モロコシ属

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モロコシ属
Sorghum.jpg
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 単子葉植物綱 Liliopsida
: カヤツリグサ目 Cyperales
: イネ科 Poaceae
: モロコシ属 Sorghum
L.

30種程度。本文参照。

モロコシ属 (Sorghum) は、約30のが分類される、イネ科のである。その内のいくつかは穀物として、また多くが飼料として世界中で栽培される。栽培には温暖な気候が必要で、野生では熱帯及び亜熱帯に分布する。乾燥に強く、アフリカサバナからステップ地帯の主穀となっている。

なお、日本におけるモロコシには異名が多く、文献や機関によって異なる名前で記載されていることは珍しくない。一般的なものとしては、モロコシソルガムコーリャン(高粱)、タカキビなどの名がある。

分類と分布[編集]

モロコシの全体写真。モロコシの在来種は非常に高くなり、3m以上にもなる。インド・マハーラーシュトラ州のモロコシ畑

モロコシ属は、アフリカやユーラシアの低緯度地域を中心に熱帯、亜熱帯に広範に分布する。地中海からインドにかけてはセイバンモロコシ(ジョンソングラス)が野草として分布し、東南アジアにはpropinquum種がやはり野草として分布していた。また、栽培種近縁の種はアフリカのサバンナ地域に分布していた[1]。そのうち、栽培種であるSorghum bicolor(ソルガム・ビコロ、モロコシ)は5000年ほど前にSorghum arundinaceumとスーダングラスとの交配によって、西アフリカのサバンナ地帯からエチオピア高原にかけての地域にて栽培化されたと考えられている。この地域はスーダン農耕文化と呼ばれる文化が広がる地域で、モロコシのほかにもフォニオテフトウジンビエシコクビエバンバラマメ、アフリカイネなどの穀物が栽培化された栽培化の一大センターであるが、ここで栽培化された穀物の中でもモロコシは最も世界中に広がり、また大量に生産されている穀物である。

ソルガムが栽培化されたのちも、従来の他のソルガム属と交雑が起こり、野生種や雑草としての交雑種が成立していった。ソルガムの畑として開発された開けた土地に、同じ環境を好む野生種が入り込むことで多くの交雑種が生まれた。栽培種は南下してアフリカ全土に広がる一方、北上して古代エジプトへと伝わり、そこから東進してメソポタミア文明にも伝わった。紀元前7世紀のアッシリア帝国においてすでに栽培の記録が残っている。紀元前4世紀にはインドへ、4世紀には中国に伝わり、日本にも平安時代までには伝来し広く栽培されるようになった。エチオピアから18世紀には奴隷貿易に伴い栽培種が南米へと導入され、1853年にはアメリカへと導入された[2]。この栽培種から再び雑草種が生まれ、アメリカに広がった。

野生種や雑草種も食用は可能であり、農耕に拠らない採集物として、また飢饉のときなどにも採集され食用とされる。野生や雑草種のソルガム属は脱粒性であるのに対し、栽培種は非脱粒性で収穫が容易になっている。一方で、栽培種との交雑種が多いことからもわかるように繁殖しやすく、駆除もしにくいため強害雑草となっているものも多く、とくにセイバンモロコシは世界最悪の10大雑草の一つに数えられている。[3]日本においても1945年ごろに侵入し、帰化植物として各地に繁茂している。上記のように交雑や変異が起こりやすい植物であるため、亜種や品種の分類は非常に複雑なものとなっている。

中でも最も利用されることの多いモロコシ(Sorghum bicolor)に関しては、さらにビコロ、ギニア、カウダツム、カフィア、デュラの5つの基本種と10の中間種に分類されている[4]。品種としての分類のほか、多様な用途に適した品種が各種存在しているので、その用途に応じた分類も行われている(後述)。

作物としては根が深く、このため吸水能力が高いため主要穀物の中では最も乾燥に強い穀物である。吸肥性も同様の理由で高い。その割には湿潤にもよく耐え、日本のような多湿地域でも栽培が可能である。ただし、湛水中の水田などの沼地では栽培はできない。連作は可能であるが、可能であるだけで地力は落ちるので輪作が行われることが多い[5]。全長は本来は3m以上にも達する、非常に高くなる草であるが、この高さでは機械での収穫に支障をきたすことや倒伏しやすいことから、アメリカを中心に全長を低くする品種改良がおこなわれ、現在では栽培種は1・5m程度にまで低くなった品種も主力の一つとなっている[6]。栽培期間は、一般に早生が70日から80日程度、晩生で150日から160日程度で収穫となる[7]。日本の山間部においては日照時間や農業に適した期間の短さなどから極早生が好まれる傾向にあり、岐阜県飛騨地方山間部における調査では播種から2か月少々(70日程度)で収穫が行われていた[8]

生産[編集]

世界[編集]

世界のモロコシ生産地域。赤が原産地、緑が主要生産地域である
インドの穀物生産図。中央部の黄色がジョワール(モロコシ)を主に栽培する地域である
エルサルバドルのモロコシ畑

モロコシ属の多くの種は、穀物、飼料、砂糖アルコールの原料として利用される。近年ではバイオ燃料としての利用もある。なかでも最も利用されることが多いのがモロコシ(Sorghum bicolor)であり,[9]小麦トウモロコシ大麦についで世界で5番目に多く栽培される穀物となっている[10]。生産量は1960年代に3000万トン台だったが、1980年代には7000万トン台にまで生産が拡大した。その後、2000年代には6000万トン台にまで下がってきている[11]。多くの種が耐乾燥性、耐熱性を持っており、特にサヘルでは重要な作物となっている。アフリカでは、主に年間降水量が300mmから900mmまでの地帯で盛んに栽培されている。900mm以上の地域では、かつてはソルガムが栽培されていたものの、現在ではより湿潤に適したトウモロコシなどの栽培がさかんになっている。また、300mm未満の地域ではより乾燥に強いトウジンビエが主な穀物となっている。一方で、モロコシはアフリカでもっとも古くから、最も大規模に栽培されてきた穀物であり、トウモロコシやコメが伝来してくるまではアフリカ大陸の主穀であったため、栽培種の分化も進んでおり、2000m以上の雨の多い高地に適応した品種も存在する。ただ、全般としてはやはり乾燥地においてほかの穀物の栽培できないところで栽培されることが多いため、反収はイネ、コムギ、トウモロコシの三大穀物に比べて低い。

また、インドにおいてもモロコシは古くから栽培されている重要な穀物である。インドは雑穀栽培が重要な地位を占める国であるが、そのなかでもモロコシの占める割合は大きい。インドでのモロコシはジョワールと呼ばれ、カリーフ期と呼ばれる雨季にもラビー期と呼ばれる乾季にも栽培される。ラビー期のモロコシの栽培地域は、ボンベイの東に広がるデカン高原地域が主であり、プネーからマハーラーシュトラ州内陸部、カルナータカ州北部、アーンドラ・プラデーシュ州南部にかけて広がっている[12]

また熱帯地域の多くでも重要な穀物の一つである。アフリカ中央アメリカ南アジアなどで盛んに栽培される[13]中国においても広く栽培されるが、特に中国東北部において盛んに栽培される。モロコシの大生産国のうち、アメリカ合衆国やオーストラリアアルゼンチンでは飼料用生産がほとんどである。モロコシを飼料として特によく利用するのはアメリカ、メキシコ、日本であり、日本は大量のモロコシをアメリカから輸入している。

アメリカ[編集]

ハイブリッド・ソルガムの畑

アメリカ合衆国には、1853年フランスから持ち込まれ、南部やグレート・プレーンズを中心に広まっていった。19世紀後半から20世紀前半にかけてはアフリカなど世界各地から優良品種がアメリカに持ち込まれ、また20世紀に入ってからはこれらの移入品種との掛け合わせや、優良品種の選抜によって近代的な育種がすすめられるようになった[14]

とくにアメリカで栽培される飼料用モロコシにおいては、1957年に一代雑種のハイブリッド品種が初めて開発され、7年後の1963年までにはほぼ全量が新品種に切り替わるなど品種改良が盛んに行われ、この7年間で収量が倍増している。この改良はトウモロコシの品種改良を参考として行われ、同時期の緑の革命の成果を多く取り入れて改良が進んだ。多収量化だけでなく、この時期には短稈化も行われ、アメリカの主要品種の高さは1m50㎝ほどにまで短くなっており、コンバインなどによる収穫機械化に適応した形となっている。このため、これ以降もモロコシの反収は増大を続け、1950年の1ヘクタール当たり1257㎏から、1998年には1ヘクタール当たり4245㎏と、約3.5倍にまで伸びている[15]

一方で、これらの改良は主にアメリカで栽培される飼料用や糖蜜用のモロコシに限られており、インドやアフリカで栽培される主穀用のモロコシの改良は進んでいない。モロコシは種間の混雑が起こりやすいため新品種の育成が行いやすく、原産地であるアフリカには野生や栽培、半野生や原種など様々な種類の種があり、さらにその中でも用途別・環境別にやや分化した多くの品種が存在するが、近代的な品種改良はほぼ行われていない。そのため、モロコシの収量はほかの主要穀物であるコメやコムギ、トウモロコシに比べて低い水準にとどまっている。アメリカは世界最大のモロコシ生産国であるが、利用はほぼ全量飼料または製糖用としてのものである。

アフリカ[編集]

エチオピア・アムハラ州ヘイック湖付近のモロコシ畑

モロコシを主に主穀として栽培している国はモーリタニアマリブルキナファソナイジェリアニジェールチャドスーダンといったサハラ南縁のサヘル地帯の国々である。特にブルキナファソとスーダンにおいては一人当たり食糧生産量がソルガムが最も多く、最重要の穀物となっている[16]。またこれ以外の地域においても、乾燥地域を中心に熱帯雨林を除くブラックアフリカのほぼ全土で栽培されており、アフリカにおける最重要穀物の一つである。2000年のブラックアフリカの作物の収穫面積のうちソルガムは13.0%を占めるが、これはトウモロコシと同率1位であり、アフリカでもっとも広く栽培される作物となっている[17]。一方で土地生産性は非常に低く、1997年のソルガムの土地生産性は世界平均が1ヘクタール当たり1414kgであるのに対し、アフリカ平均は788kgで、世界平均よりも79%も収量が少ない[18]。主穀用ソルガム自体が収量の改善はさほど進んでいないうえ、サブサハラ・アフリカにおけるソルガムの土地生産性は1961年以来ほぼ改善が見られず、50年以上ほぼ横ばいのままである[19]。これは肥料の投入が農地に行われないなど、緑の革命がソルガムに限らず、コメやコムギなど全穀物においてブラックアフリカ全域では進んでいないためである。主食用モロコシにおいてはコメやコムギと違って品種改良が進んでいないうえ、もともとそれらの栽培できない乾燥地の農地での栽培が主となっているため、ブラックアフリカ内ですらコメ・コムギ・トウモロコシよりも反収が低く、ほぼ半分かそれ以下にとどまっている[20]

一方でモロコシの耕地面積はブラックアフリカにおいて1980年代以降急速に拡大し、1980年から2010年までの30年間でブラックアフリカのモロコシ栽培面積は76%も増大している[21]。これは、反収の貧弱さを耕地面積の拡大で補ったことを意味している。このため、ブラックアフリカのモロコシ生産は1961年の1000万トン程度から、2000年代後半には2500万トン程度まで拡大した[22]。しかしこの生産の増大は土地生産性の改善を伴わなかったため、ひとりあたりのソルガム生産量は低下を続け、1970年に比べ2010年のブラックアフリカからのモロコシ輸出は-1.4%となり、生産増大にもかかわらず輸出は減少してしまっている[23]。逆にブラックアフリカのモロコシ輸入は急増し、2010年にはモロコシの世界輸入量の14%がブラックアフリカ諸国の輸入で占められることとなり、しかもこの割合は増加の一途をたどっている[24]。こうして、ブラックアフリカのモロコシは社会で重要な地位を占めるのにもかかわらず生産はアフリカ諸国の人口の急速な増大に追いつくことができず、これらの地域の食糧不足を招き、経済成長のネックとなっている。

近代的な育種や品種改良がおこなわれていない一方で、アフリカはソルガムの原産地であり栽培には長い伝統を持っており、また重要性も他地域に比べて非常に高いため、非常に多種に及ぶ伝統品種が存在し、維持され続けている[25]

日本[編集]

日本においてはかつては山間部においてコメなどに混ぜる主食用として栽培されており、第二次世界大戦後の食糧難の時代には一時栽培が拡大したものの、すぐにコメの生産量増大によって栽培は激減した。雑穀の一種としてあまり高い価値を持っていなかったため品種改良もほとんど行われず、そのため反収も低いままだった。1965年ごろには食糧用としての栽培はほぼ消滅し、飼料用などで細々と栽培されるのみとなった[26]。しかし21世紀に入ると、雑穀の栄養素が健康面から見直される中で、モロコシの栽培も復活するところが出てきている。なお、日本におけるモロコシ栽培、とくに穀物用のモロコシ栽培は、伝統品種をそのまま利用したものが多い[27]

モロコシ属世界生産量(2008/09年)[28]
 順位  国名 生産量 (トン) 割合
   1 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国    11.998 19,22 %
   2 ナイジェリアの旗 ナイジェリア    11.000 17,63 %
   3 インドの旗 インド    7.240 11,60 %
   4 メキシコの旗 メキシコ    6.300 10,09 %
   5 スーダンの旗 スーダン    4.700 7,53 %
   6 エチオピアの旗 エチオピア    2.619 4,20 %
   7 オーストラリアの旗 オーストラリア    2.400 3.85 %
   8 アルゼンチンの旗 アルゼンチン    2.300 3,69 %
   9 ブラジルの旗 ブラジル    2.000 3,20 %
   10 ブルキナファソの旗 ブルキナファソ    1.800 2,88 %
   11 中華人民共和国の旗 中国    1.800 2,88 %
   12 ニジェールの旗 ニジェール    1.000 1,60 %
   13 エジプトの旗 エジプト    900 1,44 %
   14 タンザニアの旗 タンザニア    900 1,44 %
   15 ヨーロッパ連合    521 0,83 %
    その他    4.932 7,90 %
    世界総生産量    62.410 100,00 %

貿易[編集]

モロコシの特徴として、主要生産国がおもに主穀としての自給用として生産する国家と、飼料としての生産を主とする国家に大きく分かれていることがあげられる。前者はアフリカ諸国やインドなどが当てはまり、主要生産国中では2位のナイジェリアを筆頭に、3位のインド、5位のスーダン、6位のエチオピア、10位のブルキナファソ、12位のニジェール、14位のタンザニアがあげられる。後者としては世界最大のモロコシ生産国であるアメリカ合衆国を筆頭に、4位のメキシコ、7位のオーストラリア、8位のアルゼンチン、9位のブラジル、11位の中国、13位のエジプトなどがあげられる。このうち、自給用生産を旨とする前者のグループはほとんどモロコシを輸出しておらず、むしろアフリカ諸国は主要生産国も含めて大量にモロコシを輸入している。後者のグループは、ほぼ自国の国内で飼料や原料として消費するタイプと、余剰分を輸出へと振り向けられるタイプの2種類の国家に分けられる。モロコシを輸出に振り向けられるほど生産できる国家は非常に少なく、2010年には世界のモロコシ輸出量の62%をアメリカ合衆国が、21%をアルゼンチンが、13%をオーストラリアが占め、残りの諸国のモロコシ輸出量はわずか4%に過ぎず[29]、事実上総輸出の96%を占めるこの上位3国によってモロコシ輸出はほぼ独占されている。輸入量としてはメキシコが最も多く、次いで日本、チリと続く。

利用[編集]

ソルガムの種子とポップ・ソルガム

モロコシの用途は多種にわたっており、用途によって大きく穀物用モロコシ(グレイン・ソルガム)、糯モロコシ、飼料用モロコシ(グラス・ソルガム)、糖蜜用モロコシ(スイート・ソルガム、ソルゴー)、箒用モロコシ(ブルーム・ソルガム)の5つの品種群に大別される。グレイン・ソルガムはさらにマイロ群やカフィア群などの群に分類されている[30]。モロコシには爆ぜるタイプの、いわゆるポップ・ソルガムも存在する。

食用[編集]

ソルガムを挽く一家(エチオピア・ラリベラ

モロコシの利用において最も重要なものは食用である。特にアフリカにおいては主食として重要な地位を持つ植物である。食べ方としては、などで挽いて粉にしたあと練って固めの状にして食べることが多い。アフリカの東部や南部で主食として広く食されるウガリは各種穀物の粉から作られるが、トウモロコシが伝来してくるまではウガリの主原料はモロコシであった。現代でも、トウモロコシを栽培していない地域のウガリはモロコシで作られることが主であり、トウモロコシ栽培地域でもモロコシで作られたウガリは一般的なものである。ボツワナにおいてはモロコシを元にしたウガリは「ボホペ」と呼ばれ、サワークリームマヨネーズを入れて食されるが、トウモロコシを元とした「パパ」と呼ばれるウガリと共存している[31]。ブルキナファソのモシ人においてはサガボと呼ばれ[32]、マリではトーと呼ばれる[33]が、これも同様のものである。また、セネガルやマリなどではコムギの代わりにモロコシやトウジンビエを使用してクスクスが作られる[34]

インドにおいては、モロコシの主要な調理法はロティと呼ばれる非発酵のパンを作ることであるが、ほかにもそのまま粒食したり、揚げパンや蒸しパン、アフリカのように固粥にするなど多様な調理法が存在する[35]

日本においては製粉が基本であり、練って食べる。岩手県では伝統食としてタカキビを団子にしたへっちょこ団子や、コメとタカキビを混ぜたタカキビもちなどをつくり、おやつとして食べる[36]

かつては上記以外の栽培地域である日本や欧米諸国の一部など幅広い地域で食用とされてきたが、モロコシはおもに種皮にタンニンを多く含むため、精白を強めにしないと渋みが強くなる。この性質が嫌われ、インドやアフリカを除いては食用利用は衰退した[37]。近年では健康意識の高まりから雑穀が先進国を中心に見直され、アメリカでタンニンを含まないホワイトソルガムが開発されるなど、復権に向けた動きもみられる。ミート・ミレットという俗称の通り、肉に近い食感を持つため、日本でも雑穀利用の波に乗り、たかきびハンバーグなどのレシピが開発されている。

加工食品[編集]

また、モロコシから酒を作ることもできる。中国の蒸留酒である白酒はモロコシを原料としており、茅台酒などの銘酒も存在する。アフリカのモロコシ生産地域においても、各地でモロコシ酒は製造されているが、商業ベースではなくあくまでも村などで個人で作る地酒的なものがほとんどである。アフリカのモロコシ酒の製造法は、モロコシに水を吸わせて発芽させ、その発芽モロコシの酵素によって糖化させて作る[38]というものであるが、この製法は原料は違うもののオオムギを原料とする一般的なビールと基本的には共通の手法であり、そのためこのモロコシ酒はモロコシ・ビールと呼ばれる。エチオピア南部のコンソ人は、モロコシを主としてトウモロコシと、まれにコムギを入れてチャガと呼ばれるビールを作り、これを主食としている[39]

スイートソルガムを絞り、糖蜜とする(アメリカ・ノースカロライナ州中央部)

モロコシ属のうち、糖分を多く含むものは総称してスイートソルガムと呼ばれる。スイートソルガムは甘味料の原料としてアメリカを中心に栽培されている。これを煮詰めてソルガムシュガー(ロゾク糖)をつくることもできるが、グルコースフラクトースを多く含むため結晶化させにくく、結晶糖の収量としてはサトウキビテンサイに劣るため、シロップの原料として使用されることが多い。近年ではバイオエタノールの原料としても多く利用されている[40]

その他[編集]

モロコシ属は飼料としても重要であり、各国で飼料として使用される。種子の部分は穀物であるので濃厚飼料として使用し、茎や葉は牧草として粗飼料となる。とくに飼料としての消費量が多いのはアメリカと日本である。日本では種子を毎年120万トン近くを輸入し、このほぼ全量が濃厚飼料として使用される。ただし、飼料としての輸入量は2002年の147万トンから年ごとの増減が激しいものの毎年基本的には微減傾向にあり、2010年には122万トンにまで減少している。輸入国の内訳としては基本的にはアメリカからの輸入が最も多く、オーストラリア、アルゼンチン、中国と続くが、各国の作況によって輸入量に占めるパーセンテージは毎年大きく変動する。2010年度の輸入量はアルゼンチンが最も多く、54万6000トンにのぼる。これに次ぐのがアメリカからの輸入で、51万1000トンとなる。2008年と2009年には最大の輸入国であったオーストラリアは、15万8000トンにとどまった。中国からの輸入は量も少ないうえ減少傾向にあり、2009年と2010年には全く輸入がなされなかった。なお、この4か国以外からのモロコシの輸入はほとんどなく、まったく存在しない年もあり、輸入がある年でもごく微量にとどまる[41]

一方、モロコシ属の中でもスーダングラスは牧草としての消費が主なものである。

茎は壁材などとしても利用される[42]。原産地であるアフリカにおいては、収穫後の茎や葉は燃料や飼料として使用するなどし、基本的には余すところなく利用される。

また収穫後の茎も装飾的な木工製品を作るための材料となり、KIREI BOARDのブランドは特に有名である。

ただしモロコシやセイバンモロコシ、スーダングラスなどモロコシ属のいくつかの種は、成長の初期にシアン化水素ホルデニン硝酸塩などの有毒物質を致死量含むことがあるので注意が必要である。さらに成長した個体でも、ストレスを受けるとかなりの量のシアン化物を作ることがある。日本など各地でセイバンモロコシが飼料用として使用されなくなったのは、この性質による。ただし青酸などこれらの毒素は青草に含まれるものであり、成長につれて毒素の量は減少していく[43]。成長のほか、乾燥させても青酸は減少するため、牧草として青刈した場合は十分に乾燥させれば危険性はほぼなくなり、干し草に危険性はほとんどない[44]

また、最近ではカドミウムをはじめとする重金属の吸着にすぐれている性質を利用して、イネやエンバクとともにカドミウムによる土壌汚染の修復(バイオレメディエーション)に利用される[45]

また、堆肥が利用できない場合において、モロコシ属の一部の種は土に鋤きこみ緑肥として使用することもできる[46]

[編集]

  • Sorghum almum - コロンバス・グラス。アルゼンチンにおいて飼料として使用される[47]
  • Sorghum amplum
  • Sorghum angustum
  • Sorghum arundinaceum
  • Sorghum bicolor - 主要な栽培種であるモロコシを含む。
  • Sorghum brachypodum
  • Sorghum bulbosum
  • Sorghum burmahicum
  • Sorghum controversum
  • Sorghum drummondii - bicolor種の亜種。スーダングラス
  • Sorghum ecarinatum
  • Sorghum exstans
  • Sorghum grande
  • Sorghum halepense - セイバンモロコシ(ジョンソングラス)
  • Sorghum interjectum
  • Sorghum intrans
  • Sorghum laxiflorum
  • Sorghum leiocladum
  • Sorghum macrospermum
  • Sorghum matarankense
  • Sorghum miliaceum
  • Sorghum nitidum
  • Sorghum plumosum
  • Sorghum propinquum
  • Sorghum purpureosericeum
  • Sorghum stipoideum
  • Sorghum timorense
  • Sorghum trichocladum
  • Sorghum versicolor
  • Sorghum virgatum
  • Sorghum vulgare

名称[編集]

モロコシの名は、日本での古来の中国の呼称の一つ「もろこし」に由来する。中国から渡来したため、「もろこしから来た穀物」の由来でつけられた。その後、17世紀トウモロコシが中国から渡来すると、「中国から来たモロコシ」ということでモロコシの上にさらに(中国)をつけてトウモロコシと呼ぶようになった。このように名に関連性はあり、混同されることも多い [48]が、同じイネ科には属するもののまったく異なった植物である。

日本においてもっとも古くからこの属の植物をさす言葉は「モロコシ」であるが、上記のようにトウモロコシの短縮形もモロコシと呼び、まったく異なる植物であるにもかかわらず非常に混同されやすいことから、この名前に代わる名称が次々と考案され、使用されている。「ソルガム」は英語での呼び方を直輸入して使用している。「コーリャン」は同じく、中国語での呼び方からとられている。中国語での呼び方が日本に伝わったのは、かつて日本が進出した中国東北部においての主穀の一つがモロコシであったことからである。「たかきび」は、穀物のキビに似ていて、それよりも高く成長することからこの名がつけられた。

脚註[編集]

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  1. ^ 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店  2004年9月10日 第2版第1刷 pp.107-110
  2. ^ 『新編 食用作物』 星川清親 養賢堂 昭和60年5月10日訂正第5版 pp293-294
  3. ^ BugwoodWiki[1] Holm, L. G., P. Donald, J. V. Pancho, and J. P. Herberger. 1977. The World's Worst Weeds: Distribution and Biology. The University Press of Hawaii, Honolulu, Hawaii. 609 pp.
  4. ^ 「品種改良の世界史 作物編」p116 鵜飼保雄、大澤良編著 悠書館 2010年12月28日第1刷
  5. ^ 「新訂 食用作物」p260 国分牧衛 養賢堂 2010年8月10日第1版
  6. ^ 「新訂 食用作物」p258 国分牧衛 養賢堂 2010年8月10日第1版
  7. ^ 「新訂 食用作物」p260 国分牧衛 養賢堂 2010年8月10日第1版
  8. ^ 「雑穀の自然史 その起源と文化を求めて」内収録「飛騨の雑穀文化と雑穀栽培」堀内孝次 p99 北海道大学図書刊行会 2003年9月10日第1刷
  9. ^ Mutegi, Evans; Fabrice Sagnard, Moses Muraya, Ben Kanyenji, Bernard Rono, Caroline Mwongera, Charles Marangu, Joseph Kamau, Heiko Parzies, Santie de Villiers, Kassa Semagn, Pierre Traoré, Maryke Labuschagne (2010-02-01). "Ecogeographical distribution of wild, weedy and cultivated Sorghum bicolor (L.) Moench in Kenya: implications for conservation and crop-to-wild gene flow". Genetic Resources and Crop Evolution 57 (2): 243–253. doi:10.1007/s10722-009-9466-7. 
  10. ^ 『ケンブリッジ世界の食物史大百科事典2 主要食物:栽培作物と飼養動物』 三輪睿太郎監訳 朝倉書店  2004年9月10日 第2版第1刷 p.107
  11. ^ 「新訂 食用作物」p254 国分牧衛 養賢堂 2010年8月10日第1版
  12. ^ 「南アジアの国土と経済 第1巻 インド」p100 B.L.C.ジョンソン著 山中一郎・松本絹代・佐藤宏・押川文子共訳 二宮書店 昭和61年4月1日第1刷
  13. ^ Sorghum, U.S. Grains Council.
  14. ^ 「品種改良の世界史 作物編」p121-123 鵜飼保雄、大澤良編著 悠書館 2010年12月28日第1刷
  15. ^ 「品種改良の世界史 作物編」p129 鵜飼保雄、大澤良編著 悠書館 2010年12月28日第1刷
  16. ^ 「図説アフリカ経済」(平野克己著、日本評論社、2002年)p36
  17. ^ 「アフリカ経済論」p150 北川勝彦・高橋基樹編著 ミネルヴァ書房 2004年11月25日初版第1刷
  18. ^ 「図説アフリカ経済」(平野克己著、日本評論社、2002年)p41
  19. ^ 「経済大陸アフリカ」p123 平野克己 中公新書 2013年1月25日発行
  20. ^ 「経済大陸アフリカ」p123 平野克己 中公新書 2013年1月25日発行
  21. ^ 「経済大陸アフリカ」p124 平野克己 中公新書 2013年1月25日発行
  22. ^ 「経済大陸アフリカ」p119 平野克己 中公新書 2013年1月25日発行
  23. ^ 「経済大陸アフリカ」p117 平野克己 中公新書 2013年1月25日発行
  24. ^ 「経済大陸アフリカ」p118 平野克己 中公新書 2013年1月25日発行
  25. ^ 「雑穀の自然史 その起源と文化を求めて」内収録「雑穀のエスノボタニー」木俣美樹男 p214 北海道大学図書刊行会 2003年9月10日第1刷
  26. ^ 「新訂 食用作物」p255 国分牧衛 養賢堂 2010年8月10日第1版
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