モーリン・タッカー

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Moe Tucker (1992)

モーリン・アン・"モー"・タッカー(Maureen Ann "Moe" Tucker、1944年8月26日ニューヨーク州レヴィタウン生まれ)はロックバンドヴェルヴェット・アンダーグラウンドのドラマーとして知られるミュージシャンである。

音楽活動[編集]

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド時代[編集]

タッカーは19歳でドラムを始めた。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド(以後VUと略記することあり)への加入を打診されたとき、タッカーはIBMでキーパンチのオペレーターとして働いていた。VUのもともとのパーカッショニストはアンガス・マクリーズ(Angus Maclise)だったが、金を払って見に来る聴衆の前での演奏を嫌ったために1965年11月に脱退していた。タッカーに白羽の矢が立ったのは、VUのギタリスト、スターリング・モリソンが、大学時代の同僚の妹がドラムを叩いていたことを思い出したからである。

タッカーのスタイルはきわめて特徴的である。立って演奏することが多く、トムトム・スネア・上を向けられたバスドラムというシンプルなセットを用いる。スティックではなくマレット(打楽器用小槌)で演奏することが多い。またシンバルはほとんど使わない。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドではドラムパートのほかに、次の三曲でリードヴォーカルに加わっている。1969年のアルバム「ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」に収録されているアコースティックギターによる「アフター・アワーズ」(After Hours)、「マーダー・ミステリー」(The Murder Mystery)の一風変わった詩の朗読、および1969年に録音されたもののオフィシャルには1985年の「VU」(アルバム名)までリリースされなかった「アイム・スティッキン・ウィズ・ユー」である。ルー・リードは「アフター・アワーズ」について、「とても無垢でピュア」な曲だから自分では歌えなかった、と語っている。初期には、タッカーはライブでベースを演奏することもあった。ベースの演奏が収録されている唯一の曲は1995年のボックス・セット「ピール・スローリー・アンド・シー」に収められた「メロディー・ラフター」(Melody Laughter)である。

1970年代はじめに最初の息子であるケリー・"トラッカー"・タッカー(Kerry "Trucker" Tucker)を妊娠した際、一時的にバンドを離れている。このため演奏できなかったが、例外的にルー・リード在籍時代のVUのラストを飾るアルバム「ローデッド」の数曲については参加している。ライブにおいてはベースのダグ・ユールの弟であるビリー・ユール(Billy Yule)が代役をつとめ、レコーディングではドラムパートの大部分はダグ・ユールが担当した。1970年後半に復帰する。この時点でルー・リードはVUから離脱しており、リーダーシップをとっていたのはダグ・ユールである。

1970年および71年にかけてのVUの北米・カナダ・欧州・英国・オランダツアーに参加した後、子育てのためにバンドおよび音楽界から遠ざかったということである。

ソロ活動とVUの再結成[編集]

アリゾナ州フェニックスに住んでいた1980年代初期、バンド「サン・シティ・ガールズ」のアラン・ビショップ(Alan Bishop)と結成した短命のバンド「パリ1942」(Paris 1942)でドラムを演奏している[1]

1984年にジョージア州ダグラスに移り、ウォルマート社で働きながら家族を養っていたが、1989年に仕事を辞めて友人たちのバンドである「ハーフ・ジャパニーズ」(Half Japanese)に加わり、欧州ツアーを行っている[2]

以後レコーディングとツアー活動を再開し、小規模な独立レーベルから多くのアルバムをリリースしている。自身のバンドのフロントパーソンとしてヴォーカル、ギターを担当しており、かつてのVUの仲間であるスターリング・モリソンも加わっていた時期がある。1992年から翌年にかけてのVUの再結成にも参加し、欧州ツアーおよび二枚組アルバム「ライブ1993」(Live MCMXCIII)の制作に加わった。

自身のプロジェクトにくわえて、ゲストとして多くのレコーディングに参加しており、この中には「ハーフ・ジャパニーズ」の1990年のアルバム「ファイア・イン・ザ・スカイ」(Fire in the Sky)がある。逆に同バンドのギタリスト、ジョン・スラゲット(John Sluggett)はタッカーのレコーディングでドラムを演奏している。「ハーフ・ジャパニーズ」についてのジェフ・フォイアザイク(Jeff Feuerzeig)によるドキュメンタリー映画The Band That Would Be Kingには、タッカーの演奏と長時間にわたるインタビューが収録されている。またバンド「マグネット」(Magnet)、ルー・リード(アルバム「ニューヨーク」(New York))、およびジョン・ケイル(アルバム「ウォーキン・オン・ロカスツ」(Walking on Locusts))のレコーディングにも加わっている。

さらに、1999年にはエキセントリックな人物として知られるインディーズ・ミュージシャン兼小説家チャールズ・ダグラス("アレックス・マコーレー"としても知られる)のアルバム「ライヴズ・オブ・チャールズ・ダグラス」(The Lives of Charles Douglas)でドラムおよびプロデュースを担当した。

1999年から2003年にかけては、ロレット・ヴェルヴェット(Lorette Velvette)およびデイヴ・ソルジャー(Dave Soldier)とともにニューヨークおよびメンフィスで活動するパンクロック〜デルタ・ブルースのフュージョンバンド「ザ・クロポトキンズ」(The Kropotkins、バンド名の由来はいうまでもなくロシアの無政府主義者クロポトキン)にバスドラム、作曲、ヴォーカルで参加し、「ファイヴ・ポインツ・クロウル」(Five Points Crawl)のレコーディングを行っている。

ディスコグラフィ[編集]

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとともに[編集]

スタジオ制作アルバム

ライブ盤

  • 『1969:ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・ライヴ』1969: The Velvet Underground Live(1974 [1969])
  • 『ライブ1993』Live MCMXCIII(1993)
  • 『ファイナル V.U. 1971-1973』Final V.U. 1971-1973(ライブボックスセット, 2001 [1971-1973])
  • 『ブートレグ・シリーズ・ヴォリューム1:ザ・クワイン・テープ』Bootleg Series Volume 1: The Quine Tapes(ライブ, 2001 [1969])

コンピレーション

  • 『VU』VU(アウトテイクのコンピレーション, 1985 [1968-1969])
  • 『アナザー・ヴュー』Another View(同上, 1986 [1967-1969])
  • 『ピール・スローリー・アンド・シー』Peel Slowly and See(ボックスセット, 1995 [1965-1970])
  • 『ローデッド(フリー・ローデッド/エディション)』Loaded(Fully Loaded Edition)(1997 [1969-1970])†

タッカーは1970年のオリジナルのアルバム「ローデッド」には参加していないが、1997年にRhino Recordsから二枚組で「フリー・ローデッド・エディション」(Fully Loaded Edition)として再発されたヴァージョンには1969年末および1970年初めのデモ音源が収録されており、それぞれ彼女のドラムとヴォーカルを収めた「アイ・ファウンド・ア・リーズン」(I Found a Reason)および「アイム・スティッキン・ウィズ・ユー」の別テイクが含まれている。

ザ・クロポトキンズとともに[編集]

  • Five Points Crawl (2000)

ソロ[編集]

アルバム:

  • Playin' Possum (1981)
  • Life in Exile After Abdication (1989)
  • I Spent a Week There the Other Night (1991)
  • Oh No, They're Recording This Show (ライブ, 1992)
  • Dogs Under Stress (1994)
  • Waiting for My Men (コンピレーション, 1998)
  • Moe Rocks Terrastock (ライブ, 2002)

EP:

  • Another View (12インチEP, 1985)
  • Moejadkatebarry (12インチEP, 1987)
  • GRL-GRUP (CD EP, 1997)

シングル

  • Modern Pop Classics (シングル, 1980)
  • Around and Around (Chuck Berry) / Will You Love Me Tomorrow? (7インチシングル, 1981)
  • Hey Mersh! (7インチシングル, 1989)
  • Too Shy (10インチシングル, 1991)
  • I'm Sticking with You / After Hours (CDシングル, 2002)

註・参考[編集]

外部リンク[編集]