レジスタントスターチ

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レジスタントスターチ(resistant starch)とは、ヒト小腸まででは消化されず、大腸に届くでんぷん、および、でんぷん分解物の総称である[1]。「レジスタント」=「消化されない」、「スターチ」=「でんぷん」という意味であり、難消化性でんぷんまたは耐性でんぷんとも呼ばれる。

概要[編集]

レジスタントスターチはでんぷんでありながら、エネルギーになりにくく、整腸作用や生活習慣病の予防効果があるとされている食品中の成分であり、食物繊維の1種である[2]。食物繊維の中でも、腸内細菌に対して良い影響を与える効果があり、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の特性をあわせ持っているなど、ユニークな機能を有している[1]

なお、日本でトクホ飲料によく使われる難消化性デキストリンとは構造も性質も異なる[3]

消化されない理由[編集]

レジスタントスターチは消化されないメカニズムの違いによって次の4種類に分類されている[4]

RS1: 雑穀のように硬い組織に囲まれていることで消化酵素がでんぷんまで届かないタイプ
RS2: 十分に加熱されていない未糊化のでんぷんやアミロースの極めて多いでんぷんなど、でんぷんの粒子自体が消化されにくいタイプ
RS3: 冷やご飯や春雨のように一度加熱されて糊化したあと、冷めたり保存する過程で一部のでんぷんが再結晶して消化されにくい構造に変化したタイプ
RS4: 加工デンプンの一種で、でんぷんを高程度に化学修飾することで消化酵素が作用しにくくなったタイプ

レジスタントスターチを含む食品[編集]

レジスタントスターチは雑穀などの穀類や、コーンフレークやパスタなどのでんぷん質の食品の一部に含まれる。中にはハイアミロースコーンスターチのように、多量のレジスタントスターチを含むものもある[5]。また、ご飯を冷やす、じゃがいもをポテトサラダにするなど、“冷やす”ことででんぷん質中のレジスタントスターチの量が増えると言われている。このため、ダイエットやお腹の調子を整える目的で、でんぷん質の食品を冷やして食べる方法が紹介されることもある。日本テレビ系の教育バラエティ「世界一受けたい授業」でも、“冷やして得する栄養学”としてレジスタントスターチが紹介された[6]。さらに、最近はレジスタントスターチをより多く含んだでんぷんが食品素材として開発されており、麺類やパンなどに配合して、より手軽に摂取できるよう取り組みが進められている[7][8]トクホの関与成分としても使われている難消化性再結晶アミロースもレジスタントスターチの一種であり、RS3のタイプに相当する[9]。  

食品中に含まれるレジスタントスターチ[5]
食品 レジスタントスターチ含有量(乾燥重量あたり)
パスタ 1.4 %
コーンフレーク 2.8 %
インゲンマメ(水煮) 5.3 %
コーンスターチ 0.99 %
ハイアミロースコーンスターチ 43.0 %

レジスタントスターチを摂取するメリット[編集]

血糖値の上昇抑制[編集]

 通常のでんぷんは、摂取すると小腸で消化酵素によって分解されてグルコースになり、血液へ取り込まれるため血糖値が上がる。これに対し、レジスタントスターチは消化酵素によって分解されにくいため、血糖値の上昇が低く抑えられる事が分かっている[10]EUでは、レジスタントスターチを14%以上含む食品について「食後の血糖応答が小さい」という内容の表示(ヘルスクレーム)をすることが認められている[11]

腸内発酵性[編集]

 大腸に届いたレジスタントスターチは、腸内細菌によって発酵されて、酢酸プロピオン酸酪酸コハク酸などの有機酸に変えられる。このような有機酸は、腸内を悪玉菌が活動しにくい弱酸性に維持する効果があり、善玉菌を育てやすくする。さらに、大腸から体内へ吸収されて大腸癌の予防、大腸炎の予防、中性脂肪コレステロールの上昇抑制、インスリン抵抗性の改善など、全身の健康維持に役立っていることが分かっている。[12][7]

空腹感の抑制[編集]

 レジスタントスターチを多く含んだ食品を摂ると、小腸でおだやかに消化され、大腸ではゆっくりと発酵されて有機酸になるため、摂取してから時間をかけて体に吸収される。このため、朝食に食べると昼食、昼食に食べると夕食の空腹感や食欲を抑えるセカンドミール効果により、食事量を抑えられると言われている。[2]

摂取カロリーの抑制[編集]

 でんぷん1gあたりのカロリーは通常4kcalとみなされているが、レジスタントスターチのように小腸で消化されず、大腸腸内細菌に発酵されて有機酸として吸収されるでんぷんのカロリーは1gあたり2kcalと、通常のでんぷんの半分とされている。[13] 

脚注[編集]

  1. ^ a b 青江誠一郎他「レジスタントスターチ」『食物繊維 基礎と応用』第一出版、2008年、51-54頁。
  2. ^ a b Suzanne Hendrich, “Battling Obesity with Resistant Starch”, foodtechnology, Vol. 64, No. 3, 2010, pp. 22-30.
  3. ^ 青江誠一郎他「難消化性デキストリン」『食物繊維 基礎と応用』第一出版、2008年、65-67頁。
  4. ^ M.G. Sajilata, Rekha S. Singhal and Pushpa R. Kulkarni, ”Resistant Starch–A Review”, Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety, Vol. 5, 2006, p. 1–17.
  5. ^ a b Barry V. McCleary and Dympna A.Monaghan, “Measurement of Resistant Starch”, JOURNAL OF AOAC INTERNATIONAL, Vol. 85, 2002, pp. 665-675.
  6. ^ 日本テレビ『世界一受けたい授業』「冷やして得する栄養学 美容と健康の強い味方レジスタントスターチとは?」” (2012年9月1日). 2013年3月15日閲覧。
  7. ^ a b A.P.Nugent, “Health properties of resistant starch”, Nutrition Bulletin, Vol. 30, 2005, pp 27-54.
  8. ^ 『食品と開発』2013年、Vol.48 No.1、49-57頁。
  9. ^ 内閣府食品安全委員会新開発食品専門調査会 専門調査会議事録
  10. ^ 早川享志・柘植治人「デンプンの摂取と健康‐難消化性デンプンの生理機能‐」『日本食物繊維研究会誌』3号、1999年、55-64頁。
  11. ^ ’EFSA Journal, 2011, 2024, 9.”. 2013-03-016閲覧。
  12. ^ 早川享志「ルミナコイドとしてのレジスタントスターチの役割」『FFIジャーナル』217号、2012年、269-274頁。
  13. ^ JFRLニュース No. 34, JUL. 2003 (PDF)”. 日本食品分析センター. 2013年3月7日閲覧。

外部リンク[編集]