レトロニム一覧

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これはレトロニムの一覧である。「レトロニム」とは旧来からある「もの」や「概念」が、新たに誕生した同種の区別されるべきものの登場により、区別されるために用いられる「新たな表現や用語」のことである。

「←」の右側に、もともとは何と呼ばれていたかを示す。

名詞[編集]

英数字[編集]

SOHC (Single OverHead Camshaft) ←  OHC(オーバー・ヘッド・カムシャフト)
レシプロエンジンの弁駆動方式の一種でクランクシャフトの回転をチェーンやベルト、時にギアトレインでエンジンヘッドにあるカムシャフトに伝え、ロッカーアームを介して吸排気弁の開閉を行う方式。DOHC(ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト)方式が開発され、区別する必要が生じた。
2次元コンピュータグラフィックス、 2DCG ← computer graphicsCGコンピュータ・グラフィックス
コンピュータの処理能力が徐々に高くなり、1980~1990年代の段階で、実用的な時間の中で大量の3次元のベクトル演算をすることができるようになり3次元コンピュータグラフィックスが実現し、やがて広く使われるに至って、従来の3次元演算を用いないものをわざわざ区別する必要が生じた。

あ行[編集]

アコースティック・ギターguitarギター
エレクトリック・ギターが広く使われるようになったため生じたレトロニム。
アナログ
デジタルのものが現れたのち、デジタルでないものをわざわざ区別する必要が生じた。アナログ時計アナログ放送など。アナログを「古いもの」と誤った解釈をし「時代遅れな、古風な」と解釈する誤用が散見される。例:アナログ人間
  • 例えば analog clock、アナログ時計 ← clock 、時計 など
アンシャン・レジーム 
「旧来の 統治体制」という意味で、王政王制)のこと。日本語では「旧体制」「旧秩序」「旧制度」などと訳語があてられる。(フランス以外での)旧体制を指す比喩としても用いられる。フランス革命によって、国家が「王のもの」ではなく、国民全員のもの、という理念のもとで議会制になり、統治体制 régimeレジーム、government がすっかり変ったのである。
イギリス英語 ← English (英語)。
そもそもEnglishという言葉は、「England」という言葉の形容詞形である。「イギリスの」とか「イギリスの言葉」という表現なので、もともとはイギリスのそれを指すに決まっていた。だがイギリス人世界各地で植民地を作りそこでも英語を話し、発音や語法などにイギリス本国とは異なった変化が生じ、北アメリカ大陸で話される英語(アメリカ英語)などの存在・重要性が大きくなるにつれ、イギリス本国で話されている言葉をわざわざ区別して指し示す用語が必要になってしまった。(あえて言うと「日本日本語」「日本風日本語」のような変な表現なのである)
一次電池電池
充電が可能な二次電池に対し、放電のみが可能な電池を指す。
永久磁石磁石
電磁石が増えたことで生まれたレトロニム。
オフライン しばしば「オフライン○○」などの複合語で。← (単に「conversation 会話」  「communication コミュニケーション」 など)
回線通信網を介した(=オンラインでの)情報伝達・コミュニケーションが広まった結果、もともとの直接対話フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションなどをわざわざ区別する必要が生まれた。

か行[編集]

可視光  ← light
紫外線赤外線などを「光」の一種と分類したことによって、生じた区別。
機械式腕時計watch 腕時計
クォーツ時計が発明され、従来の機械式を区別する必要が生まれた。
旧世界  ← world 世界
新世界に対するレトロニム。
旧約聖書
イエス・キリストとその弟子たちが、信仰(神との関係)について従来には言われていなかったことを開示しそれも書物として残されるようになったので(新約聖書)、イエス・キリストを信仰する人々(クリスチャン)の間で 旧来の信仰の書物をあえて区別して呼ぶ必要が生じた。
共通鍵暗号  ← 秘密鍵暗号方式
公開鍵暗号方式が登場したため、従来の方式を区別する必要が生じた。
光学ズーム  ← 「(カメラの)ズーム
デジタルズーム機能がデジタルカメラ等に広まったために区別する必要が生じた。
口承文学  ← ものがたり物語お話
(たとえ文字があったとしても) もともとお話、物語というのは、人が人に語って聞かせて(=「もの(を) かたり」)、口伝えで伝わるのが当たり前でそればかりであったのに、いつのまにか口伝えで伝えるられる機会が減り、文字(書物)で伝えられるお話(物語、文学)の割合が増え続けたため、わざわざ区別する必要が生じた。
黒色火薬   ← 火薬
無煙火薬が発明され普及したため。
固形石鹸   ← savonsoap石鹸
「液体石鹸」も登場したことによるレトロニムである。
固定回線電話回線
携帯電話の普及で、電波を用いた電話の回線(接続)、ワイヤレス方式の接続が可能になったため生じた区別。

さ行[編集]

サイレント映画 (無声映画) ← 映画
が出る映画、「トーキー(発声映画)」が広がったことによる区別。
在来線  ← 「鉄道」(鉄道路線)、「列車」(汽車電車)、「国鉄」、「線路」など。
新幹線の開業により、はじめて区別の必要が生じた。
自然言語language 言語
フランス語の「langue ラング」や、英語の「language ランゲージ」はどちらも、もともと、lang(=舌)からの派生語であり、ヒトを使って出す音声によるものを指す用語・概念である。人が音声での会話などに使わないような、人工言語形式言語を用いる場面で、通常の言語をあえて区別する場合に使われるレトロニム。
実数
虚数が見出されたことによるレトロニム。
小アジアアジア
アジア地理概念が広がり、旧来「アジア」と呼ばれていた地域をそう呼び分けるようになった。
白黒テレビ  ← テレビ
カラーテレビが広まったため。
前弩級戦艦戦艦
弩級戦艦が時代を画したため、それ以前の世代の戦艦を区別するための称。

た行[編集]

第一次世界大戦world war「世界大戦争」
世界大戦争が再び起きてしまったため、助数詞をつけ、一回目を「第一次世界大戦」、二回目を「第二次世界大戦」、今後起こり得るかも知れないものを「第三次世界大戦」とした。
地上戦戦闘戦争
航空機などで空から攻撃することができるようになったことによりできたレトロニム。
地上波放送テレビ放送
衛星放送と区別するために生まれたレトロニム。
天然芝   ← 「芝」
人工芝が登場したことによるレトロニム。

な行[編集]

日本酒  ← 酒
「酒」は、近代まではもっぱら日本酒のことを意味していたが、様々な外来酒が一般的になるにつれ、清酒を「日本酒」と差別化して呼ぶことが定着した。英語では単にSAKEと言われる。
布オムツ  ← おむつ
使い捨ての「紙おむつ」が登場したことによるレトロニムである。

は行[編集]

ハードカバー  ←

ペーパーバックという簡易で安価な装丁の本が増えたことによるレトロニム。

ハードディスク ← (memory)disk など
フロッピーディスクの発明・普及に伴って、それまでのディスク保存装置を区別するために生まれたレトロニム。
パイプオルガン ← organ オルガン
リードオルガンが広まったことに対するレトロニム。
繁体字文字漢字
中華人民共和国簡体字1950年代に制定したため、従来の漢字の字体を区別する必要が生じた。
レッサーパンダパンダ
新たに発見された動物が、既存種であるパンダよりも大きい新種として捉えられてジャイアントパンダと名付けられたことにより、区別する必要が生じた。
フィーチャー・フォン、「ガラケー」   ← 携帯電話、ケータイ
携帯電話のうち、スマートフォンが普及するにつれ、従来の携帯電話を区別するために用いられている。
フィルムカメラ   ← カメラ
デジタルカメラの普及に伴い、従来のカメラを指す必要が生じた。
冬時間時刻
夏時間(サマータイム)という設定をつくりだしたことで生まれたレトロニム。すなわち、その国(地域)の標準時である。
プロペラ機  ← airplane 飛行機

もともと大抵の航空機はプロペラ推進であったが、ジェット機の普及したことで、区別の必要が生まれた。

プレーンテキスト    ← テキスト
Rich Text FormatHyperText Markup Languageなどのスタイル情報を埋め込んだテキストというものが作り出されたので、従来のテキストを区別する必要が生じた。
ホットチョコレートチョコレート
チョコレートとは、もともとは暖かい飲み物であり、もっぱらそういう形で口にしていたものなのである。後から、硬いチョコレートが発明されたのである[1]

ま行[編集]

マニュアルトランスミッショントランスミッション
オートマチックトランスミッションが開発されたため、自動化されていないものを指す言葉として生まれた。マニュアル車をミッション車と誤った呼び方をされる事がある。
マクロネーション 
シーランド公国アエリカ帝国のように国際的に認められていない地域を意味する「ミクロネーション」に対するレトロニムである。
真綿綿
綿とは本来、を煮て、引き延ばしたものを言うのだが、室町時代にそれに似た植物由来の「木綿」ができた。これと区別するためにできたレトロニムである。

や行[編集]

ら行[編集]

ライブ ← 「演奏」「音楽」 など
もともと全ての音楽はその場で演奏されるものであった。音楽を記録する技術が生まれ、区別する必要が生じた。
リアル店舗   ← 店舗
インターネット上の店舗が広まったため、物理的な店舗を区別して称する必要が生じた。
レギュラーコーヒー  ← コーヒー
インスタントコーヒー缶コーヒーが広まったため、旧来のコーヒーを指す言葉として広まった。
レッサーパンダパンダ
初めはレッサーパンダは単に「パンダ」と呼ばれていたが、後にジャイアントパンダが発見されて有名になると、単に「パンダ」といった場合はジャイアントパンダの方を指すようになってしまった。このため、従来のパンダの方はレッサーパンダと呼ぶようになった[2]
路面店店舗

通りに面して間口があるお店。もともとそれが当たり前であった。百貨店内のブース出店やテナントビル内の店舗、近年ではウェブ上のバーチャル店舗などと区別するための用語として「路面店」と呼ばれるようになった。

わ行[編集]

藁納豆  ← 納豆
本来は、藁に包まれていることが当然であったが、発泡スチロールに入った物が出回ったことにより作られたレトロニムである。発泡スチロールに入ったものが登場した時は「新しい」ことばかりがやたらと重視される時代で、それだけがすばらしいような気になって、選ばれたが、今では逆に、工場の大量生産でないものに希少性があり、価値がある、と認識されるようになり、頭に「藁」と付いていると、なにがしかの「高級感」を感じる人が増えている。

脚注[編集]

  1. ^ Some dictionaries however, still define "chocolate" as a drink as one of the definitions. American Heritage Dictionary entry for "chocolate"
  2. ^ 「ボクが元祖!!」レッサーパンダ : 動物たちのヒミツ箱 : 初めてのこだわり : 新おとな総研 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) YOMIURI ONLINE(読売新聞) 2011年06月22日付(2011年6月22日付読売新聞の記事より) 2013年8月11日閲覧