ロンドンオリンピック (2012年) における柔道競技

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2012年ロンドンオリンピックにおける柔道競技は7月28日から8月3日までエクセル展覧会センターで開催された[1]

競技日程[編集]

時間はイギリス夏時間(UTC+1)

  • 7月28日:男子60kg級、女子48kg級
  • 7月29日:男子66kg級、女子52kg級
  • 7月30日:男子73kg級、女子57kg級
  • 7月31日:男子81kg級、女子63kg級
  • 8月1日:男子90kg級、女子70kg級
  • 8月2日:男子100kg級、女子78kg級
  • 8月3日:男子100kg超級、女子78kg超級

競技結果[編集]

男子[編集]

種目
60kg級 ロシア アルセン・ガルスチャン
ロシア (RUS)
日本 平岡拓晃
日本 (JPN)
ウズベキスタン リショド・ソビロフ
ウズベキスタン (UZB)
ブラジル フェリペ・キタダイ
ブラジル (BRA)
66kg級 グルジア ラシャ・シャフダトゥアシビリ
グルジア (GEO)
ハンガリー ミクローシュ・ウングバリ
ハンガリー (HUN)
日本 海老沼匡
日本 (JPN)
韓国 曺準好
韓国 (KOR)
73kg級 ロシア マンスール・イサエフ
ロシア (RUS)
日本 中矢力
日本 (JPN)
フランス ウゴ・ルグラン
フランス (FRA)
モンゴル サインジャルカル・ニャムオチル
モンゴル (MGL)
81kg級 韓国 金宰範
韓国 (KOR)
ドイツ オーレ・ビショフ
ドイツ (GER)
ロシア イワン・ニフォントフ
ロシア (RUS)
カナダ アントワーヌ・ヴァロア=フォルティエ
カナダ (CAN)
90kg級 韓国 宋大南
韓国 (KOR)
キューバ アスレイ・ゴンサレス
キューバ (CUB)
日本 西山将士
日本 (JPN)
ギリシャ イリアス・イリアディス
ギリシャ (GRE)
100kg級 ロシア タギル・ハイブラエフ
ロシア (RUS)
モンゴル ナイダン・ツブシンバヤル
モンゴル (MGL)
ドイツ ディミトリ・ペータース
ドイツ (GER)
オランダ ヘンク・グロル
オランダ (NED)
100kg超級 フランス テディ・リネール
フランス (FRA)
ロシア アレクサンドル・ミハイリン
ロシア (RUS)
ドイツ アンドレアス・テルツァー
ドイツ (GER)
ブラジル ラファエル・シルバ
ブラジル (BRA)

女子[編集]

種目
48kg級 ブラジル サラ・メネゼス
ブラジル (BRA)
ルーマニア アリナ・ドゥミトル
ルーマニア (ROU)
ハンガリー チェルノビツキ・エーヴァ
ハンガリー (HUN)
ベルギー シャルリーヌ・ファンスニック
ベルギー (BEL)
52kg級 北朝鮮 安琴愛
北朝鮮 (PRK)
キューバ ヤネト・ベルモイ
キューバ (CUB)
フランス プリシラ・ネト
フランス (FRA)
イタリア ロサルバ・フォルチニティ
イタリア (ITA)
57kg級 日本 松本薫
日本 (JPN)
ルーマニア コリーナ・カプリオリウ
ルーマニア (ROU)
アメリカ合衆国 マルティ・マロイ
アメリカ合衆国 (USA)
フランス オトーヌ・パヴィア
フランス (FRA)
63kg級 スロベニア ウルシカ・ジョルニル
スロベニア (SLO)
中国 徐麗麗
中国 (CHN)
日本 上野順恵
日本 (JPN)
フランス ジブリズ・エマヌ
フランス (FRA)
70kg級 フランス リュシ・ドコス
フランス (FRA)
ドイツ ケルスティン・ティエレ
ドイツ (GER)
コロンビア ユリ・アルベアル
コロンビア (COL)
オランダ エディス・ボッシュ
オランダ (NED)
78kg級 アメリカ合衆国 ケイラ・ハリソン
アメリカ合衆国 (USA)
イギリス ジェマ・ギボンズ
イギリス (GBR)
ブラジル マイラ・アギアル
ブラジル (BRA)
フランス オドレー・チュメオ
フランス (FRA)
78kg超級 キューバ イダリス・オルティス
キューバ (CUB)
日本 杉本美香
日本 (JPN)
イギリス カリーナ・ブライアント
イギリス (GBR)
中国 佟文
中国 (CHN)

各国メダル数[編集]

国・地域
1 ロシア ロシア 3 1 1 5
2 フランス フランス 2 0 5 7
3 韓国 韓国 2 0 1 3
4 日本 日本 1 3 3 7
5 キューバ キューバ 1 2 0 3
6 ブラジル ブラジル 1 0 3 4
7 アメリカ合衆国 アメリカ合衆国 1 0 1 2
8 グルジア グルジア 1 0 0 1
北朝鮮 北朝鮮 1 0 0 1
スロベニア スロベニア 1 0 0 1
11 ドイツ ドイツ 0 2 2 4
12 ルーマニア ルーマニア 0 2 0 2
13 中国 中国 0 1 1 2
イギリス イギリス 0 1 1 2
ハンガリー ハンガリー 0 1 1 2
モンゴル モンゴル 0 1 1 2
17 オランダ オランダ 0 0 2 2
18 ベルギー ベルギー 0 0 1 1
カナダ カナダ 0 0 1 1
コロンビア コロンビア 0 0 1 1
ギリシャ ギリシャ 0 0 1 1
イタリア イタリア 0 0 1 1
ウズベキスタン ウズベキスタン 0 0 1 1

概要[編集]

前回大会からの変更点

今大会から世界ランキング制度に基づいて出場選手が選出されることになった[2]。また、3位決定戦のシステムが変更になり準々決勝の敗者のみで敗者復活戦を行い、準決勝の敗者と3位決定戦を行うこととなった。

判定に関するトラブル

今大会では審判による技の判定が、試合を監視するジュリー(審判委員)の指摘によって覆されるケースが何度となく起こった。

とりわけ、男子66kg級準々決勝の海老沼匡曺準好の対戦では延長戦に入ってから、海老沼の小内巻込を主審であるブラジルのエディソン・ミナカワが有効と判定して一旦は試合が終了したものと思われたが、審判委員の判断によって有効が取り消されて試合が続行されることとなった。その後旗判定で曺準好を支持する青旗3本が上がったものの観客による大ブーイングが起こり場内が騒然。審判委員からもこの判定に対する異議が唱えられて旗判定のやり直しが指示されると、今度は海老沼を支持する白旗3本が上がり海老沼の勝利となった[3]。この事態を受けてファン・カルロス・バルコス審判委員長は、ビデオ判定システムを活用している3名の審判委員が疑いなく白の海老沼が優勢であったと判断したので判定をやり直させた、さらには、柔道の精神を守り、真の勝者が勝者として畳を下りる状況をつくるのが我々の役目であると述べた[4]IJFも今回の件に関して、最終的に正しい判断が下されたとの声明を出した[5][6]。 なお、この試合で審判を務めた主審のミナカワと副審2名の計3名は翌日の試合の審判から外されたが、その後また復帰した[7]

IJF審判委員である川口孝夫によれば、日本国内の大会においてはジュリーが審判の下した技の評価の高低(例えば、技ありを一本とするなど)を訂正しないことを規定しているが[8]、IJF主催の国際大会では審判委員が状況に応じて訂正することが度々あったものの[9][10]、今回のように旗判定がやり直しになったことは前代未聞だという[11]。また、今回のオリンピックに審判として派遣された大迫明伸は「ここまでジュリーが入り込んでくるとは思わなかった。やりにくいし、今までと全く異質の大会」と語った[12]

宗教に関するトラブル

サウジアラビア初の女子オリンピック選手である78kg超級のウォジダン・シャハルハニは柔道競技に出場するにあたり、イスラム教徒の女性が人前で髪を隠すのに用いるスカーフとして知られるヒジャブの着用を要求してきたものの、IJFがヒジャブ着用により誤って首を絞めるなどの危険性がある、さらにはサウジアラビアの選手も柔道の精神に沿って対戦すべきだとして、一旦は拒否した[13]。しかし、その後のIOCとIJFとサウジアラビア側との3者協議によって、ヒジャブ着用が最終的に認められることとなった[14]。 なお、ヒジャブの着用はアジア柔道連盟主催の大会では以前から認められていたという[15]。また、このシャハルハニは柔道暦2年の青帯で今大会が始めての国際大会出場であったものの、試合では黒帯を付けて出場したが、初戦でプエルトリコのメリッサ・モヒカに一本で敗れた[16]。試合後にはツイッターにシャハルハニを「反イスラム的」と非難する書き込みが多数寄せられたが、シャハルハニの父親は非難する書き込みを投稿した者をまとめて提訴すると息巻いている[17]

ドーピングに関するトラブル

男子73kg級に出場して7位となったアメリカのニコラス・デルポポロは、試合後のドーピング検査で大麻の成分であるテトラヒドロカンナビノールが検出されたために失格処分となった。デルポポロ側は、オリンピック前に出された料理が大麻と一緒に調理されていたことを知らず不注意に食べてしまったためであり、意図して大麻を摂取したわけではないと主張した[18]

ロシアとイギリスの首脳による試合観戦

柔道競技6日目の8月2日には、柔道愛好家として知られるロシア大統領のウラジーミル・プーチンが地元イギリスの首相であるデーヴィッド・キャメロンとともに会場のエクセル展覧会センターを訪れて、決勝の模様を観戦した。両首脳は男子100kg級でロシアのタギル・ハイブラエフが優勝、女子78kg級でイギリスのジェマ・ギボンズが準優勝する場面を目撃することになった[19]

日本勢の歴史的大敗と他国の躍進

前回大会でメダル獲得数が7個と過去最低を記録し、復活を期して臨んだ日本柔道陣は今大会も海外勢に苦戦を強いられることとなった。

男子監督の篠原信一は新旧世界チャンピオン4名(66kg級の海老沼匡、73kg級の中矢力、100kg級の穴井隆将、100kg超級の上川大樹)を擁して、今大会の目標として最低でも金メダル3個獲得という目標を掲げていたが[20]、メダル獲得数こそ前回大会を上回ったものの1964年の東京オリンピックで柔道競技が採用されて以来初めて金メダルなしという歴史的大敗を喫することとなった[21]。また、女子監督の園田隆二は新旧世界チャンピオン5名(48kg級の福見友子、52kg級の中村美里、57kg級の松本薫、63kg級の上野順恵、78kg超級の杉本美香)を擁して、現在の女子代表は「歴史の中で一番強い」と豪語して4個以上の金メダル獲得をもくろんでいたが[22][23]、金メダルは松本の1個のみでメダル獲得数は過去最低の3個という惨敗に終わり、特にお家芸と言われていた48kg級・52kg級で初めてメダルを逃す事態となった。

日本のメダル獲得数は前回大会と同じく7個で、男女通じたメダル獲得数の国別順位ではフランスと並んで国別1位を保ったものの、金メダル獲得数の国別1位を初めて他国に明け渡すこととなった。その一方で前回大会で1個もメダルを獲得できなかったロシアが今大会では金メダル3個に銀メダルと銅メダルを各1個獲得するなど大躍進を遂げたほか、女子は男子と異なりどの国も複数の金メダルを獲得することはなかった。

日本人選手の成績[編集]

男子[編集]

60kg級   平岡拓晃  銀メダル
66kg級   海老沼匡  銅メダル
73kg級   中矢力  銀メダル
81kg級   中井貴裕  5位
90kg級   西山将士  銅メダル
100kg級   穴井隆将  2回戦敗退
100kg超級   上川大樹  2回戦敗退

女子[編集]

48kg級   福見友子  5位
52kg級   中村美里  初戦敗退
57kg級   松本薫  金メダル
63kg級   上野順恵  銅メダル
70kg級   田知本遥  7位
78kg級   緒方亜香里  2回戦敗退
78kg超級   杉本美香  銀メダル

脚注[編集]

  1. ^ Olympic sport competition schedule
  2. ^ ロンドンオリンピック出場資格概要(国際柔道連盟) (PDF)
  3. ^ 青3本が白3本に…海老沼の判定、ビデオで覆る 読売新聞 2012年7月29日
  4. ^ ジュリーの判断で覆った旗判定 「柔道精神守るため」 MSN産経ニュース 2012年7月31日
  5. ^ ビデオ判定の有効性主張=異例の旗判定変更で-IJF〔五輪・柔道〕 時事通信 2012年7月30日
  6. ^ Quarter final Ebinuma, Masashi (JPN) / CHO, Jun-Ho (KOR) IJF 2012年7月30日
  7. ^ あの柔道3審判を謹慎処分…1日だけで解除 読売新聞 2012年7月31日
  8. ^ 全日本柔道連盟「審判委員規定」 全日本柔道連盟
  9. ^ 全柔連だより 第31号 (PDF)
  10. ^ 平成23年度全日本柔道選手権大会の審判員
  11. ^ 海老沼“旗迷惑”前代未聞判定間違い! デイリースポーツ 2012年7月30日
  12. ^ 物議醸すジュリー制度=選手、審判に当惑広がる-柔道〔五輪・柔道〕 時事通信 2012年8月2日
  13. ^ 柔道サウジ女子選手にスカーフ着用認めず「柔道の精神に沿って」 スポーツニッポン 2012年7月27日
  14. ^ 五輪柔道女子、スカーフ着用認める サウジ選手めぐり CNN 2012年7月31日
  15. ^ Judo officials: 1st female Saudi judoka not allowed to wear headscarf at Olympics ワシントン・ポスト 2012年7月26日
  16. ^ Saudi Arabia’s first female judoka out of Olympics alarabiya.net 2012年8月3日
  17. ^ 娘の批判者、まとめて提訴も=女子柔道選手の父怒る-サウジ〔五輪・柔道〕 CNN 2012年8月6日
  18. ^ 薬物違反で米選手失格=柔道男子73キロ級〔五輪・柔道〕 時事通信 2012年8月6日
  19. ^ Vladimir Putin and David Cameron visit the Olympic Judo
  20. ^ 柔道男子・篠原監督「最低でも金メダル3個」 五輪目標に 日本経済新聞 2012年6月26日
  21. ^ ついに金メダルなし 男子柔道、屈辱的な結末 47NEWS 2012年8月4日
  22. ^ 金メダル増産狙う女子代表 苛酷な科学トレ、効果は…? MSN産経ニュース 2012年7月1日
  23. ^ 史上最強の呼び声も高い日本女子柔道、福見友子金1号となるか? サーチナ 2012年7月27日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]