ヴェイユ予想

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ヴェイユ予想(Weil conjectures)は、有限体上の代数多様体の上にある点を数えることから導出される(合同ゼータ函数として知られる)母函数についての、非常に広い範囲に影響のある提案で、André Weil (1949)によりなされた。

q 個の元を持つ有限体上の多様体 V は、qk 個の元を持つ全ての有限体の点と同様に、有限個の有理点を持っている。母函数は、qk の元を持つ(本質的には一意的な)体上の数 Nk から導出される係数を持っている。

ヴェイユは、そのようなゼータ函数有理函数であり、函数等式の形を満たし、ゼロ点が限られた中にあるはずであることを予想した。最後の 2つの点はリーマンゼータ函数リーマン予想でモデル化されたものと非常によく似ている。有理性はDwork (1960)により証明され、函数等式はGrothendieck (1965)により証明され、リーマン予想の類似はDeligne (1974)により証明された。

背景と歴史[編集]

ウェイユ予想に関連する最も早い段階の予想は、カール・フリードリヒ・ガウス(Carl Friedrich Gauss)によるもので、彼の著書 Disquisitiones Arithmeticae のセクション VII に現れていて(Mazur 1974)、1のべき根ガウスの周期英語版(Gaussian period)に関連している。論文の 358 では、二次拡大の塔の構成である周期から正多角形を構成へと変更し、p は p − 1 が 3 で割り切れるような素数を前提としていた。従って、1のべき根で p 番目の根の円分体に含まれる巡回三次体英語版(Cyclic cubic field)と、この体の整数の周期の正規整数基底英語版(normal integral basis)が存在する(ヒルベルト・スパイザーの定理英語版(Hilbert–Speiser theorem)の例)ことになる。ガウスの構成したものは、位数 3 の周期であり、乗法の下で mod p の 0 ではない剰余の作る巡回群 (Z/pZ)× が唯一存在し、指数 3 の部分群に対応する。ガウスは、\mathfrak{R}, \mathfrak{R}', \mathfrak{R}'' をコセットとして、これらのコセットに対応する周期(1のべき根の和)をとることを exp(2πi/p) へ適用し、これらの周期が計算可能な乗法テーブルを持つことを注意した。ガウスは積が周期の線型結合であることを示し、結合の係数を決定した。例えば、(\mathfrak{R}\mathfrak{R}) は、\mathfrak{R} の中の Z/pZ の元の数に等しく、一つ増やすと再び \mathfrak{R} の中にある。彼はこの数が周期の積の係数であることを証明した。これらの集合とヴェイユ予想の関係を知るためには、α と α + 1 が両方とも \mathfrak{R} に属せば、x と y が Z/pZ の中に存在し、x3 = αy3 = α + 1 となり、結局、x3 + 1 = y3 となることに注意すると、(\mathfrak{R}\mathfrak{R}) が、有限体 Z/pZ での x3 + 1 = y3 の解の個数となる。他の係数も同様な解釈を持つ。従って、周期の積の係数を決定したことは、楕円曲線上の点の数を数え上げたこととなり、副産物としてリーマン予想の類似を証明したこととなる。

代数曲線という特別な場合のヴェイユ予想は、Artin (1924)により予想された。有限体上の曲線の場合は、ヴェイユにより有限体上の楕円曲線のハッセの定理により始められたプロジェクトを完成させて証明された。プロジェクトの興味は、数論の中で充分高く評価され、べき和英語版(exponential sum)の上界を意味し、解析的数論英語版(analytic number theory)に本質的な関係を持つ。(Moreno 2001)

他の数学の分野の観点から実際に目に付くことは、代数トポロジーとの関係が提起されたことであった。有限体が自然には離散的であり、一方、トポロジーは単に連続的であることを記述するということから、ヴェイユの(いくつかの例より抽出されたことを基礎とした)詳細な定式化は、まさに正鵠を得ていた。彼は、有限体上の幾何学が、ベッチ数レフシェッツ不動点定理などの良く知られたパターンと良く適合することを示唆した。

トポロジーを伴う類似は、新しいホモロジー論が代数幾何学の中に適用され設定できることを示唆している。ジャン=ピエール・セール(Jean-Pierre Serre)により最初に示唆されたことを基礎として、新しいホモロジー論を構成するというアレクサンドル・グロタンディーク(Alexander Grothendieck)と彼の学派の仕事の中心的な目的を果たすことに、20年を要した。予想の有理性の部分は、Bernard Dwork (1960)で、p-進の方法を使い、初めてに証明された。Grothendieck (1965)と彼の協力者は、函数等式とベッチ数とのリンクはエータル・コホモロジーの性質を使い、有理性予想を確立した。新しいコホモロジー理論は、Grothendieck (1960)にアウトラインが書かれているように、グロタンディークとアルティンによりヴェイユ予想を攻略するために開発された。

4つ目のリーマン予想の類似の予想は証明することが最も難しい。Serre (1960)でのケーラー多様体に対するヴェイユ予想の類似の証明に動機づけられ、グロタンディークは代数的サイクルの標準予想を基礎とした証明を展望した。(Kleiman 1968)しかし、グロタンディークの標準予想は、未解決(ただし、デリーニュによりヴェイユ予想を拡張することで証明された強レフシェッツ定理(hard Lefschetz theorem)を除く)であり、リーマン予想の類似は Deligne (1974)でエータル・コホモロジーを使うことにより、デリーニュの独創的な議論により標準予想を使うことを避けて証明された。

Deligne (1980)ヴェイユ予想の一般化が証明され、層のプッシュフォワードのウェイトが有界であることが示された。

ヴェイユ予想のステートメント[編集]

X を q 個の元を持つ有限体 Fq 上の非特異英語版(non-singular)な n-次元射影代数多様体とする。X のゼータ函数 ζ(X, s) は

\zeta(X, s) = \exp\left(\sum_{m = 1}^\infty \frac{N_m}{m} (q^{-s})^m\right)

により定義される。ここに、NmFq の次数 m の拡大 Fqm上に定義された X の点の数である。

ヴェイユ予想は次のことを言っている。

1、有理性(Rationality) ζ(X, s) は、T = q−s有理函数である。さらに詳しくは、ζ(X, s) は有限の交代和
\prod_{i=0}^{2n} P_i(q^{-s})^{(-1)^{i+1}} = \frac{P_1(T)\dotsb P_{2n-1}(T)}{P_0(T)\dotsb P_{2n}(T)}
と記述できる。ここに各々の Pi(T) は整数係数の多項式である。さらに、P0(T) = 1 − T, P2n(T) = 1 − qnT であり、1 ≤ i ≤ 2n − 1 に対し、ある数 αij が存在し、C 上の Pi(T) 要素が \textstyle\prod_j (1 - \alpha_{ij}T) として記述できる。
2、函数等式とポアンカレ双対((Functional equation and Poincaré duality) ゼータ函数は
\zeta(X,n-s)=\pm q^{\frac{nE}{2}-Es}\zeta(X,s)
もしくは、
\zeta(X,q^{-n}T^{-1})=\pm q^{\frac{nE}{2}}T^E\zeta(X,T)
を満たす。ここに E は X のオイラー標数とする。特に、各 i に対し、ある順番で、α2n-i,1, α2n-i,2, … は、qni,1, qni,2, … に等しい。
3、リーマン予想(Riemann hypothesis) 全ての 1 ≤ i ≤ 2n − 1 と全ての j に対して、|αi,j| = qi/2 が成り立つ。このことは、Pk(T) のすべてのゼロ点が実部 k/2 の複素数 s の「臨界線」(critical line)の上にあることを意味する
4、ベッチ数(Betti numbers) 多様体 X が、複素数体へ埋め込まれた有限体の上で定義された非特異英語版(non-singular)射影多様体 Y の良いリダクション (mod p)英語版(reduction mod p)であれば、Pi の次数は、Y の複素数の中での空間の ith ベッチ数である。

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射影直線[編集]

(点を除き)最も単純な例は、X として射影直線をとることである。 qm 個の元を持つ体の X の点の数は、ちょうど Nm = qm + 1 となる(ここに "+ 1" は無限遠点を考えに入れることによる)。すると、ゼータ函数は、

1/(1 − q−s)(1 − q1−s).

となる。

ヴェィユ予想のすべてを直接検証することは容易で、例えば、対応する複素多様体はリーマン球面であり、その最初のベッチ数は  1, 0, 1 である。

射影空間[編集]

n 次元射影空間の場合もそれほど難しくはない。qm 個の元を持つ体の上の X の点の数は、ちょうど Nm = 1 + qm + q2m + ... + qnm である。ゼータ函数は、ちょうど

1/(1 − q−s)(1 − q1−s)(1 − q2−s) ... (1 − qn−s).

となる。

ヴェィユ予想を直接、検証することは、容易である(複素射影空間英語版(Complex projective space)も、計算して必要な答えを求めることができる)。

射影直線や射影空間の点の数は、アフィン空間の有限個のコピーの合併として書き出せるので、計算は容易である。同様な方法で計算可能なグラスマン多様体や旗多様体のような空間の場合も、ヴェィユ予想を直接、証明することは容易である。

楕円曲線[編集]

ヴェィユ予想の最初の非自明な例は楕円曲線であり、ハッセ(Hasse)により証明された。E を q 個の元を持つ有限体上の楕円曲線とすると、qm 個の元を持つ体上に定義された E の点の数は、1 − αm− βm + qm である。ここに α と β は絶対値が √q の複素共役どうしである。

ゼータ函数は、

ζ(E,s) = (1 − αq−s)(1 − βq−s) / (1 − q−s)(1 − q1−s)

である。

ヴェイユコホモロジー[編集]

ヴェイユは、この予想が複素多様体の有理数係数を持つ普通のコホモロジーと同様に、有限体の上の多様体の適切なヴェイユコホモロジー論の存在から来るのではないかと示唆した。彼のアイデアは、F を有限体上のフロベニウス自己準同型であれば、qm 個の元を持つ有限体上の多様体 X の点の数は、Fm の固定点の数である(代数的閉包上に定義された多様体 X のすべての点に作用する)というものであった。代数トポロジーでは、自己同型の固定点の数はレフシェッツ不動点定理を使い求められる。レフシェッツ不動点定理は、コホモロジー群英語版(cohomology group)上のトレースの交代和として与えられる。従って、有限体上の多様体に同じようなコホモロジーがあれば、ゼータ函数がそのコホモロジーの項で表現することができるのではないか。

第一の問題は、ヴェイユコホモロジー論の係数体は有理数ではありえないことである。これを理解するために、標数が p である有限体上の超特異英語版(supersingular)楕円曲線を考える。これの環準同型は、有理数上の四元数代数の中にオーダーを持ち、第一コホモロジー群の上に作用するはずであり、第一コホモロジー群は、複素楕円曲線の場合を類似することにより、係数体上の 2次元ベクトル空間であるはずである。しかし、有理数上の四元数代数は、2次元ベクトル空間に作用し得ない。これと同じ議論により、実数、もしくは p-進数である係数体の可能性は否定される。理由は、四元数代数はこれらの体上の分割された代数であるからである。しかし、係数体がある素数 l ≠ p に対し l-進数の体である可能性を排除できない。なぜならば、これらの体の上では、商代数は分解し行列代数となり、2次元ベクトル空間上へ作用することができるからである。グロタンディエクとミハイル・アルティン英語版(Michael Artin)は、苦労してl-進コホモロジーと呼ばれる、ある素数 l ≠ p に対し l-進数の体上の適切なコホモロジー論を構成することに成功した。

ゼータ函数のグロタンデェック公式[編集]

グロタンデェックは、l-進コホモロジー理論のレフシェッツ不動点公式の類似を証明し、これを適用することで、フロベニウス自己準同型 F がゼータ函数の次の公式を証明することを可能とした。

\zeta(s)=\frac{P_1(T)\cdots P_{2n-1}(T)}{P_0(T)P_2(T)\cdots P_{2n}(T)}

ここに各々の多項式 Pi は、l-進コホモロジー群 Hi 上の I − TF の行列式である。

ゼータ函数の有理性は、これより直ちに従う。ゼータ函数の函数等式は、l-進コホモロジーのポアンカレ双対に従い、リフトした複素ベッチ数との関係性は l-進コホモロジーと複素変数の通常のコホモロジーの間の比較定理に従う。

さらに一般的に、グロタンデェックは、層 F0 のゼータ函数の同様な公式を、コホモロジー群

Z(X_0, F_0, t) = \prod_{i}\det(1-F^* t|H^i_c(F))^{(-1)^{i+1}}

の上の積として、

Z(X_0, F_0, t) = \prod_{x\in |X_0|}\det(1-F^*_xt^{deg(x)}|F_0)^{-1}

となることを証明した。定数層の特別な場合が普通のゼータ函数となる。

デリーニュの第一の証明[編集]

Verdier (1974), Serre (1975), Katz (1976), Freitag & Kiehl (1988)には、第一の証明 Deligne (1974)の証明が解説されている。(Deligne 1977)に、l-進コホモロジーの背景の多くが記述されている。

ヴェイユ予想のデリーニュによる第一の証明には、次の各ステップが使われた。

レフシェッツペンシルを使用[編集]

  • グロタンディックは、l-進コホモロジー群上のフロベニウス自己同型のトレースのことばでゼータ函数を表現したので、q 個の現を持った有限体の上の d 次元多様体 V のヴェイユ予想は、V の i 次 l-進コホモロジー群 Hi(V) に作用するフロベニウス作用の固有値が、絶対値 |α|=qi/2 を持つことを示すことにかかっている(Ql の代数的元の複素数への埋め込みのために)。
  • V をブローアップ英語版(blowing up)した後、基礎体を拡大すると、多様体 V は、非常にマイルドな(2次の)得意ファイバーを有限個しかもたない射影直線 P1 の上への写像を持つことを前提とするかもしれない。レフシェッツペンシル英語版(Lefschetz pencil)は、複素多様体(と通常のコホモロジーに)対してはLefschetz (1924)で導入され、Grothendieck (1972)Deligne & Katz (1973) で l-進コホモロジーへ拡張され、上記のファイアーのコホモロジーへ V のコホモロジーを関連付ける。この関係は、消滅サイクル(vanishing cycles)の空間 Ex とは独立で、非特異ファイバー Vx のコホモロジー Hd−1(Vx) の部分空間は、特異ファイバー上で消滅するクラスにより張られる。
  • ルレイの完全系列英語版(Leray spectral sequence)は、V の中間コホモロジー群をファイバーと基底空間のコホモロジーへ関連付ける。この扱いで難しい部分は、多かれ少なかれ、群 H1(P1, j*E) = H1
    c
    (U,E) の部分であり、そこでは U は非特異ファイバーを持つ射影力戦の点であり、j は射影直線の中への U の埋め込み写像であり、E は消滅サイクルの空間 Ex をファイバーとする層である。

キーとなる見極め[編集]

デリーニュの証明の心臓部は、U 上の層 E が純粋(pure)であることを示す部分であり、言い換えると、その茎の上のフロベニウス準同型の固有値の絶対値を見つけることである。このことは、E の偶数べき Ek のゼータ函数を研究し、グロタンディェクのコホモロジー群の交代積としてのゼータ函数の公式へ適用することでなされる。E の偶数の k べきを考えるもっとも重要なアイデアは、論文 Rankin (1939)により動機付きられ、その中では k=2 のときと同じようにラマヌジャンのタウ函数に境界を持っていることを使った。Langlands (1970, section 8)では、高次の偶数の k の値に対しランキン(Rankin)の方法を一般化することがラマヌジャン予想を含んでいることを指摘し、デリーニュは多様体のゼータ函数の場合を一般化した類似がもたらす層のゼータ函数のグロタンディェク理論であることを示した。

  • Ek のゼータ函数の極は、グロタンディエクの公式
Z(U,E^k,T) = \frac{\det(1-F^* T|H^1_c(E^k))}{\det(1-F^* T|H^0_c(E^k))\det(1-F^* T|H^2_c(E^k))}
使い発見された。また分母の中のコホモロジー群の計算もなされた。項 H0
c
は、普通、U がコンパクトでないので、ちょうど 1 であり、H2
c
は、明確に次のようにして計算することができる。ポアンカレ層対性は、H2
c
(Ek) を H0
(Ek) へ関連付け、このことは Ek のファイバーの上へ作用する U の幾何学的基本群であるモノドロミー共変(covariant)な空間であることを意味する。E のファイバーはカップ積英語版(cup product)による双線形形式を持っていて、d が偶数のときは反対称性を持ち、E を対称空間へ写像する。(この記述は少し不正確である。デリーニュは後日、強レフシェッツ定理を使い、E∩E = 0 であることを示し、このことがヴェイユ予想を要求し、ヴェイユ予想の証明は、実際、E というよりも E/E∩E でのより複雑な議論を使う必要がある。)カズダン(Kazhdan)とマルグリス(Margulis)の議論は、ピカール・レフシェッツの公式英語版(Picard–Lefschetz formula)によりあが得られる、E のモノドロミー群の像がシンプレクティク群の中でザリスキー稠密であり、従って、同一の不変量を持っていて、古典不変量として良く知られていることを示した。この計算の中でフロベニウス作用のトレースを保存することで、固有値はすべて qk(d−1)/2+1 であるので、ゼータ函数 Z(Ek,T) は、T=1/qk(d−1)/2+1 で唯一の極を持つ。
  • Ek のゼータ函数のオイラー積は、
Z(E^k,T) = \prod_x \frac{1}{Z(E^k_x,T)}
である。k が偶数ならば、( T のべき級数として考えて)右辺の全ての要素の係数は非退化である。このことは、
\frac{1}{\det(1-T^{deg(x)}F_x|E^k)} =\exp\left(\sum_{n>0}\frac{T^n}{n}\text{Trace}(F_x^n|E)^k\right)
と書き、F のべきのトレースが有理的であり、従って、それらの k べきは k が偶数時は非退化であるという事実を使い示される。デリーニュは、いつも有理整数である多様体の点の数へそれらを関連付けることでトレースの有理性を証明した。
  • Z(Ek, T) のべき級数は、唯一可能な極 1/qk(d−1)/2+1 の絶対値よりも小さな T に対して収束する。k が偶数のとき、オイラー積展開の全ての係数は非負であるので、オイラー積の各要素は (Ek, T) の係数の定数倍で有界な係数を持ち、この領域で収束し極は持たない。従って、偶数の k に対し、多項式 Z(Ek
    x
    , T) はこの領域にゼロ点を持たない。言い換えると、Ek の茎(stalk)の上でのフロベニウス準同型の固有値は、大きくとも絶対値が qk(d−1)/2+1 を超えることはない。
  • この見積もりは、次のように、E のファイバー上のフロベニウス準同型の任意の固有値 α の絶対値を見つけることに使うことができる。任意の整数 k に対し、αk は、Ek の茎の上のフロベニウス準同型の固有値であり、偶数の k に対し q1+k(d−1)/2 に有界である。従って、
|\alpha^k|\le q^{k(d-1)/2 +1}
任意の大きな偶数に対して、この式が成立するので、このことは、
|\alpha|\le q^{(d-1)/2 }
を意味する。よって、ポアンカレ双対性により、
|\alpha|=q^{(d-1)/2 }
を得る。

証明の完成[編集]

この見極めからリーマン予想(の類似)を導くことは、ほぼ標準的なテクニックをまっすぐにつかい、次のようにして完成される。

  • ここで、H1
    c
    (U,E) のフロベニウス準同型の固有値は、ここでは層 E のゼータ函数の零点であるように見極めることができる。このゼータ函数は、E の茎のゼータ函数のオイラー積として書くことができ、茎の固有値の見極めを使うと、この積が |T|<q−d/2−1/2 で収束し、この領域ではゼータ函数のゼロ点が存在しないことを示すことができる。このことは、E のフロベニウス準同型の固有値が多くとも絶対値で qd/2+1/2 を超えないことを意味する(実際、すぐに絶対値はちょうど qd/2 であることが分かる)。この段階は、リーマンゼータ函数がオイラー積として分解することで 1 以上の実部の領域にはゼロ点が存在しないことを証明することと非常によく似ている。
  • この結論は、中間コホモロジー群の偶数次元の多様体のフロベニウス準同型の固有値 α は、
  |\alpha| \le q^{d/2+1/2}
を満たすことである。リーマン予想を得るためには、べきから 1/2 を消去する必要がある。このことは、次のようになされる。この見極めを V の任意の偶数べき Vk へ適用し、キネット公式英語版(Künneth formula)を使うと、任意の次元 d の多様体 V の中間次元のコホモロジー上のフロベニウス準同型の固有値が、
 |\alpha^k| \le q^{kd/2+1/2}
を満たす。十分に大きな偶数の k に対し成立するように、このことは
|\alpha| \le q^{d/2}
が成り立つことを意味し、ポアンカレ双対性(Poincaré duality)を使うと、
|\alpha| = q^{d/2}
が成り立つことを意味する。
  • これが。T多様体の中間次元のヴェイユ予想を証明する。中間次元以下のコホモロジーに対するヴェイユ予想は、弱レフシェッツ定理を適用することから従い、中間次元よりも大きなコホモロジーに対する予想はポアンカレ双対性より従う。

デリーニュの第二の証明[編集]

Deligne (1980)は、ヴェイユ予想の一般化を発見し証明され、層のプッシュフォワードされたときのウェイトが有界であることがしめされた。実際、このことは、強レフシェッツ定理のように、応用の中で使われる元々のヴェイユ予想というより、その一般化である。第二の証明の大半は、かれの第一の証明のアイデアの再整理である。第一の証明と主な異なっている部分は、アダマール(Hadamard)やド・ラ・ヴァレ・プーサン(de la Vallée Poussin)の定理に密接に関連する議論を必要とし、デリーニュは様々なL-級数は実部 1 を持つゼロ点を持たないことを示すことに使った。

有限体上の多様体の上の構成層は、全ての点 x に対し、x でのフロベニウス準同型の固有値の絶対値が N(x)β/2 であれば、ウェイト β の純粋(pure)であるといい、ウェイト ≤ β を持つ純粋層により繰り返し拡大されるように書くことができると、ウェイト ≤ β の混合であるという。

デリーニュの定理は、f が有限体上の有限タイプのスキームの射であれば、Rif! は、ウェイト ≤ β+i の混合素へウェイト ≤ β の混合双を写像することを言っている。

元々のヴェイユの予想は、f を滑らかな射影多様体から点への射であるとして、多様体上の定数層 Ql を考えることにより得られる。これはフロベニウス写像の固有値の絶対値の上界を与えるので、ポアンカレ双対はこのことが下界でもあることを示している。

一般に、Rif! は純粋層(pure sheaf)を純粋層は写像しない。しかしながら、ポアンカレ双対の適切な形が保持されるときには、純粋層が純粋層へ写像される。例えば、f が滑らかで固有射であるか、または、Beilinson, Bernstein & Deligne (1982)でしめされたように、層でというよりも、偏屈層英語版(perverse sheaves)の上で考えるようにすればよい。

モース理論に関するウィッテンの論文 Witten (1982) に動機づけられ、Laumon (1987) では、デリーニュの l-進フーリエ変換英語版(l-adic Fourier transform)を使い、デリーニュの証明とは異なる証明を得た。この方法により、彼は、アダマール(Hadamard)やド・ラ・ヴァレ・プーサン(de la Vallée Poussin)の方法を使うことを避けて、デリーニュの証明を単純化した。この証明は、フーリエ変換のノルムが元の函数のノルムと単純な関係を持っているという事実を使い、ガウス和(Gauss sum)の絶対値の古典的な計算を一般化している。Kiehl & Weissauer (2001)は、デリーニュの定理の提示したことの基礎として、ローモン(Laumon)の証明を使った。Katz (2001)は、デリーニュの第一の証明の精神の中にあるモノドロミーを使い、ローモンの証明をさらに単純化している。Kedlaya (2006)は、フーリエ変換を使い別の証明を与え、エタールコホモロジーをリジッドコホモロジー英語版(rigid cohomology)に置き換えた。

応用[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]