ロジバン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ロジバン
lojban
ロゴ
シンボル
発音 IPA: [ˈloʒban]
創案者 LLG
創案時期 1987年
設定と使用 思考・表現における話者の自在性・中立性を目指す
話者数
目的による分類
参考言語による分類 文法:述語論理
語彙:アラビア語英語スペイン語ロシア語ヒンディー語中国語ラテン語ギリシャ語ログランラーダントキポナ、他
音韻:ログランエスペラント、他
公的地位
公用語 なし
統制機関 LLG (1987~1997年まで)
言語コード
ISO 639-1 なし
ISO 639-2 jbo
ISO 639-3 jbo
テンプレートを表示

ロジバン ( lojban [loʒban] ) は、ログランを元に、さらなる機能性を追求して LLG が開発を引率してきた人工言語である。1987年に公表され、1997年に文法が暫定的に完成、2002年から実用段階に入った。主にインターネットを中心とする国際的な研鑽が進んでいる。

特徴[編集]

ログランから継承したものも含め、ロジバンは以下の性格を有する。

高性能な文法:

  • 万能な記述形態として知られる述語論理が文法の基盤をなす。自然言語では表現が困難であるような複雑な意味合をごく明晰に記述したり、文芸的理由から敢えて多義的な表現を織るなどができ、話者の自在性に尽くす。ロジバンの表記法や構文法はいかなる不規則性もきたさないように設計されているため、コンピュータによる解析やによる読解が容易である。そのため、日常会話だけでなくプログラミングにも適しており、将来的に機械と人間が同じ言語を共有できるようになる可能性を示唆している。ニューヨーク・タイムズとのインタビューにおいて、『In the Land of Invented Languages』の著者でありエスペラントクリンゴンに精通している Arika Okrent は 「最も完成された文法を持つ人工言語はおそらくロジバンです」[1] と述べている。
  • 命題の論理的形成とは別に、感情態度を表す言葉を多く備えている。これによって、話者が自覚できるかぎりでどの心情も表現できるようになっている。
  • 新しい言葉を無制限に合成できる。約1200あまり(2014年時点)という語根の数自体が自然言語のいわゆる常用単語の数よりも遥かに少なく、それであって可能な総語彙数(144万語以上)が自然言語のそれを遥かに超える。合成語の各成分は非曖昧に特定の語根に対応するので、同音異義語ができないようになっている。これによって、日本語話者が未知の熟語の意味をそれを構成する漢字それぞれの意味から類推するのに近いことがロジバンにおいても可能となっている。また、語根と合成語、すなわちロジバン本来の単語は、外来の固有名称と明確に区別できるので、人名と語彙が被るといったことも回避されている。

言語学的・文化的に中立:

  • 当初の開発者および現在の話者達に一貫して、自己の文化的な背景に流れず努めて中立を保つことが志されている。その現れの一つとして、従来の人工言語にはみられないほどに広範な語派を源泉に語根を創出したことが挙げられる。
  • 表記文字は公式には指定されておらず、音字一致の原理を維持できるかぎりでどの表記体系も認められる。現在の主流(2014年10月現在)であるアスキー式では、各国のどのコンピュータ・キーボードからでも即座に入力できる。
  • 単数・複数、男性・女性、能動・受動といった文化特有的な識別に言葉の形が影響されない設計になっている。すなわち、それらの要素を表現することを強制されないようになっており、数や能動関係の明示・非明示は話者の意志に委ねられる。特に、男性・女性について自由であることは、男性形を基本として女性形が派生されるという、自然言語や他の人工言語に広くみられる男尊女卑の意識を回避できるということでも有意義である。先立つログランの目的がそもそもサピア・ウォーフの仮説の如何を研究するための言語的基礎を用意することであり、「言語は人の思考形態を左右する」というこの仮説に対してロジバンは肯定的な姿勢を継承している。自然言語はときに閉塞的であったり不条理であったりする伝統と慣習を土台としており、それによる思考の枷が存在しうる。その枷から離れて物事を理解し語ることの意義を、ロジバンを通して実感できる可能性がある。

文法[編集]

以下では、ロジバンの文法についてごく簡潔に解説する。そのため、初学者の学習テキストとしては適していないおそれがある。学習する際は、外部リンクの教材を参考にするのが望ましい。

概念[編集]

ロジバンの文法は人間の言語のものとしては無類の性格をしており、これを体系的に解説・把握するうえでは一般の言語学用語では間に合わない場合がある。そのため、ここでロジバン独自の概念をいくらか導入しておく必要がある。以下の表は、ロジバン文法に関する、ロジバン由来および英語由来の文法用語に、どのような日本語の文法用語が対応しうるかを示したものである。正規の日本語訳というものが定着していない。何らかの訳にたいする日本語話者の共通理解を準備するものとして暫定的な日本語を右柱に掲載してある。

brivla
bridi valsi
用言
動詞形容詞副詞
体言
形容詞性動詞性普通名詞
内容語
gimvla
gismu valsi
語根 根語
jvovla
lujvo valsi
合成語複合語 合語
fu'ivla
fukpi valsi
借用語外来語 借語
ma'ovla
cmavo valsi
用言
名詞性動詞/形容詞、形容動詞副詞コピュラ
体言
形式名詞
機能語
前置詞接置詞接続詞
副詞助詞助動詞関係詞関係副詞
格助詞*
cmevla
cmene valsi
用言
名詞性動詞/形容詞、形容動詞
体言
固有名詞
名称語
* ロジバンには文法範疇としてのは存在せず、これに相当する語句の関係は place structure に内部化されている。文中の語順を変えるとき、この内部的な関係を維持するために該当語句に標識を付けることになり、この機能を日本語の格助詞になぞらえることができる。

brivla(ブリヴラ)、ma'ovla(マホヴラ)、そして cmevla(シメヴラ) は、それぞれ異なる形態法則に基づいており、形からはけっして混同されないようになっている。ロジバンの形態論上の三品詞である。多くの他言語と異なり、ロジバンでは品詞型と構文上の働きが独立している。例えば英語の名詞はその品詞型ゆえに述語となることがないが、 brivla をはじめとするロジバンの三品詞は述語にも主語にもなる(後続の表を参照)。ただしこれは三品詞が文中においてどっちつかずの曖昧な存在であるということではない。構文上どのような振舞いをするかについては精密な統語論が設けられている。また、言葉の形が文法範疇に応じて変化することはなく、よって、屈折活用ディクレンション格変化などはロジバン文法には登場しない。

ma'ovla と cmevla という名称は、それぞれの語源である cmavo と cmene に略される。むしろそちらの方がコミュニティにおける実際の使用率は高い。 なお、valsi は「語」を意味する。 brivla との語呂が合致して品詞関係を把握しやすくなることから、 cmavo と cmene にそれぞれ valsi を付け加えた合成語、 ma'ovla と cmevla を用いることが正規の解説では有意義である。

ma'ovla には多くの下位分類がある。その一つ一つに分類名称(selma'o / セルマホ)が付いている。例えば attitudinal (心態表現に関する語)は UI という類名に属する。これは、代表的な attitudinal である ui という語に由来している。このように各類名はそれに属する象徴的な ma'ovla が元となっている。広義では同じ UI 類でも、たとえば evidential と discursive (ロジバン-日本語辞書ではそれぞれ「認識系」、「談話系」と訳されている)はさらに UI2 と UI3 という具合に狭義化されている。これらの類名は本格的な構文解析やパーサ開発の中で求められた区分であり、普段の会話で重視する必要はない。同類の ma'ovla は同じ文法に従うため、学習の際の参考材料にはなる。例えば UI 類の用法(文法的振る舞い)を習得するということはこれに属する ma'ovla を既知・未知に関わらず全て文法的に正しく使えるようになるということである。以下は ma'ovla の分類をいくらか簡略化した表である:

digit/number PA 数詞時数詞量化子 数量詞
descriptor LA LE 冠詞 冠詞
abstractor NU 形式名詞 抽象詞
pro-sumti KOhA 代名詞関係代名詞 代項詞
pro-bridi GOhA 代述詞
attitudinal UI 心態詞
emotion UI1 感動詞間投詞 感情系
evidential UI2 法助動詞 認識系
discursive UI3 定義副詞 談話系
modifier UI4-5 感動詞間投詞 修飾系
vocative COI 間投詞呼格 呼応系
connective A BIhI JOI GA GAhO GI GIhA GUhA JA 接続詞論理演算子 接続詞
operator NAhU NUhA PEhO BIhE FUhA VUhU MAhO 演算子 演算詞
tense PU ZA VA ZEhA VEhA VIhA FAhA KI 助動詞時詞 間制詞
aspect ZAhO ROI TAhE FEhE 助動詞 相制詞
modal BAI 助動詞 法制詞
rafsi 語幹形態素 語幹

rafsi は、全ての gismu および幾つかの cmavo に具わる、語の合成に用いられる形態素である。これのみから合成されるのが lujvo であり、部分的に用いるのが fu'ivla である。 rafsi は単独では働かず、かならず他の文字列と結びついて用いられる。このことから rafsi は形態論・統語論の両面に関して独自の品詞型を呈さない。

jufra
li'erpau + cnipau + bridi
(sentence)
li'erpau
sumti
話題 (prenex) 話題部
cnipau
ma'ovla
(attitudinal) 心態部
bridi
terbri + selbri + sumtcita
命題論理式整論理式原子論理式
(preposition)
命題部
selbri
brivla
ma'ovla + sumti ( ma'ovla + brivla ) + ma'ovla
ma'ovla + sumti ( ma'ovla + cmevla ) + ma'ovla
ma'ovla + bridi + ma'ovla
ma'ovla + ma'ovla
賓辞/述語
(predicate)
述辞
terbri
*sumti
ma'ovla
ma'ovla + brivla
ma'ovla + cmevla
主辞/主語目的語補語
変数
(argument)
項辞
sumtcita 名辞付加詞 (term/tag) 付辞
tense
ma'ovla + sumti
時制**/テンス 間制
aspect
ma'ovla + sumti
相/アスペクト 相制
modal
ma'ovla + sumti
法/ムードモダリティ 法制
* 項としての性質を持つ単位全般を sumti と呼ぶ。 bridi を築くうえで selbri のとる sumti は特に terbri と呼ばれる。 li'erpau と sumtcita でも sumti は用いられうる。
** ロジバンでは時間だけでなく空間も tense の対象となる。よって、日本語の「時制」という限定的な用語を当てはめるのは不適切である。暫定的な訳では両者の共通文字である「間」をとって「間制」としている。これに伴い、相を表す aspect と法を表す modal にも「制」の字を持たせている。
place structure 意味フレーム形成規則 項則

全ての selbri が有する、構文上の terbri の配列規則を place structure という。項としてどのような terbri を幾つ取り結ぶかは selbri の意味範疇や主題役割により様々である(結合価を参照)。デフォルトでは最大五つだが、必要に応じて拡張できる。項位置 としての諸 terbri の配列は x1 x2 x3 x4 x5 と表す。 gismu 表などでもこの表記が用いられる。

或る事象における能動・受動の関係すなわちは、該当する selbri の place structure 中に内項と外項の違いとして内部化されている。このため、文面上では主格言語(例:日本語、英語)と能格言語(例:バスク語、チベット語)の相違に拘束されない。主観的な能動性・受動性を強調するための処方としては UI 類 ma'ovla を使うものがある。

tanru 用言
複合動詞
体言
複合名詞
重語

幾つかの selbri が連なって意味合が重層化したものを tanru という。構成要素は修飾側(seltau)と被修飾側(tertau)とに分かれ、後者が基本の place structure を提出する。よって統語論上はあくまでも単一の selbri として振舞う。 selbri に該当するものは全て sumti 化することができるので、 tanru もまた sumti 化することができる。なお、 jvovla は tanru を一語化したものと捉えられる。

音韻論(概要)[編集]

ロジバンでは音声が基盤となって文字が派生する。発音にたいする綴りの忠実さを維持できるかぎりではどの文字体系の使用も認められる。したがって“公式”のアルファベットを持たない。現在の主流(2014年10月現在)はコンピュータの入力規格として普遍的なアスキー式である。言文が一致するということが前提となっているので、書言葉は口言葉と表裏一体であり、音韻論の明確さは表記法の精巧さに反映される。


形態論(概要)[編集]

ロジバンの言葉は、その姿(音・綴り)から三つの型に分けられる。 brivlama'ovlacmevla である。これら三つの形態品詞は、それぞれに固有の音声構造すなわち子音(C)と母音(V)の並び方に特徴づけられており、互いに混同されないようになっている。すなわち、ロジバンにおいて或る語が発せられるとき、読み手・聞き手は、その語の意味を知らなくとも品詞は察知できる。これはロジバンに固有の言葉と外から借り入れる言葉とが同音異義語となるのを防ぐうえで有意義である。たとえば「近畿大学」という日本語名称を英語に持ち込むと「Kinki University」となるが、「kinki」の音は「kinky」と重複し、「近畿」本来の意味を知らない英語話者には「Kinky University」すなわち「変態大学」と解されかねない。ロジバンでは借入語をその音形から固有語と区別できるのでこのような問題が起こらない。


統語論(概要)[編集]

ロジバン文の統語論的利点は、自然言語の構文の曖昧さと比較するところで認識される。たとえば、以下は日本国憲法序文からの日本語文の引用である:

われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。

主語「われら」にたいする述語は末尾の「信ずる」だが、その途上にまず「無視してはならない」という別の述語が介在しており、また他の語句や読点による不規則的な区分が交わってきて文の仕組がやや煩雑となっている。そこでは、パーサなどが「われらは~無視してはならない」と「政治道徳の法則は~と信ずる」などの誤った区分に基づいて解析してしまうのを免れるのが困難となっている。これは自然言語の曖昧さである。このような曖昧性を越えて文の真意を推しはかるには一定の抽象化(たとえば「われら」と「無視してはならない」の間にある文法的引力を恣意的に看過しながら文末の「信ずる」を結びとして優先し、これを受け取ったところで前半の節を参照し直す過程)が要されるが、それと引き換えに文成分の合理的な流れが犠牲となる。ロジバンの統語論は、自然言語にみられる文法上のこのような多義性を根本から回避している。また、上記のような長文の記述においては、統語論的一貫性を維持しながら語順を自在に変化させて認知的に易しい表現を模索することができる。曖昧でない構文はまたコンピュータにとっても扱いやすい記述につながり、この形式言語的な性格からロジバンはプログラミング言語の一つとしても使用できるという潜在性を持っている(ロジバン用のコンパイラが現在存在するわけではない)。


ロジバン文の中核をなすのは、事物と事物との関係を表す selbri である。

.i do mamta mi
.i do patfu mi

この二つの表現の差は、{do} と {mi} とがどういう関係にあるのかを表す selbri {mamta} と {patfu} の違いにある。 selbri によって取り結ばれている {do} や {mi} は terbri であり、 selbri と terbri のまとまりが bridi である(つまり {do mamta mi} というまとまりは一つの bridi である)。 selbri は全て、どのような terbri をどのように取り結ぶのかについて公式に定義されている。これを place structure (以下 PS ) という。 mamta と patfu は異なる PS を有する。 PS の違いが命題の違いを成す。或るロジバン文を理解するということは、どの terbri がどの selbri の PS によって取り結ばれているのかを把握することである。取り結ばれ方は非曖昧であり、文法を会得している者の間では bridi の構造は全て正しく一貫して解釈される。

.i
lo ti mamta cu mamta lo ta mamta

{mamta} という言葉が三つ登場しているが、そのうちの一つが主要の selbri である。他の読み方はなされえない。相応の知識を身につけた話者には次のように認識される:

.i
lo ti mamta cu mamta lo ta mamta
terbri selbri terbri
bridi

つまり中央の {mamta} がメインの selbri で、他の {mamta} は terbri の一部であるということ。

西洋言語における文法概念との比較においてしばしば取り上げられる「象は鼻が長い」という日本語の題述構造の文は、ロジバンにおいて次のように忠実に再現される:

.i
lo xanto zo'u lo nazbi cu clani
sumti terbri selbri
li'erpau bridi

{lo xanto} (象)を話題として {zo'u} が区切り、続いて terbri {lo nazbi} が selbri {clani} と結びつく。 {cu} は terbri と selbri の区切を示す。この区切が無いと、1) {nazbi} は {clani} に流れて {nazbi clani} という一つの selbri をまず形成する、2) これを冠詞 {lo} が取り込んで terbri 化する、3) 結果、この文から selbri が消失する。

(terbri は sumti の一種である。 sumti のうち、 bridi の部品であるものが terbri。 sumti は項として扱えるもの全般を指し、そのうち selbri が取るものを特に指すのが terbri。)

英語の「Elephants have long noses.」は次のように再現される:

.i
su'o lo xanto cu ponse lo clani nazbi
terbri selbri terbri

selbri が替わるほか、 terbri が二つになる。

上の二例を折衷するかたちでより一般的なロジバン表現に書き換えると次のようになる:

.i
lo xanto cu nazbi clani
terbri selbri

あえて日本語に訳し返せば「象は鼻長である」といった趣に近い。ここでは terbri は {lo xanto} 一つであり、これが selbri {nazbi clani} と結びついている。

命題の生成には関与しないところで感情や態度を表すことができる。これには ma'ovla の一種 cnima'o (心態詞)を用いる。

.i
.ui lo pendo cu klama
terbri selbri
cnipau bridi

文の論理性に寄与しないことから cnima'o の文法空間 cnipau は基本的に li'erpau と bridi から独立している。それでも cnima'o が修飾するのはあくまで文の特定の内容物であり、実際の文面ではしばしば基本の垣根を越えて li'erpau や bridi 中に入り込むことになる。ここでは文の開始を意味する {i} に係っているので文全体を修飾している。 {lo pendo cu klama} (友達が来る)という事象全体について {.ui} で嬉しさが表されている。左の語に係るというこの原理は恒常である:

.i
lo .ui pendo cu klama
    terbri selbri
bridi

冠詞に係っているので冠詞の中身全体を修飾する。

.i
lo pendo .ui cu klama
terbri selbri
bridi

「友達」の部分だけに係っている。

.i
lo pendo ku .ui cu klama
terbri selbri
bridi

terbri の終わりを示す語に係っているので terbri 全体に係る。

.i
lo pendo cu klama .ui
terbri selbri
bridi

前者三例は「友達」にたいする嬉しさの微妙な違いを表し分けている。後者は「来る」という事象についての嬉しさを表している。このように cnima'o の対象範囲は常に明確である。また必要があれば対象範囲は特定の処方によって自由に拡張させられる。

語順は自由に変えることができる。要となる原理は PS である:

.i
mi ra ti ta ciska
x1 x2 x3 x4

x1 x2 x3 x4 は selbri {ciska} の PS の変数項である (このような変数項は結合価として他の自然言語にも存在し、ロジバンはそれを辞書で明文化しているにすぎない)。それぞれに {mi} {ra} {ti} {ta} という terbri が収まっている。「私は・あれを・ここに・あれで、書く」という日本語表現の語順すなわち SOCV をそのまま反映させた形となっている。厳密にはロジバンの selbri は動詞でも形容詞でもなく、また terbri は主語でも目的語でもないので、 S や O や V とのアナロジーはあくまで擬似的なものでしかない。英語の SVOC を模せば次のようになる:

.i
mi ciska ra ti ta
x1 x2 x3 x4

selbri の位置を移すだけでなく、 terbri 同士を入れ換えることもできる:

.i
ra se ciska mi ti ta
x2 x1 x3 x4
.i
ta ve ciska ra ti mi
x4 x2 x3 x1
.i
fe ra fi ti ciska fa mi ta
x2 x3 x1 x4

結果として如何なる言語の訳においても本来の語順を正しく反映させることができるようになっている。

先ほどはあった {cu} がこれらの例に無いのは、 {mi} {ra} {ti} {ta} といったものがここではそれぞれ terbri としてしか解釈しえないので selbri との区切を明示する必要がないからである。このように、文成分の境界を示すために用意されている境界子は条件に応じて省略されうる。言い換えれば、解析上の曖昧さが危惧される場合には相応の境界子で対処する。これらによって解決できない構文の曖昧性は実質的に無い。

一般の言語では文の境界を句点終止符で示す。これは書言葉の産物であり、口言葉における直の対応音声を持たない。たとえば「僕は町に行く。君が僕を待っている。」における二つの句点(。)は音声化されない。文が分かれていることはイントネーションによって漠然と示される。一方、言文の一致に基づくロジバンでは、文の区切を無音の記号ではなく有音の言葉で表す:

.i
mi lo tcadu cu klama
.i
do tu'a mi denpa


{i} に付いている点は音韻論上のものであり、これ自体が文の区切を示しているわけではないことにまず注意されたい。

文の接続を意味するものなので、文の間だけに置く。英語の終止符などと違い、文が続かない場合には必要とされない。このことから、「以上/完」よりも「そして」という語感を帯びやすいが、もっぱら論理的な「そして/AND」や時間的な「そして/THEN」を表す言葉は別に用意されている。

文の繋がりに論理性や時間性などを含める処方としてまず相応の言葉をそのまま {i} と組み合わせるものがある:

.i
mi lo tcadu cu klama
.imu'ibo
do tu'a mi denpa
.iju
lo nu go'e cu mutce nandu


左項右項とある接続部のうちの一つを出したあとに接続を開始することからこの例は後置接続(afterthought connective)と呼ばれる。

両接続部よりもまず先に接続の言葉を出しておくという用法もある:

.i
gu semu'igi
mi lo tcadu cu klama
gi
do tu'a mi denpa
gi
lo nu go'e cu mutce nandu


これは前置接続(forethought connective)と呼ばれる。 {i} が併用されていないが、接続されているものは文である。


考察[編集]

ロジバン文法と述語論理との対応[編集]

ロジバンは(一階)述語論理を文法の基盤としている。上述の通り、ロジバン文法には自然言語の文法用語では間に合わない用語が多いものの、そのいくつかは述語論理の用語を借用することで比較的適切に解説できる。そのため、ロジバンの初学者向けの講座(英語・日本語関わらず)では、述語論理から借用した用語をロジバン独自の文法用語に一時的に充てていることが多い。しかし、ロジバンは述語論理を文法基盤としているだけであって、ロジバン自体が述語論理であるわけではない。そのため、安易にロジバン独自の文法用語と述語論理の用語を対応付けしないように注意は必要であるが、この対応を考えることによって得られる理解は少なくはない。

述語論理では命題が述語と項の2つの要素からなっているとする。ある2つの項をとる述語をF、定項をa, b とすると、

F(a, b)

は命題となる。ロジバンの文法の基本的な部分は、述語論理のこの記述形式を自然言語ライクに書き換えたものとして捉えることができる。すなわち、述語のとる項の順序を保持したまま並べ、その項の列のどこかに述語に相当する語を挟み込むことで命題(に相当する構造)となるようにする。上の例でいえば、

a b F

a F b

のように記述できる。

このことから、ロジバン文法の用語と述語論理の用語に次のような対応関係がみなされることが多い:

bridi 命題(文)
selbri 述語
sumti


比較: ログラン[編集]

ロジバンは、先立つジェームズ・クック・ブラウンが開発したログランから派生した。両者の主な違いは語彙にある。ブラウンがログランの文法を幾度となく改変していたところ、一部の者達がこれを見限り、ログランの総括を独自に進めようとした。そのおり、元来の語彙について草案者であるブラウン自身が著作権を主張したので、分裂派は語根をゼロから創りなおすことにした。これが現在のロジバンの gismu の発端である。係争は法廷にてブラウンの主張が却下されるという結果になるが、その時点で gismu 開発が一通り実を結んでいたので、分裂派はこれを自分達のログラン解釈あらためロジバンの正規の語根とするにいたった(LLG もここに結成される)。LLG 自身はこれをログランからの決別とは捉えておらず、むしろログランの真価を発揮させるためのプロジェクトとしてみている。「Lojban: A realization of Loglan」という標語からもその姿勢が明らかである。

この新しい語根群、gismu は、ログランと同様、異なる自然言語から採取された言葉を融合することで作られた。ロジバンではさらに各言語の話者数を“重み”としてアルゴリズムに加えており、このことがログランとロジバンの語音の差異に大きく影響した。たとえば「標準・規範」を意味するログラン語は「norma」だが、ロジバンでは英語など他の源泉語にたいする中国語の比重が大きいため「常/cháng」の構成音が有力となり「cnano」が生まれた。また、ログランの各文法概念には英語・ラテン語・ギリシャ語などの自然言語の言葉が当てられていたのにたいし、ロジバンでは独自に内部由来の用語が編み出された。例: primitives/gismu、lexeme/selma'o、little words/cmavo、metaphor/tanru、borrowing/fu'ivla 。

ログランとロジバンは同じ文法思想を汲んでいる。具体的な違いとしては、ロジバンの設計が yacc に沿っていること、プリプロセッサの記法を取り入れていること、などが挙げられる。また、ログランにおける q と w はそれぞれ k と u- の同音異字としてロジバンでは削除された。形態論上の認識のしやすさから h は ' (アポストロフィー)に置き換えられた。ロジバンの音素配列体系がログランのそれよりも厳密に設計されていることにも注目されたい。

ちなみにログラン由来の仲間として、もっぱら中国語に影響を受けた Ceqli や Gua/spi、Visual Basic速記法にヒントを得た Lojsk などがある。

比較: エスペラント[編集]

エスペラントとロジバンはともに人工言語というカテゴリに属するが、前者は国際補助語であり、後者は工学言語という点で、微妙にその立ち位置は異なっている。ここでは、人工言語の一代表としてエスペラントを取り上げ、その比較を行うことにする。また、以下に挙げるロジバンとの差異は、エスペラントとの比較によってのみ生じるものというよりは、自然言語との比較によってもよくみられるであろうものが多い。

コンピュータ等の通信機器において最も汎用的な文字コードであるASCIIにエスペラントの公式表記法は対応しておらず、ロジバンは対応している ―

エスペラント a b c ĉ d e f g ĝ h ĥ i j ĵ k l m n o p r s ŝ t u ŭ v z
ロジバン a b c d e f g i j k l m n o p r s t u v x y z

エスペラントの ĉ の音は国際音声記号において [t][ʃ] の合わさった [ʧ] だが、この音はロジバンで t と c の合わさった tc と表される。 同様に ĝ もロジバンでは dj となる。 したがって表記法においてロジバンはエスペラントよりも音声学的に正確である。

エスペラントの語根の大半が西洋語のものの恣意的な写しであるのにたいし、ロジバンの語根はより多様な語派を源泉としてその各言語の話者にとって公平な音声配列となるように特別なアルゴリズムでコンピュータ処理したものが採用されている[2][3] ―

 
エスペラント ventr' フランス語「ventre」、イタリア語「ventre」
ロジバン betfu 中国語「腹/fù」+英語「belly」+ヒンディー語「पेट/peta」+スペイン語「vientre」+ロシア語「живот/jivot」+アラビア語「بطن/batn」
 
エスペラント sud' フランス語「sud」、ドイツ語「Süden」
ロジバン snanu 中国語「南/nán」+英語「south」+ヒンディー語「दक्षिण/dakcin」+スペイン語「sur」+ロシア語「юг/iuk」+アラビア語「جنوب/janub」

エスペラントもロジバンも膠着による造語が可能。 しかしエスペラントでは膠着よりも他言語(主に西洋語)からの語根の取り込みが好まれる傾向がある。 例えば『エスペラントの基礎』の『普遍的辞書』には「花束」のために個別の語根がフランス語の「bouquet」から取り込まれた「buked'」が載っている。 ロジバンには「花束」のための語根は無く、代わりに「xrula|花」と「bakfu|束」からの合成「rulbakfu」で表される。 このような傾向から語根の全体数はロジバン(約1,300語[4])よりもエスペラント(約15,000~20,000語[5])のほうが遥かに多くなっている。

述語の成分をエスペラントは動詞・形容詞・副詞に分けるがロジバンは分けない ―

  速い 走る 速く走る 走りが速い
エスペラント est-as rapid-a kur-as rapid-e kur-as est-as kur-e rapid-a
ロジバン sutra bajra sutra bajra bajra sutra

の成分をエスペラントは名詞・形容詞・副詞に分けるがロジバンは分けない ―

  美しく白い赤 美しく赤い白 白味が美しい赤
エスペラント la bel-e blank-a ruĝ-o la bel-e ruĝ-a blank-o la blank-e bel-a ruĝ-o
ロジバン lo melbi blabi xunre lo melbi xunre blabi lo blabi melbi xunre

屈折文法範疇に応じた語形変化)をエスペラントはする[6]がロジバンはしない ―

  或る速く走る車 幾つかの速く走る車
エスペラント kelka rapide kuranta aŭto(単数) kelkaj rapide kurantaj aŭtoj(複数)
ロジバン lo sutra bajra marce su'o lo sutra bajra marce
  食べる 食べている 食べた 食べるということ 食べたということ
エスペラント manĝ'(語根形) manĝ-as(現在形) estas manĝ-ant-a(現在進行形) manĝ-is(過去形) manĝ-i(不定形) ke manĝ-is
ロジバン citka ca citka ca ca'o citka pu citka nu citka nu pu citka
  その大きな子供が叩く その小さな子供を叩く
エスペラント la granda infano frapas(主格) frapas la malgrandan infanon(対格)
ロジバン le barda verba cu darxi darxi le cmalu verba

数や時間や動作関係を表す要素がこのようにエスペラントでは単語そのものに組み込まれているのにたいしてロジバンでは機能語として個別化している。 このことに追随して、時制の組み合わせはエスペラントよりもロジバンのほうが簡潔で自由である ―

エスペラント manĝ-ant-[非文法的] manĝ-as-os[非文法的] / manĝ-as kaj manĝ-os manĝ-is --> est-is manĝ-int-a
ロジバン ca'o citka ca ba citka pu citka --> pu pu citka

性差別・男尊女卑をエスペラントはする(代名詞が男女に分かれ、また、無標識で男性とされる単語に女性専用の接辞を挿んで派生語を造ることから男性が主要で女性が副次であるという図式が生じている[7])がロジバンはしない ―

  彼(かの男) 彼女(かの女)
エスペラント li (la vir-o) ŝi (la vir-in-o)
ロジバン ra (le nanmu) ra (le ninmu)

同音異義語が、形態論の曖昧さが形態素解析の多義化をもたらすエスペラントには存在するが、合成語の形態素がけっして重複しないロジバン[8]には存在しえない ―

    少女 汚いリンネル
エスペラント filino --> fil-in-o fi-lin-o
    交替する クシャミを吹きかける
エスペラント alternas --> altern-as al-tern-as
    ラベンダーの 要洗浄の
エスペラント lavenda --> lavend-a lav-end-a

パーサによる解析処理が、構文の曖昧なエスペラントではときに困難であるのに対し、yacc等で文法を記述でき構文の明確性が保証されているロジバン[9]では容易である ―

    在る、[ 速い電車 ] は [ 速い ]、電車は
エスペラント estas rapida trajno --> estas [ rapida trajno ] [ estas rapida ] trajno
ロジバン sutra fa lo trene -->   [ sutra ] fa lo trene
zasti fa lo sutra trene --> zasti fa lo [ sutra trene ]  
    赤い [ ] と車と空 赤い [ 家と車 ] と空 赤い [ 家と車と空 ]
エスペラント ruĝa domo kaj aŭto kaj ĉielo --> ruĝa [ domo ] kaj aŭto kaj ĉielo    
ruĝaj domo kaj aŭto kaj ĉielo -->   ruĝaj [ domo kaj aŭto ] kaj ĉielo ruĝaj [ domo kaj aŭto kaj ĉielo ]
ロジバン lo xunre zdani je marce je tsani -->     lo xunre [ zdani je marce je tsani ]
lo xunre zdani je marce je lo tsani -->   lo xunre [ zdani je marce ] je lo tsani  
lo xunre zdani je lo marce je lo tsani --> lo xunre [ zdani ] je lo marce je lo tsani    
    私の友達である [ ジャン ] の弟(ジャンが友達) 私の友達であるジャンの [ ](弟が友達)
エスペラント la frato de Ĵan, kiu estas mia amiko --> la frato de [ Ĵan ], kiu estas mia amiko [ la frato ] de Ĵan, kiu estas mia amiko
ロジバン lo bruna be la jan noi pendo mi --> lo bruna be [ la jan ] noi pendo mi (be'o)  
lo bruna be la jan be'o noi pendo mi -->   [ lo bruna ] be la jan be'o noi pendo mi

比較: 日本語[編集]

言語学的にみてロジバンは無系統である。しかし、同様に孤立した言語とみなされる日本語との間にいくつかの共通点を見出すことができる。

三上章の研究によると、日本語は述語が中心となって主語・目的語・補語をまとめる題目述部の構造にあるという。名詞はそれぞれ格助詞を有するが、英語ほどに能動・受動の関係は強くはない。これは、文法的に対等な terbri を selbri が束ねるというロジバンの構造とよく似ている。「象は私が餌をやります」の「象は」(勿論、正確には「象には」の意)といった話題もロジバンでは忠実に表現できる。

日本語では単数と複数の区別が必須ではない。この「通数」の原理がロジバンにもある。「lo lorxu cu zvati」は「キツネがいる」と同様、「There are some foxes」とも「There is a fox」ともなる。あえて複数を明示する「キツネたちがいる」は「loi lorxu cu zvati」()や「lo'i lorxu cu zvati」(集合)に対応する。男性・女性による語形変化も両者には無い。

屈折/語形変化とは無縁のロジバンの内容語(brivla)は漢語に通ずるものがある。仮に内容語を漢字に置き換えても構文上の問題が無い。そしてこのとき機能語(ma'ovla)は日本語における平仮名助詞に広く相当する。以下は『不思議の国のアリス』のロジバン訳からの抜粋で内容語を漢字に置き換えたものである:

i me la 白 兎 noi 遅 走 戻 gi'e 悩 ke 周 視 ca le nu 来 kei tai le nu ry da pu 失

複合語にも共通点がみられる。「共同」と「制作」といった語を屈折なしに連ねた「共同制作」は、「kansa」と「zbasu」をそのまま連ねてできる「kansa zbasu」と原理が同じである。そして「共同制作」の構成字から「共作」とできるところは、「kansa zbasu」の形態要素から「kanzba」とできることによく似ている。

またロジバンでは俳句を作ることができる。以下はアルゼンチン出身のロジバニスト Jorge Llambías による作品からである:

vifne cergusni (5)
i le tricu cu klaku (7)
le clani ctino (5)

応用: 文学・科学[編集]

文芸活動におけるロジバンのメリットが期待されている。意思や現象を明晰に記述したり或いは必要に応じて漠然と多義的に表現したり、またその成果を建設的に模索・推敲するうえで、ロジバンの機能性が大きな役割を持っているからだ。科学の諸分野における数理的記述にも広く使用できることが提唱されている。基本単語のレベルでロジバンは諸々の数学・幾何学的概念の記述に要される言葉を多く備えている。

応用: 自然言語処理[編集]

人工知能自然言語をどのように処理すればいいのか。その研究において、自然言語の文法の非一貫性や表現の事故的な多義性はしばしば混迷をきたすものである。この問題を解決する直接の手掛かりとしてロジバンのような言語が研究者達の間で着目されている。自然言語の文はロジバンに訳される際、前者由来の制約を抜け、意図されていない意味と意図されている意味とが淘汰されながら再構築される。これは、原文が有する多義性の全てを無差別に駆逐するということではなく、あくまで話し手・書き手が求めたとおりの意味合を自然言語の“靄”から掬い出して復刻させるということである(文芸上の理由で表現の曖昧さが初めから意図されているものであればこれはそのとおりに再現される)。ここに、“靄”を扱えない人工知能と“靄”に包まった自然言語という両者の間の仲介としてのロジバンの姿がある。

誤解にもとづく批判[編集]

ノーム・チョムスキーに学んだスティーブン・ピンカーは、自著で、曖昧性をいっさい欠いた言語を作るのは不可能だとしている。人間の想像しうる概念は無数とあり、それらの存分な表現が求められるところでは既成の単語だけでは間に合わず、言葉が2つ以上の意味を兼ねるという事態がやってくる、したがって、ロジバンなどにつき標榜されている明確性というものは、特殊な狭い範疇でのみその言語が使用される限りで表出するものでしかない、と彼は考える。ところが、ロジバンが提唱する非曖昧性というのは構文解析にまつわるものであって語釈のそれではない。ロジバンで抽象的なことを漠然と語るというのはいたって可能なのである。

多義性を欠いた合理的な言語は人間の感情を十分に表せないだろう、という憶測もある。これは、“体系的で整ったもの”にたいする偏見にもとづく誤解である。ロジバンには、命題の生成そのものには関与しない特殊な言葉(心態詞)を多く備えている。いわゆるムードモダリティなど、心の状態・度合を示すのに使われる。自然言語においてイントネーション顔文字が果たしている機能をこれらの言葉がつかさどる。組み合わせられるので、必要に応じてより深いレベルの心の振る舞いに言及することができる。いわば話者が自身の心情を十分に自覚しているところではロジバンはそれらを洗練された体系の中で表現することのできる優れた感情言語なのである。

学習に関して[編集]

ロジバンの習得は、或る面において易しく、また或る面において難しい。

  • 文法がきわめて整っており、知識を一貫して摘みとることができる。しかし上級者向けの文法原理には自然言語の知的枠組を超えているものがあり、その会得には相応の専心が要される。
  • selbri (述語)として使える言葉の全てが、どのような terbri (項)をどのような位置関係で取り結ぶかについてあらかじめ定義されている。いわゆる place structure / PS と呼ばれるこの定義の存在に当惑する初心者は少なくない。よくある誤解は、 PS が量的な暗記を要する、というもの。たとえば klama という言葉は、それと結びつく1番目の語が「行く者」、2番目が「行く地点」、3番目が「発つ地点」というふうな PS を有するが、その会得を量的な学習とみなしてしまうという思い違いがある。実際にはこれは量ではなく質の学習である。 PS によって示されている「行く者」「行く地点」「発つ地点」といった概念は、 klama がつかさどる「行く」という事象が必然的に内包するものである。「行く者」なしには「行く」という事象は成立しない。「行く地点」や「発つ地点」を欠いた場合も同様である。 klama という語およびそれによって取り結ばれる「行く者」などのとそれらの位置関係は、「行く」という事象にたいする質的理解を深めるなかで捉えるものであって量的に暗記されるものではない。問題は、事物の関係構造そのものを扱うこのロジバン語のパラダイムが特殊であること。伝統的な言語の多くは個体主義的で、その認識形式の影響下にある者は当然ロジバンの構造主義的な性格にたいする難しさを覚えることになる。
  • これまで解説文献やコミュニティの補助言語として英語・フランス語・スペイン語・ロシア語などが使われてきた。比較的外国語能力の乏しい日本人にとっては参入が難しく、日本語圏におけるロジバンの認知度はこれまで著しく低かった。しかしロジバンと日本語との間にはそれなりの近似性があるように、日本人にとって特に難解な言語であるわけではない。

ロゴ[編集]

LLGのメンバーによる投票でロジバンのロゴが採択されている。直交座標系ベン図を元にしたものである。色の指定はない。

このロゴが意味するところについて公式の説明はない。解釈の一つとして、ベン図が述語論理を、直行座標系が合理性を象徴している、というものがある。

他にも次のようなものがコミュニティでは使われている:

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • Cowan, John Woldemar. The Complete Lojban Language. Fairfax, Virginia: The Logical Language Group, 1997. ISBN 0-9660283-0-9
  • Nicholas, Nick; Cowan, John Woldemar. What is Lojban?. Fairfax, Virginia: The Logical Language Group, 2003. ISBN 0-9660283-1-7
  • Goertzel, Ben: Potential Computational Linguistics Resources for Lojban. Self-published, March 6, 2005. [1](PDFファイル)
  • Speer, Rob; Havasi, Catherine: Meeting the Computer Halfway: Language Processing in the Artificial Language Lojban. Massachusetts Institute of Technology, 2004. [2](PDFファイル)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

教材[編集]

  • 学習 (lojban.org): 教科書・音声資料・辞書・読み物などの最新のリスト

文章[編集]

  • Lojban Corpus : ロジバンに翻訳されたものやロジバンで創作されたもののリスト。日本語からの翻訳もある。ロジバンでの検索機能付き。

その他[編集]