ロシアの教育

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9月1日は「知識の日」という祝日であり、子供たちの入学を盛大に祝う。

ロシアの教育(ロシアのきょういく)として、この項目ではロシア教育を解説する。

概要[編集]

教育制度は3-6-2制であるが、義務教育は9年間である。学期は9月から始まり、4学期制で秋・冬・春・夏の休みがある。

初等・中等学校はモスクワ市内だけでも約1,500あるが、固有の校名といったものは無く「第1,500学校」のように番号で名付けられている。生徒人数はロシア国内で約1,800万人以上である。

ロシアの教育は、子どもによく勉強させることが特徴である。基礎知識を教えるだけでなく、創造性を伸ばすために自分で考えるプログラムも多く、生徒の自主性を尊重する選択科目制が導入されている。

教育に関する法律[編集]

ロシアにおける教育分野での基本法はロシア連邦法「教育について」(Zakon Rossiiskoi Federatsii "Ob obrazovanii")(全58条)で定義されている。

1992年7月に採択され、1996年1月13日付けで全面的な修正版が採択され、1996年から現在まで部分的に変更されている。

  • 第1条 教育分野はロシアでは優遇される分野である。
  • 第5条 国家は国民に対して、国民が持っている、教育を受ける権利を実現するための諸条件を確保する。

また、1993年12月採択のロシア連邦憲法にも

  • 第38条 子供の養育への配慮は親の義務である

と明記されている。

政教分離問題[編集]

ロシア憲法では信教の自由政教分離原則が明確に定められており、建前上、公立学校での宗教教育は行えないこととなっている。しかし、プーチン大統領による支援を手厚く受けているロシア正教会が、公立学校への正教教育導入を行わせる目的でカリキュラムに介入している。ロシア連邦は多民族国家でありムスリム仏教徒も多数存在しており、そのような中で特定の宗教を公立学校で強制することにより、これら正教以外の宗教との摩擦を悪化させる危険性が指摘されている。

2007年、ノーベル物理学賞受賞者ヴィタリー・ギンツブルクジョレス・アルフョーロフら10名の研究チームがプーチン大統領に対し抗議声明書を提出した。公教育の現場に「正教文化の基礎」なる科目が設けられ、一部地域で必修科目とされており生徒の信教の自由が侵害されていること、また、アレクシイ2世が「教員から抗議を受けないよう『ロシア文化の基礎』に変えればいい」などと言葉のすり替えによる隠蔽を勧めた発言を行ったことを指摘し、これら正教会の公教育への介入は政教分離原則違反であるとしている。

正教会側はこれに対し、「正教は宗教ではない(国民道徳・文化である)」とする、国家神道神道非宗教説に類似した論理を用い、「教会は国家・憲法等の世俗のいかなる原理にも拘束されない」とする憲法無効論を主張し、公立学校への介入を継続している。

また、研究チームに対して「宗教間憎悪をあおった罪」で立件するよう検察当局に働きかけており、言論による正当な批判に対し、法的恫喝や訴訟を乱発して相手側の疲弊を招くスラップを用いる正教会の対応も問題視されている[1] [2]

教育システム[編集]

  • 就学前教育
  • 1~3 (4) 年生 - Начальное образование(初等一般教育)
  • 5~9年生 - Всеобщее образование(基本一般教育)
  • 10~11年生 - Среднее образование(中等一般教育)
  • 高等専門 - Высшее образование
  • 職業教育プログラム

初等・基本一般教育[編集]

ロシアの初等・基本・中等教育は11年制(10年制)のシュコーラと呼ばれる学校で行なわれる。シュコーラには普通学校と専門学校(特定の科目の教育に力を入れた学校)がある。

子供は6歳あるいは7歳から学校に入学する(学年がはじまる9月1日に最低6歳でなければならない)。1学年から9学年までは義務教育で、学校を通学する期間は10年あるいは11年のパターンがある。10年か11年かは、低学年が3年間なのか4年間なのかによって違う。両親が(場合によって学校の勧告で)自分の子供の準備が足りないという結論に達したら、4年間のパターンを選ぶケースがあるが、大抵は3年間のパターンである。この場合、全期間は10年間であり、生徒たちが3年生から4年生を飛ばして、5年生に進級する。

学年が終わる頃(5月末~6月頃)6年生から10年生までの生徒たちは主要2~3科目の試験を受け、その結果も踏まえて学年の成績がつく。9年生は、義務教育の終了であり、より複雑な試験(4科目)を受け、生徒の一部が学校を卒業する。

国立普通学校の多くは共学で、1クラス25~35人程の生徒数で授業が行われる。また、国立学校の場合授業料は無料である(私立は有料)。

ギムナージヤとリツェイと呼ばれる学校では、専門科(ギムナージヤでは人文・社会科学の科目、リツェイでは自然・技術科目)や義務教育プログラムより多くの選択科目(例えば、論理学)を含んだ教育を受けられ、生徒人数も一般学校より限られる為、教育のレベルが高いと評価される。勿論、人気のギムナージヤやリツェイに入るには競争率が高い。

また、2006年より新しい初等・中等教育基準が正式に導入される予定で、現在は新制度への移行段階にある。従来は、第4学年から第一外国語(英・独・仏・西の4ヶ国語から選択)の授業が始められていたが、新制度では第2学年からの開始に統一される予定で、すでに第2学年からの外国語教育を開始している学校も多い。第一外国語の学習は必須である。

第二外国語は各学校の裁量により設置され、第5学年から開始される。その他、ファクリタチフと呼ばれる選択科目としての外国語の授業が行なわれている。このファクリタチフは日本の選択科目より自由な性質を持つものであり、評価や履修の記録は成績表に特に残されないことも多い。選択科目として設置される外国語のうち、東洋系の言語は日本語もしくは米語の場合が多い。

夏休み[編集]

夏休みは6月、7月、8月の3ヶ月。しかし、長い分、宿題の量ももちろん多い。

中等教育[編集]

中等専門教育機関とは、中等技術学校と専修学校である。一般学校で9年間の義務教育を終えた生徒が入学し、一般的には3年間学習する。

看護師保育士図書館員、地下鉄の機関士等が中等専門教育機関修了者である。専門学校の教育プログラムには普通、一般学校の10年生と11年生が学んでいる科目と専門科目が平行して入っている。中等専門教育を受けた後、その分野の大学に入る者も多く、大学入学際に有利になることがある。

卒業試験は、普通5科目ある。国語、数学(筆記)、歴史、生物、外国語(口頭試験)であるが、地方や学校によって若干異なる。その結果、最終的な成績が記載された卒業証書を得る。この最終の成績によっては卒業以降の大学への入学合格率も変わる。学校を卒業してからすぐ入学するわけではあるが、学校の卒業試験と大学の入学試験の合併も最近可能になり、「統一国家試験」制度が導入された。この条件は学校の一般卒業試験よりやや厳しいが、この成績が一定の大学の入学の手続きで認められて、これが高い場合、このまま入学できる。ただ、実際には一流大学では統一国家試験の成績がほとんど考慮に入れられず、この大学の特別入学試験でしか入学できない。

高等教育[編集]

高等教育での学生の数は約586万人である(2004年)。 現在、モスクワには約85の高等教育機関が存在しており、

などが有名である。これら、ほとんどの大学は国立である。

高等教育は、財政難より有料化しつつある。だが、有料コース(約1000~6000ドル/月)と無料コースがあり受験生は自由に選択出来る(無料コースは有料コースに比べ競争率が高い)。また、社会人の為の有料の通信・夜間過程も充実している。

大学入学の条件は、中等一般教育あるいは中等専門教育の終了である。普通は6月に入学募集があり、大学受験生が各大学に組織化される入学委員会に一定の書類を提出する。7月と場合によって8月には入学試験が行われる。

専攻に関わらず、第1学年から第3学年の間、第一外国語の履修が義務付けられている。言語学、文学、翻訳・通訳論、国際関係論、世界経済などを専攻とする場合は第二外国語、ときには第三外国語の履修が義務付けられる。

ロシア教育・科学省の定めにより、一般科目としての第一外国語は英・独・仏・西の4ヶ国語から選ばなくてはならない。

高等教育は、11学年卒業後の総合大学(4年間もしくは5年間)、もしくは単科大学(4年間もしくは5年間)で、学士号(5年間修学のところは修士号の場合もある)を取得する。

学校成績[編集]

教師が毎日、子どもたち一人ひとりの授業態度や理解度などを成績ノートに書き込む。ロシアの初等・中等教育では5段階評価システムが用いられており(3以上が合格)、1や2をとった子どもは親に怒られるのを怖がってよく成績ノートをなくす、という。しかし、1がつく事は全くないといっても良いので、最低の成績の事は俗に「ドゥウォーイカ(2のくだけた言い方)」と呼ばれる。

音楽・芸術学校[編集]

ロシアでは音楽、美術、芸術学校は国立が多い。

サンクトペテルブルクの場合、音楽学校は30以上、美術学校は20以上、音楽・美術・工芸科などがある芸術学校が30以上あり、約90校が1つの都市にある。

教育費は有料だが、中流家庭にも十分に払える額である。

学校によって異なるが、4~10歳で入学し音楽学校は7~8年、美術学校は4~6年教育を受けた後、さらに高等教育を受ける。

日本語教育[編集]

ソ連時代には日本語学校はモスクワに1つしかなかったが、ソ連崩壊後あちこちに出来ている。

また、日本語を教える学校はモスクワには9校、モスクワ州には2校、サンクトペテルブルク市には3校、ニジニ・ノヴゴロド市には2校、エカテリンブルク市には6校、イルクーツク市には3校、ノヴォシビルスク市には5校、ハバロフスク市には1校、ウラジオストク市には3校がある。

1998年から毎年、日本国大使館主催によりモスクワウラジオストクで日本語能力試験が行われている。

日本人日本語教師のいる学校では、日本で作られた教科書が使用されることが多い。近年は、ロシア人教師の著作による初等・中等教育向けの日本語教科書も出版されるようになっているが、依然として日本で作られた教材への需要は高く、国際交流基金の日本語教材寄贈プログラム等への期待が高い。


脚注[編集]

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  1. ^ 『教会VSノーベル賞科学者「宗教に教育」大論争』 産経新聞 2007年7月26日
  2. ^ Welcome or Not, Orthodoxy Is Back in Russia’s Public Schools The New York Times 2007年9月23日

関連項目[編集]