リボソームDNA

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
真核生物のリボソームDNAの模式図。18S、5.8S、28S の各領域を含み、タンデムリピートを形成する。5S サブユニットはこれらとは転写単位を形成せず、別領域にコードされている。NTS, nontranscribed spacer; ETS, external transcribed spacer; ITS, internal transcribed spacers(5'側が ITS1、3'側が ITS2)

リボソームDNA(Ribosomal DNA; rDNA)は、リボソームRNA(rRNA)をコードしている DNA である。リボソーム細胞内でタンパク質ペプチド鎖の合成を行っている小器官であり、リボソーム自身はタンパク質と rRNA より成っている。右図の通り、rDNA は NTS、ETS、18S、ITS1、5.8S、ITS2、それに 28S を含む転写単位(オペロン)の反復配列(タンデムリピート)から構成されている。rDNA には 5S rRNA をコードするもう一つの遺伝子があり、大部分の真核生物ではゲノム中のどこかに位置している[1]ショウジョウバエの場合、5S の rDNA もタンデムリピートを形成している[1]細胞核において、染色体中 rDNA にあたる領域はループ構造を形成し、核小体として視覚的に確認できる。この rDNA 領域によって核小体が形成されることから、仁形成部位(nucleolus organizer region)とも呼ばれる。ヒトゲノムにおいては、13、14、15、21、それに22番染色体の計5染色体に仁形成部位が存在している。

反復配列の均一性[編集]

rDNA のタンデムリピートにおいて、反復単位間の相違は非常に少ない。このことは、それぞれの配列が互いに協調的な進化を遂げてきたことを示唆している[1]。9種のショウジョウバエ属における 5S タンデムリピート領域の比較研究では、この領域には挿入や欠失が頻繁に起こっていること、また5'および3'の両末端には保存性の高いフランキング領域が存在することが分かった[2]。これらの変異はDNA複製時の娘鎖のずれや、遺伝子変換gene conversion)によって起こるとされる[2]

配列の多様性と系統推定[編集]

rDNA の各領域はそれぞれ異なる進化速度を持っている。そのため、rDNA 配列は幅広い分類群レベルの系統情報を保持している[3]。rDNA の転写領域は種内での変異が小さく、従って少ないサンプル数で種間の系統関係を推定することができる。保存性の高いコーディング領域ならば、ヒトと出芽酵母のような系統的に遠い生物同士の比較が可能である。ヒトと出芽酵母の 5.8S 領域は75%の相同性を持っている[4]。コーディング領域が高い保存性を持つ一方、スペーサー領域である ITS は挿入、欠失、点変異などにより変化に富む。ITS 領域は進化速度が大きすぎるため、ヒトカエルのような離れた生物の系統解析に用いることは適切でない[5]。ITS 領域は近縁種や同胞種の識別、系統推定に威力を発揮する[6][7]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c Richard GF, Kerrest A, Dujon B (2008). “Comparative genomics and molecular dynamics of DNA repeats in eukaryotes”. Microbiol Mol Biol Rev 72 (4): 686-727.  doi:10.1128/MMBR.00011-08 PMID 19052325
  2. ^ a b Pâques F, Samson ML, Jordan P, Wegnez M (1995). “Structural evolution of the Drosophila 5S ribosomal genes”. J Mol Evol 41 (5): 615-21.  PMID 7490776
  3. ^ Hillis DM, Dixon MT (1991). “Ribosomal DNA: molecular evolution and phylogenetic inference”. Quart Rev Biol 66 (4): 411-53. PMID 1784710
  4. ^ Nazar RN, Sitz TO, Busch H (1976). “Sequence homologies in mammalian 5.8S ribosomal RNA”. Biochemistry 15 (3): 505-8.  PMID 1252408
  5. ^ Sumida M, Kato Y, Kurabayashi A (2004). “Sequencing and analysis of the internal transcribed spacers (ITSs) and coding regions in the EcoR I fragment of the ribosomal DNA of the Japanese pond frog Rana nigromaculata”. Genes Genet Syst 79 (2): 105-18.  PMID 15215676
  6. ^ Ma YJ, Qu FY, Xu JJ (1998). “Sequence differences of rDNA-ITS2 and species-diagnostic PCR assay of Anopheles sinensis and Anopheles anthropophagus from China”. J Med Coll PLA 13: 123-8.  PDF
  7. ^ Li C, Lee JS, Groebner JL, Kim HC, Klein TA, O'Guinn ML, Wilkerson RC (2005). “A newly recognized species in the Anopheles hyrcanus group and molecular identification of related species from the Republic of South Korea (Diptera: Culicidae)”. Zootaxa 939: 1-8.  PDF