ローレル・フェイ

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ローレル・エリザベス・フェイ[1](Laurel Elizabeth Fay, 1949年 -)は、アメリカ音楽学者音楽学博士ロシアおよびソヴィエト音楽を専門とし、とくにショスタコーヴィチに関する研究は高い評価を受けている[2]

フェイはフリーの研究者として1970年代からソ連での資料収集に努め、1978年に論文『D.ショスタコーヴィチの後期弦楽四重奏曲:その様式研究』を発表してコーネル大学哲学博士号を取得した[2][3]。 1979年にソロモン・ヴォルコフの『ショスタコーヴィチの証言』(以下『証言』と記す。)が出版されると、そのテキストを詳細に比較検証した論文「ショスタコーヴィチ対ヴォルコフ:誰の証言か」(1980年)により、『証言』の信憑性に疑問を投げかけた[2]。同論文は、『証言』がヴォルコフが主張するようなインタビュー記録ではないことを証明しており[4]、これによって『証言』をめぐる論争の口火が切られるとともに、フェイの名は世界中に知られるようになる[2]

その後もフェイは20年余にわたり、ヴォルコフの主張と『証言』が一致しないことを徹底的に論証し、同じくアメリカの音楽学者リチャード・タラスキンen:Richard Taruskin, 1945-)と並んで事実上この論争に終止符を打った立役者とされる[2]

2000年には、緻密な史料研究に基づきつつ、慣習的なイデオロギー的観点を回避した伝記『ショスタコーヴィチ:ある生涯』(日本語訳:アルファベータ、2002年、改訂版2005年)を著した[5]。 2001年、同書によってアメリカ音楽学会(en:American Musicological Society)からもっとも傑出した音楽研究の出版物に贈られるオットー・キンケルディ賞を受賞した[2]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 日本語文献によってはファミリーネームは「ファーイ」と表記されている。
  2. ^ a b c d e f ロシア音楽事典 p.288
  3. ^ ローレル・E・ファーイ『ショスタコーヴィチ:ある生涯』(アルファベータ)
  4. ^ マース pp.555-556
  5. ^ マース p.561

参考文献[編集]

  • 日本・ロシア音楽家協会 編『ロシア音楽事典』(株)河合楽器製作所・出版部、2006年。ISBN 9784760950164 
  • フランシス・マース 著、森田稔梅津紀雄中田朱美 訳『ロシア音楽史 《カマリーンスカヤ》から《バービイ・ヤール》まで』春秋社、2006年。ISBN 4393930193