モロコシ属
| モロコシ属 | ||||||||||||||||||
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30種程度。本文参照。 |
モロコシ属 (Sorghum) は、約30の種が分類される、イネ科の属である。その内のいくつかは穀物として、また多くが飼料として世界中で栽培される。栽培には温暖な気候が必要で、野生では熱帯及び亜熱帯に分布する。乾燥に強く、アフリカのサバナからステップ地帯の主穀となっている。
目次 |
分類と分布 [編集]
モロコシ属は、アフリカやユーラシアの低緯度地域を中心に熱帯、亜熱帯に広範に分布する。地中海からインドにかけてはセイバンモロコシ(ジョンソングラス)が野草として分布し、東南アジアにはpropinquum種がやはり野草として分布していた。また、栽培種近縁の種はアフリカのサバンナ地域に分布していた[1]。そのうち、栽培種であるSorghum bicolorは5000年ほど前にSorghum arundinaceumとスーダングラスとの交配によって、西アフリカのサバンナ地帯からエチオピア高原にかけての地域にて栽培化されたと考えられている。ソルガムが栽培化されたのちも、従来の他のソルガム属と交雑が起こり、野生種や雑草としての交雑種が成立していった。ソルガムの畑として開発された開けた土地に、同じ環境を好む野生種が入り込むことで多くの交雑種が生まれた。栽培種は南下してアフリカ全土に広がる一方、北上して古代エジプトへと伝わり、そこから東進してメソポタミア文明にも伝わった。紀元前7世紀のアッシリア帝国においてすでに栽培の記録が残っている。紀元前4世紀にはインドへ、4世紀には中国に伝わり、日本にも平安時代までには伝来し広く栽培されるようになった。エチオピアから18世紀には奴隷貿易に伴い栽培種が南米へと導入され、1853年にはアメリカへと導入された[2]。この栽培種から再び雑草種が生まれ、アメリカに広がった。
野生種や雑草種も食用は可能であり、農耕に拠らない採集物として、また飢饉のときなどにも採集され食用とされる。野生や雑草種のソルガム属は脱粒性であるのに対し、栽培種は非脱粒性で収穫が容易になっている。一方で、栽培種との交雑種が多いことからもわかるように繁殖しやすく、駆除もしにくいため強害雑草となっているものも多く、とくにセイバンモロコシは世界最悪の10大雑草の一つに数えられている。[3]日本においても1945年ごろに侵入し、帰化植物として各地に繁茂している。
栽培と利用 [編集]
モロコシ属の多くの種は、穀物、飼料、砂糖やアルコールの原料として利用される。近年ではバイオ燃料としての利用もある。なかでも最も利用されることが多いのがモロコシ(Sorghum bicolor)であり,[4]、小麦、稲、トウモロコシ、大麦についで世界で5番目に多く栽培される穀物となっている[5]。多くの種が耐乾燥性、耐熱性を持っており、特にサヘルでは重要な作物となっている。アフリカでは、主に年間降水量が300mmから900mmまでの地帯で盛んに栽培されている。900mm以上の地域では、かつてはソルガムが栽培されていたものの、現在ではより湿潤に適したトウモロコシなどの栽培がさかんになっている。また、300mm未満の地域ではより乾燥に強いトウジンビエが主な穀物となっている。
モロコシを主に主穀として栽培している国はモーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ナイジェリア、ニジェール、チャド、スーダンといったサハラ南縁の国々である。特にブルキナファソとスーダンにおいては一人当たり食糧生産量がソルガムが最も多く、最重要の穀物となっている[6]。一方で土地生産性は非常に低く、1997年のソルガムの土地生産性は世界平均が1ヘクタール当たり1414kgであるのに対し、アフリカ平均は788kgで、世界平均よりも79%も収量が少ない。[7]このことはこれらの地域の食糧不足を招き、経済成長のネックとなっている。
特にアフリカにおいては主食として重要な地位を持つ植物である。食べ方としては、粉にしたあと練って固めの粥やクスクス状にして食べることが多い。また、モロコシから酒を作ることもでき、茎は壁材などとしても利用される。[8]
また、インドにおいてもモロコシは古くから栽培されている重要な穀物である。インドは雑穀栽培が重要な地位を占める国であるが、そのなかでもモロコシの占める割合は大きい。インドでのモロコシはジョワールと呼ばれ、カリーフ期と呼ばれる雨季にもラビー期と呼ばれる乾季にも栽培される。ラビー期のモロコシの栽培地域は、ボンベイの東に広がるデカン高原地域が主であり、プネーからマハーラーシュトラ州内陸部、カルナータカ州北部、アーンドラ・プラデーシュ州南部にかけて広がっている[9]。
また熱帯地域の多くでも重要な穀物の一つである。アフリカ、中央アメリカ、南アジアなどで盛んに栽培される[10]。アメリカ合衆国には、1853年にフランスから持ち込まれた。アメリカは世界最大のモロコシ生産国であるが、利用はほぼ全量飼料用としてのものである。大生産国ではほかに、オーストラリアやアルゼンチンでも飼料用生産がほとんどである。モロコシを飼料として特によく利用するのはアメリカ、メキシコ、日本であり、日本は大量のモロコシをアメリカから輸入している。
ソルガム属の中には糖分を多く含むものがあり、総称してスイートソルガムと呼ばれる。これを煮詰めて砂糖を作ることができるが、主にシロップの原料として使用されることが多く、主にアメリカで栽培されている。
また収穫後の茎も装飾的な木工製品を作るための材料となり、KIREI BOARDのブランドは特に有名である。
ただしモロコシ属のいくつかの種は、成長の初期にシアン化水素、ホルデニン、硝酸塩などの有毒物質を致死量含むことがあるので注意が必要である。さらに成長した個体でも、ストレスを受けるとかなりの量のシアン化物を作ることがある。日本など各地でセイバンモロコシが飼料用として使用されなくなったのは、この性質による。
| モロコシ属世界生産量(2008/09年)[11] | |||
|---|---|---|---|
| 順位 | 国名 | 生産量 (トン) | 割合 |
| 1 | 11.998 | 19,22 % | |
| 2 | 11.000 | 17,63 % | |
| 3 | 7.240 | 11,60 % | |
| 4 | 6.300 | 10,09 % | |
| 5 | 4.700 | 7,53 % | |
| 6 | 2.619 | 4,20 % | |
| 7 | 2.400 | 3.85 % | |
| 8 | 2.300 | 3,69 % | |
| 9 | 2.000 | 3,20 % | |
| 10 | 1.800 | 2,88 % | |
| 11 | 1.800 | 2,88 % | |
| 12 | 1.000 | 1,60 % | |
| 13 | 900 | 1,44 % | |
| 14 | 900 | 1,44 % | |
| 15 | ヨーロッパ連合 | 521 | 0,83 % |
| その他 | 4.932 | 7,90 % | |
| 世界総生産量 | 62.410 | 100,00 % | |
種 [編集]
- Sorghum almum - ブラックソルガム
- Sorghum amplum
- Sorghum angustum
- Sorghum arundinaceum
- Sorghum bicolor - 主要な栽培種。モロコシ
- Sorghum brachypodum
- Sorghum bulbosum
- Sorghum burmahicum
- Sorghum controversum
- Sorghum drummondii
- Sorghum ecarinatum
- Sorghum exstans
- Sorghum grande
- Sorghum halepense - セイバンモロコシ(ジョンソングラス)
- Sorghum interjectum
- Sorghum intrans
- Sorghum laxiflorum
- Sorghum leiocladum
- Sorghum macrospermum
- Sorghum matarankense
- Sorghum miliaceum
- Sorghum nitidum
- Sorghum plumosum
- Sorghum propinquum
- Sorghum purpureosericeum
- Sorghum stipoideum
- Sorghum timorense
- Sorghum trichocladum
- Sorghum versicolor
- Sorghum virgatum
- Sorghum vulgare
名称 [編集]
モロコシの名は、日本での古来の中国の呼称の一つ「もろこし」に由来する。中国から渡来したため、「もろこしから来た穀物」の由来でつけられた。その後、17世紀にトウモロコシが中国から渡来すると、「中国から来たモロコシ」ということでモロコシの上にさらに唐(中国)をつけてトウモロコシと呼ぶようになった。このように名に関連性はあり、混同されることも多い [12]が、同じイネ科には属するもののまったく異なった植物である。
脚註 [編集]
- ^ 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店 2004年9月10日 第2版第1刷 pp.107-110
- ^ 『新編 食用作物』 星川清親 養賢堂 昭和60年5月10日訂正第5版 pp293-294
- ^ BugwoodWiki[1] Holm, L. G., P. Donald, J. V. Pancho, and J. P. Herberger. 1977. The World's Worst Weeds: Distribution and Biology. The University Press of Hawaii, Honolulu, Hawaii. 609 pp.
- ^ Mutegi, Evans; Fabrice Sagnard, Moses Muraya, Ben Kanyenji, Bernard Rono, Caroline Mwongera, Charles Marangu, Joseph Kamau, Heiko Parzies, Santie de Villiers, Kassa Semagn, Pierre Traoré, Maryke Labuschagne (2010-02-01). “Ecogeographical distribution of wild, weedy and cultivated Sorghum bicolor (L.) Moench in Kenya: implications for conservation and crop-to-wild gene flow”. Genetic Resources and Crop Evolution 57 (2): 243–253. doi:10.1007/s10722-009-9466-7.
- ^ 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店 2004年9月10日 第2版第1刷 p.107
- ^ 「図説アフリカ経済」(平野克己著、日本評論社、2002年)p36
- ^ 「図説アフリカ経済」(平野克己著、日本評論社、2002年)p41
- ^ 『世界の食文化 アフリカ』農文協 2004年 pp63-64
- ^ 「南アジアの国土と経済 第1巻 インド」p100 B.L.C.ジョンソン著 山中一郎・松本絹代・佐藤宏・押川文子共訳 二宮書店 昭和61年4月1日第1刷
- ^ Sorghum, U.S. Grains Council.
- ^ USDA (United States Department of Agriculture): Foreign Agricultural Service – Production, Supply and Distribution Online [2]
- ^ 「もろこし とうもろこし 違い」のGoogle検索結果