ローレット

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綾目ローレットの表面
平目ローレットが施された精密ドライバー

ローレット英語: knurlingフランス語: moletage)とは、金属に施す、細かい凹凸状の加工のこと[1]ローレット加工とも言う。ローレット加工は滑り止めの効果がある。

多彩な名称[編集]

ローレットは、フランス語のルレット (roulette):「小さな輪」「小さくて回るもの」を語源とするといわれている[2]。英語のナーリングという表記も使われる。文房具メーカーでは、フィーリングという呼び名(ステッドラー)やローレック加工(三菱鉛筆シャープペンシルシフト)という表記がなされる。

用途[編集]

ローレット加工は、カメラレンズフォーカス及び絞りリング・時計のツマミ部・精密ドライバーのグリップ・ダンベルのシャフト・シャーペンなどの日用品、ダーツのグリップ[3]やオートバイのハンドル・バーのクランプ面、BMX自転車のフットペグ、電子機器のコントロール・ノブにも使われている。ローレット加工は多くの手術器具にも見られ、器具を識別するために使用される。拳銃のグリップ、金属製品のさまざなものの表面にローレット加工が施されている。

補修加工[編集]

ローレット加工は補修方法としても使用できる。ローレット加工された表面は、くぼんだ部分を囲むように盛り上がった部分があるため、この盛り上がった部分で部品の摩耗を補うことができる。労働力が安く、部品が高価だった時代には、この修理方法は内燃エンジンのピストンで実現可能で、摩耗したピストンのスカートをローレット加工で公称サイズまで拡大した。自動車部品が安価になったため、ローレット加工はかつてほど普及しなくなり、特にパフォーマンスエンジンビルダーでは推奨されていない[4]

加工の種類[編集]

ローレットには、用途によって斜めローレットや平目ローレット、綾目ローレットなどの種類がある [5]

斜めローレット:機械や自動車の部品、ねじなどに利用されている。
平目ローレット:時計のツマミや、金属ダイヤルなどによく用いられる。
綾目ローレット:ダイヤ目、クロス目など2方向を交差するローレット。

加工方式[編集]

2種類の加工道具の例

ローレット加工には、転造方式[6]切削方式[7]が存在する[2]。転造方式とは、加工したい形状と同じ模様のコマやロールを金属材料に押し付ける事で加工する方法であり[6]、今でもローレット加工の主流である。切削方式の特徴は、非常に奇麗で寸法の安定した尖った仕上がりになる事で、さまざまな工業製品によくつかわれている。

脚注[編集]

  1. ^ Knurls & Knurling”. Reed Machinery. 2017年7月30日閲覧。 “"Knurling is obtained by displacement of the material when the knurl is pressed against the surface of a rotating work blank."”
  2. ^ a b 佐々木, 耕; 和田, 正毅; 米山, 實 (2009). “切削ローレット工具の特性”. 職業能力開発研究 (職業能力開発大学校能力開発研究センター) 27: 69-88. https://web.archive.org/web/20210204073025/tetras.uitec.jeed.or.jp/files/kankoubutu/c-027-06.pdf. 
  3. ^ How It's Made - Darts (knurling wheels at 2:50)
  4. ^ Monroe, Tom. "Engine Rebuilder's Handbook". HPBooks, New York, 1996. Page 48.
  5. ^ JIS B 0951 ローレット目
  6. ^ a b 転造加工とは?種類とデメリット、加工可能な金属を解説! | mitsuri-articles” (2020年6月10日). 2023年8月20日閲覧。
  7. ^ Knurls & Knurling”. Reed Machinery. 2023年8月21日閲覧。 “"Knurling is obtained by displacement of the material when the knurl is pressed against the surface of a rotating work blank."”

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]