ヴォルフハルト・パネンベルク
|
Wolfhart Pannenberg
ヴォルフハルト・パネンベルク |
|
|---|---|
| 生誕 | 1928年10月2日 (現ポーランド) |
| 出身校 | ベルリン大学、ゲッティンゲン大学 ハイデルベルク大学 |
| 職業 | 神学者 大学教授(組織神学) ヴッパータール神学大学 (1958 - 1961) マインツ大学 (1961 - 1967) ミュンヘン大学(1967 - 1994) |
| 宗教 | キリスト教 |
| 宗派 | プロテスタント |
ヴォルフハルト・パネンベルク(Wolfhart Pannenberg, 1928年10月2日 - )はドイツの神学者。ルター派出身で、エーバーハルト・ユンゲル、ユルゲン・モルトマンとともに、カール・バルト、ルドルフ・カール・ブルトマン以後の世代を代表する。希望の神学の流れを汲みつつ、独自の歴史の神学を展開した。
目次 |
経歴 [編集]
シュテッティン(現ポーランド領シュチェチン)に生まれる。家庭は特にキリスト教の雰囲気ではなく、また、10代の頃からフリードリヒ・ニーチェの思想に親しみ、キリスト教に対して批判的な考えを持っていた。その後、ニーチェが批判するキリスト教とは異なるキリスト教を発見し、神学を志すようになった。
ベルリン大学、ゲッティンゲン大学、ハイデルベルク大学で神学を学び、バーゼル大学のバルトのところに留学もしている。ハイデルベルク大学では、フォン・ラートの門下生たちと「パネンベルク・グループ」を形成する。メンバーは、パネンベルクのほか、R・レントルフ、T・レントルフ、ウィルケンス、K・コッホ、D・レスラー、M・エルゼなど。
パネンベルク・グループによる論文集『歴史としての啓示』以来、パネンベルク独自の歴史神学を展開しているが、同時に神学の学問性という問題にも取り組み続け、新しい自然神学の可能性を探究している。
1953年『ドゥンス・スコトゥスの予定説』で学位取得後、ハイデルベルク大学の講師となり、その後、ヴッパータール神学大学 (1958 - 1961)、マインツ大学 (1961 - 1967)、ミュンヘン大学 (1967 - 1994) で組織神学教授を務める。
背景 [編集]
思想的出発点にはバルト批判という動機が認められるが、その後はバルトに対立する思想を展開したわけではない。神学者としては、バルトのほかに、フリードリヒ・ゴーガルテン、ゲルハルト・フォン・ラートの影響も受けている。
同世代の神学者であるユルゲン・モルトマンとは、ヴッパータール神学校で互いに影響を与え合ったが、両者の思想には共通点よりも相違点の方が目立つ。共通点は、終末論の強調という点においてヘーゲル主義とブロッホの影響が見られるところであり、相違点はモルトマンがパネンベルクほど歴史の神学を重視しなかったことなどである。また、モルトマンはいわゆる組織神学者ではないのに対して、パネンベルクは自ら明確に組織神学者を名乗った。
哲学の造詣も深く、ドイツ観念論については本格的な研究をしており、ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルの影響は随所に見られる。また、カール・レーヴィット、カール・ヤスパース、ニコライ・ハルトマンからも直接的に影響を受けている。
思想 [編集]
歴史としての啓示 [編集]
パネンベルクによれば、啓示は神の間接的自己啓示である。間接的であるため、それは神自らが直接的に顕現するのではなく、神の歴史行為を通して示される。具体的な歴史の出来事そのものが神の啓示となっているのである。
下からのキリスト論 [編集]
パネンベルクは、イエスを最初から神の子として見るのではなく、歴史的な人物としてのイエスの中に神性を認識していくという方法を採る。その際、イエスの復活が鍵となる。復活は信仰されるべき事柄である以前に、歴史的な事実でなければならない。
神学的人間学 [編集]
パネンベルクは、哲学的人間学の成果を自らの神学において活用している。しかし哲学とは異なり、神学の立場から人間を歴史的存在として捉えている。
科学と神学 [編集]
パネンベルクは、科学哲学の成果を取り入れつつ、神学の学問性という問題に取り組んでいる。神学は信仰者にしか理解できない学問ではなく、普遍妥当性をもった科学的な学問であることを示そうとした。
著書 [編集]
- 『ドンス・スコトゥスの予定論』1954年、博士論文(邦訳なし)
- 『歴史としての啓示』(編著)1961年。パネンベルク初期の思想を知る上での必読書とされている。バルトやブルトマンとは対照的に普遍史を重視した。釈義的考察を基盤として、神の自己啓示は特殊な啓示の出来事によって直接的にもたらされるのではなく、歴史全体を通しての神の行為としてもたらされるという説を展開した。(大木英夫、近藤勝彦ほか訳、聖学院大学出版会、1994年)
- 『人間とは何か』1962年(熊沢義宣・近藤勝彦訳、白水社、1975年)
- 『キリスト論要綱』1964年。人間イエスについての歴史的認識から出発して復活を媒介として神性の認識へと昇華させている。(麻生信吾、池永倫明訳、新教出版社、1983年)
- 『組織神学の根本問題』1967年(部分訳:近藤勝彦、芳賀力訳、日本基督教団出版局、1984年)
- 『神学と神の国』1971年(近藤勝彦訳、日本基督教団出版局、1972年)
- 『科学理論と神学』1973年。科学哲学、解釈学との関係において、神学の学問性について考察している。この問題意識は以後も引き継がれている。(邦訳なし)
- 『神の思想と人間の自由』1974年(座小田豊、諸岡道比古訳、法政大学出版局、1991年)
- 『信仰と現実』1975年。キリスト教信仰が普遍性を持ち得ない現代社会における神学の意義について論じている。(佐々木勝彦訳、日本基督教団出版局、1990年)
- 『倫理学と教会論』1977年(前半訳:『キリスト教社会倫理』大木英夫、近藤勝彦ほか訳、聖学院大学出版会、1992年;後半訳:『現代に生きる教会の使命』大木英夫、近藤勝彦ほか訳、聖学院大学出版会、2009年)
- 『人間の使命』1978年(邦訳なし)
- 『組織神学の根本問題 第二巻』1980年(邦訳なし)
- 『神学的観点における人間学』1983年(『人間学』佐々木勝彦訳、教文館、2008年)
- 『キリスト教的霊性』1986年(『現代キリスト教の霊性』西谷幸介訳、教文館、1987年)
- 『形而上学と神の思想』1988年(座小田豊、諸岡道比古訳、法政大学出版局、1990年)
- 『組織神学 第一巻』1988年。神学とは何か、神論、三位一体論
- 『組織神学 第二巻』1991年。創造論、人間論、キリスト論
- 『組織神学入門』1991年。上記『組織神学』への導入として書かれた小著。(佐々木勝彦訳、日本基督教団出版局、1996年)
- 『組織神学 第三巻』1993年。聖霊論、教会論、終末論
- 『自然の神学に向かって――科学と信仰についての試論』1993年(『自然と神』標宣男、深井智朗訳、教文館、1999年)
- 『倫理学の根拠』1996年。世俗化した社会において倫理の根拠をどこに求めるのか、というテーマで神学的、哲学的考察をしている。(『なぜ人間に倫理が必要か』佐々木勝彦、濱崎雅孝訳、教文館、2003年)
- 『神学と哲学』1996年。神学者の立場から西洋哲学史を概観している。特にドイツ観念論と哲学的人間学の説明が詳しい。(邦訳なし)
- 『ドイツにおける近代福音主義神学の問題史』1997年(邦訳なし)
- 『組織神学論集 第一巻 哲学・宗教・啓示』1999年
- 『組織神学論集 第二巻 自然と人間――創造の未来』2000年
- 『組織神学論集 第三巻 教会とエキュメニカル運動』2000年
- 『信仰の喜び』2001年。
- 『倫理学論集』2004年。
- 『類比と啓示』2007年。教授資格論文(1955年)に新たに二章を加筆した著書。神認識における類比概念についての議論を批判的に考察している。
参考文献 [編集]
- 宇田進『希望の神学』「新キリスト教辞典」いのちのことば社、1991年
- 東京神学大学神学会編『キリスト教組織神学事典』教文館、1972年
- Bradshaw, Timothy, 1988. Trinity and ontology: a comparative study of the theologies of Karl Barth and Wolfhart Pannenberg. Edinburgh: Rutherford House Books.
- Case, Jonathan P., 2004, "The Death of Jesus and the Truth of the Triune God in Wolfhart Pannenberg and Eberhard Jüngel," Journal for Christian Theological Research 9: 1–13.
- Fukai, Tomoaki, 1996. Paradox und Prolepsis: Geschichtstheologie bei Reinhold Niebuhr und Wolfhart Pannenberg. Marburg
- Grenz, S. J., 1990. Reason for Hope: The Systematic Theology of Wolfhart Pannenberg. New York: Oxford.
- --------, "Pannenberg on Marxism: Insights and Generalizations," The Christian Century (30 September 1987): 824–26.
- --------, "Wolfhart Pannenberg's Quest for Ultimate Truth," The Christian Century (14–21 September 1988): 795–98.
- Lischer, Richard, "An Old/New Theology of History," The Christian Century (13 March 1974): 288–90.
- Don H. Olive, 1973. Wolfhart Pannenberg-Makers of the Modern Mind. Word Incorporated, Waco, Texas.
- Page, James S., 2003, "Critical Realism and the Theological Science of Wolfhart Pannenberg: Exploring the Commonalities," Bridges: An Interdisciplinary Journal of Philosophy, Theology, History and Science 10(1/2): 71–84.
- Shults, F. LeRon, 1999. The Postfoundationalist Task of Theology: Wolfhart Pannenberg and the New Theological Rationality. Grand Rapids, MI: Eerdmans.
- Tipler, F. J., 1989, "The Omega Point as Eschaton: Answers to Pannenberg's Questions for Scientists," Zygon 24: 217–53. Followed by Pannenberg's comments, 255-71.
- --------, 1994. The Physics of Immortality: Modern Cosmology, God and the Resurrection of the Dead. New York: Doubleday.
- --------, 2007. The Physics of Christianity. New York: Doubleday.
- Tupper, E. F., 1973. The Theology of Wolfhart Pannenberg. Philadelphia: Westminster press.
- Woo, B. Hoon, 2012. "Pannenberg’s Understanding of the Natural Law," Studies in Christian Ethics 25 (3/4): 346–366.
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||