三体II:黒暗森林

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三体II:黒暗森林
著者 劉慈欣
原題 三体II:黑暗森林
中国
言語 中国語簡体字
シリーズ 中国SF基石叢書
ジャンル SF小説
出版社 重慶出版社
出版日 2008年
出版形式 単行本(ソフトカバー、約195mm×135mm)
ページ数 470
ISBN 9787536693968
前作 三体
次作 三体III:死神永生

三体II:黒暗森林』(さんたい に こくあんしんりん)は、劉慈欣による小説である。中国のSF地球往事三部作の第二弾であり、2008年5月に重慶出版社より出版された。プロローグと3章(面壁者・呪文・黒暗森林)より構成される。

あらすじ[編集]

地球三体組織(Earth Three-body Organization, ETO)の精神的リーダーである葉文潔は、ETOメンバーとして逮捕される前に、娘の大学時代のクラスメートだった羅輯と出会った。そして葉文潔は羅輯に宇宙社会学——つまりもし宇宙に数知れない文明があるとしたら、その文明たちにどんな社会が成立つか——を研究しないかと勧めた。その後、彼女は羅輯に宇宙社会学の二つの公理を教えた。:1. 文明は生き残ることを最優先とする。 2. 文明は成長し拡大するけど、宇宙の総質量は一定である。この二つの公理のほか、彼女は羅輯に二つの、興味をそそる言葉: 猜疑連鎖技術爆発をヒントとして与えた。この会話を「目撃」したのは、恐らくその場にいる茶色の蟻と、どこかに潜んでいる「智子」(三体文明に一個の陽子で造られたスーパーコンピュータ)だけだった。この会話の後、羅輯はETOの残党に命を狙われることになったが、運がよくETOによる暗殺から逃れた。

ETO鎮圧で三体文明の侵略計画を明らかにした地球人類社会は、危機紀元に入った(危機元年=西暦201X年)。人工冬眠などの素晴らしい技術が開発されるものの、智子による妨害のせいで、素粒子物理学などの基礎科学のさらなる発展は最早不可能となった。民衆の懐疑論敗北主義を無視した各国政府は、来るべき三体人の侵略に備えて、準備をし始めた。国連は、惑星防御理事会(Planetary Defense Council, PDC)を創立した。各大国もこのころ、宇宙艦隊の建設と宇宙軍兵士の養成に着手した。しかし、三体文明は「智子」使って、地球人の様々なコミュニケーションや文書を盗聴・閲覧できて、三体人にとって地球人の戦略は開かれた箱のようなものだ。

各国政府は時間をかけて、以下の事実を究明した:長い間進化してきた三体星系の生物は、地球生命体がコミュニケーションを果たすための器官に引き替え、脳が思考・脳波を、可視光線を含める電磁波に変えて放出する機能を有する。彼らの思考は常に周りに晒されて、意思伝達も即座に行える。それゆえ、彼らにとって、「思う」と「言う」とは類義語であり、陰謀や詐欺などの単語は存在しない。この知識を手に入れたPDCは、地球人と三体人の思考方式の違いを利用するよう、面壁計画を考え出した。面壁計画はまず、世界各地から数人の適切者(「面壁者」と呼ぶ)を選抜し、彼らに、一人で三体人の侵略を負かす計略を練る責務を授ける。地球のあちこちは三体文明の「智子」の監視下に置かれているものの、人間のは侵入不可能である。面壁計画によって、面壁者は強大な権限を持ち、地球戦争資源の一部を調達できる。しかし彼らは自分の行動の本意を誰にもわからないように紛らさなければならない。地球は科学技術面で劣るけど、計略をうまく巡らせば三体人を罠に縮れるかもしれない、とこの計画の思案者は思っていた。

羅輯はあまりの驚愕と不快に、自分が四人の面壁者の一人に選ばれたことを知らされた。世間に無頓着、女と戯れることが好きな羅輯は、自分に与えられたそんな使命に何の共感もなく、その指名を辞退しようとした。でも、そうはいかない。「その辞退も面壁者としての騙しじゃないか」と疑われたから。面壁者の地位を辞退しようとも辞退できない羅輯は、自分が新たに得た権限を最大限に利用すると決意した。彼はPDCに、自分の嫁探しの手伝いを要求した。史警官の助力で彼は自分のドリームラバーを探し出し、とある世間離れた所で厳しい警備を持ちながら嫁さんとのんびりとした生活を送った。

三体文明は面壁計画と対抗すべく、三体文明の人間協力者・ETOの残党に助けを求めた。そのETOの残党に面壁者たちの相手・破壁人を選び、破壁人に「面壁者の計略を看破し、彼らの策を無効化にする」と指示した。羅輯以外の面壁者3人にはそれぞれ破壁人を充てたが、羅輯だけは「彼は自分自身の壁を破って主と直接対決する」と言って、破壁人を充てなかった。

面壁者その一・元アメリカ合衆国国防長官テイラーは素早く彼の破壁人に看破された。彼は表にマクロ原子核融合球電を、三体と決戦する時の艦隊の武器に転用しようとの姿勢を見せて、同時に宇宙軍で自己犠牲精神のある現代版神風特攻隊を培おうとしたが、実は彼の裏の計画は、まず球電武器で地球艦隊を全滅・量子幽霊にし、それから量子幽霊に三体艦隊を攻撃させる。面目が無くなった彼は面壁者羅輯の隠居所を訪れた後、自殺した。

面壁者その二・マニュエル・ロドリゲスは、ウゴ・チャベスを彷彿させるとある南米国家の元大統領である。彼はどんな国家でも簡単に入手できる技術を巧みに武器生産に活用し、ゲリラ戦で米軍の侵略を見事に挫いた。面壁者その三・ビル・ヒアンスはイギリスの政治家・元科学者である。彼は妻・山杉恵子との共同脳科学研究で画期的な研究結果を発見、それでノーベル物理学賞ノーベル生理学・医学賞とに二重ノミネートされた。この二人の計画は当時の人類のテクノロジーでは無理なものがあった(核融合高性能計算機がない)ので、彼らは自分の計画に必要な技術が生まれるまで人工冬眠すると決めた。

羅輯はあの楽園で隠遁生活を5年続いたあと、PDCに面壁者としての仕事を強要された。彼の嫁と娘はPDCの決議で人工冬眠され、ただ彼に「世界の終りで貴方を待つ」というノートを残された。それより前に、宇宙塵を通った三体艦隊の航跡はハッブル望遠鏡 II.で初めて観測され、三体艦隊への懐疑論が止んだ。

仕事についたあと、羅輯は面壁人に選ばれたあとの自分がずっと自分の選ばれし訳を考えることに気づいた。全てはあの葉文潔との宿命的な会話から始まっているはずだ。数ヶ月瞑想したあと、羅輯はある夜突然、宇宙の文明に関わる暗い新事実を発見してしまった。自分の仮説を立証するために、羅輯は“呪文”=187J3X1という遠い星系の位置情報を、太陽の増幅反射機制を使って宇宙へ送信しようという提案をPDCに提出した。“呪文”が発信されたから間もなく、羅輯はETOが三体人の援助を受けて開発したDNA誘導式生物兵器(普段は普通のインフルエンザに見せるが、特定の人のDNAを検出したら致死性ウイルスに変わるもの)に感染されて、人工冬眠を余儀なくされた。羅輯はその前に、“呪文”が効かないうちに自分を起こさないでと要求した。

羅輯が冬眠されてから4年経って、危機紀元12年。別の宇宙塵を通った三体艦隊の航跡に、1000隻の戦艦以外に、また10個の加速している小さな探知器が発射されたとのことが解析された。太陽系と三体星系との距離は4光年であるため、探知器が発射されたのは4年前のことだ。逆算すると、探知器発射は正に羅輯が“呪文”送信を提出した日のことだったことがわかった。

ロドリゲスとヒアンスにとって必要なテクノロジーは8年後・危機紀元20年に出現したので、彼らは同時に人工冬眠から起こされた。しかしロドリゲスは起こされてから間もなくETOの破壁人に看破された。彼の狙いは、水星水素爆弾を配置して爆発させることにより、水星の公転を止めてそれを太陽に突っ込んで、最終的に太陽系を壊滅させることを可能にすることである。それで三体文明を威嚇する。

ヒアンスは引き続き、思想鋼印機器の発明に務めた。たとえば「人類必勝」という命題を脳裏に押印した人間は、どんな不利な状況に置かれても「人類必勝」と信じ続ける。宇宙軍内では当該軍人自らの申請により思想鋼印を受けることができる。このような思想鋼印を受けた人々は鋼印族と呼ばれる。しかし、実はヒアンス自身は敗北主義者であり、彼は密かに思想鋼印機器に保存された「人類必勝」という命題を「人類必敗、地球から逃げよ」に書き換えた。

危機紀元205年に人工冬眠から起こされた羅輯が見た世界は一変した。人類社会は第二次フランス革命で、対三体戦備により起こった、半世紀をも続き三分の二の世界人口を死亡させた大不況を乗り越え、軍備増強より民生改善に力を注ぐことを決めた。しかし、第二次フランス革命後科学技術が革命前より順調に発展され、核融合炉などのテクノロジーの進歩も遂げられた。ほぼ無限なエネルギー・食糧供給を得た人類は再軍備を始め、2000隻の戦艦にも及ぶ「三大艦隊」(亜細亜艦隊・北米艦隊・欧州艦隊)を成立した。人類社会は危機の終焉と人類の優勢を信じた。だから面壁計画を続ける必要も無くなられ、羅輯の面壁者としての権限も剥奪された。

三体艦隊との戦いへの増援として危機紀元初年に人工冬眠された中国人(のち亜細亜艦隊人)の宇宙軍将校・章北海は、この時起こされて、自然選択という名の巡洋艦の執行艦長に指名された。艦隊上層部は、隠れている敗北主義的な鋼印族たちが三体艦隊と戦う時に宇宙戦艦をハイジャックし、宇宙へ逃亡することを恐れて、章北海のような思想鋼印が発明される前に冬眠された将校を艦長に起用した。章北海の仕事は、そんな不審な挙動を止めることである。三体艦隊の探知機と初めて接触の備えて、「三大艦隊」は2000隻の戦艦を木星基地に集結した。

危機紀元前に生まれの物理学者・丁儀は二人の艦隊事務官と一緒に、雫の形をしている三体探知器(以下「水滴」とも呼ぶ)を考察し、その探知機の完璧に滑らかな表面は強い相互作用で互いに結合し合っていることを明らかにした。そして「水滴」は稼働し始め、人類の艦船を一隻一隻、考えられないスピードで破壊した。20分にも及ばないうちに、三大艦隊の2000隻の戦艦は、成功に逃走した数隻を除いて全滅した。これは末日の戦いと呼ばれた。自然選択は成功に逃走した戦艦の中の一隻である。逃走した戦艦は二組に分けて互いに全く逆の方向へ行った。

リアルタイムで艦隊の敗北を観た人類社会は取り乱して、崩壊しかけた。より恐ろしいことに、成功に逃走した戦艦同士で、暗い内ゲバが行われた。限られた核燃料とスペア部品しか持っていない戦艦同士は猜疑連鎖に屈され、他の戦艦の燃料と部品を奪おうと攻撃し合っていた。

その一年後、天体観測から187J3X1星系がわけわからず破壊されたことを確認されたあと、羅輯の面壁者としての権限は回復された。戦艦同士での暗い内ゲバは羅輯の仮説を立派に立証した。羅輯によれば葉文潔が提示した二つの概念は以下のものである: 猜疑連鎖:たとえば宇宙に文明Aと文明Bが存在する。文明Aを「善意の文明」(ほかの文明とは友好的な文明)とする。文明Aが文明Bを見つかったとき、必ずそう思う。「文明Bは善意の文明か、悪意の文明か」と。文明Aが文明Bを「悪意の文明」(ほかの文明を破壊する文明)と認識したら、文明Bを殲滅することにする。文明Aが文明Bを「善意の文明」と認識したら、文明Bと共に発展することにする。でも、文明Aは文明Bに「善意の文明」と認識されるとは限らない。たとえ文明Aは文明Bに「善意の文明」と認識されても、文明Aにとって、「文明Aが文明Bにどう認識されること」についての認識が文明Bにどう認識されるかは認識できない……。人間同士は同じ種なので猜疑を解くのは簡単だが、若干光年を隔てて種さえ違う異星人同士なら猜疑が解ける前に、戦艦同士での暗い内ゲバのようなことはすでに起こったかもしれない。 技術爆発:たとえば文明Bをか弱い文明とする。そうなると、文明Aは文明Bを放っておくことができるのか?そうするわけにはいかない。技術爆発で文明Bの科学技術が文明Aより優れるものになる可能性もある。地球生命は数十億年の歴史を有するが、現代の科学技術の歴史は約300年である。宇宙歴史レベルから見ればまさに技術爆発である。だから文明Aにとって、討たれる前に文明Bを討つのはいい選択である。 そして羅輯はこういう結論を導いた。「宇宙は黒い森(黒暗森林)であり、文明たちはそこに住む狩人である。自分の位置を露わにされた狩人は、攻撃されて死ぬことになる。」

しかしその時「水滴」は既に太陽に回る公転軌道に入った。「水滴」のジャミングで太陽の増幅反射機制はもう使えなくなった。羅輯は公転軌道に配置された水素爆弾を爆破させて油膜を宇宙に広げて三体の侵攻艦隊の航跡を突き止める作業に従事すると偽って、三体人に気づかれないうちに、シンクロした爆破により太陽フレアを起こして恒星レベルのエネルギーで三体星系の座標を符号化した情報を宇宙に発信することの準備を整えた。

その後、彼は葉文潔の墓の前で(智子の仲介で)三体文明と対決した。三体星系の座標を宇宙に発信すると威嚇して、彼は三体文明の指導者と地球侵攻を停止する合意に達した。「水滴」も太陽系から離れ、三体の地球侵攻艦隊も前進方向を変えざるを得なくなった。合意により、危機紀元は終り、人類社会は威嚇紀元に入った。

関連項目[編集]