ヤン・ウェンリー

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ヤン・ウェンリー(Yang Wen-li、宇宙暦767年4月4日 - 宇宙暦800年6月1日)は、銀河英雄伝説の自由惑星同盟側主人公。物語の語り部的存在とも呼ばれる。

なお、その名はE式表記(作中の設定で東洋式の姓名の表記)で、東洋系(正確には中仏混血)の容貌。作中ではカタカナ表記であるが、本来の表記ともいうべき漢字表記では「楊文里」であるという[1]

目次

[編集] 外見

[編集] 容姿・容貌

原作小説において、“体格は中肉中背、容姿は実年齢より2~3歳若く見え、軍人というよりは学者のような印象を受ける。頭髪はおさまりの悪い黒髪、「見る人(フレデリカ・グリーンヒル等)によってはハンサムに見えなくも無い」「ごくありきたりのハンサム」”といった表現が作品内で登場する。

道原かつみのコミック版では、美男子の部類に設定されている。ただし同時に軟弱で頼りないイメージであり、一応原作の描写は踏まえている。らいとすたっふ監修「全艦出撃!!」第2巻に収録された道原かつみのコメント「なぜヤンがハンサムになったか」には、「黄金の翼を執筆する時点で、道原はヤンをハンサムには設定していなかった。しかし周囲の様々な意見もしくは非難によって徐々にキャラクターを改修していった」という内容の記述がある。また、コミック版黄金の翼あとがきには「原作者である田中芳樹をモデルにしようとしたら、担当編集者及び田中芳樹本人から猛反対を受けた」との記述もある。

原作小説では、表情を隠すためなど、サングラスを使う例が見られる。アニメ版では、ヤンに限らず眼鏡類の使用は見られない(例外は銀河帝国貴族の一部が使用する片眼鏡)。漫画版では、軟弱に見えるヤンがサングラスを使用すると格好よく見えるため、ヤンを賞賛する報道ではサングラス姿のヤンの画像が流されるという演出がなされている。

[編集] 身長・体重

OVA版の外伝・螺旋迷宮で示された身分証明書によると、21歳の時点で身長172cm、体重65kg。なお原作での彼の身長は176cm(明確には記述されていないが、フェザーン脱出時のユリアンの身長に関する記述で「身長は176cmに達しヤンと並んでしまった」と書いてある)。

[編集] 略歴

宇宙暦767年生まれ。5歳の時に実母であるカトリーヌ・ルクレール・ヤンが死亡。星間交易船の船長であった父ヤン・タイロンの元で育った。早くから歴史研究家になることを志しており、商売人になる事を薦める父親を説得して歴史研究のために大学進学をすることを認めてもらった。しかしその直後に父親が事故死し、更に遺産となるはずの美術品が全て贋作と鑑定されたため無一文になってしまい、学費の捻出ができなくなってしまう。

15歳の時、無料で歴史を学べるという理由から、本来は他学科に入学できなかった者が入る学科である、同盟軍士官学校戦史研究科に入学。しかし在学中に戦史研究科が廃止となり、戦略研究科に転科させられている(戦史研究科は劣等生コースであったため、学科の存続に向けて運動したのはヤンを含めごく少数に留まった)。同盟軍の士官学校では戦略研究科がエリートコースであるが、ヤンがこの学科に転科させられたのは、最優等生であるマルコム・ワイドボーンとのシミュレーション戦闘において勝利した事が影響している。このころから既に同盟軍はヤンの素質に対して一定の評価をしていた。

士官学校卒業後、同盟軍に少尉の階級で任官。勤勉とは言えない勤務態度から、「ごくつぶしのヤン」「無駄飯食いのヤン」などと呼ばれるが、宇宙暦788年(21歳/中尉)、惑星「エル・ファシル」から300万人の民間人を救出したことで立場が変転、少佐に昇進し、さらに「エル・ファシルの英雄」と賞賛されて世の注目を浴びることとなった。なお、この時にヤンが救出した民間人の中に、後に妻となる当時14歳だったフレデリカ・グリーンヒルがいた。

その後も、本人の「退役し歴史研究家になる」という意志とは裏腹に、最前線において武勲(あるいは奇功)を重ね軍人として栄達していく。


注意以降の記述で物語・作品・登場人物に関する核心部分が明かされています。 [記述をスキップ]


宇宙暦796年、アスターテの会戦で負傷した艦隊司令官パエッタの後を受けて第2艦隊を指揮、(原作小説では)初めてラインハルトと砲火を交え、その奇策で艦隊を全滅の危機から救った(なお、劇場アニメ版「わが征くは星の大海」では、795年の第4次ティアマト会戦において両者は対峙している。「大海」でのヤンは戦艦ユリシーズに搭乗して単艦敵陣に潜入、同盟軍にとどめを刺そうとしたラインハルトの旗艦ブリュンヒルトの艦底にコバンザメのように密着、ラインハルトを艦ごと人質に取る荒芸で味方が殲滅されるのを防いだ。アニメ版では、この一件でラインハルトとヤンは互いの名を知り、その存在を互いに意識した)。

アスターテ会戦より帰還後、政府及び軍部の思惑で少将に昇進、アスターテの残存兵力をまとめ、新規兵力を加えて新設された第13艦隊(5400隻・将兵70万人の為、半個艦隊と称される)初代司令官に任ぜられる(その際にフレデリカ・グリーンヒルが副官として着任した)。

同年5月14日、第十三艦隊の最初の任務で、難攻不落といわれたイゼルローン要塞を術策によって陥落させ、中将に昇進。第13艦隊も第2艦隊の残存兵力が加わり1個艦隊として再編成される。この功績から、「魔術師ヤン」「奇跡のヤン」と評されるようになった。

同年行われた「同盟軍の帝国領侵攻」で第5艦隊とともに帰還を果たした後大将に昇進、「イゼルローン要塞司令官・兼・イゼルローン駐留艦隊司令官・同盟軍最高幕僚会議議員」という身分を得てイゼルローン要塞に赴任する。

宇宙暦797年の救国軍事会議のクーデターでは、各地の反乱を鎮めながらハイネセンへと進攻し、同年5月18日のドーリア星域会戦でルグランジュ率いる第11艦隊を撃破、8月にはハイネセンの「アルテミスの首飾り」を破壊して軍事会議メンバーの戦意を喪失させてクーデターを鎮圧する。

宇宙暦798年のガイエスブルク要塞侵攻による第8次イゼルローン攻防戦の時は、フェザーンの陰謀で叛乱の意思ありという口実でハイネセンに呼び出されて査問会を受ける。この時の政府首脳陣の傲慢さと器の小ささ等に憤慨し、本気で軍を辞めるべく辞表を書くも、上記の通りガイエスブルク要塞が侵攻してきたので断念する(それに加えて、生来の怠け癖が出てきた為、辞表を出すタイミングを逃してしまう)。イゼルローンに戻った後は体当たりを敢行してきたガイエスブルク要塞を破壊し、司令官のカール・グスタフ・ケンプを戦死させる。

宇宙暦799年、「ラグナロック作戦」の過程でイゼルローン要塞を放棄しハイネセンに帰還した時点で(同盟軍史上最年少の)元帥に昇進、同時に戦略・戦術面の自由な裁量をアイランズから保証され、艦隊を再編成して出動、様々な術策を駆使してカール・ロベルト・シュタインメッツヘルムート・レンネンカンプアウグスト・ザムエル・ワーレンといった帝国の将帥/艦隊を相手に次々に勝利し、バーミリオン星域会戦ではラインハルト・フォン・ローエングラムに戦術面で勝利した。しかしブリュンヒルトを攻撃する直前に同盟(ヨブ・トリューニヒト)から戦闘停止の命令と無条件降伏の通達があり、ヤンはシェーンコップら一部幕僚の反対意見を却下して戦闘を停止した。

停戦後に行われたラインハルトとの会談で、帝国元帥の座を用意して引き抜こうとした新皇帝ラインハルトの誘いを謝絶し、5月25日にバーラトの和約が締結されると退役、一市民として生きる道を選ぶ。6月には副官であったフレデリカ・グリーンヒルと結婚した。

7月、オーベルシュタインレンネンカンプの策謀により扇動された同盟政府に暗殺されかけるが、ヤン艦隊の仲間に救出され、逆にジョアン・レヴェロとレンネンカンプを拉致して同盟政府と交渉し、25日にハイネセンを脱出、一時的に身を隠す。同年12月、エル・ファシル独立政府に身を寄せ、革命軍を組織してイゼルローン要塞を奪還

宇宙暦800年の「回廊の戦い」でアーダルベルト・フォン・ファーレンハイト、カール・ロベルト・シュタインメッツを戦死させる等の活躍で、皇帝ラインハルトより会見の為の一時講和を引き出す。その会談に向かう途上、地球教徒のテロリストに襲撃され、6月1日午前2時55分、ビーム銃による銃撃で左大腿部の動脈を損傷し出血多量を起こし死亡。33歳。


以上で物語・作品・登場人物に関する核心部分の記述は終わりです。


[編集] 能力

卓絶した戦場の心理学者であり、魔術的な戦術を弄した。ただし戦術に溺れる事なく、戦術的勝利で戦略的不利を覆す事ができない事をよくわきまえていた。寡兵で大軍に勝利する事を繰り返しながらも、それを邪道とし、あくまで戦の本道は敵より多数の戦力を備える事と兵站をしっかりと整えることだと主張したのも、その一例である(多数兵力は戦術的には敗因になる「場合がある」という反対意見というより修正意見は、敵手たるミッターマイヤーのほうが主張している)[2]。そのため本質は戦略家であったとされるが、あくまで机上のものであり、戦略家としての具体的実績は示していない。敵手であるラインハルトの作戦をその優れた戦略眼で先読みした事はあるが、同盟軍での地位と立場、シビリアン・コントロールの考えから、その戦略能力を活かす機会を与えられず(活用せず)に終わった。

卒業後の武勲・戦歴に比して士官学校時代はごく平凡な成績であった。それは戦史や戦略、戦術などの得意分野で高い成績を収めたものの、興味のない分野には可能な限り手を抜いていた為(査問会において提示された士官学校時代の成績によれば、「戦史」98点、「戦略論概説」94点、「戦術分析演習」92点に対し、「戦闘艇操縦実技」と「機関工学演習」が59点、「射撃実技」は58点)である。士官学校は一科目でも赤点(55点以下)を取れば退学であった為一時は卒業も危ぶまれたらしい。卒業時の席次は4840名中1909番(キャゼルヌはこれを「中の下」、ユリアンは「中の上」と表現した)。

軍事的な能力を最初に表したのは、先にも述べた通り、士官学校の戦略・戦術シミュレーションの授業に於いて、学年首席だったマルコム・ワイドボーンに勝利した時である。補給線を分断して相手の戦闘能力の衰弱を待つという合理的だが「軍事ロマンチシズムに反する手法」を採用した為、戦闘そのものでは優位だったワイドボーンは自分の負けを認めなかった。ただし、戦略・戦術において補給は最重要視すべき要素の一つであり、そこに攻撃を加えることは戦術においては奇策というよりは基本中の基本とも言える。ヤンが戦略研究科に転科を命じられた際の教官の発言からも、教官側はワイドボーンの主張を受け入れず、ヤンは間違いなく勝利した、という判定がなされた事が判明している。

具体的に軍隊において最初にその才覚を表したのは、宇宙暦788年の惑星エル・ファシルでの民間人救出時である。当時は中尉だったが、この功績によって少佐に昇進した(ただし生者に二階級特進は無いという不文律から、9月19日10時25分に大尉、同日16時30分に少佐に昇進する辞令を受け取った。生涯で最も短い期間が大尉、最も長い期間が少佐とされている)。また、この功績は同盟軍の宣伝により世間に広く知られ、「エル・ファシルの英雄」と讃えられる事となった。

帝国側の主人公であるラインハルトがヤンの存在と能力を認識したのは、原作小説ではアスターテ会戦。アニメでは劇場版第一作で描かれた第四次ティアマト会戦の時。これ以降、ラインハルトはヤンを注視し、第13艦隊の司令官に就任した時点でも、その才華が自分にとって軽んずるべきものでは無いという意味の懸念をキルヒアイスに告げている。この懸念は的中し、以後、ラインハルトはヤンとの直接的な戦いで遂に勝利する事が出来ず、配下の将帥もことごとく敗退、さらにはケンプファーレンハイトシュタインメッツなどの重臣を戦死させられてしまう。

帝国上層部がヤンの存在を重視する様になったのは、当時は半個艦隊だった第13艦隊がイゼルローン要塞を無血占領した時。それ以前のアスターテ会戦での功績等は上層部でも噂になっていた(ラインハルトが元帥に就任した時の雑談より)が、この時点で具体的な対応がなされたという記述は無い。

バーラトの和約以後は、その才能が逆に、味方であるはずの同盟上層部の不安材料となり、暗殺されかかった為ハイネセンを脱出しなければならなくなる。また、亡命したエル・ファシル独立政府からも全面的な信頼は得られず、イゼルローンの再奪取作戦においては直接指揮を執る事を却下された。しかしこれは後輩であり部下であるアッテンボローを後方から督戦させる経験を積ませる意味もあったので一概に不本意でもなかったようである。

後世、ヤンは同盟軍の宇宙艦隊司令長官や最高司令官の地位にあったと言われがちだ(と作中において設定されている)が、同盟軍在籍時代はそのような地位にはついておらず、最終的にはイゼルローン要塞司令官及び駐留艦隊司令官のままであった。後にエル・ファシル革命政府に合流した際は、「革命予備軍最高司令官」の地位を与えられたが、その肩書きに実質的意味があったかどうかは疑問符がつく。またヤンのイメージとして後方で全軍を統括、指揮する軍師のようにも言われるが、実際は前線で陣頭指揮を取ることが大半で、後方から指揮を取ったのは上記のイゼルローン再奪取作戦が最初かつほぼ唯一の例であり、軍師らしき活動としては上官であるビュコックに救国軍事会議のクーデターや「神々の黄昏作戦」時の帝国軍のフェザーン侵攻を予見する意見具申をした程度に留まる。帝国軍の「ラグナロック(神々の黄昏)作戦」以降は実質上全軍を指揮し得る権限を与えられたが、その時は既に同盟軍の過半以上が失われ、後方から指揮するほどの艦艇も、ヤンに代わるような有能な前線司令官も存在せず、ヤンは最前線で戦わざるを得なかった(「ウランフボロディンが生きていればもっと楽ができた」と両名の戦死を惜しんだ。また、ミュラーと言葉を交わした際、ヤンはミュラーが同盟に生まれていたら、自分は昼寝をしていられたのにとぼやいている)。ゆえにヤンが戦場で指揮した艦艇は最大でも3万隻に及ばず(数だけで言えばラインハルトやキルヒアイス、双璧にも及ばない)、ラインハルトなどからはヤンに数個艦隊を指揮させたらどれだけのことが出来るのかと言われていた(無論、ヤンが数個艦隊を指揮する機会が無かったのは、ラインハルトが政略・戦略的に先手を打っていたためでもある)。

ラインハルト・フォン・ローエングラムの「常勝」に対し、「不敗」と評される。現に、アスターテ会戦などの敗北が確定してから敗残処理を押しつけられたケースではなく、最初から彼が指揮した戦闘においては、バーミリオン星域会戦を例外として一度も敗れた事は無く、そのバーミリオン星域会戦においても「戦場では勝っていた」とされる(ただし、ヤン自身は戦術より戦略を重視する立場から、自分のほうが敗北したと認識していた)。最終的に不敗のまま、テロリズムに倒れて生涯を終えた。

戦場においては卓越した心理的洞察を示したが、対照的に私生活レベルにおいては対人関係において稚拙さを見せており、それが最大の弱点である。そのため同盟の政治家から疎まれ、あるいはレンネンカンプに疑惑を抱かれる結果になっている。レンネンカンプとは全く違った意味で、軍事を離れると途端に視野が狭くなったと言える。

[編集] 人柄

本来は歴史研究家志望で、権力者や戦争、軍に対する嫌悪と、軍人としての自身の存在に懐疑を抱き続け、「矛盾の人」と評されるが、「自由と民主共和制」への思いは変わらず、後世にその萌芽を残す。

安定した人格と包容力の持ち主ではあったが、嫌いな人間に対しては極端に意固地で、「温和な表情で辛辣な台詞を吐く」とも言われた。特に権力者には容赦がない。また、軍事的権力をかさに弱者に強権を振るう者にも容赦なく、「軍人の民間人への危害」と、「上官による部下への私的制裁」を心から憎悪していた。軍を嫌悪しつつも、立派な人物へは敵味方を問わず敬意を払っていた。敵将への尊敬と礼節は常に心がけ、殊にラインハルトやその配下の提督たちへの賞賛は惜しんでいない。

部下を深く信頼する人物であり、部下からの人望も厚かった。司令官としての作戦能力は卓越していたが個々の専門分野は穴だらけなだけに、その専門家の部下には大幅な権限を託していた。キャゼルヌ、シェーンコップ、ポプランらヤン艦隊の毒舌家メンバーからは好き放題に言われ、その様子はユリアンに「こんな裏切り者達を引き連れてよく勝ってこれたものだ」と評されているが、それは人望と包容力があったことの裏づけである。更に、帝国側の提督達からさえも一目置かれ、時に尊敬を思わせる発言を口にする者もいる。同時に帝国にいた頃のシュナイダーの論評などから、その変わり者ぶりと寛容さは帝国側にも広く知られたと思われるが、特にヒルダは、ヤンの人柄を最も的確に観察していたと思われる(ヤンが同盟からの指示に応じて停戦するだろうこと、ハイネセンから脱出した後の勢力分析の様子など)。その反面、当時の同盟政府、特にトリューニヒト派からは、思想や政権への服従心の乏しさから危険分子扱いされ、最後には非トリューニヒト派の代表格であったレベロにまで疎まれ、同盟を脱出することにもなった。

事有る毎に退役後の「年金」を気にする発言を行っており、作者の田中芳樹はそれを指して「問題児」と称していた。ただし、決して年金として得られる金銭に執着していたのではなく、軍人という職業からの解放を強く望んでいた事、市井の歴史家として悠々自適の生活を送る事に強い憧れを抱いていた事などから、労働を伴う事無く収入を得られる年金という「制度」に執着していたようである。作中にも、もし打算を最優先させていたら、ヤンの立場と見識から考えて、間違いなくラインハルトの配下になるだろう、という意味の記述があり、金銭や名誉・地位への執着は全く無い。むしろ金銭や名誉・地位を得るための「勤勉」を忌避していた様子が伺え、作者の言う「問題児」というのは、むしろ「怠惰」の事を指していると思われる。

家族は当初、被保護者のユリアン(アニメ版のみ登場、「元帥」という名前も設定されている。小説版では猫は飼っておらず、むしろペットというものを忌避する発言さえしている)だけであったが、後に副官であったフレデリカ・グリーンヒルと結婚する。フレデリカに対しては赴任してきた後、割と早くから好意を抱いていたようだが、軍人として敵味方を含め多くの人間を死に至らしめている自分が家庭的な幸せを得る事への違和感、二人の年齢差が、その想いを伝えることを躊躇させていた。バーミリオン会戦を前に想いを打ち明け、その際フレデリカから自分の両親も年齢差があったことも告げられた。

学生時代はジェシカ・エドワーズに対して好意を寄せている様子が見られる。士官学校卒業後(外伝4巻)ではラップとジェシカは恋仲になっている様子で、ジェシカはヤンに対して「私もあなたの親友のつもりよ」(つまり友達ではあるがそれ以上ではない)とはっきりと言ってしまい、どうやらヤンは失恋した様子である(ただしOVA版の描写では、親友のラップが同じ想いを感じていると察知し、譲る形で身を引いたものの、ジェシカの方はむしろヤンに強い想いを感じていたと思わせるような演出が多々見られる)。ラップ死後は(あるいは失恋して以後も継続して)ジェシカに思慕を寄せていたようで、ユリアンはフレデリカのほうに目を向けたほうが建設的ではないかと感じていた(外伝2巻)。ジェシカの死はかなりの衝撃であったようだ。

大の紅茶党であり、特にブランデー入りの紅茶を好んでいた(酒好きなため、時に「紅茶入りのブランデー」になっていたことも)。また、風邪を引いた時にユリアンが作ったホット・パンチのエピソードから、白ワインも好んでいる事が窺える。このエピソードの中でヤンはワインの分量を多くするようにと頼んでいることから、酒類も人並み以上に好きだったと思われる。酒類に関する支出は時が経つにつれて増えていたというエピソードもある。逆にコーヒーは嫌いで、かなり否定的な発言も口にしている。ただし例外として、バーミリオン会戦後のラインハルトとの会談の時にエミールが持ってきたコーヒーには口をつけており(アニメ版では口にした際、一瞬だけしかめっ面をした描写がある)、またエルファシルでの撤収作戦時において、フレデリカから受け取ったコーヒーで、喉に詰まったサンドイッチを流し込んでいたことなどから、まったく飲めないわけではない。

三次元チェスが趣味だが、その腕前は下の中程度。作中で、パトリチェフやブルームハルト、スールには勝てるが、キャゼルヌやユリアンには歯が立たないエピソードが登場する。用兵家としての能力とは矛盾するようであるが、ユリアンはチェスの最中にも別の事を考えているようだと、ヤンの腕前を弁護している。[3]

家事、日常生活に関しては極めて疎く、ユリアンが養子としてヤン宅に訪れるまでは文字通りゴミに埋もれて生活していた。「生活無能力者」等とキャゼルヌやユリアンに言われており(自嘲して言うこともある)、ユリアンがフェザーンへ行った際は寝坊しないかといった次元の心配をされていた。もっとも、本人は性格からか、そのことを全く意に介していない。 ただし、「生活無能力」とは、日常家事の能力が皆無である事に対してであり、「生活能力」の一つとして上げられる金銭的感覚に対しては等は、ユリアンの将来のために貯金をしたり、フレデリカとの年金の合計が減額される際配慮を示すなど相応のレベルを有しており、全「生活能力」が無能力であるわけではない。

指揮を執る際は「指揮デスクの上で胡坐をかく、または立てひざを立てて座る」という「行儀の悪い」姿勢を好む。第8次イゼルローン攻防戦においては一度シートの上にずり落ちても再び指揮デスクの上に戻って座りなおしており、そのスタンスは徹底されている。(これは味方の将兵を安心させるために意図的に行うこともあった)。

ヤンはテロリズムについて「歴史を変えることはできない」とかなり嫌悪感を込めた否定的発言を行っている(ただし「…停滞させることはできる」として、脅威としてとらえていた)。そのヤンがテロによって倒れた事は、後世の歴史家によって歴史の皮肉として語られている。ヤンの死によって歴史が変わったかどうか(ヤンが死なずにラインハルトとの会見が実現した場合、会見によって和平が成立したのか、あるいは決裂して最終決戦に至ったのか)は、後世の歴史家の間でも意見が分かれている(もし和平が成立したとすれば、実際には後にユリアンが和平を成立させており、歴史は変わらなかったという事で、ヤンの見解通りという事になる)。

ラインハルトは、ヤンの死を告げられた時、報告してきたヒルダが目の前にいるにも関わらず取り乱し、感情を激発させている。この様子から、ラインハルトがヤンに対して、単なる敵将にとどまらない思い入れを感じている事が伺える。なお、人格面におけるヤンとラインハルトの共通点としては、私生活が質素であること、図々しく悪びれない人間(バグダッシュやフェルナーなど)に対する寛容性などが挙げられる。ジョークについてのセンスの不足も共通点であり、一度ヤンがラッツェル大佐に披露した自作のジョークは、技巧の度が過ぎてウイットにもなっておらず、笑えないものであった(ただしラインハルトはユーモアのセンスそのものが貧弱であるのに対し、ヤンは表現力に問題があるだけという違いはある)。

同様に他の帝国軍幕僚たちからも「これは自分たちを油断させるための罠では無いか」と疑いを持ち、ヤンの死を容易に受け入れようとはしなかったほどである(復讐する機会を永遠に失ったことへの怒りに近かった)。

死後もヤン・ウェンリーの名は共和主義者の英雄として祭り上げられ、そのカリスマは彼の遺志を継いだユリアンらによって(生前のヤン、そしてユリアンにとっても不本意な事ながら)イゼルローン共和政府の権威の拠り所として利用されてゆく事になる。

銀河英雄伝説」が歴史小説の体裁を採っているため、一方の主人公であるラインハルトと同じく「後世の歴史家」の彼に対する評価が多々存在する。功績の偉大さのため、ハロー効果により人格までも神格化され、「休んでいる時にもその脳裏では策略を練っていた」など明らかに過大評価される事がある一方、一部の歴史家からは、「彼の無用な抵抗によりラインハルトの統一が遅れ、歴史に不必要の混乱と出血を招いた」として厳しい評価も下されている。また、本人が民主主義に対して多大な期待を寄せている一方、自分自身がトップに立って民主主義を擁護しようとはせず、あくまで「第二人者」以下の立場に固執しようとする姿勢を、「覚悟が不十分であった」と批判されることも多い。ただしヤン本人はその種の批判に対し、「半数が味方になってくれれば大したものさ」と意に介した様子はなかった(ヤンの作戦は生前からすでに本が出るほど研究されており、当然その種のバッシングも生前からあったものと思われる)。

アニメの登場人物としての彼は、寡兵をもって度々ラインハルト率いる大軍を打ち破るなどの実力の高さ、穏やかで優しい人柄、ユリアンや仲間達に対する語り口、戦争観と歴史観、そして演じた富山敬の声などから、完結から十数年経った今もなお、ファンの間で絶大な人気を誇る。作者本人はヤンの人気に対して「計算外」という感想を述べている。

[編集] 座乗艦

  • 戦艦ヒューベリオン
第13艦隊司令官就任時~バーミリオン星域会戦
  • 戦艦ユリシーズ
(動くシャーウッドの森との合流後~回廊の戦い)。
  • 巡航艦レダII
第8次イゼルローン攻防戦(ガイエスブルグ要塞戦)」において増援部隊としてイゼルローンに向かった時。なお、レダIIは皇帝ラインハルトとの会談に向かう時の乗艦として使われ、結果としてヤンの死に場所となった。

最初に旗艦とした戦艦ヒューベリオンは、ヤン艦隊の象徴として敵味方に広く知れ渡っていた。また、アムリッツァ会戦後、最新鋭の旗艦級戦艦トリグラフが配備されたときもヤンは旗艦を移動せず、後輩アッテンボローの分艦隊旗艦にしてしまった。本人曰く「(見た目が美しい)あの艦(トリグラフ)は乗るより見ているほうがいい」らしきことを言ったようだが、実際は旗艦の変更が面倒くさかっただけの様である(作品内におけるユリアンの推察より)。

尚、OVA版におけるヒューベリオンは、メディアによってその説明が異なる。第13艦隊新設に際して「新たに配備された新型艦」と説明されることもあれば、「退役寸前の旧式艦を(慌てて)引っ張り出してきた」と説明されることもあり、一貫していない。また、別の設定資料では、辺境星域警備艦隊旗艦を、半個艦隊規模ということで、通信設備等を増強した上で艦隊旗艦として配備したというものまである。全長911メートルと、他の同盟軍艦隊旗艦級戦艦(例:パトロクロスは1,159メートル)と比較して小型であるが、通信能力は他の艦隊旗艦級戦艦と比べても遜色がない。

[編集] モデル

ヤン・ウェンリーについては、三国志の人物である諸葛亮(孔明)がモデルではないかという意見が多い[4]。ただし作者の田中芳樹自身は、ヤンには特定のモデルは存在しないと明言している[5]。田中芳樹の後の作品『奔流』における主人公陳慶之とは、天才的戦術を駆使しながら、自らの戦闘技量は極めて低いという点が共通している。ただ田中芳樹自身も陳慶之という武将の存在を知ったのはかなり後の事であり、彼の人物伝を見てはじめてヤンとの相似に驚いたそうなので、モデルとは言い難く、偶然の一致というべきである。

なお漫画版のヤンは、作者の道原かつみ自身が、若き日の田中芳樹本人をモデルにしているとコメントしている(ちなみに、OVA版のチュン・ウー・チェンのモデルは「若くなくなった日」の田中芳樹である)。

[編集] 声優

アニメでヤンの声を担当した声優は3人いる。

  • 富山敬(OVA第一期~第三期及び劇場版アニメ2作)
  • 郷田ほづみ(OVA外伝千億の星・千億の光、螺旋迷宮)
  • 原康義(劇場版黄金の翼)

なお、富山敬が病に倒れたのは、OVA第三期でヤンの死を演じてまもなくであった(第3期最終回でユリアンに話しかけるシーンが富山敬の最後の出番)。

富山の死後、ヤンの死後を描いた第4期(原作第9~10巻)が製作され、回想やユリアンの中で、ヤンが呼び掛けるシーンなど、富山が担当する予定の箇所が存在したが、この時点では代役が見つからず、ナレーションやユリアンのモノローグで処理されている。

プロデューサーの田原正利は自身のwebで、富山が生きていれば第3期以降も出演を依頼した事、また音響処理で富山の声に相当する音声を合成出来る可能性を模索したが、技術的な問題や富山への礼儀上の問題などからこの方法を使用しなかった事を述べている。

[編集] 参考

お笑いコンビ、ウッチャンナンチャン内村光良は2007年7月14日放送のスマステ内で一番演じてみたいキャラクターは?と聞かれた際に「誰も知らないと思うけど『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリー」と答えている。

なお、内村はウッチャンウリウリ!ナンチャンナリナリ!!内のコーナーでラインテルトなるキャラクターを演じていたことがある。

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

[編集] 脚注

  1. ^ 昭和63年の「SFアドベンチャー増刊 銀英伝特集号」の「パーフェクトQ&A銀英伝・田中芳樹のすべてがわかる」コーナーにおいての、作者の田中芳樹の弁による。ただし小説の中国語訳では「楊威利」、「楊文理」、「楊温利」などの字が当てられている。ちなみに、ラインハルトは「萊因哈特」と言う字が当てられる
  2. ^ 実際は「多数兵力」と「兵站の確立」は相反する要素であり、軍人として戦略を立案する場合は優先順位をつけて妥協する事も必要である。両立させるのは戦略や軍令の問題ではなく軍政の問題となり、シビリアン・コントロールが原則である同盟軍の軍人の為すべき事の範疇を越える。もっとも政治家に責任を投げるという意味で、生来の怠け者であるヤンらしい意見であるとも言える。
  3. ^ 戦術家・戦略家としての能力とチェスの腕前は、現実には別物と言うべきであり、史実においてもナポレオン・ボナパルトはチェスは下手であり、むしろマナーが悪かったと言われる。
  4. ^ 三一書房の「銀河英雄伝説研究序説」において、ネット上でこのような意見が見られると記されている。なお著者自身はこのネット上の意見に肯定も否定もしていない。
  5. ^ 田中芳樹自身は著書『中国武将列伝』において諸葛亮の能力については「歴史上中国を統一した英雄は数多く存在しているが、諸葛亮は統一に失敗した人物である」「能力は司馬懿に劣る」と記して否定的である。
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