に乗せる。二人はミッドポイントで、そのJ.D.に逃走資金を持ち逃げされてしまう[139]。『アナと雪の女王』('13) では、アナが雪山に入ってから (p. 36., 前述)、氷の城で心臓に魔法を受けるまで (p. 70., 後述) の中間点で、雪だるまのオラフが登場し、氷の城にアナたちを案内してくれる (p. 52.)[140]

  • B-ストーリー (※スナイダーの分類)
B-ストーリー (B-story) または サブプロット英語版 (subplot) は、ブレイク・スナイダー英語版によれば、「ラブ・ストーリー」であることが多い (主人公と同性のキャラクターとの出会いが描かれる場合もある[注釈 26])。ここでは、新しいキャラクターの登場するケースがよく見られる。第二幕は「普通」の世界である第一幕とは正反対であるため、たいてい、この新たな登場人物もそれまでとは反対に「普通」ではない。このセクションは、直前のターニング・ポイントのショックから観客を休ませ、なおかつ、ストーリーを加速させ前に進める「補助ロケット」である。場面転換である一方で、メインストーリーと無関係ではなく、作品のテーマも改めて示される。B-ストーリーは全体の1/4を過ぎた辺り (30分) で始まる[141]。『アナと雪の女王』('13) では、アナが氷売りのクリストフと雑貨屋で出会う (p. 40.)[81]。『アバター』('09) では、主人公ジェイクがナヴィの娘ネイティリに命を助けられる[142]。フィールドの言うピンチ I (45分) はここで起こる[143]
  • ファン・アンド・ゲームズ (※スナイダーの分類)
ファン・アンド・ゲームズ (fun and games, お楽しみ) は、スナイダーによれば、「この作品はこういうものです」という「お約束」を果たす場面であり、「なぜこの作品を観ようと思ったのか」という観客の期待に応える部分である (30分から55分まで、全体の約1/4から1/2まで。B-ストーリーと同時に始まり時間帯が重なる)。ポスターや予告編で使われ、観客はストーリーよりもこのパートを待望している。「お約束」を観る場面であるため、ストーリーの目的とはやや外れ、他の部分より調子が軽い[144]。例えば、『アナと雪の女王』('13) で、エルサ女王が "Let It Go" を歌いながら氷の城を建てるシーンもこのセクションである。また、雪だるまのオラフがアナたちの仲間になる (いずれも pp. 36-70.[145])[81]。『ダイ・ハード』('88) では、主人公ジョン・マクレーンがテロリストの鼻を明かす展開が始まる。『スパイダーマン』('02) では、主人公が突然手に入れた力を使ってみる[146]。フィールドの言うピンチ I (45分) はここで起こる[147]

ミッドポイント[編集]

ミッドポイント (midpoint) は、第二幕の中間点60分ほどで起こる非常に重要なイベントである[148][注釈 27]。ここで映画は前半と後半に分かれる。ミッドポイントからは危険度が急に上がる[149][注釈 28]。主人公と敵対者の間で大きな「バトル」が起こり、ターニング・ポイントと同じ程度かそれ以上の転換シーンになる。ミッドポイントでは突然、主人公の目的や主張を打ち砕く何かが起こり、ストーリーを正反対に方向転換させる。『タイタニック』('97) で氷山が船に衝突するシーンもこのポイントである (パニック映画ではミッドポイントで災害が発生する)[150]。また、『アナと雪の女王』('13) で、氷の城にたどり着いたアナが、エルサ女王から氷の魔法で心臓を撃たれるシーンなども、ミッドポイントの例として挙げられる (p. 70.[151])[81]

ミッドポイントでは、主人公に新しい道標が与えられる。主人公がこれまで目指してきた試みは失敗したのであるから、新たにどこへ向かうべきかを知る必要がある[152]。ここでは、登場人物が変化し始め、主人公がこれまでとは別の生き方を選んだり、新しい行動を開始したりする[153]ピクサー作品では、主人公の精神的な成長を描くため、主人公が旅の中間部でその目的を一時的に見失ってしまい、その間だけ目的が変化するという展開が必ず挿入される[78]

作品によっては、「人目を引きつけるシーン」がここに置かれる。人目を引きつけるシーンは、ストーリーの進行を一時停止させ、にぎやかに盛り上がるショーの場面である。このシーンは、次第にヒートアップし、テンポも急速に上がっていく [『美女と野獣』('91) のディナーのシーンなど]。それによりキャラクターが何かを達成したり、変化したりする。作品の全てのシーンの中で最も記憶に残る場合が多い。ミュージカル的な歌や踊りだけでなく、サーカスカーチェイス、またはスポーツなども同様である。『ロッキー』('76) のトレーニングの場面も、その盛り上がり方から、人目を引きつけるシーンと言える[154]

後半[編集]

シド・フィールドは、この第二幕の後半 (second half)[3] の中間点に起こる重要な出来事 (75分) を、ピンチII (pinch II) と呼んでいる。ピンチII は、第二幕後半の中心となるイベントである。それは、第二幕の後半を一つにまとめ、ミッドポイントからセカンド・ターニング・ポイントまでのストーリーをつなぐ。『テルマ&ルイーズ』('91) では、警察に逮捕されたヒッチハイカーのJ.D.が、ピンチII でテルマとルイーズの逃亡先を明かしてしまう[155]。『アナと雪の女王』('13) では、アナが心臓を傷めてから (p. 70., 前述)、宮殿に戻って真実の愛に目覚めるまで (p. 102., 後述) の中間点で、トロールの長老が、アナの心臓を癒やすには真実の愛が必要であると教えてくれる (p. 87.)[156]

ウェンデル・ウェルマンによれば、第二幕の後半では、主人公が混沌へと急降下し、また、少なくとももう一人、別の主要人物の下降も追って始まる。主人公などの陥るカオスを徹底的に描く場合も、軽く触れるだけの場合もある。主人公などが自由落下する以外に原則はとくに無い[157]

  • バッドガイズ・クローズ・イン (※スナイダーの分類)
バッドガイズ・クローズ・イン (bad guys close in, 迫り来る悪い奴ら) は、ブレイク・スナイダー英語版によれば、パワーアップした敵対者が逆襲してくるセクションである (55分から75分まで、全体の1/2から約2/3まで)。一方で、主人公の側にも内輪もめが起こる[158]。シド・フィールドの言うピンチII (75分) はここで起こる[159]。『アナと雪の女王』('13) では、アナたちがエルサ女王の作った雪の巨人に追われる。また、アナは心臓に受けたダメージにより死に向かう。そしてエルサも、ハンス王子とその兵士などによって城を襲撃され、捕らえられる (いずれも pp. 70-96.[160])[81]
  • オール・イズ・ロスト (※スナイダーの分類)
オール・イズ・ロスト (all is lost, 全てを失って) は、スナイダーによれば、主人公が一時的に最悪の状況に陥ることであり、失意のどん底まで落とされる (75分、全体の約2/3)。ヒット作では、よく何かしら死に関することが示され、観客にインパクトを与える。実際に指導者が死ぬことが多いが、植木鉢の花が枯れるなど象徴的なものもある。指導者が死んだ場合には、もはや指導者を必要としないほどの力が自分にあることを、主人公が理解する。これまでの世界、キャラクターおよび考えが「死んでいく」ことで、次の世界である第三幕へと移ることが出来る。『スターウォーズ』('77) では、オビ=ワン・ケノービが亡くなる[161]。また、『アナと雪の女王』('13) では、半死半生のアナが、ハンス王子から婚約が王位のための道具であったことを告げられた後、冷たい部屋に一人残される。また、エルサ女王も、ハンスによって反逆罪で死刑を宣告される (いずれも pp. 96-98.[162])[81]
  • ダークナイト・オブ・ザ・ソウル (※スナイダーの分類)
ダークナイト・オブ・ザ・ソウル (dark night of the soul, 心の暗闇) は、スナイダーによれば、全てを失った主人公が解決策を深く考え、自分や仲間を救う方法を悟るシーンである。5秒で終わることもあれば、5分続くこともある[163]。『アナと雪の女王』('13) では、オラフが暖炉の火で溶けそうになりながら真実の愛を語る。アナは、ハンス王子ではなく、クリストフが「運命の人」であったことに気づく (pp. 99-102.[164])[81]

セカンド・ターニング・ポイント[編集]

セカンド・ターニング・ポイントまたはプロットポイントII (second turning point または plot point II) は、ファースト・ターニング・ポイントと同じく、ストーリーをより危険な方向へ転換させ、新たな幕に進ませる[165]。それは第三幕への分かれ目であり、通常、開始から80-90分に配置される[166]。ここでは、セントラル・クエスチョンがもう一度示される。 主人公が希望を捨てようとした瞬間、セントラル・クエスチョンを解決する方法が見つかるという、一続きの展開から成ることもある ("good news, bad news")。また、この転換点は、結末へ向けてテンポを上げる役割を持つ。実際にタイムリミットが設定されるケースもある ("ticking clock")[167]

このシーンは一般的に、「死」に関するシーンであり、このシーンから主人公が生まれ変わり始める。主人公は敵対者のエリアで彼(ら)のしていることを目撃する。それにより敵対者の真実が明らかになり、主人公の主張 (最終目的) や考え方が徹底的に破壊されて、主人公は苦しめられる。これまでの映画全体がこの真実を知るシーンに向かって動いていたのである[168]

セカンド・ターニング・ポイントでは、登場人物はこのまま変化し続けるか、それとも後戻りするのか選択を求められる[169]。主人公は大きな変化、試練を乗り越えることで、精神的にさらに成長していく[78]ブレイク・スナイダー英語版によれば、ここでメインプロットとサブプロット (B-ストーリー) が出会い、それによって敵対者に勝つためのヒントが見つかるという (例: ヒロインが敵の弱点を教えてくれるなど)[170]。競技をテーマとした作品であれば、セカンド・ターニング・ポイントから最後の競技が始まり、第二幕におけるトレーニングなどの結果が次の第三幕において示される[171]

セカンド・ターニング・ポイントの例として、『アナと雪の女王』('13) で、瀕死のアナがクリストフに会うために宮殿から脱出しようとするシーン (p. 102.[172])[81]、『タイタニック』('97) では、ローズがジャックのところへ行くために救命ボートから降りるシーン[173]、『マトリックス』('99) で、主人公ネオが拘束された船長モーフィアスを救出することを決断するシーン、『テルマ&ルイーズ』('91) では、テルマとルイーズが車中で最後の夜を静かに過ごすシーンなどが挙げられる[174]

ウェンデル・ウェルマンは次のように主張している: 登場人物の犠牲は、ストーリーに欠かせないと考えられる場合のみに限るべきである。アメリカ映画では、ジョーゼフ・キャンベルの影響により、映画開始から85分、すなわちセカンド・ターニング・ポイントにおいて、主人公と友人関係にある「いい奴」の死ぬことが必ずと言えるほど多くなった。これは既に陳腐な展開である。誰も死なないヒット作は現に存在する。観客を感動させるためだけに登場人物の犠牲を詰め込んでいる作品は、圧倒的多数の観客から、わざとらしい、胡散臭いと感じられ、興行的に失敗することもある。登場人物を死なせる場合には、そのキャラクターと主人公の関係を十分に描き、また、それをストーリーの早い時点で描写しておかなければならない。それだけではなく、主人公がそのキャラクターの死によって、どのように考え方を変化させるのかということも決めておくべきである[175]

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第三幕 (解決)[編集]

第三幕 (Act III) は、ストーリーとそのわき道 (subplot) の解決で特徴づけられる。クライマックス (終了1-5分前[176]) は、ストーリーの緊張がそれまでより大きく高まるシーンまたはシークエンスであり、その緊張は頂点に達する。そして、第一幕で出された問いの答えが明かされる。主人公と他のキャラクターたちは自分の本当の姿を見出す[58]

第三幕は「変化の証明」であり、キャラクターが本当に変化したのかを試す最後のテストが行われる[177]。精神的に成長した主人公は、振りかかる最大の試練に勝利し、全ての物事が良い方向に運ぶ[注釈 29]主人公によって世界は大きく変化していく[78]。そして、主人公は、失くした何かを奪還したとき、すでに自らの弱点にも打ち克っている[178]。こうして、ストーリーに解決をもたらすのが第三幕である。ただし、解決はエンディングとは異なる。エンディングは、ラストの特別なショットシークエンスである[117]

1990年代後半以降の映画における第三幕は、かつての作品と比べ、かなり短い。敵対者とのラストバトルも、主人公が生まれ変わったことを再確認するための、静かめな最終試験である。なぜならば、主人公の心理的な葛藤はこれまでに描かれているため、クライマックスで繰り返す必要は無い。また、主人公は第二幕で古い考え方を既に捨てていることから、もはや主人公の心理的な葛藤が無くなりつつあるためである[179]。『アナと雪の女王』('13) では、アナがクリストフに会いに行くことを決断してから (p. 102., 前述)、ハンス王子との対決を経て (p. 106.)、脚本の終わるまでの枚数は11ページ (約11分) であり、脚本全体 (112ページ) のおよそ10%でしかない〔編者注: 他の幕との比はおよそ3:6:1となっている〕[180]

  • フィナーレ (※スナイダーの分類)
フィナーレ (finale) は、ブレイク・スナイダー英語版によれば、全体のまとめである (85分から結末まで、第三幕すべて)。ここでは、主人公に足りないものが克服され、主人公はメインストーリーでもサブプロットでも勝利する。主人公は第二幕で学んだことで、新しい世界を切り開く力を持っている。主人公によって、第二幕までの古い世界は新しい世界に変化する。敵対者 (生物とは限らない) はその過程で、下位の者からボスに至るまで、下から順に全て敗北する[181]

エンディング[編集]

エンディングについて、シド・フィールドは、「予測できるようなものでも、無理矢理作られたものでもなく、真実味を帯び、リアリティを持って観客を納得させられるエンディング」を最良のものとしている。フィールドは、脚本を書き始める際にはエンディングを最初に考えるという〔編者注:これには異説もある[注釈 30]〕。エンディングはオープニングの結果であり、行き先である[182][183][注釈 31]

1990年代後半以降では、ヒネリで終わるエンディングが流行になっている。主人公が新しい考え方を身につけ、勝利を収めようとしたとき、最後にその考え方がヒネリによって打ち砕かれる [『シックス・センス』('99) など ][184]。第三幕の終わりにヒネリを置く作品では、明らかになる真実が多すぎて、観客の混乱する場合がある。ヒネリは、巧みに張られた伏線が回収され、想定外の真実が明かされる瞬間である。それは普通、二つのターニング・ポイント、ミッドポイント、またはエンディング[注釈 32]のいずれかに置かれる (ただしヒネリは転換とは異なる)。本来、ヒネリは、セカンド・ターニング・ポイントに配置され、第三幕でその結果が描かれることが多い。秘密の隠される時間が長いほど、ヒネリのインパクトは強くなる[185]

エンディングには、爽快な場合、悲劇的な場合、または、どちらとも解釈できる場合がある。フィールドは次のように主張している: ストーリーの締め方に不安のある場合には、肯定的なエンディングを検討する。これは、「全ての人がシンデレラのように幸せになりました」といったエンディングにせよということではない。映画の目的は、観客を楽しませること、すなわち観客の気分を高揚させ、満足させることである[186]。未熟な脚本家の多くが、メインキャラクターをエンディングで死なせたり、著しい場合には、全ての登場人物を死なせたりする。そのほうが容易であるからだ。一方で、脚本家は、それより優れたエンディングを書くことが出来る[187]。ウェンデル・ウェルマンによれば、エンディング[注釈 33]は、仲直り、結婚式、または旅立ちが共通のテーマである[188]

また、フィールドは、「脚本家には観客に影響を与え、観客を変える責任がある」と述べており、脚本を書くということは、異なる人間が互いに愛し合う新しい世界、新しい行動パターンを作る機会であるとする。その機会を用いることが脚本家の使命であるという。よって、結末は、アマチュア性の高い絶望的、破滅的なものではなく、最も高いレベルの意識を目指さなければならないと、フィールドは主張している[189][注釈 34]

  • ファイナル・イメージ (※スナイダーの分類)
ファイナル・イメージ (final image) は、ブレイク・スナイダー英語版によれば、冒頭の「オープニング・イメージ」と一対になる場であり、これまでに起こった変化が本物であることを見せる。ファイナル・イメージは、第二幕での積み重ねの結果である[190]。ここではオープニング・イメージとは正反対のイメージが描かれ、ストーリーは終わる[191]

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敵対者[編集]

敵対者 (antagonist) は、主人公とは正反対の意見を持ち、主人公の最終目的を妨げる大きな存在である。敵対者は、主人公と対立し、衝突し、障害となる。主人公の敵対者がいなければ、ストーリーは成り立たない[192]。一般的に、敵対者は主人公と同じものを求めて争っているが、求めているものに対する観点は主人公と正反対である[193]

主人公と敵対者が衝突[注釈 35]することで主人公は選択を迫られ、ストーリーが転換する。ヒット映画では通常、主人公と敵対者は、最低でも5回 (10分頃, 25分頃, 60分頃, 85分頃, 95分頃) 関わり、そのうち3回は大きな転換シーンである。それは二つのターニング・ポイントとミッドポイント (中間点) で起こる。ウェンデル・ウェルマンは、主人公と敵対者の接触が多いほどストーリーの緊張感は高まり、その映画がヒットする可能性も増すとしている。つまり、対立する者同士はくっつけよ[注釈 36]、というのがウェルマンの主張である[194]

敵対者は1人の「悪者」とは限らない。敵対者が複数の場合もある。また、敵対者は必ずしも悪の存在ではない。ラブ・ストーリーでは恋愛の相手が敵対者となる。場合によっては、災害やモンスターなどであったり、あるいは、人種差別、ナチス・ドイツ、懲役またはスクール・ライフなどのような目に見えない抽象的なものであったりする (ただし、その場合でも具体的な敵対者は1人は必要である)[195]

Magic "3"[編集]

ウェルマンによれば、優れた映画作品では、主人公は少なくとも3回は誤った選択をする (magic "3")。主人公は第二幕の終わりで正しい答えを得て、正しい選択をする。正しい選択をしたことにより第三幕で勝利する。主人公の1回の決断だけでストーリーを引っ張る映画は退屈な作品になる[196][注釈 37]

かつて刷り込まれた古い考え方 (心の傷や欠陥など) が主人公の新しい考え方と衝突する。主人公はその古い考え方のために誤った行動をとる。新しい考え方は、それとは正反対の主人公の最終目的である (自由や正義など)。この二つの考え方の衝突が、脚本における葛藤 (inner conflict) であり、三つの主な転換シーンである[197]。つまり、主人公の古い考え方、すなわち心の傷や欠陥などを思い起こさせるものが敵対者である[198]。現状から変化しようとする主人公は、それを阻止する敵対者と対決していくことになる。主人公とその新しい主張は、敵対者によって、まず徹底的に打ちのめされる[199]

アクション・ポイント[編集]

リンダ・シーガー英語版によれば、アクション・ポイント (action points) とは、ストーリーを前進させ、リアクションを起こさせるアクション、出来事のことである。リアクションはさらに新たなアクションの原因となる。アクション・ポイントによって、そうしたアクションとリアクションの連鎖が始まり、脚本に勢いが生じる。このとき、シーンとシーンの間には因果関係があり、無関係ではないため、ストーリーは脱線せず結末へ向かう[注釈 38]。アクション・ポイントは、最も長尺となる第二幕の勢いを加速させる。シーガーは、ターニング・ポイントおよびミッドポイントをアクション・ポイントに含めているが、他にも、リバーサル、オブスタクル (バリア)、およびコンプリケーションの3種類のアクション・ポイントがあるとしている[200]

リバーサル (逆転)[編集]

リバーサル (reversal) は、ストーリーを正反対に転換させる。それにより、主人公が下降する場合も、上昇する場合もある。リバーサルは通常、ターニング・ポイントより強力である。ターニング・ポイントに置かれたリバーサルは、次の幕に勢いを生じさせる。リバーサルの引き起こす勢いは非常に強力であるため、1つか2つのリバーサルのみで第二幕の勢いは維持されると、シーガーは述べている[201]

オブスタクル (障壁)[編集]

オブスタクル (obstacle) または バリア (barrier)[注釈 39] は、主人公の目的を阻止する。それにより、主人公はこれまでとは異なる行動を選択する必要があり、そのために新たな決断をする。オブスタクル (障壁) それ自体によって勢いが生じる訳ではない。主人公がオブスタクルを突破しようと試行錯誤するときの決断がストーリーを展開させる。勢いを最も生じさせるのは、主人公がオブスタクルの突破に成功するときの行動である。シーガーは、映画においては、オブスタクルが数か所のみであれば、テンポが上がるとする一方で、それを過剰に用いれば、同じことの繰り返しであるとの印象を観客に与え、ストーリーの焦点が失われると述べている。『ジョーズ』('75) では、サメ退治に至るまで、「サメを釣ろうとするが失敗 (障壁)」「サメに銛(もり)を打ちこもうとして失敗 (障壁)」「海中で毒薬を注射しようとするが失敗 (障壁)」「酸素タンクに引火させて退治 (突破)」というオブスタクル (障壁) を設けている[202]

コンプリケーション (複雑化)[編集]

コンプリケーション (complication) は、リアクションを引き起こすまで長い間(ま)のあるアクションである。予想できる展開が直後に起こらないため、観客の期待が高まる。コンプリケーションは非常に珍しい手法である。もし用いられていたとしても、それによって脚本の勢いという目的は必ずしも達成されていない[203]

シーン・シークエンス[編集]

リンダ・シーガーによれば、シーン・シークエンス (scene sequence) とは、アクションとリアクションの連なりによって作られる劇中の小さなストーリーである。この短いストーリーラインにも、「第1幕」「第2幕」および「第3幕」がある。シーン・シークエンスの作り出す勢いは強いものである。シーン・シークエンスは通常、3分から7分ほどであるが、10分を超えることもある [例: 『刑事ジョン・ブック 目撃者』 ('85) の第三幕]。多くの場合、シーン・シークエンスは、ストーリーの中で最も印象に残るパートとなる。シーン・シークエンスは、ミッドポイントの直後に配置されるケースが比較的多い。一方で、それには第二幕の進行を停滞させるリスクもある。また、第一幕に配置されたシーン・シークエンスは、セットアップで観客の注意を引いたり (例: 007シリーズ)、ターニング・ポイントまでの勢いを強めたりする[204]

シーン・シークエンスの例としては、『スターウォーズ』('77) の最後のバトルが挙げられる。また、映画監督のスティーヴン・スピルバーグはシーン・シークエンスを多用している。『ジョーズ』('75) では、サメ退治に至るまで、「銛(もり)を打ちこむ作戦」「海中で毒針を撃つ作戦」「酸素ボンベに引火させる作戦」の複数のシーン・シークエンスがあり、ストーリーの勢いを加速させている[205]

メタファー[編集]

ウェンデル・ウェルマンは次のように主張している: ファースト・ターニング・ポイント、ミッド・ポイント、およびセカンド・ターニング・ポイントの三つの大きな「バトル」は、一つの目に見える象徴、イメージ、態度または行動などの「共通シンボル」(controlling symbol)、すなわちメタファーによって、ストーリーがつながる。例えば『ブレイブハート』('95) では、父を亡くした主人公の少年に、ある幼女が葬儀で花を手渡す。20年後、今度は成長した主人公がしおれた花を恋人に手渡して求婚する。また、冒頭では殉死した父親が「うつぶせ」に寝かされ、ミッドポイントでの野戦の大敗で主人公が「うつぶせ」に倒れ、終盤には捕らえられ「うつぶせ」に縛られて処刑を待つ。シンボルが何か具体的なモノである場合には「マクガフィン」になる (例: ロード・オブ・ザ・リングシリーズ指輪)。シンボルによって、ばらばらの三大シーンがつながり、ストーリーがどこへ向かって動いているのかが明確になる[206]リンダ・シーガー英語版は、時間帯の異なるシーンであっても、何か共通するものが画面に出ることで、つながりが示されると述べている[207]

形式[編集]

1990年代初期以降、ストーリー展開の新しい形式が数多く生まれた[208]。アメリカの著名なスクリプト・コンサルタント、リンダ・シーガー英語版は、ストーリーの時間の流れによって、三幕構成を以下の形式に分類している[209]

  • 「直線型構成」 - 時間の流れ通り、始まり→中盤→結末と前進する。古代から現代に至るまで大半の脚本家が用いている。
  • 「反復型構成」 - 同じ状況を何度も繰り返す。ただし、繰り返しの間にもストーリーは進んでいる。『恋はデジャ・ブ』('93) など。
  • 「平行型構成」 - 複数のメインストーリーが無関係に進行し、ある時点で絡み合う。『マグノリア』('99)、『アメリ』('01) など。
  • 「らせん型構成」 - 同じ過去の出来事がフラッシュバックを繰り返しながら展開し、第三幕で克服される。『普通の人々』('80) など。
  • 「謎解き型構成」 - 第一幕で事件の発生、第二幕で事件の調査、第三幕で事件の解決に至る。『ユージュアル・サスペクツ』('95) など。
  • 「逆流型構成」 - 結末→中盤→始まりへとフラッシュバックを重ねて時間をさかのぼる。『メメント』('00) など。
  • 「循環型構成」 - 始まり→中盤→始まりと、永遠に同じことが繰り返される。現実では起こり得ない。『ビフォア・ザ・レイン』('96) など。
  • 「ループ型構成」 - 出来事の順序をシャッフルする。始まり→結末→中盤、結末→始まり→中盤→結末など。『パルプ・フィクション』('94) が典型。

別解釈[編集]

アメリカの脚本家、俳優のウェンデル・ウェルマンは、ディズニーのストーリー・アナリスト (当時)、ピーター・フラッドとディスカッションを重ね、以下のシンプルなステップを提案している[210]

  • 第一幕 - 主人公の主張 (最終目的)
  • 第二幕 - 主人公に反発するあらゆる主張の数々
  • 第三幕 - 書き手の主張

アメリカで最も成功した競売向け脚本家の一人であるブレイク・スナイダー英語版[211]は、弁証法になぞらえて、以下の3つの世界に映画のストーリーを分けている[212]

  • 第一幕 - テーゼ (正) ―― 古い世界
  • 第二幕 - アンチテーゼ (反) ―― 正反対の世界
  • 第三幕 - ジンテーゼ (合) ―― 新しい世界

フランスの脚本家であり映画監督のイヴ・ラヴァンディエ (Yves Lavandier) によれば、クライマックスは第二幕に含まれる。人間のあらゆる行動は、架空か現実かを問わず、3つの論理的な部分を含む。行動する前 (before the action)、行動する間 (during the action)、行動した後 (after the action) がそれである。クライマックスは行動の一部であるから、第二幕に含まれていなければならないと、ラヴァンディエは"La dramaturgie" (Writing Drama) において主張する。ラヴァンディエの主張する第三幕は、他の脚本理論英語版と比較して、クライマックスを含まない短いものである[213]。短い第三幕 (急速な解決) はまた、日本の伝統的な演劇理論英語版の基礎である「序破急」にも見られる。

日本における序破急 (三幕構成) は、雅楽舞楽に起源があり、浄瑠璃および歌舞伎などにおいて、中近世より伝統的に用いられてきた脚本構成である[214][215][216]現代日本において、しばしば脚本構成として教授される起承転結 (起承転合) は、漢詩における近体詩の構成法である[217]

NHKエンタープライズエグゼクティブ・プロデューサー (当時) である浜野高宏によれば、日本人以外では、「起承転結」を知っている映像コンテンツプロデューサーは稀であるが、三幕構成は日本人以外であれば、ほとんどのプロデューサーが知っており、国際的には、三幕構成がストーリーの組み立て方において主流となっている。このため、例えばドキュメンタリー作品の国際マーケットでは、ピッチ〔編者注: 企画の売り込み〕において、三幕構成に沿ってストーリー構成を説明できなければ、基本的なことを考えていない企画以前の段階であると評価される[10][注釈 40]

スウェーデンの映画研究者オラ・オルソン (Ola Olsson) によれば、映画には次の六幕がある: それらは「起点」「紹介」「進展」「衝突の頂点 (加速)」「解決」「退場」である。 オルソンのモデルは三幕構成に応用できる[218]。演劇のような幕間の無い映画においては、構成は、ドラマを分析するための分類でしかなく、映画は二幕、四幕、五幕、九幕にも分けられる。三幕構成が映画の構成として一般的であるのは、それを用いることにより、効果的なストーリー・テリングが可能となるためである[8][9]

歴史[編集]

近代演劇においては、イプセンの『人形の家』(1879)[219](『人形の家』は最初の近代戯曲である[220])、ブレヒトの『三文オペラ』(1928)[221]ワイルダーの『わが町』(1938)[222]カミュの『誤解』(1944)[223]T. ウィリアムズの『欲望という名の電車』(1947) [224]、およびオールビーの『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない』(1962) [225]などが三幕構成である 。

また、オペラにおいては、三幕構成の作品がバロック時代[226]から上演されており、17世紀には、パーセルの『ディドとエネアス』(1689) [227]など、および18世紀には、ヘンデル[228]の『エジプトのジュリアス・シーザー (ジュリオ・チェーザレ)』(1724)[229]などが、それぞれ全3幕で初演された。

オペラでは、続く古典派時代[230]には、オペラ改革を行ったグルック[231]の『オルフェオとエウリディーチェ』 (1762)[232]、ならびにモーツァルトオペラ・セリア [『イドメネオ』(1781) [233][234]など] および『後宮からの誘拐』(1782)[235]などに三幕構成が見られる。

ロマン派時代[236]以降のオペラとしては、ウェーバーの『魔弾の射手』(1820)[237]および『オベロン』(1826)[238]ワーグナーの『タンホイザー』(1845)[239]、『ローエングリン』(1850)[240]、『トリスタンとイゾルデ』(1865)[241]、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』(1868)[242]、および『パルジファル[243]ヴェルディの『アッティラ』(1846)[244]、『リゴレット』(1851)[245]、『椿姫』(1853)[246]、『シモン・ボッカネグラ』(1857)[247]、『仮面舞踏会』(1859)[248]、および『ファルスタッフ』(1893)[249]スメタナの『売られた花嫁』(1866)[250]サン=サーンス の『サムソンとデリラ』(1877)[251]フンパーディンクの『ヘンゼルとグレーテル』(1893)[252]プッチーニの『トスカ』(1900)[253]および『トゥーランドット』(1926)[254]、ならびにR. シュトラウスの『ばらの騎士』(1911)[255]、『影の無い女』(1919)[256]、および『アラベラ』(1933)[257]などが三幕構成に当たる。ワーグナー楽劇ニーベルングの指環』(1876) は、1日に3幕ずつ3日 (と序夜1幕) にわたって上演される[258]

オペレッタでは、J. シュトラウス2世の『こうもり』(1874)[259]およびレハールの『メリー・ウィドウ』(1905)[260]など、ならびにバレエでは、チャイコフスキーの『眠れる森の美女』(1890)[261]などが三幕構成を用いている。 なお、中近世以降の日本の伝統演劇においては、浄瑠璃、および歌舞伎などが「序破急」、すなわち三幕構成である[262][263]

このような西洋演劇の三幕構成は、映画の三幕構成の基礎の一つである。一方で、映画の三幕構成は、演劇のそれと異なり、映画を分析するためのツールの一種類にすぎない。同じ映画が観点によって三幕にも五幕 (またはその他) にも分けられる。それらの中から三幕構成が映画脚本のモデルとして一般化したのは、その有用性によるものである[8][9][264][265]

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脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「なお、本稿は国際共同製作のドキュメンタリーの分野についてまとめたものだが、その内容は普遍的であり、特にピッチに関しては映像コンテンツのそれ以外のジャンルについても参考となるであろう。」(同出典 p. 3.)
  2. ^ 日本語訳: 『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと-シド・フィールドの脚本術』 フィルムアート社、2009年。ISBN 4845909278
  3. ^ フィールドの教本のには、日本の映画監督3名が推薦文を寄せている。 / 第1巻: 山田洋次「拙いシナリオからは、どんな名監督の手にかかっても、良い作品は生まれない。徹底したディテールと構造の考察が、傑作をうむことを教えてくれる。」 / 犬童一心「勉強になりました。クールに時に暑く書かれた脚本の名指南書」 / 第2巻: 大林宣彦「言葉で考える人間が、絵で伝えるものが映画だ。言葉と映像との葛藤が劇を生み、脚本術こそが映画の核となる。面白く、劇的な一冊だ。」 / 犬童一心「脚本は映画の地図、作戦計画書、そして魂。」
  4. ^ フィールドのScreenplayの日本語版では、「対立 (衝突)」は「葛藤」と翻訳されている (#フィールド pp. 17, 20.)。一方で、原語は "confrontation" である (#paradigm)。この項目は、原語により近い訳語を採用している。
  5. ^ シド・フィールドは、狭義の三幕構成に限らず、「すべてのストーリーが持っている共通点」としている (#フィールド p. 15.)。
  6. ^ 「このことは、プロットポイントが脚本上に二つしか存在してはいけないということを言っているのではない。……これら二つのプロットポイントを予め考えておけば、それらによってストーリーラインがしっかりと固定される。……完成した脚本にはだいたい十から十五個のプロットポイントが存在する。そのほとんどが第二幕にある。」(#フィールド p. 169.)
  7. ^ フィールドは「プロットポイント」という表現を用いている (#フィールド pp. 22 f.)。ハリウッドでは「プロットポイント」と呼ぶほうが主流である (#ウェルマン p.143.)。ただし、トロティエ (Trottier)、シーガー、およびスナイダーらのテキストは、「ターニング・ポイント」と呼称している。本項目は、トロティエのテキストに基づいた英語版の記事から発展したため、現在のところ「ターニング・ポイント」という呼称を継承している。
  8. ^ 短い第三幕が1990年代後半以降の主流になっている (#ウェルマン p. 194.)。例えば、『アナと雪の女王』('13) は、3:6:1という構成であり、第三幕の長さが1:2:1モデルの半分に満たない (後述)。
  9. ^ 「ほとんどのハリウッド映画は二時間ほどの長さである。外国語映画は〔も〕……多くの場合、二時間を少し過ぎるか、それよりも短いかという長さだ。これが標準的な長さで、今日、製作者とプロデューサーの間でかわされる契約書には、映画は二時間八分以内で納入されなければならないと書かれていることが多い。」(#フィールド p. 18.)
  10. ^ フィールドは、あるときは「『プロットポイント I 』が35ページ目に来てしまった」と受講生から深夜に電話で泣きつかれ、またあるときは、パリのワークショップで会場から「あなたは悪魔だ。構成なんか使っても脚本が書けるわけがない」と罵倒された。このときはフィールドが「では、皆さんはどうやってストーリーを組み立てているのですか?」と尋ねたところ、曖昧で釈然としない答えしか返って来なかったという (ここまで。#フィールドII pp. 32 f.)。
  11. ^ スナイダーの開発した、三幕構成の空白を埋める15分割のテンプレートのこと (#スナイダー pp. 111 ff.)。
  12. ^ BS2は、フィールドのモデルとは異なり、他の教本から引用されていない。
  13. ^ シド・フィールドのテキストでは、これに替わって、「何についてのストーリーなのか」になっている。
  14. ^ シド・フィールドは、第一幕の全体の役割を「セットアップ」としている (#paradigm)。一方で、リンダ・シーガー、ブレイク・スナイダーおよびウェンデル・ウェルマンは、冒頭のおよそ10分間を「セットアップ」と呼んでいる (#シーガーII pp. 44, 53., #スナイダー p. 117., #ウェルマン p. 158.)。論者によって同じ用語に意味の「ねじれ」のあることに注意が必要である。
  15. ^ ブレイク・スナイダー英語版は、主人公に足りないものを「直すべき6つのこと」(6つでなくともよい) と呼び、それを「見せる」ことを重視している (#スナイダー p. 118.)。
  16. ^ 講演者マシュー・ルーン (Matthew Luhn) は、ピクサー・アニメーション・スタジオのストーリー・アーティスト (講演当時) (#ルーン)。
  17. ^ 「敵対者は必ずしも悪者ではない……。対立、衝突、障害、主人公にとって反対の理論を唱えること、そういったものを提供する者が、脚本における『敵対者』だ」(#ウェルマン p. 62.)
  18. ^ ラテン語では「イン・メディアス・レス」(In medias res) と呼ばれ、古典的な手法の一つである。
  19. ^ リンダ・シーガー英語版は、テーマを表現する台詞について、シナリオのどの部分にあってもよいとする一方で、「たいていは中盤か第二幕の終わりにくる」としている。そうすれば進行中のストーリーの意味が分かりやすくなるためという (ここまで。#シーガー p. 125.)。
  20. ^ 『アナと雪の女王 公式パンフレット』 今西千鶴子、東和プロモーション、2014年3月14日(Japanese)。「『恐れ』対『愛』という大きなテーマがあるわ。(ジェニファー・リー、脚本・共同監督)」
  21. ^ ファースト・ターニング・ポイント (プロットポイント I ) は、「第3の10ページ」に含まれる (#フィールドII pp. 176, 180.)。
  22. ^ 日本語版では「15分」となっているが、原文では「25分」であり、前者は誤植である。
  23. ^ シド・フィールドScreenplayの日本語版では、「対立 (衝突)」は「葛藤」と翻訳されている (#フィールド pp. 17, 20.)。一方で、原語は "confrontation" である (#paradigm)。この項目は、原語により近い訳語を採用している。
  24. ^ 1日目の夜: アナ出発 - Let It Go (pp. 35-37.)。 2日目の昼: アナの馬が逃走 (p. 38.)。 2日目の夜: アナ、クリストフと出会う - 狼の襲撃 (pp. 38-51.)。 3日目の昼: オラフ登場 - アナの馬が宮殿に帰る - アナ、氷の城に到着 (pp. 51- 63.)。ミッドポイント (後述): アナ、エルサに会って心臓を撃たれる (pp. 64-70.)。 3日目の昼; アナ、巨人に襲われる (pp. 71- 79.)。3日目の夜: トロールの集落 - クリストフ、アナを宮殿に運ぶ (pp. 80-88.)。4日目の朝昼: エルサの城が陥落 - アナ、宮殿に戻る (pp. 88-92.)。(ここまで。Jennifer Lee, FROZEN, the Walt Disney Animation Studios, 2013-09-23.)
  25. ^ 「"ピンチ" という名前は、……アクションを進展させ、ストーリーをしっかり挟んで結びつけ、脱線させないように前進させるポイントという意味を込めたのである」(#フィールドII pp. 210 f.)
  26. ^ スナイダーの例に挙げる『キューティ・ブロンド』('01) など (#スナイダー p. 124.)。
  27. ^ ミッドポイントの無い場合もある (#シーガーII p. 67.)。
  28. ^ ブレイク・スナイダー英語版によれば、主人公はミッドポイントで「見せかけの」絶好調 (または絶不調) になる。勝利した場合はオール・イズ・ロスト (後述) で「見せかけの」敗北をし、敗北した場合はその逆になるという (ここまで。#スナイダー pp. 126-128.)。
  29. ^ ここではハッピーエンド (happy ending) が想定されている。
  30. ^ ウェンデル・ウェルマンは、エンディングからではなく、まず中間部の3つの大転換シーンを決めることを、新しい公式としている。それにより、残りのプロット構成は楽しく容易な作業になるのだという (ここまで。#ウェルマン pp. 143 f.)。
  31. ^ 「覚えておかなければならない最も重要なことは、エンディングはオープニングから生まれる、ということである。ある人がアクションを起こし、そのアクションがどのように帰結されるのかということがストーリーの流れなのである。」(#フィールド pp. 121 f.)
  32. ^ 原文では「クライマックス」
  33. ^ 原文では「クライマックス」
  34. ^ ベルリンの壁崩壊の数か月前に西ベルリンで行われたシド・フィールドのワークショップでは、受講生50人のうち48人が、死、自殺、または混乱で終わる脚本を書いた。「今、われわれは時代が大きく転換する歴史的瞬間に直面し、どんな未来を創造したいかを表現するまたとないチャンスではないか」とフィールドは提案した。その提案は失敗に終わり、悲観的な結末のほうがリアルなストーリーであるとして、受講生のほとんどに拒絶された。フィールドはこのエピソードに対して、主に過去への執着と未来への恐怖によるものであるとし、「未来は自らの手で作るものだ」と述べている (ここまで。#フィールドII pp. 245 f.)
  35. ^ ウェンデル・ウェルマンは、主人公と敵対者の衝突のシーンを、「対峙」「戦い」「難題」または「試練」などといった言葉でも表している (#ウェルマン p. 22.)。
  36. ^ ウェルマンが例に挙げる『ミート・ザ・ペアレンツ』('00) および『あの頃ペニー・レインと』('00) では、主人公がほとんどのシーンで敵対者と接触している (#ウェルマン p. 125.)。
  37. ^ 現在のメジャーな作品の中には、誤った選択を2回に留めているものもあるが、登場人物の魅力でストーリーを進行させる最先端の作品では、悪い選択の回数はたいてい3回かそれ以上である (#ウェルマン pp. 210 f.)。
  38. ^ 「もちろんこれは説明のために非常に単純化して書いている。もしすべてのシーンがただクライマックスに向かい、一直線……に観客を導くとしたら、ストーリーは機微と深みを欠いてしまう。」(#シーガーII p. 108.)
  39. ^ この箇所は、原文ではバリアではなく、オブスタクル (obstacle) となっている (Linda Seger, Making a Good Script Great, 3rd Ed, Silman-James Press, 2010.)。
  40. ^ 「なお、本稿は国際共同製作のドキュメンタリーの分野についてまとめたものだが、その内容は普遍的であり、特にピッチに関しては映像コンテンツのそれ以外のジャンルについても参考となるであろう。」(同出典 p. 3.)

出典[編集]

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参考文献[編集]

関連項目[編集]

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