リーマン予想

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リーマンのゼータ関数 ζ(1/2 + ix) の実部(赤色)と虚部(青色)を表したもの。自明でない零点x = ±14.135, ±21.022, ±25.011 に現れる。

リーマン予想(リーマンよそう、Riemann Hypothesis)とは、ドイツの数学者ベルンハルト・リーマンによって提唱された、ゼータ関数零点の分布に関する予想である。英語表記 Riemann Hypothesis の直訳であるリーマン仮説と表記したり、RH と略したりすることもある。数学上の未解決問題の一つであり、クレイ数学研究所ミレニアム懸賞問題の一つとしてリーマン予想の解決者に対して100万ドルの懸賞金を支払うことを約束している。

目次

概要[編集]

リーマン素数の分布に関する研究を行っている際にオイラーが研究していた以下の級数をゼータ関数と名づけ、解析接続を用いて複素数全体への拡張を行った。

ゼータ関数を次のように定義する。

\zeta (s)=1+\frac{1}{2^s} +\frac{1}{3^s} +\frac{1}{4^s} + ... =\sum_{n=1}^\infty \frac{1}{n^s}

1859年にリーマンは自身の論文の中で、複素数全体 (s ≠ 1) へゼータ関数を拡張した場合、

ζ(s) の自明でない零点 s は、全て実部が 1/2 の直線上に存在する。

と予想した。ここに、自明な零点とは負の偶数 (−2, −4, −6, …) のことである。自明でない零点は0 < Re s < 1[1]の範囲にしか存在しないことが知られており(下記の歴史を参照)、この範囲をクリティカル・ストリップという。

なお素数定理はリーマン予想と同値な近似公式[2]からの帰結であるが、素数定理自体はリーマン予想がなくとも証明できる。この注意は歴史的には重要なことで、実際リーマンがはっきりとは素数定理を証明できなかった理由はリーマン予想の正否にこだわっていたためであると思われている(素数分布とのゼータ関数との関係はゼータ関数素数定理リーマンの素数公式の項を参照のこと)。

現在もリーマン予想は解かれていない。数学における最も重要な未解決問題の一つである。リーマンのゼータ関数を特殊な場合に含むL関数に対しても同様の予想を考えることができ、これを一般化されたリーマン予想(Generalised Riemann Hypothesis : GRH と略される)と呼んでいる。

最近では、虚部が小さい方から10兆個 (X. Gourdon and P. Demichel, 2004) までの複素零点は全てリーマン予想を満たすことが計算されており、現在までにまだ反例は知られていない。現在では多くの数学者が(当然のことだが、はっきりした根拠を持たずに)リーマン予想は正しいと考えているようである。しかし無限にある零点から見ればたかだか有限の数表などは零点分布の全容を明らかにするには至らないとして、この数値計算の結果に対して慎重な数学者もいる。歴史上有名な数学者の中でもリーマン予想を疑っていた数学者はいる[3]

数値計算手法がいくら進歩しても、その有限個の数値解の裏付けとして解析的に厳密な証明を与える必要があることには変わりない。

リーマン予想の歴史[編集]

リーマン予想から帰結する命題と同値命題[編集]

リーマン予想を実際に使うに当たり、リーマン予想が成立すれば正しいことが知られている命題や、リーマン予想と同値であることが知られている性質を記載する。

同値な命題[編集]

  • 十分大きな任意の x に対し、

|\pi(x)-\operatorname{li} x|\leq C\, \sqrt{x} \, \ln x

が成り立つような定数 C が存在すること (Von Koch (1901))。ここに li x は対数積分を表す。これは

\pi (x)=\operatorname{li} x+O(x^{\frac{1}{2}+\varepsilon} )

と表現しても同じことである。ただし、O はランダウの記号である。

  • 自然数 n の正の約数の和を σ(n)(約数函数)で表すとき、n > 5040 に対して

\sigma (n)<e^\gamma n\ln \ln n

が成り立つこと (Robin 1984)。ここに γ はオイラー定数を表す。

  • 任意の自然数 n に対して

\sigma (n)\le H_n +e^{H_n} \ln H_n

が成り立つこと (Lagarias & Jeffrey 2002)。ここに Hn は n 番目の調和数、すなわち

H_n =\sum_{k=1}^n \frac{1}{k}

で定義される有理数である。

素数分布[編集]

リーマンゼータ函数の零点を渡る項での与えられた数よりも小さい素数の個数リーマンの明示公式は、素数の期待値の周りの振動の大きさはゼータ函数の零点の実数部分により制御されるということになる。特に、素数定理のエラー項は零点の位置に密接に関連している。例えば、零点の実部の上限は、誤差が O(xβ) となるような数 β の下限である (Ingham 1932)。

Von Koch (1901) はリーマン予想と素数定理のエラーの「最もありうる」境界点が同値であることを証明した。 Schoenfeld (1976)による、コッホの結果の詳細バージョンは、リーマン予想と次が同値であることを言っている。全ての x ≥ 2657 に対し、

|\pi (x)-\operatorname{Li} x|<\frac{1}{8\pi} \sqrt{x} \log x

Schoenfeld (1976) では、リーマン予想と次が同値であることも示されている。全ての x ≥ 73.2 に対して、

|\psi (x)-x|<\frac{1}{8\pi} \sqrt{x} (\log x)^2

が成り立つ。ここに、ψ(x) は第二チェビシェフ函数である。

数論的函数の増加度[編集]

リーマン予想は多くの他の数論函数と、上記の素数計数函数の増加度への強い境界制限を意味する。

一つ例を挙げると、メビウス函数 μ がある。実部が 1/2 より大きな全ての s に対して、

\frac{1}{\zeta(s)} =\sum_{n=1}^\infty \frac{\mu(n)}{n^s}

が成り立ち、右辺が収束することは、リーマン予想と同値である。このことから、もしメルテンス函数英語版が、

M(x)=\sum_{n\le x} \mu (n)

により定義されていると、全ての ε > 0 に対して、

M(x)=O(x^{\frac{1}{2}+\varepsilon})

となることと、リーマン予想は同値である (Titchmarsh 1986) と結論できる。(これらの記号の意味は、ランダウの記号を参照。)オーダー n のレッドヘファー行列英語版の行列式は M(n) に等しいので、リーマン予想はこの行列式の増加の条件として記述することができる。Odlyzko & te Riele (1985) は、少し弱いメルテンス予想英語版が誤っていることを逆証明したので、リーマン予想は、M の増加の境界をより厳しく取っている。

|M(x)|\le \sqrt{x}

リーマン予想は、μ(n) 以外の数論的函数の増加度についての多く予想と同値である。典型的な例として、ロビンの定理 (Robin's theorem) (Robin 1984) があり、この定理は、約数函数 σ :

\sigma (n)=\sum_{d\mid n} d

が与えられると、全ての n > 5040 について

\sigma (n)<e^\gamma n\log \log n

が成立することと、リーマン予想が正しいことと同値である。ここに γ はオイラーの定数である。

ほかにも、ジェローム・フラネル英語版による例と、エドムンド・ランダウによる拡張がある(Franel & Landau (1924) を参照)。リーマン予想は、ファレイ数列の項が正規であることを示すいくつかの記述と同値である。そのような同値のうちの1つが次である。

Fn を自然数 n に対応するファレイ数列 (1/n, …, 1/1) とすると、全ての ε > 0 に対し
\sum_{i=1}^m |F_n (i)-\tfrac{i}{m} |=O(n^{\frac{1}{2}+\epsilon})
であることと、リーマン予想は同値である。ここに、
m=\sum_{i=1}^n \phi (i)
は、n に対応するファレイ数列の項数とする。

群論の例としては、g(n) を n 次対称群 Sn の元の最大位数により与えられるランダウ函数英語版とすると、Massias, Nicolas & Robin (1988) によると、リーマン予想は十分に大きい n に対する境界

\log g(n)<\sqrt{\operatorname{Li}^{-1} n}

に同値である。

リンデロフ予想とゼータ函数の増加[編集]

リーマン予想はリーマン予想よりも弱い結論を持っている。その一つがクリティカルライン上のゼータ函数の増加率についてのリンデロフ予想英語版である。任意の ε > 0 に対して、t → ∞ では

\zeta \left( \frac{1}{2} +it\right) =O(t^\varepsilon )

となる。

リーマン予想はまた、他の帯状臨界領域でのゼータ函数の増加率の非常に鋭い境界を意味する。例えば、このことは、

 e^\gamma \le \limsup_{t\rightarrow +\infty}\frac{|\zeta (1+it)|}{\log \log t} \le 2e^\gamma
\frac{6}{\pi^2} e^\gamma \le \limsup_{t\rightarrow +\infty} \frac{1/|\zeta (1+it)|}{\log \log t} \le \frac{12}{\pi^2} e^\gamma

を意味するので、ζ(1 + it) の増加率とその逆数は、2つの要素を除き知られている (Titchmarsh 1986)。

大きな素数ギャップ予想[編集]

素数定理は、平均すると、素数 p とそれより大きな素数の間の英語版は log p であることを意味している。しかし、素数の間の差異は、平均よりも非常に大きいことがあるかもしれず、ハラルド・クラメール(Harald Cramér)は、リーマン予想を前提とすると、全ての差異が \mathcal{O}(\sqrt{p} \log{p}) であることを示した。この場合は、リーマン予想を使って証明できる最もよい境界を選んでも、正しいと思えるものよりも非常に弱い。クラメール予想英語版は、全てのギャップは \mathcal{O}((\log p)^2) であり、このことは平均ギャップが大きくなる一方で、リーマン予想の意味するように境界は非常により小さくなることを意味している。数値的な根拠がクラメール予想を支持している (Nicely 1999)。

リーマン予想と同値な評価条件[編集]

リーマン予想に同値な多くの命題が見つかっていて、今までそれらの内でどれも証明される(あるいは、誤りが証明される)ことへ向けての大きな前進はない。いくつかの典型的な例は下記のようになる。(他は、約数函数の漸近増加率 (approximate growth rate of divisor function) σ(n) を含んでいる。)

リースの評価条件英語版は、Riesz (1916) で提出され、次の式の境界が全ての ε > 0 に対して成立することと、リーマン予想が成立することと同値であることを示した。

-\sum_{k=1}^\infty \frac{(-x)^k}{(k-1)! \zeta(2k)} = O\left( x^{\frac{1}{4}+\epsilon}\right)

Nyman (1950) は、リーマン予想が成り立つことと、次の形の函数空間が単位区間上で二乗可積分函数のヒルベルト空間 L2(0, 1) で稠密であることとが同値であることを示した。

f(x)=\sum_{\nu=1}^nc_\nu \rho \left( \frac{\theta_\nu} {x} \right)

ここに ρ(z) は z のフラクタル部分で 0 ≤ θν ≤ 1 であり、

\sum_{\nu =1}^nc_\nu \theta_\nu =0

とする。Beurling (1955) はこの結果を、ゼータ函数は実部が 1/p より大きな零点を持たないことと、この函数空間が Lp(0, 1) の中で稠密であることを示すことで拡張した。

Salem (1953) はリーマン予想が成立することと、1/2 < σ < 1 に対して、積分方程式

\int_0^\infty \frac{z^{-\sigma -1} \phi (z)\, dz}{{e^{x/z}} +1}=0

が非自明な有界な解 φ を持たないことが同値であることを証明した。

ヴェイユの評価条件英語版は、ある函数の正値性がリーマン予想と同値であることを言っている。リの評価条件英語版では、ある数列の正値性がリーマン予想と同値であることを言っている。

Speiser (1934) では、リーマン予想と ζ(s) の導函数 ζ'(s) が次の帯状領域の中に零点を持たないことと同値であることを証明した。

0<\operatorname{Re} s<\frac12

ζ が直線 Re s = 1/2 上にしか零点を持たないことは、(定義により)その導函数 ζ' が直線 Re s = 1/2 上に零点を持たないことと同値である。

一般化されたリーマン予想の結果[編集]

応用として、リーマン予想というよりも数体のゼータ函数やディリクレのL-級数の一般化されたリーマン予想を使うものがある。リーマンゼータ函数の多くほ基本的性質は、容易にディリクレのL-級数全てへ一般化することができるので、リーマンのゼータ函数に対して証明された方法がディリクレのL-級数の一般化されたリーマン予想として活用できる。まず、一般化されたリーマン予想を使い証明されたいくつかの結果が、本来非常に難しかったのだが、リーマン予想を使わずに証明が後日与えられた。次のリストに記載した結果の多くは、Conrad (2010) から取っている。

  • 1913年、グロンウォールは、一般化されたリーマン予想がガウスの類数 1 の虚二次体のリストが完全である。ベイカー、スタークやヒーグナーにより後日、一般化されたリーマン予想を使うことなしにこれを伝統とは違う方法で示した。
  • 1917年、ハーディとリトルウッドは、一般化されたリーマン予想がチェビシェフの予想
\lim_{x\to 1^-}\sum_{p>2} (-1)^{\frac{p+1}{2}} x^p =+\infty
を含んでいることを示した。この予想は、ある意味で、素数 3 mod 4 だけではなく、素数 1 mod 4 でも成立することを言っている。
  • 1923年、ハーディとリトルウッドは、一般化されたリーマン予想が奇素数に対する弱い形のゴルドバッハ予想を含んでいることを示した。全ての十分に大きな奇素数は、3つの素数の和で表される。1937年、ヴィノグラードフは(一般化されたリーマン予想を前提にしない)伝統的ではない方法で証明した。 1997年、ジャン・マーク・デショーラー英語版、エフィンガー、テ・リエールとジノヴィエフは一般化されたリーマン予想が 5 よりも大きな全ての奇数が 3つの素数の和で記述されることを含んでいることを証明した。
  • 1934年、チョーラは、一般化されたリーマン予想が数論的数列 a mod m の第一の素数に対して、固定された定数 K が存在して、多くとも Km2 log(m)2 となることを示した。
  • 1967年、フーリィは、一般化されたリーマン予想がアルティンの原始根の予想英語版を含んでいることを証明した。
  • 1973年、ワインバーガーは、一般化されたリーマン予想がイドニール数英語版のオイラーによるリストが完全であることを示した。
  • Weinberger (1973) は、代数的数体全てのゼータ函数の一般化されたリーマン予想が類数 1 の任意の数体がユークリッド環であるか、判別式が −19, −43, −67, もしくは −163 である虚二次体であることを含んでいることを示した。
  • 1976年、G. ミラーは、一般化されたリーマン予想がミラー-ラビン素数判定法により多項式倍での素数判定が可能であることを示した。2002年、マニンドラ・アグラワル、ニーラッジ・カヤル、ニティン・サクセーナはこの結果を伝統的な方法ではなく、AKS素数判定法を使い証明した。
  • Odlyzko (1990) は、どのように一般化されたリーマン予想を使い、数体の判別式と類数の見積もりをより改善することができるかを議論している。
  • Ono & Soundararajan (1997) は、一般化されたリーマン予想がラマヌジャンの三項の二次形式英語版 x2 + y2 + 10z2 が、18 だけを除き、全ての整数を表すことができることを意味することを示した。

排中律[編集]

リーマン予想の結果の中には、リーマン予想を否定して矛盾を導くことで結果とするものもあり、これが定理となっている。ヘッケ(Hecke)、ドイリング(Deuring)、モルデル(Mordell)、ヘイルブロン(Heilbronn)の定理の議論の中で、(Ireland & Rosen 1990, p. 359) は次のように言っている。

ここの証明の方法は本当に驚くべきものである。もし一般化されたリーマン予想が正しいならば、この定理は正しい。もし一般化されたリーマン予想が誤りでも、この定理は正しい。従って、この定理は正しい!!    (オリジナルでの句読点)

一般化されたリーマン予想が誤っているということの意味を理解するには注意を要する。正確にどのディリクレ級数のクラスが反例となるかを特定する必要がある。

リトルウッドの定理[編集]

これは素数定理のエラー符号に関係している。全ての x ≤ 1023 に対し π(x) < Li(x) であることが計算されており、x の値は π(x) > Li(x) ではないことが知られている。π(x), x/ln x, li(x)の一覧表を参照。

しかしながら、1914年、リトルウッドは任意の大きな x に対し

\pi (x)>\operatorname{Li} x+\frac13 \frac{\sqrt x}{\log x} \log \log \log x

となり、任意の大きな x に対し

\pi (x)<\operatorname{Li} x-\frac13 \frac{\sqrt x}{\log x} \log\log\log x

となりうることを証明した。従って、π(x) − Li x の差異は無限回にわたり符号を変える。スキューズ数は、最初に符号を変えることに対応する x の値の見積もりである。

リトルウッドの証明は 2つの場合に分かれ、一つはリーマン予想を前提とすることは誤りであり( Ingham 1932, Chapt. Vのページのおよそ半分)、もう一つはリーマン予想を前提とすると正しい(およそ10ページ)となっている。

ガウスの類数予想[編集]

これは、類数問題(Class number problem)という予想であり(最初に言及したのはガウスの Disquisitiones Arithmeticae の記事 303 である)、そこには与えられた類数をもつ虚二次体の数は有限でしかないことが記載されている。このことを証明する方法の一つは、判別式が D → −∞ となるときに、類数 h(D) → ∞ となるであろうことが示されている。

リーマン予想も含めて、一連の定理は、Ireland & Rosen 1990, pp. 358–361に記載されている。引用すると、

定理(ヘッケ (Hecke); 1918). D < 0 を虚二次体 K の判別式とする。全ての虚二次体のディリクレ指標のL-函数についての一般化されたリーマン予想を前提とすると、ある定数 C が存在して、

h(D)>C\frac{\sqrt{|D|}}{\log |D|}
となる。

定理 (ドイリング (Deuring); 1933). リーマン予想を偽と仮定すると、|D| が十分に大きいと h(D) > 1 である。

定理 (モルデル (Mordell); 1934). リーマン予想を偽と仮定すると、h(D) → ∞ となるとき、D → −∞ となる。

定理 (ハイルブロン (Heilbronn); 1934). 一般化されたリーマン予想が偽であると仮定すると、ある虚二次体のディリクレ指標のL-函数に対して、h(D) → ∞ であるときに、D → −∞ となる。

(ヘッケとハイルブロンの仕事の中では、 L-函数は虚二次体の指標についてのL-函数だけであり、一般化されたリーマン予想が正しいか、誤っているかを問題としている。厳密には、3次のディリクレ指標のL-函数についての一般化されたリーマン予想が誤っているということは、一般化されたリーマン予想が誤りであることを意味する。しかし、ヘイルブロンの考えの中での一般化されたリーマン予想が誤っているということの一つではないので、彼の前提は単純な「一般化されたリーマン予想の誤り」というよりも限定されたものであった。)

1935年、カール・ジーゲルは、リーマン予想や一般化されたリーマン予想を使わずにより強い結果を示した。

オイラーのトーシェント函数[編集]

1983年、J. L. ニコラスは (Ribenboim 1996, p. 320) で、無限に多くの n に対し、

\varphi(n) < e^{-\gamma}\frac {n} {\log \log n}

となることを証明した。ここに \varphi(n)オイラーの(トーシェント)函数であり、γ はオイラーの定数である。

リーベンボイムは次のように注意している。

証明の方法が興味深く、不等式はまずはリーマン予想が正しいことを前提として示され、次にはリーマン予想が誤りであることを前提にしている。

リーマン予想の一般化と類似する予想[編集]

ディリクレのL-級数と他の数体[編集]

リーマン予想は、リーマンのゼータ函数を形式的には似ているが非常に一般的なL-函数に置き換えることで一般化することができる。この幅広い設定では、一般的なL-函数の非自明なゼロ点が、実部が 1/2 を持っていることを期待できる。単にリーマンのゼータ函数に対する古典的なリーマン予想というよりも、これらの一般化されたリーマン予想が数学で真の重要性を持っていると考えられている。

一般化されたリーマン予想 (generalized Riemann hypothesis) は、全てのディリクレのL-函数へリーマン予想が拡張される。特に、このことはジーゲルの零点英語版 (Siegel zero) の実部が 1/2 と 1 の間に存在しないという予想を意味している。

拡張されたリーマン予想(extended Riemann hypothesis)は、リーマン予想を代数体の全てのデデキントのゼータ函数へと拡張したものである。有理数の可換拡大の拡張されたリーマン予想は、一般化されたリーマン予想と同値である。リーマン予想は数体のヘッケ指標(Hecke character) のL-函数へ拡張することもできる。

大リーマン予想英語版は、ヘッケ固有形式英語版 (Hecke eigenform) のメリン変換のように、全ての保型形式のゼータ函数へリーマン予想を拡張したものである。

有限体上の多様体の函数体とゼータ函数[編集]

Artin (1924) では、(4次の)代数多様体の函数体のゼータ函数が導入され、これらに対するリーマン予想に類似することが予想され、Hasse によって種数が 1 のときに証明され、Weil (1948) で一般的に証明された。例えば、ガウス和のサイズが q( q が奇数)の有限体の二次指標は絶対値を持っている。

\sqrt{q}

は、函数体の設定でのリーマン予想の例となっている。このから、Weil (1949) の中では、全ての代数多様体に対する類似の予想を導いた。その結果であるヴェイユ予想は、Pierre Deligne (1974, 1980) により証明された。

数論的スキームとそれらのL-因子の数論的ゼータ函数[編集]

数論的ゼータ函数は、有限体上の多様体のゼータ函数を任意の数論的スキーム(概型)や整数上の有限型のスキームへ拡張したように、リーマンのゼータ函数やデデキントのゼータ関数を一般化したものである。正規連結なクロネッカー次元 n と等次元の数論的ゼータ函数は適切に定義されたL-因子 (L-factor) と任意の因子との積へ分解できる Jean-Pierre Serre (1970)。函数等式と解析接続を仮定すると、L-因子に対する一般化されたリーマン予想は、その零点が帯状臨界領域 \operatorname{Re} s\in (0,n) の中心線上にあることを言っている。対応して、背式連結等次元な数論的スキームの一般化されたリーマン予想は、その零点が帯状臨界領域の垂直線 Re s = 1/2, 3/2, …, n1/2 の上にあり、そのが垂直線 Re s = 1, 2, …, n − 1 上の帯状臨界領域の内側にあることを言っている。正の標数のスキームに対してこれは知られていて、このことは Pierre Deligne (1974, 1980) から得られるが、しかし、標数 0 の場合は分かっていない。

セルバーグのゼータ函数[編集]

Selberg (1956) では、リーマン面のセルバーグのゼータ函数が導入された。これらはリーマンのゼータ函数に似ていて、函数等式をもち、素数を渡るというよりも閉測地線を渡るオイラー積に似た無限積を持っている。セルバーグ跡公式は素数の理論の明示公式の類似物である。セルバーグは、セルバーグのゼータ函数が、リーマン面のラプラシアンの固有値に関係するゼロ点の虚部について、リーマン予想の類似を満たすことを証明した。

伊原ゼータ函数[編集]

有限グラフの伊原ゼータ函数英語版は、セルバーグゼータ函数の類似で、伊原康隆により導入された。正規な有限グラフは、ラマヌジャングラフ英語版で、有効な通信ネットワークの数学的モデルであることと、砂田利一が指摘しているように、伊原ゼータ函数がリーマン予想の類似を満たすことと同値である。

モンゴメリーのペア相関予想[編集]

Montgomery (1973) では、ペア相関予想が示唆されている。この予想は、ゼータ函数の(適切に正規化された)ゼロ点の相関函数は、GUEエルミート行列の固有値に相関函数と同じではないかという予想である。Odlyzko (1987) は、これらの相関函数がこれが大きなスケールの数の計算により(この予想が)支持されていることを示した。

モンゴメリは(リーマン予想を前提とすると)少なくとも全体の零点の 2/3 は単純であることを示し、関連する予想はゼータ函数の全ての零点は単純であろう(もしくは、もっと一般的には、それらの虚数部の間には非自明な整数の線型関係はないであろう)というものである。代数体のデデキントゼータ函数は、リーマンのゼータ函数を一般化したものであるが、ときには重複したゼロ点を持つ。[要出典] この理由は、デデキントゼータ函数が、アルティンのL-函数のベキの積として分解することにあり、従って、アルティンのL-函数のゼロ点はしばしばデデキントのゼータ函数の重複したゼロ点となる。重複したゼロ点を持つゼータ函数の別な例として、ある楕円曲線のL-函数がある。これらのことは、クリティカルラインの実際の点での重複したゼロ点を持つことができる。バーチ・スウィンナートン=ダイアー予想は、このゼロ点の多重度が楕円曲線のランクであることを予想している。

その他のゼータ函数[編集]

リーマン予想の類似は他のゼータ函数にも多くの例があり、それらのうちのいくつかは既に証明されている。函数体のゴスのゼータ函数英語版 (Goss zeta function) にもリーマン予想があり、Sheats (1998) で証明された。バリー・メイザー (Barry Mazur) とアンドリュー・ワイルズ (Andrew Wiles) によって円分体に対して証明され、ワイルズにより総実体に対して証明された岩澤理論主予想は、作用素の固有値を持つ p-進 L-函数英語版の零点と一致し、従って p-進 L-函数に対するヒルベルト・ポリア予想の類似物と考えることができる (Wiles 2000)。

リーマン予想の証明への試み[編集]

何人かの数学者がリーマン予想を解こうとしたが、未だに誰も正しい解として受け入れられたものはない。Watkins (2007) にはいくつかの誤った解がリストアップされていて、さらに frequently announced には、リーマン予想についてリストが常に更新されている。

作用素理論[編集]

ヒルベルトとポリヤは、リーマン予想の証明はある自己随伴作用素(self-adjoint operator)を見つけることにより得られるのではないかと示唆した。自己随伴作用素の存在からは、ζ(s) のゼロ点の実部が一直線になるということは、(自己随伴作用素の)実数の固有値への条件を与えることから導ける。ある作用素の固有値に対応する零点を持つリーマンゼータ函数の類似の例は、このアイデアを支持する。有限体上の代数多様体のゼータ函数(合同ゼータ函数)の零点は、エタール・コホモロジー群上のフロベニウス元に対応し、セルバーグゼータ函数の零点は、リーマン面ラプラス作用素の固有値であり、p-進ゼータ函数英語版の零点は、イデアル類群上のガロア作用の固有ベクトルに対応する。

Odlyzko (1987)は、ガウス型ユニタリアンサンブルランダム行列の固有値を持つという統計的性質を、リーマンゼータ函数のゼロ点の分布が持っていることを示した。このことはヒルベルト・ポリア予想を支持している。

1999年、マイケル・ベリー(Michael Berry)とジョン・キーティング英語版 (Jon Keating) は、未だに知られていない古典的ハミルトニアン H = xp の量子化 \hat H で、

\zeta (\frac{1}{2} +i\hat H )=0

となっているものが存在するのではと予想した。さらに強く、リーマンのゼロ点は作用素 \frac{1}{2} +i\hat H のスペクトルに一致するのではと予想した。このことは、ハイゼンベルグ不確定性原理 [x,p]=\frac{1}{2}量子調和振動子英語版のスペクトルとしての自然数を導く正準量子化と比較される。ここで決定的に重要な点は、ハミルトニアンは自己随伴作用素であり、量子化がヒルベルト・ポリヤのプログラムの実現になることである。量子力学との関係で、ベリーとコンヌは、ハミルトニアンのポテンシャルの逆が次の函数から導かれるものに関連しているのではないかと提案している。

 N(s)=\frac{1}{\pi} \operatorname{Arg} \xi (\frac{1}{2} +i\sqrt s)

ベリーとコンヌの近似は、

V^{-1}(x)=\sqrt{4\pi} \frac{d^{\frac{1}{2}}N(x)}{dx^{\frac{1}{2}}}

(Connes 1999) である。このことは、リーマンのゼロの虚部の2乗が固有値であるようなハミルトニアンがあり、ハミルトニアン作用素の汎函数の行列式がまさにリーマンゼータ函数であることを主張している。事実、リーマンのゼータ函数は、次のアダマール積 (Hadamard product) に比例していることになる。

\det(H+\frac{1}{4} +s(s-1))

これはコンヌや他の人により証明され、このアプローチでは

\frac{\xi (s)}{\xi (0)} =\frac{\det (H+s(s-1)+\frac{1}{4})}{\det (H+\frac{1}{4})}.

となる。 有限体上のリーマン予想の類似物は、零点に対応する連続固有ベクトルを持つヒルベルト空間は、整数のスペクトルの第一コホモロジーの一種かもしれない Deninger (1998) ので、そのようなコホモロジー理論を見つけようとする試みから記述される (Leichtnam 2005)。

Zagier (1981) は、リーマンゼータ函数のゼロ点に対応するラプラシアンの下の固有値を持つ上半平面上の不変函数の自然な空間を構成し、この空間はリーマン予想が帰結するであろう半正定値内積の存在を示すことができるのではないかという注意をした。

Schumayer & Hutchinson (2011) のサーベイは、リーマンゼータ函数に関連する適当な物理的なモデルを構成するいくつかの試みについて記載されている。

リー・ヤンの定理[編集]

リー・ヤンの定理は、統計力学的なある分配函数の全ての零点が、実部が 0 の「臨界直線」上にあることを言っていて、これはリーマン予想との関係についてある見方を与える (Knauf 1999)。

トゥラン (Turán) の結果[編集]

Pál Turán (1948) は、s の実部が 1 よりも大きい場合は、函数

\sum_{n=1}^N n^{-s}

が零点を持たず、従って x > 0 に対し

T(x)=\sum_{n\le x} \frac{\lambda(n)}{n} \ge 0

となる。ここに n が素数因子 r を持たないとき、λ(n) は、(−1)r により与えられるリウヴィル函数英語版[4]である。彼はこのことがリーマン予想が正しいことを意味するのではないだろうかということを示した。しかし Haselgrove (1958) は、無限に多い x に対し、T(x) が負となることを示し(またヒルベルト・ポリヤ予想に密接には関係していないことを証明した)。さらに Borwein, Ferguson & Mossinghoff (2008) は、そのような x の最小値が 72185376951205 であることを示した。Spira (1968) は数値計算により、N = 19 の上の有限個のディリクレ級数が、1 よりも大きな実部を持つ零点を持つことを示した。トゥランはまた、ある弱い仮定の下で、大きな N に対して上の有限個のディリクレ級数には、1 + N−1/2+ε よりも大きな実部を持つ零点が存在しないことを示し、このことがリーマン予想に意味するのではないかということを示したが、Montgomery (1983) は、全ての十分に大きな N に対して、これらの級数は 1 + (log log N)/(4 log N) よりも大きな実具を持つ零点を持っていることを示した。従って、トゥランの結果は無意味に正しく英語版(vacuously true)、リーマン予想を証明する手助けにはなりえない。

非可換幾何学[編集]

Connes (1999, 2000) は、リーマン予想と非可換幾何学との関係を述べ、アデール類の空間上のイデール類群の作用のセルバーグ跡公式 (Selberg trace formula) の類似物が、リーマン予想を意味しているかもしれないことを示した。これらのアイデアは、Lapidus (2008) に記載されている。

整函数のヒルベルト空間[編集]

Louis de Branges (1992) はリーマン予想は整函数の作るあるヒルベルト空間の正値性から導けるのではないかということを示した。しかし Conrey & Li (2000) は必要条件としての正値性条件は満たされないことを示した。

準結晶[編集]

リーマン予想は、ゼータ函数の零点が準結晶を形成するということを意味するのではないだろうか。このことの意味は、分布が離散的なサポートをもち、そのフーリエ変換も離散的なサポートを持つような分布を意味する。Dyson (2009) は(準結晶の)分類、少なくとも1-次元の準結晶の研究によって、リーマン予想を証明しようとすることを示唆した。

数体上の楕円曲線のモデルの数論的ゼータ函数[編集]

幾何学的次元 1 つまり代数数体から幾何学的次元 2 つまり数体上の楕円曲線の正規モデルへ行く場合は、モデルの数論的ゼータ函数の一般化されたリーマン予想の 2次元部分がゼータ函数の極を扱う。次元が 1 では、テイトの論文[5]のゼータ積分の研究が、リーマン予想に対して新しい重要な情報をもたらさない。これに対し、テイト論文の 2次元への一般化で、イワン・フェセンコ英語版(Ivan Fesenko)の 2次元の仕事は、ゼータ函数の整数表現がゼータ函数に密接に関係することを示した。この新しい状況の下、次元 1 では不可能であったゼータ函数の極がゼータ積分と付随するアデール群を通して研究することが可能となった。ゼータ積分に付随する境界函数の第 4次の微分の正値性について Fesenko (2010) に関連した予想は、本質的に一般化されたリーマン予想の極の部分を意味している。Suzuki (2011) は、ある技術的な前提の下で、後者(一般化されたリーマン予想)がフェセンコの予想を含んでいることを証明した。

多重ゼータ函数[編集]

有限体上のリーマン予想のデリーニュによる証明は、多様体の積のゼータ函数を使い、元のゼータ函数の零点の実部の境界を求めた。多様体の積のゼータ函数の零点と極は、元のゼータ函数の零点と極の和に対応していた。この類似により、Kurokawa (1992) はリーマンゼータ函数の零点と極の和に対応する零点と極を持つ多重ゼータ函数を導入した。級数が収束するためには、彼は零点と極の和を全ての非負な虚部を持つものへ制限した。今までは、多重ゼータ函数の零点と極の境界は、リーマンゼータの零点を見積もるに有効な(計算可能な)情報を与えるほどは強くはない。

零点の軌跡[編集]

零点の数[編集]

偏角原理英語版(argument principle) と結び付けた函数等式は、虚部が 0 と T の間にあるゼータ函数の零点の数が、s = 1/2 + iT に対して、次で与えられることを意味している。

N(T)=\frac{1}{\pi} \operatorname{Arg} \xi (s)=\frac{1}{\pi} \operatorname{Arg} (\Gamma(\tfrac{s}{2} )\pi^{-\frac{s}{2}} \zeta (s)\tfrac{s(s-1)}{2})

ここに偏角は、偏角 0 の ∞ + iT から出発し Im s = T の直線に沿って連続的に変化させることで定義される。このことは、大きいが理解された項

\frac{1}{\pi} \operatorname{Arg} (\Gamma (\tfrac{s}{2} )\pi^{-s/2} \tfrac{s(s-1)}{2}) =\frac{T}{2\pi} \log \frac{T}{2\pi} -\frac{T}{2\pi} +\frac{7}{8} +O(\frac{1}{T})

と小さいがミステリアスな項

S(T)=\frac{1}{\pi} \operatorname{Arg} (\zeta (\frac{1}{2} +iT))=O(\log T).

の和として表される。従って、零点の虚部が T の近くの密度は、おおよそ log(T)/2π であり、函数 S は、これから派生したものとして記述される。 カラツバ英語版 (Anatolii Alexeevitch Karatsuba) は1996年、函数 S(t) が符号を変えるとき H \ge T^{\frac{27}{82}+\varepsilon} に対し、全ての区間 (T, T + H] は少なくとも

 H(\ln T)^{\frac{1}{3}} e^{-c\sqrt{\ln\ln T}}

個の点を持つことを証明した。

Selberg (1946) は、S の偶数べきの平均値が次の式で与えられることを示した。

\int_0^T |S(t)|^{2k} dt=\frac{(2k)!}{k!(2\pi)^{2k}} T(\log \log T)^k + O(T(\log \log T)^{k-1/2}).

このことは、S(T)/(log log T)1/2 が平均 0 で分散 2π2ガウス分布に似ていることを示唆した(この事実は、Ghosh (1983)により証明された)。特に、|S(T)| は普通は (log log T)1/2 の近くにあるが、ときには非常に大きくなる。S(T) の増加度の正確なオーダーは知られていない。リーマン予想は少し小さな境界 S(T) = O(log T/log log T) (Titchmarsh 1986)を意味しているにもかかわらず、リーマンの元来の境界である S(T) = O(log T) を、条件の付けずに改善することはなされていない。増加度の正しいオーダーは、S(T) と同じ分布を持つランダム函数が log T1/2 程度のオーダーを持つ傾向があることから、これよりいくらか小さいかもしれない。別な方向としては、増加度が小さすぎることはないことが知られている。Selberg (1946)では、S(T) ≠ o((log T)1/3/(log log T)7/3) であることが示されていて、モンゴメリ(Montgomery) はリーマン予想を前提として、S(T) ≠ o((log T)1/2/(log log T)1/2) を示した。

数値計算では、S が非常にゆっくりと増加することが確かめられている。今まで、T < 280 に対し |S(T)| < 1、T < 6800000 に対し |S(T)| < 2 が示されていて、|S(T)| の最大値は 3 よりそれほど大きくないことが示されている(Odlyzko 2002)。

リーマンの見積もり S(T) = O(log T) は、零点の境界の間のギャップを意味していて、リトルウッド (Littlewood) は少しこれを改善して、それらの虚数部の間のギャップが 0 となることを示した。

アダマールとド・ラ・ヴァレ・プーサンの定理[編集]

Hadamard (1896)de la Vallée-Poussin (1896) は独立に、直線 Re(s) = 1 上にはゼロ点が存在しないことを証明した。函数等式と実部が 1 より大きなゼロ点は存在しないという事実の双方から、全ての非自明なゼロはクリティカルな帯状領域 0 < Re(s) < 1 にあるはずであることを示した。これが素数定理の重要な第一ステップとなった。

ゼータ函数は実数部が 1 のゼロ点を持たないことの二人のもともとの証明は非常に似ていて、もし ζ(1+it) がゼロであれば、ζ(1+2it) は特異点となり、これが不可能であるであるというものである。このための一つの方法は、次の不等式を使う方法であった。σ > 1 とし、t を実数として、σ → 1 の極限での値を見ると、

|\zeta(\sigma)^3\zeta(\sigma+it)^4\zeta(\sigma+2it)|\ge 1

となる。この不等式は、オイラー積の対数の実部をとることにより得られ、次のことがわかる。

|\zeta(\sigma+it)| = \exp\Re\sum_{p^n}\frac{p^{-n(\sigma+it)}}{n}=\exp\sum_{p^n}\frac{p^{-n\sigma}\cos(t\log p^n)}{n}

ここに和は全ての素数べき pn を渡ることとする。従って、

|\zeta(\sigma)^3\zeta(\sigma+it)^4\zeta(\sigma+2it)| = \exp\sum_{p^n}p^{-n\sigma}\frac{3+4\cos(t\log p^n)+\cos(2t\log p^n)}{n}

が成り立つ。和の全ての項は次の不等式のおかげで正であるので、この値は少なくとも 1 である。

3+4\cos(\theta)+\cos(2\theta) = 2 (1+\cos(\theta))^2\ge0.

零点の存在しない領域[編集]

De la Vallée-Poussin (1899–1900) は、σ + it がリーマンのゼータ函数の零点であれば、ある定数 C > 0 が存在して 1 − σ ≥ C/log t となることを証明した。言い換えると、零点は直線 σ = 1 に極度に近すぎては存在し得ず、この直線の近くには零点のない領域が存在する。この零点の存在しない領域は何人かによって拡張された。Ford (2002) は明確な数値定数を持つバージョンを示した。|t| ≥ 3 であればいつも ζ(σ + it) ≠ 0 であり、さらに

\sigma\ge 1-\frac{1}{57.54(\log{|t|})^{2/3}(\log{\log{|t|}})^{1/3}}

が成り立つことを示した。

クリティカルライン上のゼロ点[編集]

Hardy (1914)Hardy & Littlewood (1921) は、クリティカルライン上に無限に多くのゼロ点が存在することを、ゼータ函数に関連するある函数を考えることにより示した。Selberg (1942) は、少なくとも(小さな)値のゼロ点はライン上にあることを証明した。Levinson (1974) は、この結果を改善し、ゼータ函数のゼロ点とゼータ函数の微分を関連付けることにより、ゼロ点の 1/3 はクリティカルライン上にあることを示し、Conrey (1989) はさらにこれを 2/5 まで改善した。

ほとんどのゼロ点がクリティカルラインの近くにあることは、Bohr & Landau (1914) が、任意の正の数 ε に対して無限に小さい率を除き全てのゼロ点がクリティカルラインから距離 ε 以内にあることを示した。Ivić (1985)は、この結果の詳細を、ゼロ点密度(zero density estimates)と呼ばれる、虚部が T 以内で実部が 1/2+ε の領域の中のゼロ点の数の境界を与えた。

ハーティとリトルウッドの予想[編集]

1914年、ハーディ(G. H. Hardy)は \zeta\left(\tfrac{1}{2}+it\right) は無限に多くの実数のゼロ点が存在することを示した。

区間 (0, T] の中にある実数のゼロ点全体の数を N(T) で、奇数オーダーのゼロ点の数全体を N_0(T) で表す。

\zeta\left(\tfrac{1}{2}+it\right).

ハーディリトルウッドの 2つの予想がある。十分に大きな T > 0 に対して、区間 (T, T+H] の中での \zeta\left(\tfrac{1}{2}+it\right) の実数のゼロ点の間の距離と \zeta\left(\tfrac{1}{2}+it\right) のゼロ点の密度の間の関係について、H = T^{a + \varepsilon} で、可能な限り a > 0 の値を小さくし、ε > 0 を任意に小さな数とするとき、リーマンゼータ函数の研究には新しい 2つの方向性がある。

1. 任意の ε > 0 に対して、T_0 = T_0(\varepsilon) > 0 が存在して、T \geq T_0H=T^{0.25+\varepsilon} に対し、区間 (T,T+H] は函数 \zeta\bigl(\tfrac{1}{2}+it\bigr) の奇数オーダーのゼロ点を含む。

2. 任意の ε > 0 に対して、T_0 = T_0(\varepsilon) > 0 と c = c(ε) > 0 が存在し、T \geq T_0H=T^{0.5+\varepsilon} に対し、不等式 N_0(T+H)-N_0(T) \geq cH が成り立つ。

セルバーグの予想[編集]

ここのセルバーグ予想は「セルバーグのゼータ函数に対する予想」であり、「セルバーグの1/4予想」とは異なる。

セルバーグ Atle Selberg (1942) は、ハーディとリトルウッドの問題 2 を研究し、任意の ε > 0 に対し、そのような T_0 = T_0(\varepsilon) > 0 と c = c(ε) > 0 が存在し、T \geq T_0H=T^{0.5+\varepsilon} に対して、不等式 N(T+H)-N(T) \geq cH\log T が成り立つことを証明した。セルバーグはこれを H=T^{0.5} まで厳密にできるであろうことを予想した。カラツバ A. A. Karatsuba (1984a, 1984b, 1985) は、条件 0 < ε < 0.001 を満たす固定した ε と十分に大きな T と H = T^{a+\varepsilon}a = \tfrac{27}{82} = \tfrac{1}{3} -\tfrac{1}{246} に対して、区間 (T, T+H) はリーマンのゼータ函数 \zeta\left(\tfrac{1}{2}+it\right) の少なくとも cH ln(T) 個のゼロ点を含み、従ってセルバーグの予想が正しいことを示した。このセルバーグとカラツバの見積もりは、T → ∞ のようにオーダーが増加するという点での改善はできない。

Karatsuba (1992) は、ほとんど全ての区間 (T, T+H] についてセルバーグの予想の類似である、H = T^{\varepsilon} を証明した。ここに ε は任意に小さな固定された数値である。カラツバの方法は、クリティカルラインの「極端に短い」区間、つまり、たとえ T がどのように小さくとも長さ H がゆっくりと増加する区間 (T, T+H] の上でのリーマンのゼータ函数のゼロ点の研究を可能とした。特に、彼は、任意の与えられた数値 ε と条件 0<\varepsilon, \varepsilon_{1}<1 を満たす \varepsilon_1 に対し、H\ge\exp{\{(\ln T)^{\varepsilon}\}} のほとんどの区間 (T, T+H] は、函数 \zeta\left(\tfrac{1}{2}+it\right) の少なくとも H(\ln T)^{1-\varepsilon_{1}} 個のゼロ点を含むことを証明した。この見積もりは、リーマン予想に従う結果に極めて近い見積もりである。

数値計算[編集]

ζ-函数の絶対値

函数

\pi^{-\frac{s}{2}}\Gamma(\tfrac{s}{2})\zeta(s)

は、函数等式のおかげで、クリティカル帯域の中にゼータ函数と同じゼロ点を持っていて、クリティカルライン上に実部がある。従って、ゼ ロ点の存在は、函数がこれらの点で反対の符号を持つことを数値的に検証することにより、ちょうど 2つの点の間の実線の上にあることを証明できる。通常は、

\zeta(\tfrac{1}{2} +it) = Z(t)e^{-i\theta(t)}

と書く。ここにハーディの函数を Z英語版リーマン・ジーゲルのテータ函数英語版 θ は、これと θ(0)=0 である滑らかな実函数である条件により、一意に定義される。函数 Z 符号を変えるような多くの区間を探すことにより、クリティカルラインの上に多くのゼロ点が存在することを示すことができる。与えられた虚部 T に対しリーマン予想を評価するためには、この領域に直線の上にはないゼロ点が存在しないことをも検証せねばならない。これは、領域内のゼロ点の数全体を計算し、直線の上にあるゼロ点の数と同じであることを検証することで成し遂げるられる。これにより、要求された T の値に対するリーマン予想の計算機的な検証は可能となる(この領域のゼータ函数のゼロ点の全てが単純なゼロ点でクリティカルラインの上に存在していることを示すこととなる)。

ゼータ函数のゼロ点計算結果のリストを以下に示す。今まで、検証された全てのゼロ点がクリティカルラインの上にあり、単純なゼロ点である。(多重なゼロ点は、ゼロ点を探すアルゴリズムに問題を引き起こすかもしれず、ゼロ点の間での符号の変化を探すことと独立なことである。)ゼロ点の表は、Haselgrove & Miller (1960)あるいは、Odlyzkoを参照。

ゼロ点の数 著者
1859? 3 B. リーマンはリーマン・ジーゲルの公式英語版を使用(未発表であったが、Siegel 1932で報告).
1903 15 J. P. Gram (1903)オイラー・マックローリンの和公式を使い、グラムの法則(Gram's law)を発見した。彼は虚部が多くとも 50 の中にある 10 個のゼロ点全てがクリティカルラインである実部 1/2 の上にあることを、発見した根の逆 10乗べきの和を計算することで示した。
1914 79 (γn ≤ 200) R. J. Backlund (1914) [要出典] は、ゼータ函数の偏角(argument) S(T) を研究することで、点が直線上にあるにたいする全てのゼロ点の検証方法を改善した。
1925 138 (γn ≤ 300) J. I. Hutchinson (1925) は、グラムの法則がグラムの点 g126 で始めてうまくいかないことを発見した。
1935 195 E. C. Titchmarsh (1935) は、オイラー・マックローリンの和公式よりも非常に早い、再発見されたリーマン・ジーゲルの公式英語版を使った。T よりも虚部が小さなゼロ点を検証する段階が、オイラー・マックローリンの和公式の方法は約 O(T2+ε) となることに対して、リーマン・ジーゲルの方法は O(T3/2+ε) となること示した。
1936 1041 E. C. Titchmarsh (1936) は、コムリエ(L. J. Comrie)が手計算でのゼロ点の直近の発見者であることを発見した。
1953 1104 A. M. Turing (1953) は、Z がグラムの点のいくつかで正しい符号を持っていることを検証し、S(T) が平均値 0 を持っているという事実を使い、全てのゼロ点がいくつかの点を除いて、クリティカルライン上にあることを考慮するより充分な方法を発見した。この方法は特別なことをほとんど要求しない。グラムの点での Z の符号はゼロ点を探しているときには既にわかっていて、普通の方法だからである。これが、デジタル計算機を使ってゼロ点を計算した最初であった。
1956 15000 D. H. Lehmer (1956) は、ゼータ函数がライン上に「あるだけ」のようないくつかのケースを発見した。ゼータ函数の 2つのゼロ点があまりに近すぎて、それらの間で符号の変化を発見することが異常に困難なな場合がある。これを「レーマーの現象」と呼び、最初に発生するのはゼロ点の呼ぶが 7005.063 と 7005.101 の間にあり、その差がたった .04 であり、そのときのこの点の近くの他のゼロ点との平均ギャップが約 1 である。
1956 25000 D. H. Lehmer
1958 35337 N. A. Meller
1966 250000 R. S. Lehman
1968 3500000 Rosser, Yohe & Schoenfeld (1969) はローサーの規則(以下に述べる)に言及した。
1977 40000000 R. P. Brent
1979 81000001 R. P. Brent
1982 200000001 R. P. Brent, J. van de Lune, H. J. J. te Riele, D. T. Winter
1983 300000001 J. van de Lune, H. J. J. te Riele
1986 1500000001 van de Lune, te Riele & Winter (1986) はゼロ点の統計的なデータをとり、それが通常の振る舞いと異なる場所での Z のグラフをいくつか描いた。
1987 高さ (~1012) A. M. Odlyzko (1987) は、非常に大きな高さ、約 1012 よりもより小さなゼロ点の数を計算し、モンゴメリー・オドリズコ予想を非常に正確にチェックした。
1992 高さ (~1020) より少し大きい A. M. Odlyzko (1992) は、高さがおよそ 1020 と 2×1020 のゼロ点を 1億7千5百万個計算し、それまでの結果の議論を拡張した。
1998 高さ (~1021) を 10000個以上 A. M. Odlyzko (1998) は高さが約 1021 のものを計算した。
2001 10000000000 J. van de Lune (非公開)
2004 900000000000 S. Wedeniwski (ゼータグリッド英語版の計算)
2004 10000000000000 と高さ (up to ~1024) よりも大きい X. Gourdon (2004) とパトリック・デミチェール(Patrick Demichel)はオドリツコ・シェーンハーゲのアルゴリズム英語版使い、高さたおよそ 1013, 1014, ..., 1024 のゼロ点を200万個検証した。

グラムの点[編集]

グラムの点英語版は、クリティカルライン 1/2 +  の上の点であり、ゼータ函数が実でゼロでない点をいう。ゼータ函数のこの表現を使うと、ζ(1/2 + it) = Z(t)e − iθ(t) となり、ハーディの函数 Z英語版 は実数の t に対し実数となり、θ はリーマン・ジーゲルのテータ函数英語版とすると、sin(θ(t)) = 0 のときに、ゼータ函数が実数となることがわかる。これは、θ(t) が π の正数倍で、このときに θ の公式の逆数をとることで、容易にグラムの・の位置を計算することが可能である。グラムの点は、普通、n = 0, 1, ..., に対して gn と書かれ、gn は θ(t) = nπ の一意の解である。

グラムは、しばしば 2つのグラムの点の間にゼータのゼロ点がひとつあることに気づいた。ハッチンソンはこの点をグラムの法則と言っている。他にもいくつかのグラムの法則と呼ばれることのある密接に関連するステートメントがある。例えば、 (−1)nZ(gn) は通常正であるか、もしくは Z(t) が通常、連続したグラムの点では反対の符号を持っている。最初のいくつかのゼロ点(青色の)の虚部 γn と最初のいくつかのグラムの点 gn は次の表で与えられる。

g−1 γ1 g0 γ2 g1 γ3 g2 γ4 g3 γ5 g4 γ6 g5
0.000 3.436 9.667 14.135 17.846 21.022 23.170 25.011 27.670 30.425 31.718 32.935 35.467 37.586 38.999
この図は、 0 ≤ t ≤ 34 の複素平面ないの ζ(1/2+it) の値を示している。(t=0 に対し、ζ(1/2) ≈ -1.460 は、赤い曲線の最も左の点に対応している。)ブラムの法則は、曲線が通常ゼロ点の間の実軸で一度交わることを言っている。

グラムの法則がなりたたないことが、127番目のゼロ点、グラムの点 g126 で発生し、このことを「悪い」秩序(in the "wrong" order)と言っている。

g124 γ126 g125 g126 γ127 γ128 g127 γ129 g128
279.148 279.229 280.802 282.455 282.465 283.211 284.104 284.836 285.752

グラムの点 t をゼータ函数が 1/2 + it での値が正の場合、「よい」点という。Z が「悪い」符号を持っているような「悪い」グラムの点のインデックスは、126, 134, 195, 211, ... オンライン整数列大辞典の数列 A114856 である。グラムのブロック(Gram block)とは、間にある全てのグラム点が悪いグラム点であるようなよいグラム点を境界とする区間のことをいう。Rosser, Yohe & Schoenfeld (1969) によるローサーの規則と呼ばれるグラムの規則の精密化は、たとえブロック内の各々のグラム区間が中にちょうど一つのゼロ点を持っていないことがあるにもかかわらず、グラムのブロックが中に期待される個数のゼロ点を持っている(グラム区間の数と同じ)ことがあることを言っている。例えば、g125 と g127 を端点として持つ区間は、唯一悪いグラム点 g126 をもつグラムのブロックであり、唯一のゼロ点を持つ 2 つの区間であるグラム区間のどちらでもないにもかかわらず期待されるゼロ点の数 2 を含んでいる。完全なゼータ函数をわたればローサーの基礎には無限個の例外があるにもかかわらず、ローサーたち(Rosser et al.)は、最初の300,000,000個のゼロ点にはローサーの規則に例外が無いことを検証した。

グラムの規則もローサーの規則も両方とも、ある意味では、ゼロ点はその期待されている位置からあまりにも遠くに離れているわけではない。期待されている位置からゼロ点までの距離は、上記の函数 S によって制御されていて、極端に遅くしか増大しない。その平均値は、(log log T)1/2 のオーダーであり、1024 くらいでやっと 2 へ届く程度でしかない。このことは、どちらの規則も小さな T に対してほぼ保たれるが、結局、規則が破られることもあることを意味する。事実、Trudgian (2011) はグラムの規則もローサーの規則も、ある正の数の位置で失敗することを示した。具体的には、長い区間を考えると、73% のゼロ点が 2つのうまくいっているグラムの点によって囲まれているが、14% のゼロ点と 13% の 2つのゼロ点が、そのようなグラム区間の中にはない。

リーマン予想の肯定/否定の議論[編集]

リーマン予想に関する論文はその正しさについて注意深く吟味されることが甘くなる傾向にある。Riemann (1859)Bombieri (2000)のような意見を述べる人の大半が、リーマン予想は正しいと(少なくとも楽観的には)期待している。これについて深刻に疑って考えている人は極めて少なく、Ivić (2008)は懐疑的に考えているとみる理由があり、Littlewood (1962)はこれは誤っていると平易に、リーマン予想が正しいという何らの証拠がない、それが正しいという理由を想像することもできないと述べている。サーベイの論文 (Bombieri 2000, Conrey 2003, と Sarnak 2008) の共通認識としては、リーマン予想の正しい証拠は強いが完全ではないので、正しいとする一方で、これを疑う理由もあるとしている。

いくつかのリーマン予想の可非についての議論がSarnak (2008), Conrey (2003)Ivić (2008) にリストアップされているので、その理由と以下に記載する。

  • いくつかのリーマン予想の類似がすでに証明されている。Deligne (1974) によって有限体上の代数多様体のリーマン予想の証明が、リーマン予想を支持するひとつの強い理論的な理由であるかもしれない。このことは、より一般的な予想に証拠を提供していて、保型形式に付随するすべてのゼータ函数はリーマン予想をみたし、古典的なリーマン予想も特別な場合として含むかもしれないとしている。同様に、セルバーグゼータ函数(Selberg zeta function)もリーマン予想の類似を満たし、函数動式を持っていることや無限積展開がオイラ積展開に似ていることから、いくつかの方法でリーマンゼータ函数に類似している。しかしながら、大きく異なっている点もある。例えば、これらはディリクレ級数によっては与えられない。ゴスのゼータ函数英語版(Goss zeta function)に対するリーマン予想は Sheats (1998) で証明された.これらのプラスの例に対して、しかしながら、エプシュタインのゼータ函数(Epstein zeta function)の中には、クリティカルラインに無限に多くのゼロ点を持っている(Titchmarsh 1986)にもかかわらず、リーマン予想を満たさないものもある。これらの函数は、リーマンのゼータ函数に全く似ていて、ディリクレ級数展開や函数等式を持っている。しかし、リーマン予想を満たさないことがわかっているものは、オイラー積展開をもたず、保型表現と直接の関係を持っていない。
  • 多くのクリティカルライン上のゼロ点の数値的な評価は、最初のリーマン予想が正しいことの強い証拠のように思える。しかし、解析的数論は、大量な数値的証拠にh支持されている多くの予想が誤りであることを見破っている。巨大なスキューズ数を参照すると、リーマン予想に関係する、もっともに思える予想の第一の例外がおよそ 10316 あたりに現れる。この大きさの虚部を持つリーマン予想の反例が、現在計算可能な量を超えたところにあるのかもしれない。問題は、振る舞いが log log T という非常に遅い増加函数の影響をときどき受けることにあり、無限大になっていくのであるが、あまりに遅いので、これを計算によって検出することができないことにあるのかもしれない。そのような函数がゼロ点の振る舞いを制御するゼータ函数の理論の中で起きている。例えば、上記の函数 S(T) の平均サイズは約 (log log T)1/2 である。S(T) が すくなくとも 2 リーマン予想の何らかの反例の箇所でジャンプすると、S(T) が大きくなったときだけ、現れるようなリーマン予想の反例が現れ始めることがありうるかもしれない。計算による限りでは、ジャンプ幅が 3 を大きくは超えないが、境界がしめされているわけではなく、このことは、計算がゼータ函数の典型的な振る舞いの領域に届いていないかもしれないことを示唆している。
  • アルナウド・ダンジョワ英語版(Arnaud Denjoy)の確率論的なリーマン予想の議論 (Edwards 1974) は、もし μ(x) が 1 と -1 のランダム数列でできているとすると、任意の ε > 0 に対して部分和が次のようになるという観察に基礎をおいている。
M(x) = \sum_{n \le x} \mu(n)
1-次元ランダムウォークの中に位置を持つ値)は次の境界を持つ確率1英語版である。
M(x)= O(x^{\frac{1}{2} +\varepsilon})
リーマン予想は、これから導出されたメビウス函数 μ とメルテンス函数英語版(Mertens function) M の境界と同値である。言い換えると、リーマン予想は、ある意味、μ(x) がコイン投げのランダム数列のような振る舞いをすることと同値であるとも言える。μ(x) がゼロでないとき、この符号は x の素数因子ののパリティを与えるので、非公式なリーマン予想では、正数の素数因子の数のパリティがランダムに振る舞うということもある。数論でそのような確率論的な議論は正しい答えを与えることがあるが、しかし、厳密に扱うことは非常に難しくなる傾向を持っていて、しばしばメイヤーの定理英語版のように誤った答えを与えてしまうこともある。
  • Odlyzko (1987) の中の計算は、ゼータ函数のゼロ点の振る舞いがランダムエルミート行列の固有値に非常によく似ていることを示した。このことは、それらの固有が自己共役(自己随伴)作用素の固有値であることを示唆していて、これがリーマン予想を意味するのではないだろうか。しかし、そのような作用素を探す試み全ては失敗している。
  • 十分に大きな奇数に対する弱いゴールドバッハ予想のように、一般化されたリーマン予想を使って始めて証明されるような予想もある。後日、これが非伝統的な(一般化されたリーマン定理を前提にしない)方法で正しいことが示されることもありうる。この「予言」のいくつかが正しいことが判明して、このことは一般化されたリーマに予想の弱い証明ではないかと考えることもできる。
  • 2つの零点が非常に近いことがあるというレーマーの現象(Lehmer 1956) は、リーマン予想が誤っているのではないかということの理由として考えられることがある。しかし、リーマン予想が正しいとしても、ときにはこの現象が発生することもあると期待することもできる。オドリツコの計算は、隣接する零点のペアがモンゴメリー予想のような頻度で発生していることを示唆している。
  • Patterson (1988) は、ほとんどの数学者にとって、リーマン予想のほぼ強制的な理由が素数は出来うる限り整理されて分布しているという期待であると示唆している。

脚注[編集]

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  1. ^ Re は複素数の実部を示す記号
  2. ^ 素数の個数関数 π(x) の対数積分による近似公式を指す。同値命題の節の第一の命題を参照。リーマンの素数公式より、π(x) の対数積分による近似の誤差項はゼータ関数の零点がクリティカル・ストリップの両端から遠ければ遠いほど小さくなることが分かる。この距離が最大限に遠いということ、即ち全てのゼータ零点がクリティカル・ストリップの中心線上に整列しており、近似の誤差がその方針で考え得る限り最も小さくなるだろうということがリーマン予想のそもそもの意味である。
  3. ^ ダービーシャー (2004, pp. 309, 411).
  4. ^ リウヴィルのラムダ関数: \lambda (n)=(-1)^{\Omega(n)} で定義される完全乗法的な数論的函数
  5. ^ 1950年の J.Tate の論文 (Tate 1950) を指している

関連文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]