リンカン大聖堂

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
リンカーン大聖堂から転送)
リンカン大聖堂
西正面の塔に尖頂屋根があったころのリンカン大聖堂を描いた版画

リンカン大聖堂(リンカンだいせいどう、Lincoln Cathedral)は、イングランド東部リンカンシャー州リンカンにある大聖堂で、イングランド国教会リンカン司教区の司教座が置かれている。正式名称はThe Cathedral Church of the Blessed Virgin Mary of Lincolnである。

1072年ウィリアム1世の命令により建設が始まり、1095年に最初の聖堂が完成したが、その建物の多くは、火事や地震で崩れてしまった。しかし、1185年の地震を機に大幅に建て直され、現在のような形になっていった。

中央の塔は1311年に完成した。完成当時は現存する塔の上に尖塔が載っており、なかでも中央塔はそれを含めると160mの高さがあり、当時のリンカン大聖堂はギザの大ピラミッドを抜き世界で最も高い建築物であった[1][2]。しかし、尖塔は1549年の嵐で吹き飛ばされたため、現存しない。これによって、高さ世界一の建築物は159mの聖オーラフ教会に移った。なお、160mの高さは、1884年にワシントン記念塔が完成するまで塗り替えられず、建物としては1890年にウルム大聖堂が完成するまで塗り替えられなかった。

西正面側の2つの塔に付けられた尖頂屋根は中央塔よりのちの1370年から1400年のあいだに作られ[3]、中央尖塔の崩壊後もそびえ続けたが、18世紀に入り傷みが目立つようになった。1724年に建築家ジェイムズ・ギッブズ英語版が調査に入り、尖塔の影響によって下部のアーチや柱が損傷を受けていることを指摘し、尖塔の取り壊しを勧告した。大聖堂の参事会は勧告を受けて取り壊しに着手したが、それを知った住民が集団で押しかけて工事を阻止する騒ぎとなった。その後の折衝により応急処置による延命が続けられたが、明らかに維持不能になり1807年に撤去された[3]

脚注[編集]

  1. ^ Mary Jane Taber(1905), The cathedrals of England: an account of some of their distinguishing characteristics,p.100
  2. ^ Lincoln Cathedral - History”. The Dean and Chapter of Lincoln Cathedral. 2011年12月8日閲覧。 “Between 1307 and 1311 the central tower was raised to its present height. Then around 1370 to 1400 the western towers were heightened. All three towers had spires until 1549 when the central tower’s spire blew down. It had been the tallest building in the world.”
  3. ^ a b 佐藤彰『崩壊について』 中央公論美術出版 2006年 ISBN 4805505273 pp.68-72.
記録
先代
ギザの大ピラミッド
世界一高い建築物
1300年 – 1549年
160 m
次代
聖オーラフ教会

座標: 北緯53度14分3.5秒 西経0度32分10.5秒 / 北緯53.234306度 西経0.536250度 / 53.234306; -0.536250