モバイルオペレーティングシステム

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モバイルオペレーティングシステム: mobile operating system)とは、モバイル機器に搭載されるオペレーティングシステム(OS)の総称。モバイルOS (mobile OS)、携帯汎用オペレーティングシステム、モバイルプラットフォームとも言う

概要[編集]

スマートフォンタブレット携帯情報端末 (PDA) などの携帯機器に搭載される汎用のOSの総称である。

2023年現在の販売台数ベースでその各タイプの割合を分析すると、スマートフォンが大部分を占めている。特に大きな市場シェアを獲得しているモバイルOSとしてはAndroidiOSがある。他には、Firefox OSからフォークされインドの巨大市場で広まったKaiOSがある。

一時期は多種類のモバイルOSが生まれ多数のモバイルOSがこの世に存在していたが、競争の結果、2016年ころにはAndroidとiOSの合計だけで98%や99%のシェアとなり、上述の3社以外のOSのシェアはほぼ消滅して市場から撤退せざるを得なくなり、2023年時点ではいわゆる寡占市場状態である。

TizenSymbian OSなどはすでに他のOSと統合されたり、モバイルOSとしてのシェアが消滅したりしている。

アプリケーションソフトウェア(アプリ)はアプリストア経由などで自由にインストールすることができる。

モバイルOSはデスクトップOSのようにグラフィカルユーザーインターフェイス (GUI) を備えており、また各種のシステム設定をある程度変更・カスタマイズできるユーティリティも組み込まれていることなどから、OSの存在を直接エンドユーザーに意識される機会が多い。だが分類上は"組み込みオペレーティングシステムの一種"とされることが多い[注釈 1]。しかし、各モバイルOSのルーツについては、Symbian OSのように携帯機器向けに独自に開発されたもの、iOSのようにデスクトップOSから派生したもの、Androidのように組み込みLinuxから派生したものなどがあり、必ずしも組み込みOSから派生したものではない。

スマートフォンOS別販売台数推移[2]
スマートフォンOS別販売シェア推移[2]

現行の主なモバイルOS[編集]

タブレットやスマートフォンやフィーチャーフォン向けは次のとおり。

Android(Google)
GoogleによるモバイルOS。LinuxをベースにしたOS。スマートフォンのOSとして世界シェア第1位。さまざまなベンダー(メーカー)の「Androidスマートフォン」や「Androidタブレット」に搭載されている。
iOS (Apple)
AppleによるDarwinベースのモバイルOSであり、Mac OS Xから派生した。iPhoneiPadiPod touchに搭載される。かつてはiPadシリーズにも搭載されていたが、iPadOSに分化した。
iPadOS (Apple)
iOSから派生したモバイルOS。iPad、iPad AiriPad miniiPad Proに搭載される。タブレット向けに最適化されている。
KaiOS (KaiOS Technologies Inc.)
Firefox OSの後継であるB2G OSからフォークされた、フィーチャーフォン向けのOS。省メモリ性能に優れており、HTML5ベースのアプリを専用ストアからダウンロードできる。インドは2021年時点の人口が14億人と巨大で、世界のスマートフォン販売台数の1/5ほどを占めるほどの巨大市場である[3]わけだが、その巨大なインド市場におけるシェアは2018年でAndroidに続く2位(9%)であり、iOSよりも上である。
Ubuntu Touch
Ubuntuのモバイル版。Ubuntuの操作感をモバイル機器で実現するもの。ソースコードの管理は2015年にカノニカルからUBportsに移され、現在はUBportsが開発・保守を行っている。一部のAndroid端末にインストールすることも可能。

スマートウォッチ向けは次のとおり。

Wear OS (Google)
GoogleのAndroidをベースとしたOS。Googleだけでなく、さまざまなメーカー[注釈 2]やブランド[注釈 3]のスマートウォッチに搭載されている。
List of Wear OS devices」(Wear OSを搭した機器の一覧。英語版)も参照可。
watchOS (Apple)
AppleのiOSから派生。Apple Watchに搭載。

その他[編集]

BREWクアルコム
同社が開発した携帯電話向けリアルタイムオペレーティングシステムのREX OSから拡張されたモバイルオペレーティングシステム。日本ではauブランドを展開するKDDI、および沖縄セルラー電話の2002年度以降に発売されたほとんどのau携帯電話(フィーチャーフォン)に搭載されていたが、AUのフィーチャーフォンは2022年3月31日をもってサービスを終了した。
Badaサムスン電子
スマートフォン向けOS。開発終了。
BlackBerry OSブラックベリー
BlackBerryに搭載される独自のモバイルオペレーティングシステム。開発終了。
Firefox OSMozilla Foundation
LinuxベースのオープンソースOS。アプリは、HTML5CSSJavaScriptなどで作成される。日本ではauブランドを展開するKDDI、および沖縄セルラー電話が2014年12月下旬以降より順次発売された韓国LGエレクトロニクス製のFx0 LGL25に初めて搭載された。Firefox OS自体は開発終了したが、当OSをフォークしたものがKaiOS(上述)として使われ続けている。
Symbian OSSymbian Foundation
携帯電話やスマートフォンに特化した設計をもつオペレーティングシステム。元はノキアが開発した。従来型携帯電話にも多く採用された。初期のスマートフォンで普及したが、iOS・Androidが主流化し衰退。
TizenLinux Foundation、Tizen Project等)
LinuxベースのオープンソースOS。様々な企業が開発に参加している。2013年に搭載端末が発売予定であったが、見送られ、2021年12月31日にはアプリもダウンロードできなくなり完全閉鎖。
HP webOSPalmヒューレット・パッカード→LGエレクトロニクス)
Palmが携帯情報端末向けに開発したが、Palmを買収したHPが事業継続を断念しオープンソース化した。LGがスマートテレビ向けのプラットフォームとして買収[4]
Windows Mobileマイクロソフト
Windows CEをベースにしたオペレーティングシステム。開発終了。
Windows Phone(マイクロソフト)
Windows Mobileの後継製品。スマートフォン向けに新たに開発された。Windows Phone 8より、Windows NTベースとなった。開発終了。
Windows 10 Mobile(マイクロソフト)
Windows Phoneの後継製品。デスクトップ版Windows 10プラットフォームを完全に統一した。開発終了。
Windows RT/RT 8.1(マイクロソフト)
Windows 8、およびWindows 8.1ARMアーキテクチャ版であり、タブレット向けのOS。開発終了。

アプリ開発[編集]

アプリケーションソフトウェア(アプリ)開発者向けには、統合開発環境などのプログラミングツール、各種ライブラリ、GUIフレームワークなどが用意されている。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ モバイルOSの対義語としてデスクトップOSという用語が使われることもある[1]
  2. ^ メーカーとは製造会社。ベンダーとは販売会社。
    ちょうどAndroidがサムスン製やシャープ製などさまざまなメーカーのスマホに搭載されるように、Wear OSがさまざまなメーカーのスマートウォッチに搭載されている。
  3. ^ ウィキペディアのWear OS devicesの一覧(英語版)は「ブランド」で分類しているようであるし、それも妥当性はあるので「ブランド」という用語も併記した。

出典[編集]

関連項目[編集]