ヤツメウナギ

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無顎上綱
Flussneunauge.jpg
ヤツメウナギ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 無顎上綱 Agnatha
: 頭甲綱 Cephalaspidomorphi
: ヤツメウナギ目 Petromyzontiformes
英名
lamprey

ヤツメウナギ(八目鰻、lamprey)は、無顎類円口類頭甲綱(ヤツメウナギ類)ヤツメウナギ目に属する動物ある。

目次

[編集] 無顎類の生物学的特徴

無顎類(円口類)は現在大多数を占める顎のある脊椎動物(顎口類)の先祖系(化石種)またはそこから分岐したグループ(現生種)である。外見の類似から多くの種に「ウナギ」の名を冠してはいても、ウナギとは無縁の動物であり、そもそも魚類ですらない。

無顎類の外見的な大きな特徴は、名が示すと通り顎を欠くことである。その他にも対鰭がないなど、無顎類の姉妹群たる顎口類を特徴づける多くの重要な形質を欠いているため、同じ現生無顎類のヌタウナギなどとともに、脊椎動物の起源と進化を考える上で極めて重要である。

一般に脊椎動物として最も原始的な形質のある動物の一つであると認知されている。以下にそうした主だった特徴を挙げる。 なお、これらの特徴が見掛け上原始的であっても、ヤツメウナギは顎口類と分岐して約4億年の期間を経ており、その間に顎口類同様、独自の形質を進化させていることから、ヤツメウナギや他の無顎類にある(見掛け上原始的な)形質がそのまま顎口類の祖先型に当てはまるわけではない。

  • 明確な正中鰭(背鰭尾鰭)があるが、対鰭(limb)を全く欠く。
  • 骨格は全て軟骨で、現生の他の脊椎動物に比較して非常に貧弱である。
    • 頭蓋があるが、一切の皮骨がないため、その構成は脳頭蓋(神経頭蓋)のみであり、形態もかなり独特なものに見える。ちなみに発生においては神経堤細胞に由来する梁軟骨が全く発生しないため、ヤツメウナギの頭蓋と顎口類の頭蓋とは単純に比較することができない。
    • 脊椎骨は僅かに存在するが、普通の脊椎動物で椎骨を構成する主要な構造とされる椎体を欠き、代わりに支持器官として太い脊索を一生保持している。ヤツメウナギにある脊椎骨成分は脊索の背側に連続して並ぶ神経弓のみであるとされる。こうした軟らかい骨格であるため、骨格標本などによる形態の観察がたいへん難しい。またアルシアンブルーなどによる透明骨格標本も、うまく軟骨を染色することができないと言われる。そもそもヤツメウナギの軟骨は、軟骨細胞外マトリックスとしてlamprinと呼ばれるエラスチン様の独特なタンパク質を多分に含み、他の多くの脊椎動物とは軟骨の成分自体が大きく異なるとされる。
  • がない。ヤツメウナギの成体の口は吸盤状をしており、強い吸引機能がある。これで河底の石などに吸いついて、姿勢を保持することができる。またカワヤツメなど、多くの種ではこうした吸盤状の口で他の魚類などに取り付き、ヤスリ状の角質歯で傷を付けて体液を吸う。一見するとその様は大きなヒルが取り付いているようにも見える。顎骨弓より後ろ、2番目以降の鰓弓は全て呼吸用のとして用いられ、同様な形態のまま咽頭の両側に一列ずつ並ぶ。
  • 外鼻孔は、1対開口する顎口類とは異なり、単一のみで、頭頂に開口する。鼻管は盲嚢状。
  • 内耳には半規管2つだけがあり、これも三半規管がある顎口類とは異なる。

以上のように、現在の顎口類には全く見られなくなった特徴が多くある。つまりこうした顎や対鰭、鼻孔などは、少なくとも顎口類がヤツメウナギなど円口類と分岐して後独自に獲得したものだと考えられる。しかし、成体ではが大きく、よく発達したレンズ外眼筋も備えているなど、顎口類と共通した特徴も数多くあり、よってこうした形質は脊椎動物の最も初期の段階で既に獲得されていたものと考えられる。

ヤツメウナギ及びヌタウナギは軟骨魚類以上の脊椎動物には存在する血液中の免疫グロブリンが存在していないことから、抗体機能の解明にヒントになり得ると見られている。

無顎類(円口類)は魚類に含めるかどうかは議論がある。魚類の範囲をのあるものに限定するならば魚類には含まれないが、顎の有無は魚類かどうかの判別にかかわらないとする主張では魚類に含まれるといった議論ではある。こんにちでは一般的には魚類とみなされる。

[編集] ヤツメウナギ

[編集] 概要

ウミヤツメPetromyzon marinus

ヤツメウナギは現生種は淡水を中心とした世界中の寒冷水域に生息し、熱帯域には少ない。 日本国内では、カワヤツメLethenteron japonicumスナヤツメL. reissneriシベリアヤツメL. kessleriミツバヤツメLampetra tridentataの4種が棲息するとされており、このうちカワヤツメと一部のスナヤツメは食用になる。

ヤツメウナギの体の両側には7対の鰓孔があり、それが一見のようにみえることから本来の眼とあわせて「八目」と呼ばれる。のない体は細長く「ウナギ型」で、種によって体長13-100cmと幅がある。繁殖は淡水河川で行い、3mm程度の黄色い卵を、種によって数百~数万個も産卵する。ひと月ほどで孵化すると、まずアンモシーテス(Ammocoete)と呼ばれる幼生期を数年間過ごし、その後成体へと変態する。アンモシーテスとは、もともと新属として設けられた名称だったが、これがヤツメウナギの幼生と判明すると、その名称がそのまま幼生の呼称となった。アンモシーテス幼生の基本的な概形は成体に似るが、口は吸盤状でなく漏斗のようで、泥底に潜って水中から有機物を濾しとって食べている。またが未発達であり、外からはほとんど確認することができない。

変態後の生態は、種によって降海型と残留型に大別される。カワヤツメなどは前者で、変態した若魚は2,3年海を回遊して再び繁殖期になると河川を溯上する。スナヤツメなどは後者であり、繁殖期まで一生を淡水で過ごし、変態後は消化管も貧弱で餌を採らない種が多い。

[編集] 生態系への影響

北米大陸五大湖では、本来は外洋とつながる河川セントローレンス川1本のみであったが、19世紀初頭から始まったいくつかの運河建設により、ハドソン川など複数の他河川とつながった。その結果、大型種のウミヤツメが大量に流入し、各湖の魚類に寄生したため、漁業資源として重要なサケ科をはじめ多くの魚類が激減する深刻な被害をもたらした。そのため、年間約27000匹のオスを捕らえ、不妊化処理を行い川に戻すという事業が行なわれている。

[編集] 食材としてのヤツメウナギ

カワヤツメの干物(頭部)
カワヤツメの串焼き

[編集] 日本

日本国内の場合、食用とされるのはほとんど日本産カワヤツメである。約50-60cm。背側は黒青色で腹側は淡色。春に川を遡上し、5-6月に産卵する。 日本海側では島根県以北、太平洋側では茨城県以北に分布している。新潟県山形県秋田県などの日本海に注ぐ河川で多く獲れる。脂肪に富み、ビタミンAを15万IU/100g以上含む。このため、江戸時代から夜盲症の薬としてカワヤツメの乾物が出回っていた。

上記で春から川を遡上とあるが、12月、1月、2月の寒い時に川で獲れる。東北、北海道などの東日本・日本海側が本場。肉が固くてモツのような弾力と歯応えがあり、レバーのような独特の風味を持つ。最近は漁獲量が減り、大きさも一般に小さくなって来ている。

現在でも産地以外では鮮魚としてカワヤツメを得ることはほとんど不可能で、乾物冷凍品ということになる。産地の秋田県では、カワヤツメをぶつ切りにして醤油出汁の濃い目のツユですき焼き風に煮込むかやきの味覚となっている。また、最近では臭み抜きに醤油やニンニク、コチュジャン等を用いて、切り身を炒め物や鉄板焼きにして食する事もあるという。関東では蒲焼きを売り物にする料理店もある。また、縁日屋台でもカワヤツメの蒲焼きが売られることがある。は特に栄養分が多いため、これを軟骨と共にミンチにして「肝焼き」として供することもある。ただし、クセが強いので好き嫌いは普通の蒲焼以上にはっきりとする。乾物は丸ごと白焼きにしたものを油が漏れ出さないように切り分け、佃煮風に甘辛く煮て食べる。ビタミンAを多く含むことから、古くは夜盲症(鳥目)や疲れ目などの症状改善に用いられた。 現在、台東区浅草において八ッ目鰻蒲焼専門店が営業を続けている。

しかしながら、一般的にはその風味や食感が馴染まれず漁獲地域も限られる事から、薬品サプリメントの原料となることが多い。乾燥品を粉砕して飲用したり、身や肝から魚油を抽出してカプセルドロップの形にして服用する。現在でも伝統薬・八ッ目鰻のキモの油などに代表される医薬品が夜盲症・疲れ目の適応として販売されている。日本においては食や薬品の原料となるのはカワヤツメであるが、終戦直後の頃にはスナヤツメも魚油の原料として用いられたこともある。

[編集] ヨーロッパ

ヨーロッパにおいてはローマ帝国の頃から食されており、時代によって高級食材となったり、貧しい人々の食料となったりした。そのローマ帝国時代には養殖用の池をつくり、主人が罰する生き奴隷を入れて、ヤツメウナギのエサにした。

フランスにおいては「ヤツメウナギのボルドー風 (Lamproie aux poireaux)(ヤツメウナギの赤ワイン煮込み)」と呼ばれる料理がある。これはボルドー地方の名物料理であり、現地では缶詰にされたものも売られている。カワヤツメばかりでなく、ヨーロッパスナヤツメやウミヤツメも用いられる。食感や風味が肉類や内臓類に近いこともあって、現在でもフランス、ポルトガルスペインなどではパイシチューリゾットの材料として盛んに用いられている。ボルドー風煮込みやリゾットにおいては、ジビエにおける「血のソース」のように、風味づけに血液を活用することも多い。

ビタミンAを大量に含むことから、度を超えて摂取すると健康を害しうる。イギリスには、イングランドヘンリー1世がヤツメウナギ料理の食べ過ぎで死亡したといわれる伝説[1]がある。

[編集] 分類

ヤツメウナギ目 Petromyzontiformes は、現生のもので3科10属38種を含む[2]

[編集] 出典・脚注

  1. ^ 『アングル人の歴史(Historia Anglorum)』,12世紀,ヘンリー・オブ・ハンティングドン
  2. ^ Nelson JS, Fishes of the world (4th edn), 2006

[編集] 参考文献

  • Nelson JS, Fishes of the World (4th ed), New York, John Wiley & Sons INC, 2006, ISBN 0-471-25031-7
  • 岩槻邦男・馬渡峻輔監修;松井正文編集、『脊椎動物の多様性と系統』、バイオディバーシティ・シリーズ7 (裳華房)、2006年、ISBN 978-4-7853-5828-0

[編集] 外部リンク

どらく 地球異変余禄 北米・外来種編(2) 五大湖で繁殖するヤツメウナギやゼブラ貝についてのレポート(朝日新聞社)

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