ロー・スクール (アメリカ合衆国)
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ロー・スクール(英:Law school)はアメリカ合衆国における法曹教育機関である。法科大学院と訳されている。通常、学士の学位を取得した上で入学する専門職養成大学院(プロフェッショナル・スクール)として位置づけられ、留学生などを除くと3年間のカリキュラムが一般的である。
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[編集] 沿革
開拓時代の合衆国では、法曹希望者のための専門教育機関というものはなく、英国へ渡り法曹学院に通って教育を受けるものもいたが、ほとんどは実績のある弁護士のもとで、見習いや法律事務員として働き、経験を積んだ後独立するのが通常であった。
独立戦争後になると、見習いや法律事務職員の教育を行っていた法律事務所が協力して、1784年のコネチカット州のリッチフィールド・スクールを始めに、各州に、ロー・スクールが姿を見せ始めた。
1865年に南北戦争が終わると、合衆国全土に鉄道が引かれ、著しい経済発達を遂げるようになり、それに応じて法的な需要が激増し、その需要に応じる形で、ロー・スクールの数も1850年の15校から、1900年には102校まで激増した。当時のロースクールは、講義形式の授業を採用しており履修期間も1年間と短かっただけでなく、学士(bachelor)課程を履修している必要もなく、各州の教育レベルは、まちまちで中には、弁護士試験が簡単なことに乗じて営利的で質の悪いものもままみられた。
そのような状況下で、1870年、ハーバード・ロー・スクールは、入学試験を厳格にし、原則として学士の取得を条件とし、1871年にはロー・スクールの履修期間を2年間に引上げ、1876年には更に3年間に引上げた上で、ケースブック(en:Casebook)を使用して、ソクラテス・メソッドにより議論を通じて法的能力の向上を図るという教育革命を行ない、次第にこの形式の教育方式が全国に広がり、現在のロースクールの原型が作られた。
[編集] カリキュラム・学位
アメリカ合衆国のロー・スクールは主として、アメリカ合衆国内の一般の学生を中心とする「J.D.」(修了すると、ジュリス・ドクター(Juris Doctor)の学位が与えられる)の課程の学生と、合衆国外からの留学生等を中心とする「LL.M.」(修了すると、マスター・オブ・ロー(Master of Laws)の学位が与えられる)の課程の学生で構成されている。日本人の留学生はLL.M.の課程に入学することが大多数であるが、アメリカ合衆国において「ロー・スクール」という場合、一般的にはJ.D.の課程が念頭に置かれている。ロー・スクールに入学を希望する学生は各種メディアが公表しているロー・スクールのランキングを参考にする場合が多いが、J.D.の課程を評価したものである。
J.D.とLL.M.の構成比率は各ロー・スクールによって異なり、LL.M.が極めて少数のロー・スクールもある。また、後述のように、ロースクールによっては、「M.C.L.又はM.C.J.(比較法修士)」等の他の学位取得のためのコースが別途存在し、合衆国外の各国から招聘された法学者の研究員(Visiting Scholar)や公官庁及び企業からの派遣者、提携大学における単位交換留学生等も授業等に参加している場合もある。
主要ロー・スクールにおいてJ.D.の学位を取得すれば、アメリカ合衆国の各州の司法試験受験資格が得られる。J.D.課程を修了した学生はいずれかの州の司法試験を受験し、弁護士等の法曹の道に進むのが大多数である。
[編集] J.D.課程・法務博士
ジュリス・ドクター(Juris Doctor:JD)は、メディカル・スクール(日本の医学部に相当)、ビジネス・スクール(経済・経営学大学院)と同様、学部卒業者を対象とする専門職養成大学院(プロフェッショナル・スクール)として設置されている。教育年限は通常3年であり、修了者にはジュリス・ドクターの学位が与えられる。
この学位は元来LL.B.(bachelor of laws;法学士)と呼ばれていたものを1960年代にシカゴ大学ロー・スクールが名称変更したところ、他のロー・スクールも追随してこれにならったという経緯がある。
アメリカ合衆国における大学には一部限定された範囲で法律を中心に教育する学部はあるものの、日本の法学部に相当する課程は存在せず、したがって、ロー・スクールのJ.D.課程に入学する学生の学部段階(卒前課程、"undergraduate"と呼ばれる)における専攻科目は様々であり、通常はロー・スクールに入学後に初めて学問としての法律に触れることとなる。学部を卒業後、直ちにロー・スクールに進学する学生もいるが、企業等で数年働いた後に入学する学生も多い。J.D.課程の学生は20歳代前半から後半にかけての学生が大半である一方で、法曹以外の分野で長年経験を積んできた者が転身してロー・スクールに入学する場合もある。
J.D.課程に入学するためには学部段階における成績(GPA)に加え、LSAC (Law School Admission Council) により全米で統一して実施されるLSATを受験する必要がある。「トップスクール」に入学するためには、学部段階及びLSATにおいて好成績を取得しなければならない。
[編集] LL.M.課程・法学修士
J.D.を取得した者やアメリカ合衆国外でJDに相当する法律教育を受けた者を対象として、LL.M.(Master of Laws, 法学修士)コースを設置しているロー・スクールが多い。LL.M.コースは通常1年間の課程である。LL.M.コースの中には、例えば税法等の専門分野に定評があり、J.D.を取得したアメリカ人学生を中心に教育するところもあるが、多くのロー・スクールにおいてはLL.M.コースは外国で法学教育を受けた者を主たる対象としている。
外国の学生がLL.Mコースに入学するために、本国で最初の法学教育を卒業していることが要件とされ、卒業した教育機関の教員等からの推薦状が求められる。日本からの留学生の場合、この要件は日本の大学の法学部または法科大学院(法学部や法科大学院を修了せずに法曹資格を得た者については司法研修所)を修了したことにより満たされる。また、英語を母国語としない入学希望者はロー・スクールが定める一定の基準を超えるTOEFLのスコアを取得することが要求される。
日本人がロー・スクールに留学する場合、LL.M.コースに入学することが大多数である。日本の弁護士資格を有する者や、裁判所・検察庁を含む官公庁からの派遣公務員、日本の大手企業の法務部門の担当者等が目立つ。
ロー・スクールによっては修士の学位を比較法修士(Master of Comparative Law (M.C.L.)、またはMaster of Comparative Jurisprudence (M.C.J.))としているところもある。
[編集] S.J.D.課程・法学博士
LL.M.修了者を対象とした法学博士(Doctor of Juridical Science (S.J.D.、またはJ.S.D.))課程もあるが、この課程に進学する者は稀である。S.J.D.との混乱を避けるために、ジュリス・ドクターは通常「法学博士」とは翻訳されない。
[編集] ロー・スクールの授業
ロー・スクールにおける過半の授業ではケースブックと呼ばれる分厚い判例集が指定され、その内容に沿って授業が進められる。ケーステキストの内容は様々ではあるが、その多くは法律についての簡単な解説がなされた後に、当該法律に関連する事例(判例)の判決文がそのまま掲載され、延々と判決原文が続くというものである。主要科目のケーステキストは概ね1,000ページ前後にも及び、重厚な教科書である場合が多い。教授によって授業の進度の違いはあるが、学生はこのケースブックを1科目につき、週平均40ページから100ページ程度を事前に読んで授業に臨むよう求められる。
授業における教授のスタイルは学生と教授間での質疑・対話による進行(ソクラテス・メソッドと呼ばれる)を徹底して用いる教授から、教授が主に内容を解説するレクチャー方式を採用する教授がいるなど、内容に応じて様々である。一般に、教授が授業中に学生を指名して問いを投げかけたり、学生が挙手して教授に質問したりする頻度は高く、そのようなやり取りにおける積極性・内容を高く評価する評価システムがとられている場合が多い。
[編集] 成績評価など
ロー・スクール卒業者の絶対数が多いため、単に学位を得たことのみならず、学校の評判や在学中の成績が卒業生の将来に影響する。J.D.過程に所属する多くの学生は、1年目から就職活動を開始する。アメリカ合衆国のロー・ファームは一般に、契約法(contract)、憲法(constitutional law)等の基礎科目が組まれる1年次の学生の成績を選考の材料としている。それゆえに、大手ないしは著名ロー・ファームへの就職を目指す学生は1年目に優秀な成績を収めようと必死に努力する。JD課程の学生は1年次、2年次の夏休み期間(通常、学期は9月開始、5月終了となる)にローファームなどでインターンを行うが、優秀な学生は、大手ロー・ファームにサマー・クラークとして勤務し、そのまま同じファームに就職するという場合もある。
ロー・スクールの2年次、3年次では比較的専門性の高い科目がカリキュラムとして組まれ、学生はそれぞれ進路によって科目を選択することとなる。この時点で、既に就職先の決まった学生も多いため、1年目に比べれば多少のゆとりがある。大手ロー・ファームでのパートナー弁護士を目指す学生はロー・スクールで成績上位者に与えられる賞を取得することが1つのステータスとなるため、優秀な成績を収めるために昼夜努力している。
[編集] ローレビューの編集委員
1年次の成績優秀者から、大学出版の法律雑誌(ロー・レビュー)の編集委員が選ばれる。編集委員の制度は各大学に共通して見られるもので法曹関係者を中心にその存在の認識度は高く、有名大学の編集委員であったという実績は、学生時代の優秀さを示すキャリアとして高く評価されるため、編集委員をめぐる競争は極めて激しい。アメリカにおける州最高裁判所調査官は、ロー・スクールを出身したばかりの法曹が1年交代で務めるのが通例であるが、その調査官も通常は有名大学の編集委員経験者から選ばれる。
[編集] 各州の司法試験
アメリカ法曹協会(ABA)認定のロー・スクールと非認定のロー・スクールがあり、アメリカ合衆国の各州の司法試験を受験するためには認定校のJD取得者であることが必要とされる。カリフォルニア州では例外的に非認定校の卒業生にも受験を認めている。また、非認定のロースクール卒業生が一定期間弁護士事務所等で法律実務の経験を積む事で司法試験の受験資格を得られる州もある。
LL.M.を取得した外国人はニューヨーク州やカリフォルニア州など、いくつかの州で司法試験の受験資格を得ることが可能である。このため、ニューヨーク以外の州にある大学のロー・スクールのLL.M.を取得した場合においても、ニューヨーク州の司法試験を受験し、同州の弁護士資格を取得する学生が多い。現在では、日本とニューヨーク州の弁護士資格双方を有する者の数が年々増加している。
LL.M.の資格はアメリカの大学の日本校が提供しているプログラムにより取得することが可能となっている。この中には、テンプル大学ジャパンキャンパスのロー・スクールプログラムなどが挙げられる。
[編集] アメリカのABA認定ロースクール一覧
[編集] 参考文献
- 伊藤正己・木下毅『アメリカ法入門(4版)』(日本評論社)
- マイケル・ジェイ・フリードマン『アメリカの法制度』(米国大使館)


