ワ族

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ワ語: Vāx
ビルマ語: ဝ လူမျိုး
中国語: 佤族
タイ語: ว้า
ワ族の女
総人口
約121万人
居住地域
ミャンマーの旗 ミャンマー
カチン州シャン州

約800,000人
中華人民共和国の旗 中国
雲南省

約400,000人
タイ王国の旗 タイ
チエンラーイ県

約10,000人
言語
ワ語
中国語西南官話
宗教
キリスト教アニミズム仏教

ワ族(ワぞく、中国語: 佤族, 拼音: Wǎzú, ビルマ語: ဝ လူမျိုး, IPA: [wa̰ lùmjóʊ])は、中国南部から東南アジア北部の山間部に分布するアウストロアジア語族南アジア語族モン・クメール語派少数民族カンボジアクメール人のように皮膚の色は黒い。竹で作った高床住居に住み、男性は黒いターバンで頭を包む。自称を「アワ」といい、近年まで首狩りの風習があった。

分布と自治地方[編集]

20世紀初頭のワ族のビルマでの描写。

メコン川以西サルウィン川以東の中国雲南省南部とミャンマー北部シャン州ラオス北部に約70万人が住む。1990年の調査では中国内に住居するワ族は約35万人であった。中国内の分布は次の通り。

自治県[編集]

民族郷[編集]

ワ州連合軍[編集]

ワ州連合軍の旗

1949年、ワ族の居住地に流れ込んだ中国国民党軍がケシの栽培を始めたとされる(異説もあり)が、後にビルマ共産党(BCP)に取って代わられた。中華人民共和国の強力な影響下のもと、ワ族はビルマ共産党の事実上の支配下でケシの栽培に従事した。その後、インド系の上層部と、ワ族・コーカン族を中心とする実力を担保する下部組織とで内部対立が深刻化、下部組織が実力行使で上層部を一斉逮捕・追放した事から1989年に同共産党は瓦解した(詳細はビルマ共産党を参照)。

反乱後、下部組織は分裂し、その一派がワ州連合軍(UWSA)を組織した。

1996年、クン・サの停戦合意に伴いモン・タイ軍英語版(MTA)が投降・武装解除し、ワ軍が最大の勢力となった。兵力は2万人を数え、パンカン英語版に司令部を置き、その南のモンポー英語版も根拠地である。また、1990年代にミャンマー=タイ国境で活動していた非ビルマ共産党系の民兵組織「ワ民族会議」を吸収合併した事から、MTAの支配地域に隣接する地域に飛び地状に支配地域を保有する。この「飛び地」との連絡を巡って、UWSAと投降前のMTA、そしてミャンマー国軍は激しく衝突した。

BCP同様、背後では中華人民共和国が影響力を行使していると考えられており、装備には中国製の物が多い。制服・制帽なども中国製、もしくは中国製のものを模倣した国産品を使用している。UWSA同様、中国から支援を受けているとされるカチン族のカチン独立軍コーカン族ミャンマー民族民主同盟軍でも同様の傾向が見られる(これらに対し、カレン族カレン民族解放軍シャン族の旧シャン州軍英語版諸派(シャン州軍 (北)シャン州軍 (南) は旧西側製の装備が用いられている)。

最高司令官はパオ・ユーチャン: Bao Youxiang、鮑有祥)。指導者にはクン・サの側近であったウェイ・シューカン英語版(第171軍区司令官)、ウェイ・シューインらがいる。将兵の多くはワ族だが、コーカン族シャン族など他の少数民族も参加している。なお、他の民兵組織同様、ミャンマー政府に帰属して生活しているワ族も存在する。

同軍はワ族及びワ州の自治権確保を要求している。実際においても、1990年代後半にキン・ニュン首相によって、ミャンマー政府との停戦が実現後も武装解除は行われず、同軍の支配地域は実質的にUWSAの自治が行なわれている。なお、現在のミャンマーの行政区分でワ州と呼ばれるは存在しないものの(シャン州の一部)、支配地域はミャンマー政府公認の自治区域となっている。

2012年1月、ミャンマー政府との和平に原則合意した。その一方で、武装解除や兵力削減には応じておらず、ミャンマー政府が発表した「国境警備隊」計画にも反対の姿勢を取った。

現在、ミャンマー政府が親中路線を転換しつつある事から、中国からUWSAに対する軍事援助が再び活発化している。その中には、PTL-02自走式対戦車砲Mi-17ヘリコプターTY-90英語版地対空ミサイルを搭載)等、重装備の供与も含まれているという。また、中国国内でUWSAの将兵が、中国人民解放軍から96式122 mm榴弾砲(旧ソ連製D-30の中国版。122 mmは旧東側諸国の標準口径の一つ)やHJ-8対戦車ミサイルを用いた軍事教練を受けたとも言われている。

関連項目[編集]

  • 中国の少数民族
  • 高野秀行 - 日本の作家。ワ州のアヘン栽培村に7ヶ月に渡り住み込み『ビルマ・アヘン王国潜入記』を著した。パオ・ユーチャンとも対面している。
  • 安田峰俊 - 日本の作家。2011年にワ州に入り、星海社新書『独裁者の教養』に「ワ州密航記」を掲載している。

外部リンク[編集]