逆望遠

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逆望遠(ぎゃくぼうえん)は1950年アンジェニューによって初めて市販化されたレンズ形式である。

概要[編集]

逆望遠型レンズの例

名称は、後群を凹レンズ系として小型軽量化を図った望遠型レンズと逆の構成であることによる。

現在では別名の「レトロフォーカス」が同様のレンズ形式の一般名詞のように用いられているが、これは本来アンジェニューの商標レトロフォキュRetrofocus )の英語読みである。「レトロ」は「後ろへ」、「フォーカス」は「焦点」の意味を持ち、レンズの前群を凹レンズ系とすることで焦点を後ろへ移動させた、つまり光学系を前に移動させた構成との意である。

主に一眼レフカメラ広角レンズ、広角ズームレンズ、標準ズームレンズに使われる。

逆望遠形式を持つレンズに、西ドイツのカール・ツァイスディスタゴン、東ドイツのカール・ツァイスフレクトゴンのブランドを使用している。またシュナイダー・クロイツナッハでは逆望遠形式のレンズについて当初クルタゴンを商標としたが、後に逆望遠型以外のレンズと同じアンギュロンに統一された。

欠点としては構成枚数が多くなりがちでレンズが大型化・重量化すること、設計時に想定された性能を出しにくいこと、傾向としてタル型の歪曲収差やゴーストが出やすくなることが挙げられる[要出典]

一眼レフカメラ[編集]

ビオゴン型に代表される逆望遠以前の対称型広角レンズバックフォーカスが短く、フィルムの直前までレンズエレメントがあるため、一眼レフカメラではミラーと干渉してしまう。このため一眼レフカメラで広角レンズを使用するときはミラーアップして装着し使用する等の手段が採られていたが、一眼レフカメラの利点が失われ不便であった。これに対し逆望遠ではレンズのバックフォーカスが長く取れ、一眼レフカメラでもミラーアップすることなく通常通りの撮影ができる。この形式のレンズが普及したことで一眼レフカメラは全ての撮影に対応できるようになった。

レンジファインダーカメラ[編集]

レンジファインダーカメラ用の広角レンズではバックフォーカスが短くてもよいため設計の簡単な旧来の広角レンズが作られ続けてきたが、新型のレンジファインダーカメラではTTL露出計の受光素子などがぶつかることがあるため、逆望遠タイプの広角レンズが登場している。

ズームレンズ[編集]

逆望遠型の設計を応用するとズームレンズとすることができる[1]。1970年代から実用化された2群ズームはこの逆望遠の前後間隔を変化することで焦点距離を変える。一眼レフカメラ用の超広角ズームの多くが2群ズームかつ逆望遠である。

注釈[編集]

  1. ^ 逆望遠の原理はハリウッドの映画カメラマンだったジョーゼフ・ベイリー・ウォーカーが1932年に特許を取得しており、同時に前の凹レンズと後ろの主光学系の間隔を変化させることでズームレンズになる事も明記していた。しかしズーミングによって収差変動が生じ、これを補正したレンズを実用化できたのはコンピュータが普及してからのことである[要出典]

参考文献[編集]

  • 「写真レンズの歴史」(ルドルフ・キングズレーク著/朝日ソノラマ/1999)