ロシア皇太子ハンデキャップ

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ロシア皇太子ハンデキャップCesarewitch Handicap)はイギリスで行われる代表的なハンデキャップ競走である。秋のニューマーケット競馬場の目玉競走の一つで、2011年からはチャンピオンデイ開催に施行されている。1839年創設と長い歴史を持ち、イギリスの競馬では一般的に、単に「Cesarewitch」と言えばこの競走のことを指す。

ロシア皇太子ハンデキャップ
Cesarewitch Handicap
開催地 ニューマーケット競馬場
施行時期 10月
格付け -
1着賞金 155,625ポンド(2013年)
賞金総額 250,000ポンド(2013年)
距離 2マイル2ハロン(約3621メートル)
出走条件 3歳以上
負担重量 ハンデキャップ
第1回施行日 1839年
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概要[編集]

1839年に創設された当時はイギリス国内で初めて、全国から競走馬を集めて行われるハンデ戦で、クラシック競走を終えた一流競走馬の目標の一つだった。

ハンデキャップ競走のため、イギリスの競馬の競走格付けからははずれているものの、賞金額は一部のG1競走よりも多い。ニューマーケット競馬場の公式サイトでも「G1競走」の欄にケンブリッジシャーハンデとともに掲載されているほか[1]、チャンピオンズデイ開催の目玉競走として紹介されている[2]

特徴として、多頭数になることで知られ、過去の最多出走数は34頭である。多頭数のハンデ戦ということは勝馬の馬券の倍率が高くなるということであり、馬券を買うファンにも人気の高い競走である[3]。なお、ケンブリッジシャーハンデと“秋の二冠(Autumn Double)”をなしているが、最後に二冠を制したのは19世紀であり、わずか2週間ほどの間に倍ほどの距離の差がある競走を制するのは困難で、現在はあえて二冠に挑むものは稀である[3]

レース名について[編集]

競走名の「Cesarewitch」は「ロシア皇太子(Цесаре́вич)」を英語風に綴ったものである。競走の創設に当時のロシア皇太子が関わったことからこの名がある。

「ツェサレーヴィチ」はロシア風の読み方であり、英語ではCesarewitchを「シザーウィッチ」のように読むため、この競走名は日本語では「シザーウィッチハンデ」や「シザーラウィッチハンデ」のように表記することもある。

ニューマーケット競馬場のローリーマイルコースで行われる。ローリーマイルコースは1マイル2ハロン(約2012メートル)の直線コースであるが、この競走のために作られた分岐コースがあり、これを特に「Cesarewitchコース」と呼ぶ。Cesarewitchコースはローリマイルコースで2000メートル以上の競走を行なう際に用いられる。

なお創設時は「ロシア皇太子ハンデキャップステークス(Cesarewitch Handicap Stakes)」の名称で行われたが、開催年によっては「ロシア皇太子ハンデキャップ」「ロシア皇太子ステークスハンデキャップ」など、正式名称は頻繁に変わっている。なかでも単に「Cesarewitch」という競走名で行われている年次も多く、近年はスポンサー名を冠した「Betfred Cesarewitch」(2011-2013)といった競走名で行われている[4]。本項ではこれらを一貫して「ロシア皇太子ハンデキャップ」と称することとする。

歴史[編集]

ロシア皇帝のアレクサンドル2世がまだ皇太子だった時期に、イギリスのジョッキークラブに300ポンドを寄付したことで、1839年に創設された。2マイル4分の1(つまり2マイル2ハロン、約3621メートル)のこの競走は、イギリス史上初めての全国的な意義を持つハンデキャップ競走だった[5]。同じ年に創設されたケンブリッジシャーハンデキャップ(9ハロン)と合わせて、“秋の二冠(Autumn Double)”と称し、イギリスの秋の代表的なハンデキャップ競走となった。

“秋の二冠”を初めて連覇したのは1876年のローズベリー(Rosebury)で、その後はフォックスホール(Foxhall、1881年)、プレザンテリー(Plaisanterie、1885年)が達成している。フォックスホールはパリ大賞典、ロシア皇太子ハンデキャップ、ケンブリッジシャーハンデキャップ、ゴールドカップを制したことで「当時ヨーロッパの最良馬」(『競馬の世界史』p138)との評価を獲得している。

1854年にはフランスのモナルク(Monarque)がフランス2000ギニーフランスダービーなどを制してロシア皇太子ハンデに挑んだが敗退した[6]

第二次世界大戦中は戦争の影響を受けた。1940年から1943年には2マイル24ヤードに短縮して開催され、1943年にはニューマーケット競馬場のほか、アスコット競馬場で「Ascot Cesarewitch」が、ストックトン競馬場では「Northern Cesarewitch」が行われた。翌1944年はニューマーケット競馬場では開催されず、アスコット、ストックトン両競馬場で開催された。

2011年からは「チャンピオンズデイ開催」に組み込まれ、デューハーストステークスミドルパークステークスの間に行われている。古くはロシア皇太子ハンデが先、ケンブリッジシャーハンデが後に施行されていた。2013年現在では、ロシア皇太子ハンデは10月のチャンピオンズデイ開催に行われ、ケンブリッジシャーハンデは9月の「ケンブリッジシャー開催」の目玉競走となっている。

歴代勝馬[編集]

施行年 距離 優勝馬 備考
1839 2マイル2ハロン
(約3621メートル)
Cruiskeen
1840 Clarion
1841 Iliona
1842 Arcanus
1843 Corranna
1844 Faugh-a-Ballagh
1845 The Baron
1846 Wit's End
1847 Caurouch
1848 The Cur
1849 Legerdemain
1850 Glauca
1851 Mrs. Taft
1852 Weathergage
1853 Haco
1854 Muscovite
1855 Mr. Sykes
1856 Vengeance
1857 Prioress
3頭同着後、決勝戦で優勝馬を決定。
1858 Rocket
1859 Artless
1860 Dulcibella
1861 Audrey
1862 Hartington
1863 Lioness
1864 Thalestris
1865 Salpinctes
1866 Lecturer
1867 Julius
1868 Cecil
1869 Cheri
1870 Cardinal York
1871 Corisande
1872 Salvanos
1873 King Lud
1874 Aventuriere
1875 Duke of Parma
1876 Rosebery
1877 Hilarious
1878 Jester
1879 Chippendale
1880 Robert the Devil
1881 Foxhall
1882 Corrie Roy
1883 Don Juan
1884 St. Gatien
1885 Plaisanterie
1886 Stone Clink
1887 Humewood
1888 Tenebreuse
1889 Primrose Day
1890 Sheen
1891 Ragimunde
1892 Burnaby
1893 Red Eyes
Cypria
同着
1894 Childwick
1895 Rockdove
1896 St. Bris
1897 Merman
1898 Chaleureux
1899 Scintillant
1900 Clarehaven
1901 Balsarroch
1902 Black Sand
1903 GreyTick
1904 Wargrave
1905 Hammerkop
1906 Mintagon
1907 Demure
1908 Yentoi
1909 Submit
1910 Verney
1911 Willonyx
1912 Warlingham
1913 Fiz Yama
1914 Troubadour
1915 Son in Law
1916 Sanctum
1917 Furore
1918 Air Raid
1919 Ivanhoe
1920 Bracket
1921 Yutoi
1922 Light Dragoon
1923 Rose Prince
1924 Charley's Mount
1925 Forseti
1926 Myra Gray
1927 Eagle's Pride
1928 Arctic Star
1929 West Wicklow
1930 Ut Majeur
1931 Noble Star
1932 Nitsichin
1933 Seminole
1934 Enfield
1935 Near Relation
1936 Fet
1937 Punch
1938 Contrevent
1939 Cantatrice II
1940 2マイル24ヤード
(約3241メートル)
Hunters Moon IV
1941 2マイル24ヤード Filator
1942 中止
1943 2マイル24ヤード Germanicus
※アスコット、ストックトン両競馬場では独自に開催。
1944 中止
※アスコット、ストックトン両競馬場では独自に開催。
1945 2マイル2ハロン Kerry Piper
1946 Monsieur L'Amiral
1947 Whiteway
1948 Woodburn
1949 Strathspey
1950 Above Board
1951 Three Cheers
1952 Flush Royal
1953 Chantry
1954 French Design
1955 Curry
1956 Prelone
1957 Sandiacre
1958 Morecambe
1959 Come To Daddy
1960 Alcove
1961 Avon's Pride
1962 Golden Fire
※1位入線のOrchardistは降着。
1963 Utrillo
1964 Grey of Falloden
1965 Mintmaster
1966 Persian Lancer
1967 Boismoss
1968 Major Rose
1969 Floridian
1970 Scoria
1971 Orosio
1972 Cider with Rosie
1973 Flash Imp
1974 Ocean King
1975 Shantallah
1976 John Cherry
1977 Assured
1978 Centurion
1979 Sir Michael
1980 Popsi's Joy
1981 Halsbury
1982 Mountain Lodge
1983 Bajan Sunshine
1984 Tom Sharp
1985 Kayudee
1986 Orange Hill
ジュライコースで施行。
1987 Private Audition
1988 Nomadic Way
1989 Double Dutch
1990 Trainglot
1991 Go South
1992 Vintage Crop
1993 Aahsaylad
1994 Captain's Guest
1995 Old Red
1996 Inchcailloch
1997 Turnpole
1998 Spirit of Love
1999 Top Cees
ジュライコースで施行。
2000 Hero's Fatal
2001 Distant Prospect
2002 Miss Fara
2003 Landing Light
2004 Contact Dancer
2005 Sergeant Cecil
2006 Detroit City
2007 Leg Spinner
2008 Caracciola
2009 Darley Sun
2010 Aaim to Prosper
2011 Colour Vision
2012 Aaim to Prosper
2013 Scatter Dice

関連項目[編集]

  • ゴールドカップ - 1845年にロシア皇帝ニコライ1世が観戦し賞品を下賜したことから、「大ロシア皇帝陛下プレート」に競走名が改称された。1853年に勃発したクリミア戦争でイギリスとロシアが交戦したために、1854年以降はゴールドカップに改称した。

脚注[編集]

参考文献[編集]

出典・注釈[編集]

  1. ^ ニューマーケット競馬場公式HP ロシア皇太子ハンデ2013年10月25日閲覧。
  2. ^ 2014チャンピオンズデイ開催について2013年10月25日閲覧。
  3. ^ a b ロシア皇太子ハンデキャップの歴史 - 2013年10月25日閲覧。
  4. ^ ロシア皇太子ハンデキャップ結果一覧2013年10月25日閲覧。
  5. ^ 『競馬の世界史』p140
  6. ^ 『競馬の世界史』p181

関連リンク[編集]