ロールス・ロイス・シルヴァースピリット

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ロールス・ロイス・シルヴァースピリット

シルヴァースピリットSilver Spirit )は、イギリスの自動車メーカー、ロールス・ロイス・モーター・カーズがロールス・ロイスブランドで1980年から1995年まで販売した高級車である。同じプラットフォームからの派生車としてロングタイプのボディを持つシルヴァースパーなど多数のバリエーションが存在する。

概要[編集]

派生車種とともに1980年代のロールス・ロイスを代表する車種であり、世界的には他車との性能比較といった世俗的な表現を超越した権威の象徴の位置にあり、人生の成功と最高のゆとりを享受する階層の自動車であった。1980年代の日本国内においても、当時の特権階級や富裕層の中でも、過去からの系譜による層とバブル景気の恩恵による新規参入層のごく一部の人々に好まれ、優雅さとやすらぎを備え、自動車の世界で最高の調度品であった。

1980年にシルヴァーシャドウIIからフルモデルチェンジ、同時に双子車のベントレー・ミュルザンヌがデビューした。社内の開発コードから、シルヴァースピリットやシルヴァースパー等その派生車種及びベントレー・ミュルザンヌとターボR等その派生車種は総合してSZ系と呼ばれる。

1990年代の世界的な不況の影響によって、1998年にフルモデルチェンジされた新型のシルヴァーセラフ以降は他の民族系資本等による開発製造車輌となり、ロールス・ロイスの純血、つまり純然たる英国人による英国製英国様式で製造される車種としてはこのSZ系が最終モデルとなった。

モデル別解説[編集]

初代(1980年-1989年)[編集]

シルヴァースピリット(初代)
1985年 アメリカ仕様車
Rolls Royce Silver Spirit 1985.jpg
販売期間 1980年 - 1989年
乗車定員 5名[1]
ボディタイプ 4ドアセダン[1]
エンジン 水冷V型8気筒OHV6,747cc
変速機 ゼネラルモーターズ製ターボハイドラマチック[2]3AT コラム>[1]
駆動方式 FR[1]
サスペンション 前 ダブルウイッシュボーン独立
後 セミトレーリングアーム独立[2]
全長 5,280mm[3]
全幅 1,890mm[3]
全高 1,485mm[3]
ホイールベース 3,060mm[3]
車両重量 2,205kg[3]
先代 シルヴァーシャドウII
後継 シルヴァースピリットII
-自動車のスペック表-

先代に当たるシルヴァーシャドウIIに比べひとまわり大きくなったが、ホイールベースはそれほど変わっていない。

フロントマスクは伝統のハンドメイドによるパルテノングリル(ステンレス製で約180万円)を中心に、異形ハロゲンライトになった(角目2灯。米国仕様は角目4灯。)。全体的なスタイルが1980年代特有の直線基調のデザインとなり、ロールス伝統の曲線的な貴族趣味的なデザインから解き放たれた。外装はアクリルラッカー塗料仕上げで、2種類の下塗りの上にもう一度下塗りし、3種類の上塗り、さらに2種類の仕上げ塗装を行なっている。車体保護に11種類ものサビ止め塗装が施されている。

エンジンは基本的に従来型のL410型で、水冷90度V型8気筒OHV、ボアφ104.1×ストローク99.1mmの6,747cc。最高出力等はロールス・ロイスの古くからの伝統で非公表だが、従来のシルヴァーシャドウIIからは大幅に出力向上しているとみられる。デビュー当初はキャブレターだったが、1986年にボッシュ製Kジェトロニック燃料噴射装置付きとなった。最高速度は193km/hに達する。

トランスミッションはGM製3速オートマチックの組み合わせで、ブレーキは前後ともベンチレーテッドディスク。タイヤは235/70HR15。最小回転半径は5.8m。

製造販売台数8,129台。

第2世代(1989年-1993年)[編集]

シルヴァースピリットII
販売期間 1989年 - 1993年
乗車定員 5名
ボディタイプ 4ドアセダン[4]
エンジン 水冷V型8気筒OHV6,747cc
変速機 ゼネラルモーターズ製ターボハイドラマチック 3AT[5](-1992年)/4AT(1992年-)
駆動方式 FR[5]
全長 5,268mm[4]
全高 1,485mm[4]
ホイールベース 3,061mm[4]
先代 シルヴァースピリットI
後継 シルヴァースピリットIII
-自動車のスペック表-

車種表記がシルヴァースピリットIIとなり、1989年にフランクフルトモーターショーにて発表された。

メカニカルコンポーネンツが大幅にリファインされたが、搭載エンジンについては数値的変更はない。1990年にボッシュ製Lモトロニック燃料噴射装置が装備された。改良の結果として最高速度は208km/hに達し、0→100km/h加速は11.1秒であった。

自動可変ダンパーシステムを搭載することによって乗り心地が向上した。

塗料はウレタンへと現代化され、丁寧な仕上げに変わりはないものの手入れが格段に楽になったと言える。インパネも変更され、警告灯がさらに追加された。ステアリングが黒く細い熱硬化樹脂製から革巻きに変更された。この時代のロールスは長い歴史と伝承による頑固な職人気質で、数多くの熟練工が、それぞれ最高のものを最善の工程で完成させた。クランクケースやシャフト等金属部品の寸法精度を8週間もかけ全数計測したり、組み上げたエンジンは2時間かけて作業台でテストされた後に搭載された。内装の革は有刺鉄線のない牧場で飼われた高級牛皮のコノリーレザーが選ばれ、1台につき十数頭もの牛皮を使用した。

1992年にはトランスミッションを4速ATへ変更した。その他以前のモデルと同じくマイナーチェンジ以下の小規模な各部改良、変更が幾度となく行われた。

製造販売数は1,152台。

第3世代(1994年-1995年)[編集]

シルヴァースピリットIII
販売期間 1994年 - 1995年
乗車定員 5名[6]
ボディタイプ 4ドアセダン
エンジン 水冷V型8気筒OHV6,747cc
変速機 ゼネラルモーターズ製4L80E型4AT[6]
駆動方式 FR[6]
全長 5,280mm[6]
全幅 1,890[6]
全高 1,485mm[6]
ホイールベース 3,160mm[6]
車両重量 2,470kg[6]
先代 シルヴァースピリットII
後継 シルヴァードーン
-自動車のスペック表-

1994年に2度目のマイナーチェンジがされ、車種表記がシルヴァースピリットIIIとなった。エクステリアの変更は小幅でマフラーが片側2本出しになった。内装は基本的な構造をIIとともにするものの、ステアリングは太くなり革巻きのエアバッグ付きへと近代化し、ダッシュボードにはステッチ入りのレザーが贅沢に張られる。加えてシートもデザインが変更された。もちろんこの時代のロールス・ロイス/ベントレーが使用するレザーは最高グレードのコノリーレザーである。エンジンについてはダイレクト・イグニッションシステムを新たに装備することによって効率よくパワーを生み出せるように進化した。日本での販売価格は2280万円[7]。製造販売台数は211台。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 『外国車ガイドブック1987』p.209。
  2. ^ a b 『外国車ガイドブック1987』p.108。
  3. ^ a b c d e 『外国車ガイドブック1987』p.198。
  4. ^ a b c d 『輸入車ガイドブック1990』p.234。
  5. ^ a b 『輸入車ガイドブック1990』p.222。
  6. ^ a b c d e f g h 『輸入車ガイドブック1994』p.223。
  7. ^ 『輸入車ガイドブック1994』p.241。

参考文献[編集]

  • 『外国車ガイドブック1987』日刊自動車新聞社
  • 『輸入車ガイドブック1990』日刊自動車新聞社
  • 『輸入車ガイドブック1994』日刊自動車新聞社