モンタニャールの詩

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

モンタニャールの詩』(モンタニャールのうた、原題(フランス語): Poème Montagnard)は、ヤン・ヴァン・デル・ローストが作曲した吹奏楽曲

概要[編集]

アオスタ

イタリアヴァッレ・ダオスタ州アオスタにあるヴァル・ダオスト吹奏楽団(Orchestre d'Harmonie du Val d'Aoste[1])の委嘱で1996年に作曲され、指揮者のリノ・ブランショー(Lino Blanchod)に献呈された。初演は1997年1月26日に同楽団の演奏会で作曲者の指揮により行われた[1]

イタリア北西部にあり公用語としてフランス語も話されるアオスタは、先史時代からの遺跡があり、アルプス越えの要衝として古くから栄え、初代ローマ皇帝アウグストゥスが街を開いている。ヴァン・デル・ローストは、アオスタの豊かな自然や文化、多民族の侵略を受けた歴史を題材に、中世にこの地域を治めた歴史上の人物であるカトリーヌ・ド・シャランフランス語版へのオマージュとして、この曲を作曲した。

ウィンドマシーンなどさまざまな打楽器を使用したモンブランを望むこの地の厳しい自然の描写で始まり、冒頭でトランペットが奏する5つの音による音型が曲全体を支配している。軍隊の行進のようなリズムや戦いの情景、リコーダー四重奏などにより中世風の雰囲気を醸し出すルネサンス風の舞曲、領民に慕われたカトリーヌ・ド・シャランを思わせる叙情的な旋律などが次々に現れ、卓越した対位法の技巧により組み合わされて、圧倒的なフィナーレを迎える。大編成の吹奏楽によるスケールの大きな作品ながら、わかりやすい構成や非常に描写的な楽想で、日本でも人気が高くコンサートやコンクールで演奏される機会が多い。

日本においては「モンタニャールの詩」という表記が定着しているが、この場合のmontagnardは特定の事物などを示す語ではない形容詞で[2]、曲名自体はフランス語で単に「山の詩」という意味である。

演奏時間は、作曲者の指揮、大阪市音楽団の演奏[3]で17分50秒。楽譜はオランダデ・ハスケフリジア語版から1997年に出版されている。

編成[編集]

編成表
木管 金管
Fl. 2, Picc. (fl.持ち替え) Tp. 3 Cb.
Ob. 2, C.A. Hr. 4 Timp.
Fg. 2, Cfg. Tbn. 2, Bass Snare Drum, Field Drum, Bass Drum, Tom Toms, Tam Tam, Bongos, Congas, Tambourine, Triangle, Cymbals (crash, suspended, china type, sizzle), Crotales, Bar chimes, Xylophone, Marimba, Glockenspiel, Vibraphone, Tublar bells, Wind Machine
Cl. 3, E♭, Alto, Bass, C-Alto, C-Bass Bar.
Sax. Alt. 2 Ten. 1 Bar. 1Tub.
その他Recorder (Treble, Alto 2, Tenor), Harp, Piano/Celesta
  • リコーダー四重奏の部分はオーボエ2、イングリッシュホルン、バスーンによる代用でも演奏できるように書かれている。

脚注[編集]

  1. ^ 日本での初演は、1997年10月30日にフェスティバルホールにおいて木村吉宏の指揮、大阪市音楽団による。
  2. ^ 名詞としてのmontagnardは"山に住む人々"の意味を持ち、フランス革命期の「山岳派」やベトナムほかの少数民族(モンタニャール (ベトナム)英語版)などにも用いられる。
  3. ^ 大阪市音楽団 第84回定期演奏会(2002年6月13日、ザ・シンフォニーホール)ライブ録音(フォンテック FOCD9181、2002年)

参考文献[編集]

外部リンク[編集]