ヨーロッパヌマガメ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ヨーロッパヌマガメ
ヨーロッパヌマガメ
ヨーロッパヌマガメ Emys orbicularis
保全状況評価[a 1]
LOWER RISK - Near Threatened
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
Status iucn2.3 NT.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: カメ目 Testudines
亜目 : 潜頸亜目 Cryptodira
上科 : リクガメ上科 Testudinoidea
: ヌマガメ科 Emydidae
亜科 : ヌマガメ亜科 Emydinae
: ヨーロッパヌマガメ属 Emys
: ヨーロッパヌマガメ
E. orbicularis
学名
Emys orbicularis (Linnaeus, 1758)
シノニム

Testudo orbicularis Linnaeus, 1758 Testudo europaea Schneider, 1783
Emys orbicularis iberica
Emys orbicularis luteofusca
Emys orbicularis colchica
Emys orbicularis hispanica

和名
ヨーロッパヌマガメ
英名
European pond turtle

ヨーロッパヌマガメEmys orbicularis)は、爬虫綱カメ目ヌマガメ科ヨーロッパヌマガメ属に分類されるカメ。ヨーロッパヌマガメ属の模式種

分布[編集]

E. o. orbicularis キボシヌマガメ
アゼルバイジャン北西部、アルメニア北部、ウクライナウズベキスタン西部、オーストリアカザフスタン西部、グルジアクロアチア東部、スロベニア東部、セルビアドイツトルコ北部および西部、ハンガリーフランスブルガリアベラルーシベルギーボスニア・ヘルツェゴビナ北部、ポーランドマケドニア北部、モルドバモンテネグロ北部、ラトビアリトアニアルーマニアロシア南東部[1][2]
模式標本の産地(模式産地)はヨーロッパ南部だったが、レクトタイプによりメクレンブルク(ドイツ)と指定されている[2]
E. o. capolongoi サルディーニャヌマガメ
イタリアサルデーニャ島)[1][2]
E. o. eiselti エイゼルトヌマガメ
トルコ南東部[1][2]
E. o. fritzjuergenobstii オプストヌマガメ
スペイン西部、ポルトガル[1][2]
E. o. galloitalica イタリアヌマガメ
イタリア西部、スペイン北東部、フランス南部[1][2]
E. o. hellenica アドリアヌマガメ
アルバニア、イタリア東部、ギリシャ、クロアチア西部、スロベニア西部、ボスニア・ヘルツェゴビナ南部、モンテネグロ北部[1][2]
E. o. ingauna サボナヌマガメ
イタリア北西部[2]
E. o. lanzai コルシカヌマガメ
イタリア(コルシカ島[1][2]
E. o. occidentalis キタアフリカヌマガメ
アルジェリア北部、チュニジア北部、モロッコ北東部[1][2]
亜種小名occidentalisは「西の」の意で、最西端に分布する亜種ではないものの亜種全体としては西部に分布することに由来する[2]
E. o. persica ペルシャヌマガメ
アゼルバイジャン、アルメニア南部、イラン北部、カザフスタン南西部、グルジア東部、トルクメニスタン西部、トルコ南部[2]
亜種小名persicaは「ペルシャの」の意[2]

イラク北部、キプロスシリア北部に分布する可能性もあり[2][a 1]

絶滅した分布域[編集]

イギリスイングランド)、エストニアオランダスウェーデンデンマークベルギー、ドイツ北部、フランス北東部、ポーランド北部、ルクセンブルク[2]

絶滅した分布域でも人為的に移入・定着したと考えられている個体が発見された地域もある[2][a 1]

形態[編集]

最大甲長23センチメートル[1][2]。オスよりもメスの方が大型になり、オスは最大甲長20センチメートル[2]背甲はやや扁平か、ややドーム状に盛り上がる。背甲は上から見ると第8-9縁甲板で最も幅が広くなる卵型[1][2]。種小名orbicularisは「円形、丸い」の意で、上から見た背甲に由来する[2]。背甲の表面に筋状の盛り上がり(キール)がなく[1]、成長輪も不明瞭[2]。縁甲板の外縁は鋸状に尖らない[2]。背甲と腹甲の継ぎ目(橋)は甲板では繋がらず靭帯で繋がり、腋下甲板鼠蹊甲板がない[2]

卵は長径3-3.9センチメートル、短径1.8-2.2センチメートルで、殻は白い皮革状[2]。孵化直後の幼体は椎甲板にあまり発達しないキールがあり、肋甲板にもあまり発達しないキールがある個体もいる[2]。背甲や頭部の明色斑がないか不明瞭[2]

オスは腹甲の中央部より後方が浅く凹む[2]。尾は太くて長く、尾をまっすぐに伸ばした状態では総排出口全体が背甲の外縁よりも外側にある[2]。上顎を覆う角質(嘴)の色彩が黄褐色で、暗色の筋模様が入る[2]。 メスは腹甲の中央部より後方が凹まないかわずかに盛り上がる[2]。尾がより細くて短く、尾をまっすぐに伸ばしても総排泄口の一部が背甲の外縁よりも内側にある[2]

E. o. orbicularis キボシヌマガメ
最大亜種[1][2]。背甲の色彩、腹甲の大部分もしくは全体の色彩が暗色[2]。喉の色彩は暗色[2]。オスの成体は虹彩が赤い[2]
E. o. persica ペルシャヌマガメ
最大甲長20.6センチメートル[2]。喉や前肢の色彩は黄色[2]。オスの成体は虹彩が赤い[2]

分類[編集]

属名Emysは「陸棲もしくは淡水棲のカメ」の意[2]

形態やミトコンドリアシトクロムbリボソームRNAなどの分子系統学的解析から、ブチイシガメ属ブランディングガメ属単系統群を形成すると推定されている[2]

シシリーヌマガメを本種の亜種とする説もある[2]

14亜種に分ける説もあったが、分布の境界線や形態の差異が不明瞭なこと、中間型の個体が多いことなどから亜種の有効性を疑問視する説もある[2]。 そのため亜種クラヌマガメE. o. iberica(カフカース)や亜種アメイロヌマガメE. o. luteofusca(アナトリア中南部)が亜種ペルシャヌマガメ、亜種コルキスヌマガメE. o. colchica(黒海東岸部)が基亜種、亜種E. o. hispanica(スペイン西部、ポルトガル)が亜種オプストヌマガメのシノニムとされる[2]

  • Emys orbicularis orbicularis (Linnaeus, 1758) キボシヌマガメ Common Europian pond turtle
  • Emys orbicularis capolongoi Fritz, 1995 サルディーニャヌマガメ Sardinian pond turtle
  • Emys orbicularis eiselti Fritz et al, 1998 エイゼルトヌマガメ 
  • Emys orbicularis fritzjuergenobstii Fritz, 1995 オプストヌマガメ North African pond turtle
  • Emys orbicularis galloitalica Fritz, 1995 イタリアヌマガメ Italian pond turtle
  • Emys orbicularis hellenica (Valenciennes, 1832) アドリアヌマガメ Adriatic pond turtle
  • Emys orbicularis indauna Jesu et al, 1998 サボナヌマガメ
  • Emys orbicularis lanzai Fritz, 1995 コルシカヌマガメ Corsican pond turtle
  • Emys orbicularis occidentalis Fritz, 1993 キタアメリカヌマガメ North African pond turtle
  • Emys orbicularis persica Fritz, 1993 ペルシャヌマガメ Eastern pond turtle

生態[編集]

底質が砂や泥で水生植物の繁茂した流れの緩やかな河川沼地湿原、水路などに生息し[1]、汽水域に生息する地域もある[2]昼行性[2]。夏季は夜行性傾向が強くなる[2]。日光浴中に危険を感じると水中に逃げ込み、水中の底質に潜り込んだり水辺の茂みに上陸して逃げる。

食性は動物食傾向の強い雑食で、昆虫甲殻類ミミズ魚類両生類やその幼生、動物の死骸、植物の花、果実藻類などを食べる[1][2]。幼体は動物食だが、成長に伴い植物食傾向が強くなる[2]

繁殖形態は卵生。主に3-5月に交尾[2]。主に5-6月に1回に3-16個の卵を年に1回(地域によっては4-5年に1回しか繁殖しない)だけ産む[2]。卵は主に60-70日で孵化する[2]発生時の温度により性別が決定(温度依存性決定)し、24-28℃ではオス、30℃ではほとんどメス、32℃ではメスのみが産まれる[2]

人間との関係[編集]

生息地では食用とされることもあった[2]

開発による生息地の破壊、食用やペット用の採集、人為的に移入された動物(アカミミガメなど)との競合および植物による植生の変化などにより生息数は減少している[2]。多くの生息地で保護の対象とされている[2]

ペットとして飼育されることがあり、日本にも輸入されている[1][2]。主に基亜種が流通する[2]。亜種に細分化されたのが近年であることや、産地不明な個体が多くまた同定も難しいことから亜種を区別せずに流通することが多かった[2]アクアテラリウムで飼育される。陸場に上がることを好むため、広い陸場を設置する[2]。飼育下では配合飼料にも餌付く[2]

画像[編集]

参考文献[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 海老沼剛 『爬虫・両生類ビジュアルガイド 水棲ガメ2 ユーラシア・オセアニア・アフリカのミズガメ』、誠文堂新光社2005年、59-61頁。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao ap aq ar as at au av aw ax ay az ba bb bc bd be bf bg bh 安川雄一郎 「ヌマガメ亜科の分類と自然史(後編) -キボシイシガメ属とモリイシガメ属の分類と自然史-」『クリーパー』第52号、クリーパー社、2010年、8-13、22-24、26、38-43頁。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  1. ^ a b c The IUCN Red List of Threatened Species
    • Tortoise & Freshwater Turtle Specialist Group 1996. Emys orbicularis. In: IUCN 2013. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2013.1.