ロバート・ヴォーン

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Robert Vaughn
ロバート・ヴォーン
ロバート・ヴォーン
0011ナポレオン・ソロ』の宣伝写真
本名 Robert Francis Vaughn
生年月日 (1932-11-22) 1932年11月22日
没年月日 (2016-11-11) 2016年11月11日(83歳没)
出生地 ニューヨーク
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
職業 俳優
配偶者 Linda Staab (1974 - )
主な作品
映画
『都会のジャングル』
荒野の七人
ブリット
レマゲン鉄橋
タワーリング・インフェルノ
スーパーマンIII/電子の要塞
テレビドラマ
0011ナポレオン・ソロ
プロテクター電光石火
『権力と陰謀 -大統領の密室-』
華麗なるペテン師たち
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ロバート・フランシス・ヴォーンRobert Francis Vaughn, 1932年11月22日 - 2016年11月11日)は、舞台、映画、TVドラマなどで活躍したアメリカ合衆国俳優。1960年代にTVシリーズ『0011ナポレオン・ソロ』のソロ役で人気を博したが、その後は渋い脇役や知的な悪役として映画、TVで息長く活躍を続けていた。

慣用的にテレビ欄等にはロバート・ボーンと記載されることもある。

生い立ち[編集]

ニューヨーク生まれ。両親ともにアイルランド系カトリック信徒で、父のジェラルド・ウォルター・ヴォーンはラジオ劇を中心に活動していた俳優であり、母マルチェラ・フランセスは舞台俳優である[1]。ロバートが子供の頃に両親が離婚し、母とともにミネソタ州ミネアポリスに移転するが、母親が興行中は祖父母に育てられる[1][2]。高校を卒業した後ミネソタ大学ジャーナリズムを専攻するも中退。その後カリフォルニア州ロサンゼルスに移転しロサンゼルス・シティー・カレッジに入学、その後カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の大学院に進学し演劇学の修士号を取得した[1]。さらにその後俳優として生計を立てながらショウビジネスの研究を続け、1970年に南カリフォルニア大学よりコミュニケーション論の博士号(Ph.D)を取得した[3]。1972年には、このときの論文をもとにした著作『Only Victims: A Study of Show Business Blacklisting』が単行本として出版された[4]

プロフィール[編集]

俳優としての特徴

セシル・B・デミル監督の『十戒』(1956年)のエキストラ出演他、多くのテレビ映画に脇役出演後、ロジャー・コーマンの『恐怖の獣人』(1958年)で映画初主演。1960年の『荒野の七人』で一躍有名になる。1964年から1968年は、デヴィッド・マッカラムと共にテレビ・シリーズ『0011ナポレオン・ソロ』に出演。女性を中心に、主役のヴォーンよりもイリヤ・クリヤキンを務めた共演者のマッカラムが注目を浴びるなど、人気の面では苦戦を強いられたが『0011ナポレオン・ソロ』は1960年代で最も人気のあったシリーズとなり、ヴォーンもスターとしての座を確固たるものにした。因みに、日本ではテレビ・シリーズ版を再編集した長編が数本劇場公開された。

その後、戦争大作『レマゲン鉄橋』(1968年)や『ブリット』(1968年)のプライドの高い嫌味な敵役で印象を残した。また、『荒野の七人』以来の知己であるスティーヴ・マックィーン主演の『タワーリング・インフェルノ』(1974年)には友情出演的に出演している。

ナポレオン・ソロ(ヴォーン)とイリヤ・クリヤキン(デヴィッド・マッカラム)

日本映画『復活の日』(1980年)、日本・スイス合作の戦争スパイ物『アナザー・ウェイ ―D機関情報―』(1988年)にも出演している。また、来日もしている。

その出演歴は映画よりもテレビ出演が多く、『特攻野郎Aチーム』や『刑事コロンボ』など様々なシリーズに出演し、監督作品もある。1974年に女優リンダ・シュターブと結婚し、2人の子どもがいる。

1978年に『権力と陰謀(Washington: Behind Closed Doors)』(NHKで放送)の大統領補佐官役でエミー賞助演男優賞を受賞。

1970年代に入るとフランスのルネ・クレマン監督の『危険なめぐり逢い』(1975年)を始めとした欧州映画にも出演する様になったが、米国では低予算のアクション映画やテレビ映画、テレビ・シリーズのゲスト出演が多くを占める様になった。

1980年代末にはイタリアや南アフリカ共和国産のアクション映画やホラー映画にも幾本か出演し、1996年にはフィリピンのシリオ・H・サンティアゴ監督のSFアクション『ヴァルカン』(未/ビデオ)に出演した。

2004年よりイギリスBBCの『華麗なるペテン師たち』にレギュラー出演。同作品は詐欺師集団の活躍をコミカルに描いた作品だが、ヴォーンは詐欺グループの長老格であるアルバート役を演じた。同番組は全8シーズン、2012年まで放送された。

2016年11月11日、急性白血病で死去[5]。83歳没。

荒野の七人

荒野の七人』(1960年)

1960年にはジョン・スタージェス監督の西部劇『荒野の七人』に7人のガンマンの一人として出演し、脚光を浴びた。ユル・ブリンナー(2)、スティーヴ・マックィーン(1)、ホルスト・ブッフホルツ(5)、チャールズ・ブロンソン(6)、ブラッド・デクスター(4)、ジェームズ・コバーン(3)が共演で、ヴォーンは彼らの中で最後に亡くなった(2016年)。()内の数字は亡くなった順番。

後年、本作はテレビ・シリーズ化(1998年-2000年)され、ヴォーンは映画版とは別の判事役で準レギュラーを務めた。主演はマイケル・ビーンで、日本ではちばテレビで放送された。

1980年には『荒野の七人』の宇宙版である『宇宙の7人』にもオリジナルで演じたニヒルな役どころに扮した。リチャード・トーマスジョージ・ペパード等が宇宙ガンマン役で共演している。

出稼ぎ稼業

1980年代はビデオ・バブルの時代にあり、アクション映画の需要が高かった。ヴォーンも過去の名声を生かして、イタリアや南アフリカ共和国の低予算映画の格上げのために貢献した。

イタリアではホラー映画『キリング・バード』(1987年)や現代マカロニ・ウエスタンの『ビッグ・ファイター』(1987年)に出演した。また、当時の南アフリカ共和国でも疑似米国映画が量産されており、オリヴァー・リード共演の『悪魔の帝国/シンジケート・ブレイク』(1984年)と『壮絶!人質奪還/戦闘プロフェッショナル』(1987年/未/ビデオ)や『炎のチャンプ/天才ボクサー、キッド・マッコイ』(1988年/未/ビデオ)、『CIA/KGB大統領の密使』(1988年/公開当時はイタリア映画として紹介された)、『エドガー・アラン・ポー/早すぎた埋葬』(1989年)にも出演していた。尚、ナチスの残党役で出演したキャノン映画末期の『デス・リバー/失われた帝国』(1989年)も南アフリカ共和国ロケで、ドナルド・プレザンスハーバート・ロムといったかつての名優も共演していた。

主な出演作品[編集]

映画[編集]

公開年 邦題
原題
役名 備考 吹き替え
1957 地獄の分れ道
Hell's Crossroads
ボブ・フォード
1958 恐怖の獣人
Teenage Cave Man
The Symbol Maker's Teenage Son
1959 絞首台の決闘
Good Day for a Hanging
エディ・キャンベル(ザ・キッド)
都会のジャングル
The Young Philadelphians
チェスター(チェット)
1960 荒野の七人
The Magnificent Seven
リー 矢島正明(NETテレビ旧版)
平田広明(スター・チャンネル版)
1961 ビッグ・ショウ
The Big Show
クラウス
1964 0011ナポレオン・ソロ/罠を張れ
To Trap a Spy
ナポレオン・ソロ ストック・フッテージ 矢島正明
1965 0011ナポレオン・ソロ/消された顔
The Spy with My Face
1966 0011ナポレオン・ソロ対シカゴ・ギャング
The Spy in the Green Hat
0011ナポレオン・ソロ/地獄へ道づれ
One Spy Too Many
矢島正明
マーメイド作戦
Glass Bottom Boat
0011ナポレオン・ソロ/消えた相棒
One of Our Spies Is Missing
1967 ベネチタ事件
The Venetian Affair
ビル
0011ナポレオン・ソロ/ミニコプター作戦
The Karate Killers
ナポレオン・ソロ ストック・フッテージ 矢島正明
1968 0011ナポレオン・ソロ/スラッシュの要塞
The Helicopter Spies
0011ナポレオン・ソロ/地球を盗む男
How to Steal the World
ブリット
Bullitt
ウォルター・チャルマース上院議員 矢島正明
1969 火曜日ならベルギーよ
If It's Tuesday, This Must Be Belgium
アントニオ
レマゲン鉄橋
The Bridge at Remagen
クルーガー少佐 西沢利明(TBS版)
川津祐介(テレビ東京旧録版)
内田直哉(テレビ東京新録版)
1970 ジュリアス・シーザー
Julius Caesar
セルウィリウス・カスカ
1971 皆殺しL・Aコネクション
Clay Pigeon
ニールソン
1972 狙われた宝石
The Woman Hunter
ジェリー・ハンター テレビ映画
別題『ねらわれた宝石』、『ウーマン・ハンター 狙われた宝石』
西沢利明
1974 タワーリング・インフェルノ
The Towering Inferno
ゲイリー・パーカー上院議員 小林恭治(フジテレビ版)
矢島正明(日本テレビ版)
安原義人(TBS版)
森田順平(BSジャパン版)
1975 危険なめぐり逢い
La baby sitter
スチュアート・チェイス 矢島正明
1976 キス・ミー、キル・ミー
Kiss Me, Kill Me
エドワード・フューラー テレビ映画
1977 スターシップ・インベーション
Starship Invasions
アラン・ダンカン 矢島正明(フジテレビ版)
デモン・シード
Demon Seed
プロテウス4号 声の出演 内海賢二
1978 ブラス・ターゲット
Brass Target
ドナルド・ロジャース 矢島正明
1979 ナチス・クローン
The Lucifer Complex
グレン・マニング
さよならミス・ワイコフ
Good Luck, Miss Wyckoff
ニール
1980 サザンクロス/偽りの暗殺計画
Cuba Crossing
ハッド
ミッキー・ローク/ロサンゼルス美女連続殺人
City in Fear
ハリソン・クロフォード3世 「トップ記事殺人事件」(NHK,1983/04/16放送) 田口計
復活の日 バークレイ上院議員 日本映画 矢島正明
HANGER 18/ハンガー18
Hangar 18
ゴードン・ケイン 秋元羊介
宇宙の7人
Battle Beyond the Stars
ゲルト 矢島正明
1981 S.O.B.
S.O.B.
デヴィッド・ブラックマン
1982 1929/米国が震えた日
The Day the Bubble Burst
リチャード・ホイットニー テレビ映画
ダーティ・トラップ
A Question of Honor
フレデリック・ウォーカー
1983 0011ナポレオン・ソロ2
0011 Napoleon Solo 2
ナポレオン・ソロ
スーパーマンIII/電子の要塞
Superman III
ロス・ウェブスター 矢島正明
1985 ケリー・マクギリスの プライベート・セッション
Private Sessions
オリヴァー テレビ映画
エアポート'85
International Airport
パウエル
1986 ブラックライダー
Black Moon Rising
エド・レイランド 矢島正明
エド・マロー/テレビを変えた男
Murrow
フランクリン・D・ルーズヴェルト テレビ映画
L.A.恋愛大作戦/プールサイド・ダンディ
Prince of Bel Air
スタンリー・オーバック
デルタ・フォース
The Delta Force
統合特殊作戦コマンド司令官ウッドブリッジ将軍 糸博(TBS)
1987 キリング・バード
Killing Birds - Raptors
フレッド・ブラウン
大統領暗殺指令
Hour of the Assassin
サム・メリック
デスペラード/ながれ者
Desperado
ジョン・ワーリー保安官 テレビ映画
メタルフォース/蒼き戦士
Nightstick
レイ・メルトン
ビッグ・ファイター
Renegade
ローソン 吉水慶
壮絶!人質奪還/戦闘プロフェッショナル
Skeleton Coast
シュナイダー
1988 アナザー・ウェイ ―D機関情報―
“ミスターD”アレン・ウェルシュ・ダレス 日本・スイス合作映画 小林修(テレビ朝日)
悪魔の帝国/シンジケート・ブレイク
Captive Rage
エドゥアルド・デラコルテ
1989 CIA/KGB 大統領の密使
The Emissary
マッケイ
ゾンビ・パラダイス/ゾンビが街にやってきた!
C.H.U.D. II - Bud the Chud
マスターズ
デス・リバー/失なわれた帝国
River of Death
ウォルフガング 矢島正明
1990 いつも一緒にいて欲しい
Nobody's Perfect
ダンカン
ピンク・ノーベンバーを追え!?
Going Under
ウエッジウッド
エドガー・アラン・ポー/早すぎた埋葬
Buried Alive
ゲイリー
ダーク・アベンジャー/暗闇からの復讐者
Dark Avenger
ピーター・キングホーン テレビ映画
1996 ジョーズ・アパートメント
Joe's Apartment
ドハティ 小林修
1997 ヴァルカン
Vulcan
バクスター
インモラル捜査官
Motel Blue
マッキンタイア 沢木郁也
1998 VISIONS/サイキックコップ
Visions
シルヴェストリ捜査官
トレジャー・ミッション 破壊島
McCinsey's Island
ウォルター・デンキンス 矢島正明
バーチャル・ウォーズ3
Host
アダム テレビ映画
ベースケットボール 裸の球を持つ男
BASEketball
バクスター・ケイン
2001 プーティ・タン
Pootie Tang
ディック・レクター
2004 マイスーツ、マイライフ
2BPerfectlyHonest
ニック

テレビシリーズ[編集]

放映年 邦題
原題
役名 備考 吹き替え
1964-1968 0011ナポレオン・ソロ
The Man from U.N.C.L.E.
ナポレオン・ソロ 105エピソードに出演 矢島正明
1972-1974 プロテクター電光石火
The Protectors
ハリー・ルール 52エピソードに出演
1975 刑事コロンボ/歌声の消えた海
Colombo: Troubled Waters
中古車商ヘイドン・ダンジガー 西沢利明(NHK)
1976 刑事コロンボ/さらば提督
Colombo: Last Salute to the Commodore
造船会社社長チャールズ・クレイ
1977 権力と陰謀 -大統領の密室-
Washington: Behind Closed Doors
フランク・フラハティ首席補佐官 ミニシリーズ 田口計(NHK)
1978-1979 遥かなる西部 -わが町センテニアル-
Centennial
モーガン・ウェンデル ミニシリーズ 田口計(NHK)
1982 引き裂かれた祖国/ブルー&グレイ
The Blue and the Gray
レイノルズ ミニシリーズ
1984 最後の要塞/ポートモレスビーへの道
The Last Bastion
ダグラス・マッカーサー ミニシリーズ
1986-1987 特攻野郎Aチーム
The A-Team
ハント・ストックウェル将軍 13エピソードに出演 小林修(テレビ朝日)
1991 勝利への疾走
Tracks of Glory
モリス ミニシリーズ
1997-1998 ロー&オーダー
Law & Order
カール・アンダートン 3エピソードに出演
2004-2012 華麗なるペテン師たち
Hustle
アルバート・ストローラー 48エピソードに出演 矢島正明
2006 LAW & ORDER:性犯罪特捜班
Law & Order: SVU
テイト・スピア 第8シーズン第2話「幼なすぎる少女」
2008 リトル・ブリテンUSA
Little Britain USA
Paul Getty II 1エピソードに出演
2015 LAW & ORDER:性犯罪特捜班
Law & Order: SVU
ウォルター・ブリッグス 第16シーズン第16話「継母と継娘」

日本語吹き替え[編集]

0011ナポレオン・ソロ』のナポレオン・ソロ役をはじめとして、矢島正明が専属(フィックス)で担当している。

また、矢島はヴォーン本人とは来日時に対面したことがあり、握手の仕方のスマートさと挙措の美しさに感動したという。その後、記者会見の場で矢島が報道陣に交じって質問した際は「オー! マイ・ボイス(私の声の人)」と公認されている[6]

このほかにも、西沢利明田口計小林修なども複数回、声を当てている。

参照[編集]

  1. ^ a b c Holston, Noel (1999年10月18日). “The man from M.P.L.S. - Robert Vaughn comes home to refresh childhood memories as he prepares for his autobiography”. Minneapolis Star Tribune: p. 1E 
  2. ^ Robert Vaughn”. TV.com. 2012年9月20日閲覧。
  3. ^ Obituary: Robert Vaughn”. BBC.com. 2019年2月3日閲覧。
  4. ^ Robert Vaughn, 'The Man from U.N.C.L.E.' star, dies at 83”. ChicagoTribune.com. 2019年2月3日閲覧。
  5. ^ “米俳優のロバート・ボーン氏死去=「荒野の七人」出演”. 時事通信. (2016年11月12日). http://www.jiji.com/jc/article?k=2016111200107&g=int 2016年11月12日閲覧。 
  6. ^ 『スター・トレック』カーク船長の声でおなじみ!矢島正明、いまの声優界に喝【声優伝説】”. シネマトゥデイ (2016年9月4日). 2016年11月21日閲覧。

外部リンク[編集]