ヤコウガイ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内, 検索
ヤコウガイ
Turbo Marmoratus Madagascar.jpg
マダガスカル産のヤコウガイ
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 腹足綱 Gastropoda
: 古腹足目 Vetigastropoda
超科 : ニシキウズ超科 Trochoidea
: サザエ科 Turbinidae
: リュウテン属 Turbo
亜属 : Lunatica
: ヤコウガイ T.(L.) marmoratus
学名
Turbo(Lunatica) marmoratus
Linnaeus,1758
和名
ヤコウガイ(夜光貝)
英名
Great Green Turban

ヤコウガイ(夜光貝)、学名 Turbo(Lunatica) marmoratus は、古腹足目サザエ科に分類される巻貝の一種。インド太平洋サンゴ礁域に生息する大型の巻貝である。重厚な殻の裏側に真珠層があり、古くから螺鈿細工の材料として利用されてきた。その名前から、夜に光ると思われることがあるが、貝自体は発光しない。

目次

[編集] 特徴

ヤコウガイはリュウテンサザエ科で最大の貝である。成体の重さは2kgを超え、直径15-20cmほどに成長する。殻は開口部の大きさに比して螺塔が低い。数列の竜骨突起が発達するが、連続せずに瘤状に分離することもある。殻表面は滑らかで、個体によっては成長肋が目立つ。殻表全体は暗緑色を呈し、赤茶色の斑点を有している。殻の内側は青色から金色を帯びた真珠光沢である。他のサザエの仲間同様、石灰化した厚手の蓋を持つ。

熱帯から亜熱帯域のインド-太平洋区に分布する。日本近海では屋久島・種子島以南のあたたかい海域に生息する。生息域は水深30m以浅の比較的浅い水路や岩のくぼみであり、砂泥質の海底には認められない。基本的に夜行性で、餌は海藻など。雌雄の判別は外見からは不可能である。繁殖活動は冬場を除き一年中みられ、大潮の前後におこなわれる。メスが緑色の卵子を、オスは白い精子を放出する。稚貝は3年で70mmほどに成長する。

[編集] 用途

螺鈿紫檀五絃琵琶:螺鈿をあしらった工芸品の例

軟体部は刺身煮物として食用にされる。ただし非常に硬いので調理には圧力釜などが必要である。焼き物にはむかない。貝殻は古くは螺鈿の材料として重宝され、産業的多産地としてはフィリピン諸島アンダマン諸島ニコバル諸島などがあり、日本では奄美群島沖縄諸島先島諸島が産地として知られる。

[編集] 名称について

ヤコウガイは本来「ヤクガイ(屋久貝)」と呼称されていたようである。奄美群島の地域名称は、「ヤクゲー」、「ヤッコゲ」、沖縄・先島諸島での地域名称は「ヤクゲー」、「ヤクンガイ」であり古称の名残を感じさせる。ヤクガイのあて字の一つに「夜光貝」があり、ここから「ヤコウガイ」という読みが生じた可能性もある。

[編集] 歴史

ヤコウガイは、先史時代からすでに食用として軟体部が利用されている。ヤコウガイはその美しさゆえ古くから工芸品に使われており、平螺鈿背八角鏡など、正倉院の宝物にも螺鈿として用いられている。ヤコウガイから加工できる螺鈿素材は最大で5㎝×15㎝ほどになり、温帯・亜寒帯域で捕獲できる螺鈿素材の貝よりもはるかに大きいパーツが取れる利点から珍重された。また、土盛マツノト遺跡用見崎遺跡小湊フワガネク遺跡(いずれも奄美市)などといった6‐8世紀の遺跡からヤコウガイが大量に出土している。こうした大量出土の遺跡のほとんどは奄美大島北部に集中しているが、その貝殻の量は先史時代の遺跡と比べ圧倒的に多いため単なる食料残滓の廃棄とは考えにくく、加えて貝殻集積の周辺部分より貝匙の破片も出土していることから、貝殻は原料確保としての集積の可能性が考えられる。あるいは、平安時代以降、ヤコウガイは、螺鈿や酒盃などとして、日本本土で多く消費されているが、その供給地としての役割をこれらの遺跡付近の地域が果たしていたことも考えられる[1]

[編集] 参考文献

  • 高梨修 『ヤコウガイの考古学(ものが語る歴史シリーズ)』 同成社、2005年、293頁。ISBN 4886213251
  1. ^ 高梨修『ヤコウガイの考古学』 140-152
  • 杉本 一樹 米田 雄介『正倉院美術館 ザ・ベストコレクション』 講談社、2009年

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク

個人用ツール
名前空間
変種
操作
案内
ヘルプ
ツールボックス
他の言語