ヴォスパー・ソーニクロフト・フリゲート
ヴォスパー・ソーニクロフト・フリゲート(英: Vosper Thornycroft Frigate)は、VT グループが開発した輸出用フリゲート/コルベットの総称。1960年代以降、様々な設計の多数の艦が各国で就役している。
目次 |
Mk.1コルベット [編集]
魚雷艇など小型艇の建造で知られていたヴォスパー社は、1950年代より、より大型の戦闘艦の建造に乗り出した。これによって、最初に開発されたのが、ヴォスパーMk.1 コルベット(英: Vosper Mk.1 Corvette)である。
ガーナ海軍がクロマンツェ級コルベット(英: Kromantse class corvette)として1964年より2隻を就役させている。一方、リビア海軍も準同型艦1隻を取得し、「トブルク」(C01、英: Tobruk)として1966年4月より運用している。これらはいずれも、基本的には砲艇であるが、沿岸において最低限の対潜戦闘を展開することもできるように装備されている。
| 艦番号 | 艦名 | 就役 | 備考 | |
|---|---|---|---|---|
| クロマンツェ級( |
||||
| F17 | クロマンツェ(Kromantse) | 1964年7月 | ||
| F82 | オトボ(Otobo) | 1965年5月 | ||
| 「トブルク」( |
||||
| C01 | トブルク(Tobruk) | 1966年4月 | ||
Mk.3コルベット [編集]
| 「ドリナ」(F81) | |
| 「オトボ」(F82) | |
1966年、ヴォスパー社は、軍艦建造の老舗であったジョン・アイ・ソーニクロフト・アンド・カンパニー・リミッテッド社と合併し、ヴォスパー・ソーニクロフト社となった。合併後、最初に開発されたのは、Mk.1コルベットを拡大した600トン級のコルベットで、これはヴォスパー・ソーニクロフトMk.3 コルベット(英: Vosper Thornycroft Mk.3 Corvette)と呼ばれた。Mk.3コルベットはナイジェリアによって採用され、ドリナ級コルベット(英: Dorina class Corvette)として、1970年より2隻が建造されて、1972年にそろって就役した。ただし、1番艦「ドリナ」(F81)は1987年4月16日に事故によって沈没した。
| 艦番号 | 艦名 | 起工 | 就役 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| F81 | ドリナ(Dorina) | 1970年1月 | 1972年6月 | 1987年4月16日、事故によって沈没。 |
| F82 | オトボ(Otobo) | 1970年9月 | 1972年11月 |
Mk.5フリゲート [編集]
一方、ヴォスパー・ソーニクロフト社は、これらのコルベットと同時に、まったく新しい設計に基づくフリゲート・シリーズの開発を行なっていた。このフリゲートを最初に発注したのがイランであり、1,000トン級のヴォスパー・ソーニクロフトMk.5フリゲートの設計をもとにして、サーム級フリゲート(英: Saam class frigate)を建造し、1971年から1972年にかけて4隻が就役した。これらは、イギリス製のシーキャット個艦防空ミサイルとイタリア製のシー・キラー艦対艦ミサイルによって武装していた。なお、サーム級各艦の艦名は、いずれもシャー・ナーメの主要登場人物に由来している[1]。
その後、1979年のイラン革命によって成立したイスラム共和国政府のもとで、これらは アルヴァンド級フリゲート(英: Alvand class frigate)と改名され、各艦はイランの山岳名に改名した[1]。また、西側諸国からの武器禁輸措置や中国との関係改善などの影響などもあって、武装の多くが中国製のものに切り替えられている。
なお、本級の3・4番艦である「サバラン」および「サハンド」は、1988年4月14日にアメリカ軍が行なったプレイング・マンティス作戦において、米海軍と交戦している。この交戦で、米空母「エンタープライズ」から発進した艦載機の攻撃で「サハンド」は撃沈され、「サバラン」も大破した。
また21世紀に入って、イランは本級のリバースエンジニアリングに基づく国産艦としてモッジ型フリゲートの整備に着手している。
| # | 艦名 | 起工 | 就役 | # | 艦名 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| DE 12 | サーム(Saam) | 1967年5月 | 1971年5月 | 71 | アルヴァンド(Alvand) | 就役中 |
| DE 14 | ザール(Zaal) | 1968年3月 | 1971年3月 | 72 | アルボルズ(Alborz) | 就役中 |
| DE 16 | ラスタン(Rostam) | 1967年12月 | 1972年6月 | 73 | サバラン(Sabalan) | 就役中 |
| DE 18 | ファラマーズ(Faramarz) | 1968年7月 | 1972年2月 | 74 | サハンド(Sahand) | アメリカ海軍攻撃機の攻撃により、1988年4月18日に撃沈 |
Mk.7フリゲート [編集]
| 「ダット・アサワリ」(F01) | |
このMk.5フリゲートを200トンほど大型化して開発されたのがヴォスパー・ソーニクロフトMk.7フリゲートである。これは、リビアによって採用されて1968年に発注され、同年9月27日に起工、「ダット・アサワリ」(英: Dat Assawari)として1969年9月に進水し、1973年2月1日に竣工した。
ただしその後、リビアへの回航途上に事故によって中破し、トリポリに寄港したのち、1978年よりジェノヴァにおいて修理に入った。途中、1980年10月29日に爆弾テロによって破壊されるというアクシデントもあったが、1983年3月には公試に入り、10月1日に完工、1985年6月にようやくリビアに回航された。
| 艦番号 | 艦名 | 起工 | 就役 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| F01 | ダット・アサワリ(Dat Assawari) | 1968年9月 | 1973年2月 | 就役中 |
Mk.9コルベット [編集]
エリンミ級 [編集]
一方、Mk.5/7フリゲートとは別に、より小型のコルベットとして開発されたのが、ヴォスパー・ソーニクロフトMk.9コルベットである。これは先行して開発されたMk.3コルベットの拡大・発展型で、Mk.3コルベットを運用していたナイジェリア海軍においてエリンミ級コルベット(英: Erin'mi class corvette)として採用された。
| 艦番号 | 艦名 | 起工 | 就役 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 83 | エリンミ(Erin'mi) | 1977年1月20日 | 1980年1月29日 | |
| 84 | エニャミリ(Enymiri) | 1978年2月9日 | 1980年5月2日 |
カヒル級 [編集]
| カヒル級コルベット | |
その後、Mk.9コルベットをもとにして、ステルス性への配慮などの新機軸を全面的に導入して刷新したヴィジランス型(英: Vigilance type)と呼ばれる設計が開発された。これは極めて先進的な設計となっており、事実上、まったくの別物である。ヴィジランス型はオマーン海軍によってカヒル級コルベット(英: Qahir class corvette)として採用されて、1996、7年に続けて計2隻が就役した。
カヒル級は主にフランス製の兵器で武装しており、対空用にはクロタル個艦防空ミサイル・システム、対水上用にはエグゾセを搭載する。また、これらの兵装はTACTICOS 戦術情報処理装置を中核として連接されて、システム艦として構築されている。現在のところ、対潜兵器および水測装備は搭載していないが、必要に応じて、ATAS曳航ソナーと対潜魚雷を搭載できる設計となっている。
| 艦番号 | 艦名 | 就役 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Q-31 | カヒル・アル・アムワジ(Qahir Al Amwaji) | 1996年9月 | |
| Q-32 | アル・ムアッサー(Al Mua'zzar) | 1997年4月 |
Mk.10フリゲート [編集]
1960年代末、VTグループは、Mk.7フリゲートの発展型の開発を進めており、この設計案のうちのひとつは、イギリス海軍の21型フリゲートとして結実した。その一方、より大型の輸出用フリゲートとして開発されたのがヴォスパー Mk.10 フリゲートである。Mk.10フリゲートは、第2次大戦型駆逐艦の代替を計画していたブラジル海軍によって、ニテロイ級フリゲート(英: Niteroi class frigate)として採用されて、1970年に6隻が発注され、1975年から1986年にかけて建造された。このうち、後期の2隻はリオデジャネイロ海軍工廠で建造されている。これらはニテロイ級フリゲートとして、1976年より就役を開始した。
ニテロイ級は、多くの面でイギリス海軍向けの21型フリゲート(アマゾン級)に類似しており、事実上、その拡大版である(満載排水量にして300トンの大型化)。ただし機関構成は、21型がCOGOG構成を採用していたのに対し、本型では、Mk.5/7フリゲートと同様のCODOG構成となっている。また、ニテロイ級のうち、F-40, F-41, F-44, F-45はアイカラ対潜ミサイルを搭載した対潜型、F-42, F-43はMM38 エグゾセ 艦対艦ミサイルを搭載した汎用型として就役した。また、全艦が、シー・キャット個艦防空ミサイルの3連装発射機と114mm単装砲1基(F-42, F-43は2基)、375mm 対潜ロケット連装発射機を搭載していた。
その後、1996年より2005年にかけて、本級の全艦が「モッドフラッグ」改修を受けた。これにより、アイカラ対潜ミサイルとMM38エグゾセ対艦ミサイル、シー・キャット個艦防空ミサイル及びなど従来の兵装はすべて撤去された。F-42, F-43は後部114mm単装砲も撤去している。代わりに全艦が新しいMM40 エグゾセ艦対艦ミサイルとアルバトロス 個艦防空ミサイル、トリニティ Mk.3 40mm CIWSを装備することとなった。これにより、対潜型と汎用型の区別は事実上消滅し、全艦装備が統一された。
また、本級をベースにした練習艦としてU-27「ブラジル」も建造され、1986年に就役した。3,729満載排水トン、全長133.3メートル、武装は単装のボフォース 40mm機関砲2門のみである。
| 艦番号 | 艦名 | 起工 | 就役 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| F40 | ニテロイ(Niterói) | 1974年2月8日 | 1976年11月20日 | |
| F41 | デフェンソーラ(Defensora) | 1975年3月27日 | 1977年3月5日 | |
| F42 | コンスティトゥイサン(Constituição) | 1976年4月15日 | 1978年3月31日 | |
| F43 | リベラウ(Liberal) | 1976年4月15日 | 1978年3月31日 | |
| F44 | インデペンデンシア(Independência) | 1974年9月2日 | 1979年9月3日 | |
| F45 | ウニアン(União) | 1975年3月14日 | 1980年9月17日 | |
| U27 | ブラジル(Brasil) | 1983年9月23日 | 1986年8月21日 | 専用練習艦として設計・建造された。 |
要目 [編集]
| Mk.1 コルベット | Mk.3 コルベット | Mk.5 フリゲート | ||
|---|---|---|---|---|
| クロマンツェ級 ( |
「トブルク」 ( |
ドリナ級 ( |
アルバンド級 ( |
|
| 建造数 | 2隻 | 1隻 | 2隻(うち1隻喪失) | 4隻(うち1隻戦没) |
| 就役開始 | 1964年 | 1967年 | 1970年 | 1971年 |
| 満載排水量 | 500 t | 650 t | 1,400 t | |
| 全長 | 53.9 m | 61.6 m | 94.5 m | |
| 全幅 | 8.7 m | 9.5 m | 11.1 m | |
| 喫水 | 4.0 m | 3.5 m | 3.3 m | |
| 機関 | MTUディーゼル×2基、5,300 kW(7,110 shp)、2軸 | MAN V24/30-B ディーゼル×2基、 5,960 kW(7,995 shp)、2軸 |
CODOG方式: パクスマン・ヴェンチュラ 16気筒 ディーゼル×2基(3,800 bhp) +RR TM-3Aガスタービン×2基(46,000 shp)、2軸 |
|
| 速度 | 最大: 20 kt | 最大: 22 kt | 最大: 39 kt | |
| 航続距離 | 2,910 nmi / 14 kt | 3,000 nmi / 14 kt | 3,215 nmi / 17 kt | |
| 乗員 | 6+48名 | 8+59名 | 125-146名 | |
| 兵装 | Mk.23 102mm単装砲×1 | Mk.19 102mm連装砲×1 | Mk.8 114mm単装砲×1 | |
| 40mm単装機関砲×1 | 40mm単装機関砲×2 | 20mm連装機関銃×1 | ||
| 20mm単装機関銃×2 | 20mm単装機関銃×1 | |||
| スキッド対潜臼砲×1 | - | 81mm迫撃砲×2 | ||
| C-802 SSM ×4 | ||||
| リンボー対潜臼砲×1 | ||||
| 324mm 3連装短魚雷発射管×2 | ||||
| レーダー | AWS-1 対空レーダー | |||
| - | WM-22 射撃指揮レーダー | シー・ハンター 低空警戒/対水上レーダー | ||
| デッカ-45 航法レーダー | TM-626 航法レーダー | - | ||
| ソナー | 1674型船底装備 | MS-22 船底装備 | 170型+174型船底装備 | |
| Mk.7 フリゲート | Mk.9 コルベット | Mk.10 フリゲート | ||
|---|---|---|---|---|
| ダット・アサワリ級 ( |
エリンミ級 ( |
カヒル級 ( |
ニテロイ級 ( |
|
| 建造数 | 1隻 | 2隻 | 2隻 | 6隻+1隻 |
| 就役開始 | 1973年 | 1980年 | 1996年 | 1976年 |
| 満載排水量 | 1,625 t | 850 t | 1,450 t | 3,707 t |
| 全長 | 100.6 m | 69 m | 83.7 m | 129.2 m |
| 全幅 | 11.0 m | 9.6 m | 11.5 m | 13.5 m |
| 吃水 | 3.4 m | 3.0 m | 3.6 m | 5.5 m |
| 機関 | CODOG方式: パクスマン 16気筒 ディーゼル×2基(3,500 bhp)+RR TM2Aガスタービン×2基(46,400 shp)、2軸 |
MTU 20V956 TB92 ディーゼル×2基(17,595 shp)、2軸 | ピールスティック 16PA 6v-280STC ディーゼル×4基(28,160 shp)、2軸 | CODOG方式: MTUディーゼル×4基(18,000 hp)+ロールス・ロイス オリンパス ガスタービン×2基(56,000 hp), 2軸推進 |
| 速度 | 最大: 37.5 kt | 最大: 27 kt | 最大: 28 kt | 最大: 30 kt |
| 航続距離 | 5,700 nmi / 17 kt | 2,217 nmi / 14 kt | 4,000 nmi / 10 kt | 5,300 nmi / 17 kt |
| 乗員 | 不明 | 90 名 | 76 名 | 217 名 |
| 兵装 | Mk.8 114mm単装砲×1 | 76mm単装速射砲×1 | 76mm単装速射砲×1 | Mk.8 114mm単装砲×1 |
| ボフォース 40mm単装機関砲×2 | ボフォース 40mm単装機関砲×1 | トリニティ Mk.3 40mm CIWS× 2 | ||
| エリコン 35mm連装機関砲×2 | エリコン 20mm単装機関銃×2 | |||
| アルバトロス 短SAM 4連装発射機×1 | シー・キャット 短SAM 3連装発射機×1 | クロタル 短SAM 8連装発射機×1 | アルバトロス 短SAM 8連装発射機× 1 | |
| オトマート SSM 単装発射筒×4 | M/50 375mm 対潜ロケット連装発射機×1 | エグゾセMM40 SSM 4連装発射筒×2 | エグゾセMM40 SSM 連装発射筒× 2基 | |
| ILAS-3 3連装短魚雷発射管×2 | (3連装短魚雷発射管×2 装備可能) | 375mm 対潜ロケット連装発射機×1 | ||
| 3連装短魚雷発射管×2 | ||||
| 艦載機 | - | ワスプ、後にリンクス哨戒ヘリコプター× 1機 | ||
| C4I | - | TACTICOS | ||
| レーダー | RAN- 対空捜索レーダー | AWS-2 対水上レーダー | MW08 低空警戒/対水上レーダー | RAN-20S 低空警戒/対水上レーダー |
| RAN- 対水上レーダー | DRBV-51C PDMS射撃指揮 | FR-1942 Mk.2 航法レーダー | ||
| RTN-10X 射撃指揮レーダー | WM-24 射撃指揮レーダー | STING 砲射撃指揮 | RTN-30X 射撃指揮レーダー×2 | |
| ソナー | ディオドン 船底装備ソナー | PMS-26 船底装備ソナー | ATAS曳航ソナー装備可能 | EDO-997F 船底装備式+EDO-700E可変深度式 |
参考文献 [編集]
- Christopher Chant (1987). A compendium of armaments and military hardware. Routledge. ISBN 9780710207203.
関連項目 [編集]
- MEKO型フリゲート - ドイツのブローム・ウント・フォスが設計した輸出用フリゲート / コルベット。