ワーキング・テリア

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ワーキング・テリア(英:Working Terrier)とは、作業用に使われるテリア犬種全般のことを表す言葉である。転じて、作業用に使われるミックス(雑種)のテリアやマイナーなケネルクラブ非公認のテリア犬種のことを表す言葉としても使われるようになった。ここでは、両者をあわせて解説を行う。

概念[編集]

テリア犬種には大きく分けて2つの作業形態による分類がある。それの一つは地中に潜ってアナグマキツネを捕らえる地中猟犬タイプで、もう一つは地中に潜らず、地上でネズミなどを捕らえる非地中猟犬タイプネズミ猟犬タイプともいう)である。然しながら、元々テリア犬種の分類は曖昧であるため、この2タイプの中間(どちらの狩猟も行えるもの)やテリア犬種でないのにテリアの名がつけられた犬種も存在する。尚、「テリアの王」と称されるエアデール・テリアはセントハント(嗅覚猟)をこなす、特別な存在である。

ワーキング・テリアはこれらのタイプごとに違った作業形態や容姿の特徴を併せ持つ交配種や、作業用に使われている純血種のテリア犬種をひっくるめて呼ぶ言葉であるが、現在は主に交配種のテリアのことを指すことが多くなっている傾向にある。

交配種のワーキング・テリアは、作業、即ち狩猟を行う目的で交配されて生まれた犬たちである。優秀な作業犬にするために厳選されたかけ合わせが行われ、親種のいいとこどりを目指した交配が行われる。一例としては高い闘争心と賢さを持つベドリントン・テリアと、高い狩猟本能と愛情深さを持つマンチェスター・テリアをかけ合わせた非地中猟犬タイプのハーフ犬などが挙げられる。この交配によって生まれた犬は飼育のしやすさと適度な闘争心、及び狩猟本能の高い性質を受け継ぎやすく、雑種化矯正を得られるというメリットがある。デメリットとしては、親種が共にかかりやすい病気を患うリスクが高くなることがあるという点である。例のかけ合わせでは疾患にかかるリスクなどが上がる。勿論交配種のワーキング・テリアはこのようなハーフ犬だけではなく、クオータ犬や更に複雑なプログラムによって生み出された犬も存在する。これらの犬のタイプは地中猟犬タイプ、非地中猟犬タイプ、中間タイプの3種に加えてエアデール・テリアタイプの4タイプに分かれている。尚、テリアでないのにテリアの名を持つ犬(ブラック・ロシアン・テリアなど)の交配種はワーキング・テリアと言わない。

これらは専ら作業用としてのみ使われ、能力を重視したブリーディングが行われている。あまり狩猟能力が高くなかった犬は無料若しくは格安の値段で一般家庭へ譲渡され、ペットとして飼育されるが、かつては選別にもれた犬を捨てたり殺したりすることが当たり前のように行われていた。しかし、現在は動物愛護と自然保護の観点からこのようなことは行われておらず、ペットとして譲られる事がほとんどである。時折アメリカなどではもとからペットとしての販売を目的としてブリーディングされたワーキング・テリアが販売され、高い値段がつけられている事があるという。然しながら、これはもともと作業犬として作出されていないためワーキング・テリアと名乗る事を認められていない。だが、猟師から譲り受けた本物のワーキング・テリアを高値で売りつける業者も存在するため、両者の区別は難しい。

近年は都市部ではほとんど見かけられない犬となっているが、地方では未だ作業犬として働いている姿を見かけることが出来る。又、日本でも折り紙つきのワーキング・テリアが英国から数頭輸入されてペットや作業犬として飼育されている。ただし、ケネルクラブに公認された犬種ではないため年間登録頭数がカウントされておらず、一体 何年度に何頭輸入が行われたのかははっきりしていない。

純血種のワーキング・テリアはそれぞれのメジャー及びマイナーなテリア犬種の純血個体の事で、一つの犬種の名前ではない。ショー用やペット用としてブリーディングされたものではなく純粋な作業用の犬としてブリーディングされているものを指す。例えば、作業用に使われるタイプのジャック・ラッセル・テリアはショーやペット用に飼育されている一般的によく目にするものとでは容姿が若干異なっている。ショー及びペット用として飼育されているものは全体的に小型で細身、マズルも短めであるが、ワーキング・テリア版のジャック・ラッセル・テリアはサイズがそれよりも大きめで体はごっつく、マズルも長めで狩猟本能が更に引き出されている。又、スタンダートのサイズ上下限が緩い。

純血種のワーキング・テリアはショーやペットとして著名になると気性の荒っぽさや体の丈夫さ、狩猟本能の高さを薄められて姿を変えていった。しかし、この古いタイプの犬は昔ながらの猟師や純血犬種を好む人からは人気があり、引き続き作業犬としての能力を重視したブリーディングが継続されている。純血種のワーキング・テリアの良点は、安定した犬質を持ち、犬種ごとの特徴が分かっているため飼育がしやすいという点である。

特徴[編集]

交配種のワーキング・テリアは容姿の指定がなく、耳形・尾形・体型・コートはさまざまである。ただし、地中猟犬タイプならば地中に潜ることがなければならず、非地中猟犬タイプならばネズミを狩る事が出来なければならず、中間ならばどちらもこなさなければワーキング・テリアとして名乗る事が出来ない。サイズは体高15~40cmくらいまで許されている。尚、エアデール・テリアの血を引くものはこれに当てはまらず、これ以上のサイズであっても良いとされる。性格は忠実で活発、狩猟本能が旺盛である。

純血種のワーキング・テリアは、基本的にはその種のステータスに従った能力や容姿などを持つ。しかし、作業犬として特化した性質や微妙に異なる容姿を併せ持っている。又、狩猟本能がそれらよりも旺盛であるなど、ショードッグとして改良される以前の能力や容姿を保持している。

参考[編集]

『デズモンド・モリスの犬種事典』デズモンド・モリス著書、福山英也、大木卓訳 誠文堂新光社、2007年

関連項目[編集]