モナド (圏論)

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数学の一分野である圏論において、モナド英語: monad)あるいはトリプル英語: triple)とは(自己)関手と2つの自然変換の三つ組である。モナドは随伴関手の理論で使われ、半順序集合上の閉包作用素を任意の圏の上へ一般化する。モナドという名前は、対応する圏を一般化するというモナドの動作に注目して、ソーンダース・マックレーンが哲学用語である「モナド 」を借用した。[1]

概要[編集]

FG が、FG の 左随伴であるような2つの随伴関手であるとき、合成 G \circ F はモナドである。これよりモナドは自己関手となる。もし FG が互いに逆関手であるとき、対応するモナドは恒等関手となる。一般には随伴関手は圏同値(en:equivalence_of_categories)を与えない。すなわち随伴関手は異なる性質を持つ圏どうしを関連づけている。

モナドの公理は次のシンプルな例によって見出せる。G を群の圏 Grp から集合の圏 Set への忘却関手とする。するとF として自由群関手を取ることができる。

これはモナド

T = G \circ F

は集合 X を受け取り自由群 \mathrm{Free}(X) の台集合を返す関手であることを意味する。この状況の下で、次の2つの自然な射が与えられる。

X \rightarrow T(X)

この射は X から \mathrm{Free}(X) への自然な包含写像である。すなわち、X の元を長さ1の文字列と見做して \mathrm{Free}(X) に写す。

T(T(X)) \rightarrow T(X)

この射は「文字列の文字列」を連結(en:concatenation)(平坦化とも言う)する。これらはそれぞれ次の自然変換を定める。

  1. I \rightarrow T
  2. T \circ T \rightarrow T

2つ目は結合法則をみたす積であり、1つ目がその積についての単位元であることが随伴関手の性質から分かる。

これらの結合法則、単位元の公理はモノイドの公理にフォーマルな類似性が見られる。これらは圏上の一般の(随伴関手から構成しない)モナドの定義を与える。

半順序集合 (P, \le) から生成される圏(対象が P の元であり、x \le y が成り立つとき x から y へ射が1つ与えられる)を特別に考えると、随伴の対は Galois 接続(en:Galois connection)、モナドは閉包作用素(en:closure operator)という単純な対応が取れる。

すべてのモナドはある随伴関手から構成でき、さらにこのような随伴関手はたくさん存在する。Kleisli 圏en:Kleisli category)と Eilenberg-Moore 代数の圏(共に下で導入する)は、与えられたモナドを生み出す随伴関手を構成する問題の外的な解である。

上で与えた自由群の例は、普遍代数(en:universall algebra) における代数の variety (en:veriety_of_algebras) の意味で、代数の任意のタイプ(en:signature_(logic))に一般化される。よって、代数の任意のタイプは集合の圏上のモナドに持ち上げられる。代数のタイプはモナドから復元され(Eilenberg-Moore 代数の圏として)、よってモナドは普遍代数の一般化として見られることが重要な点である。さらに一般的に、任意の随伴関手はそれに対応するモナドの Eilenberg-Moore 圏に同値であるとき、モナディック(英語: monadic)であると言う。したがって、モナド性の基準を与えるベックのモナド性定理(en:Beck's_monadicity_theorem)は任意の随伴関手は代数の圏としてこの方法で扱えることを示すために使われる。

モナドの概念は en:Roger_Godement により1958年に "standard construction" という名で提案された。1969年代から1970年代の間は多くの人々は「トリプル」という名前を使っていた。今の標準的な用語「モナド」はマックレーンによる。

定義[編集]

C が圏のとき、C上のモナドは関手 T:C\rightarrow C と2つの自然変換 \eta : 1_C \rightarrow T (1_CC 上の恒等関手) と \mu : T^2 \rightarrow T (T^2 は関手 T \circ T : C \rightarrow C) から成り、これらは以下の条件をみたす(en:coherence_conditions と呼ばれることもある):

  • \mu \circ T \mu = \mu \circ \mu T (自然変換 T^3 \rightarrow T として)
  • \mu \circ T \eta = \mu \circ \eta T = 1_T (自然 T \rightarrow T として。ここで 1_TT 上の恒等変換である)

これらの条件は以下の可換図式によって書き直すことができる:

Monad multiplication.svg
            
Monad unit.svg

T\mu\mu T という表記を展開し以下の可換図式で表すと以下のようになる:

Monad multiplication explicit.svg              Monad unit explicit.svg

1番目の公理はモノイドの結合法則、2番目の公理は単位元の存在の類似物である。実は C 上のモナドは圏 \mathrm{End}_C のモノイド対象(en:monoid_(category_theory))として定義することもできる。\mathrm{End}_C は対象を C の自己関手、射をそれらの間の自然変換として持つ圏であり、これは自己関手の合成からモノイダル圏の構造が誘導される。

モナドのための代数[編集]

モナドと随伴関手[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ Mac Lane, Saunders (1998) Categories for the Working Mathematician: "The remarkable part is that the whole category Algτ can be reconstructed from this monad in Set."

参考文献[編集]

外部リンク[編集]