メチルシクロヘキサン

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メチルシクロヘキサン
識別情報
CAS登録番号 108-87-2 チェック
PubChem 7962
ChemSpider 7674 チェック
特性
化学式 C7H14
モル質量 98.19 g mol−1
外観 無色の液体
匂い 特異臭
密度 0.77 g/cm3
融点

-126.3 °C, 147 K, -195 °F

沸点

101 °C, 374 K, 214 °F

への溶解度 14 mg/L (25℃)[1]
危険性
主な危険性 引火性
NFPA 704
NFPA 704.svg
3
1
0
引火点 −3 °C (27 °F)
発火点 258℃[1]
半数致死量 LD50 >1200mg/kg(マウス、経口[1]
関連する物質
関連物質 シクロヘキサン
トルエン
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

メチルシクロヘキサン: Methylcyclohexane)はベンゼン様の臭気を持つ無色の液体で、化学式C7H14で表されるシクロアルカンの一種。MCHとも略記される。重油から得られる留分の一種。

用途[編集]

修正液医薬品農薬製造用の溶媒[2]ジェット燃料として使われる。JP-7には2~3割ほど含まれる[3]光化学反応性が低く、光化学スモッグの原因とはなりにくい。トルエンキシレンに比べ毒性が低く、有機溶剤中毒予防規則の対象外である。日本の消防法では、危険物第4類・第1石油類に該当する[2]

C_6H_5CH_3 + 3H_2 \leftrightharpoons C_6H_{11}CH_3

トルエン水素化により生じ、触媒による脱水素化で水素を取り出せることから、有機ハイドライドの一種として水素の安定的な貯蔵・輸送手段としての研究もすすめられている。理論上の水素貯蔵密度は47.0kg-H2/m3であり、水素ガスは1/500の体積のMCHとなる。貯蔵密度はベンゼン←→シクロヘキサン(56.0kg-H2/m3)やナフタレン←→デカリン(65.4kg-H2/m3)に比べやや劣るものの、液体の状態を維持できる温度範囲が広い利点を持つ[4]千代田化工建設はMCHの脱水素触媒を開発し、商業ベースでの水素の供給の実証試験に成功した[5]日立製作所国立極地研究所より、南極昭和基地での風力発電機とメチルシクロヘキサンを組み合わせた水素発電システムを受注した[6]

構造[編集]

メチルシクロヘキサンの環反転.PNG

メチルシクロヘキサンはシクロヘキサン環にメチル基が1つ結合した構造で、いす型配座を採る。1位のメチル基の水素と、3,5位の水素とが立体反発するため、アキシアル配座(上図左)に比べエクアトリアル配座(上図右)が比較的安定する。これを1,3-ジアキシアル相互作用と呼ぶ[7]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 製品安全データシート(安全衛生情報センター)
  2. ^ a b 事業と製品|メチルシクロヘキサン丸善石油化学
  3. ^ 高橋将人、磯田浩志、棚次亘弘、東野和幸、湊亮二郎「熱分解吸熱分解反応に関する研究」 (pdf) 、『室蘭工業大学』第58巻、室蘭工業大学紀要、2009年2月、 33-37頁。
  4. ^ 岡田佳巳、安井誠「水素エネルギーの大量貯蔵輸送技術」 (pdf) 、『化学工学会』第77巻第1号、化学工学、2013年、 46-50頁。
  5. ^ “水素社会の実現に向けて「大規模水素貯蔵・輸送システム」の実証に成功” (プレスリリース), 千代田化工建設, (2013年5月31日), http://www.chiyoda-corp.com/news/2013/post_77.html 2013年6月4日閲覧。 
  6. ^ “国立極地研究所より電力を水素に変換して備蓄できる風力発電機利用水素発電システムを受注” (プレスリリース), 日立製作所, (2011年11月7日), http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2011/11/1107.html 2013年6月4日閲覧。 
  7. ^ シクロヘキサンの立体配座化学同人