リュッチェンス級駆逐艦

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リュッチェンス級駆逐艦
D185 Lütjens.jpg
1番艦 D185 リュッチェンス
艦級概観
艦種 ミサイル駆逐艦
艦名 人名
第二次世界大戦において戦死した、ドイツ国防軍の高級軍人。
艦種 ミサイル駆逐艦
建造期間 1966年 - 1970年
就役期間 1969年 - 2003年
次級 ザクセン級フリゲート
性能諸元
排水量 満載:4,720 t
全長 133.2 m
全幅 14.35 m
吃水 6.1 m
機関 ボイラー (84kgf/cm², 500℃) 4缶
蒸気タービン (35,000 shp) 2基
スクリュープロペラ 2軸
速力 最大: 33kt
航続距離 4,500 nmi(8,300 km) / 20kt
乗員 334名(士官23名、水兵・下士官311名)
兵装 Mk.42 mod.7 5インチ単装速射砲 2基
Rh202 20mm単装機関砲
※後日装備
2基
RAM Mk.31 GMWS
※後日装備
2基
Mk.13 単装ミサイル発射機
RIM-24 SAM
SM-1MR SAM
RGM-84 SSM
1基
Mk.16 mod.4 アスロックSUM 8連装発射機 1基
Mk.32 mod.7 3連装短魚雷発射管 2基
C4I ターター-D システム
(WDS Mk.4+Mk.74 Mod.6 GMFCS)
Mk.68 砲FCS
Mk 86 Mod.8 砲FCSに後日換装
レーダー AN/SPS-52 3次元式 1基
AN/SPS-40 対空捜索用 1基
AN/SPS-10 対水上捜索用
AN/SPS-67に後日換装
1基
レイセオン RP 1225 航法用 1基
AN/SPQ-9 低空警戒用
※後日装備
1基
AN/SPG-51C英語版 SAM射撃指揮用 2基
AN/SPG-53 砲射撃指揮用
AN/SPG-60 に後日換装
1基
ソナー AN/SQS-23 船首装備式
DSQS-21Bに後日換装
1基
電子戦
対抗手段
WLR-6 電波探知装置
※FL-1800Sに後日換装
Mk.137 6連装デコイ発射機
※後日装備
2基

リュッチェンス級駆逐艦ドイツ語: Lütjens-Klasse Zerstörer)とは、西ドイツ海軍および統一ドイツ海軍(以後、ドイツ海軍)のミサイル駆逐艦である。103型駆逐艦(Klasse 103)とも表記される。

来歴[編集]

1960年代中ごろまでに西ドイツ海軍に配備された大型水上戦闘艦は、アメリカから供与された119型駆逐艦フレッチャー級駆逐艦)と、イギリスから供与された138型教育フリゲートハント級駆逐艦3隻、ブラックスワン級スループ1隻、改ブラックスワン級スループ3隻、計7隻)のほか、西ドイツが独自に建造したケルン級フリゲートハンブルク級駆逐艦が存在した。

しかし、このうち外国からの供与艦は第二次世界大戦時に建造されたものであり、国内で建造された艦艇も対潜水艦戦を重視して設計されていたので、いずれも対空兵装は高角砲機関砲程度しか装備しておらず、防空能力に難点があった。

ちょうどそのころ、アメリカではチャールズ・F・アダムズ級ミサイル駆逐艦の最後の3隻の発注を、建造途中にもかかわらずアメリカ海軍がキャンセルしたので、西ドイツ海軍はこの3隻を引き取って完成させ、受領した。

設計・装備[編集]

以上の経緯から、リュッチェンス級の基本的な艦の性能と形状はチャールズ・F・アダムズ級そのものであるが、以下の改良がくわえられている。

  • 通信システムをドイツ海軍の標準規格に合わせるとともに、長距離対空レーダーを装備した第2マストを艦尾煙突のファンネル部分に移設し、捜索範囲を拡大。
  • 後部煙突(マック)上のAN/SPS-52 3次元レーダーに機関の排気が直接当たりにくいように、前後双方煙突先端部のファンネルが左右の二股式となっている。
  • 艦首部分のバウ・ソナーを船首の下部から、喫水線下にある艦首のふくらみ部分に収納。
  • 乗員居住区の居住性を改善。

近代化改修[編集]

1970年代後半に第一次近代化改修を受けた際、2基の主砲をMk.42 mod.7から同mod.10に換装するとともに、ターター・システムをデジタルコンピュータを採用したターター-D システムに変更した。特に後者の結果、より高性能なRIM-66 スタンダードSM-1MR 艦隊防空ミサイルを運用可能となる。
この改修を受けて以降は、103A型(Klasse 103A)と表記される。

1980年代に第二次近代化改修が行われた際には、砲射撃指揮装置(GFCS)もアナログ式のMk.68からデジタル式のMk.86に更新された。これに伴い、砲射撃指揮レーダーはAN/SPG-53からAN/SPG-60に更新されるとともに、前部マストにAN/SPQ-9低空警戒レーダーが追加された。AN/SPG-60は、必要に応じて3つめのSAM用イルミネーターとしても用いられた[1]。この改修を受けて以降は、103B型(Klasse 103B)と表記される。

さらに1990年代にも、冷戦終結後の紛争に適応するための近代化改修が行われた。
近接防御用にRIM-116 RAM専用の21連装発射機を2基搭載したほか、デコイ射出用のMk 36 SRBOCの6連装発射機も2基搭載した。さらに臨検などの任務に対応可能なように、左右両舷に1門ずつのラインメタル Rh202 20mm機関砲を搭載した。

配備[編集]

同型艦
艦番号 艦名 由来 就役 退役 備考
D185 リュッチェンス
Lütjens
ギュンター・リュッチェンス
海軍中将
1969年
3月22日
2003年
12月18日
ハンブルクにて、記念艦として保存。
D186 メルダース
Mölders
ヴェルナー・メルダース
空軍大佐
1969年
2月23日
2003年
5月28日
ヴィルヘルムスハーフェンにて、博物館艦として展示。
D187 ロンメル
Rommel
エルヴィン・ロンメル
陸軍元帥
1970年
5月2日
1998年
9月30日
姉妹艦の部品取りに利用。
2004年にトルコにおいてスクラップとして解体。

リュッチェンス級駆逐艦は3隻とも、キールを母港とする第1駆逐艦戦隊(1. Zerstörergeschwader)に配備され、ドイツ艦隊の最有力の防空艦として長く活躍した。しかし一方で、本質的に1960年代の技術で建造された艦であるため、射撃指揮システムやミサイル発射装置などの性能上、多数の経空脅威への対処能力に限界があった。さらに機関が蒸気タービンであるため、ケルン級や新型のブレーメン級ブランデンブルク級などのようにガスタービンエンジンを装備した艦艇に比べて急加速が効かず、整備性も低かった。このため、多数目標同時対応を可能とするNAAWSを搭載したザクセン級フリゲートの就役に伴い、順次に退役を開始した。

第1駆逐艦戦隊は2003年12月に「リュッチェンス」の退役に伴って解隊されたが、その伝統は2000年に新たに編成された第1フリゲート戦隊(1. Fregattengeschwaderザクセン級フリゲート3隻で編成)が引き継いだ。2006年1月には第1フリゲート戦隊が解隊されたため、艦艇と伝統は第2フリゲート戦隊(2. Fregattengeschwader:1988年10月1日付で編成)が引き継いでいる。

なおリュッチェンス級は、2014年現在において、ドイツ海軍が装備・運用した最後の駆逐艦であるとともに、ドイツ海軍において蒸気タービン推進機関を装備した最後の艦艇である。

参考文献[編集]

  1. ^ Bernard Prezelin (1990). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 1990-1991. Naval Institute Press. ISBN 978-0870212505. 

外部リンク[編集]