メガマウス

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メガマウス
Mega mouth shark specimen.jpg
メガマウスの標本
京急油壺マリンパーク
保全状況評価[1]
DATA DEFICIENTIUCN Red List
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 軟骨魚綱 Chondrichthyes
亜綱 : 板鰓亜綱 Elasmobranchii
: ネズミザメ目 Lamniformes
: メガマウス科 Megachasmidae
: メガマウス属 Megachasma
: メガマウス M. pelagios
学名
Megachasma pelagios
Taylor, Compagno & Struhsaker, 1983
英名
Megamouth Shark
Megachasma pelagios distmap.png
生息図(発見例が少ないので、ある程度予想や想像も入っていると思われる。)

メガマウス Megachasma pelagios: Megamouth Shark)は、ネズミザメ目メガマウス科に属するサメ

本種のみでメガマウス属 Megachasma を構成し、古い和名ではオオグチザメ(大口鮫)と呼ばれたが、現在はメガマウスザメ、もしくはメガマウスの名で呼ぶのが一般的。

学名では、沖合の大口鮫を意味する。

分布・生息域[編集]

太平洋インド洋など、熱帯から温帯の水深200m付近のやや浅い深海に生息している。

日本近海では目撃例と捕獲例が比較的多く、2011年現在、全世界で50例あるうち13例が日本におけるものであり、東京湾の海底谷でも発見されている。

形態[編集]

最大で全長709cm[2]。古い形態を保ったサメで、 現代に繁栄しているサメの形態とはかなり異なる点が多い。ネズミザメ目のサメの中では、ミツクリザメと並んで、原始的な形態を残しているといわれる。

北海道大学の仲谷一宏教授の研究によれば、特徴的な口を動かす顎の骨に付いている口を開ける筋肉が非常に発達していて、さらに柔軟な皮膚を利用して顎を伸ばし、前方に突出させて口を突きだして開け、ヒゲクジラの給餌方にも近い構造となっている。この構造は他のサメには現存せず、同じように口を突出させる機能を持つミツクリザメでもこのような作りにはなっていない。

プランクトンを主食にしているため、サメの特徴である歯はとても小さく、ヤスリ状の列になっている。口の内壁は光が当たると銀色に輝く。他のサメに見られない特徴として、上顎の歯が蛍光色に輝き、プランクトンをおびき寄せるといわれるが、確かめられてはいない。

生態[編集]

巨大な口

前述の通り、プランクトンを常食にし、特徴的な口は、プランクトンを飲み込み、濾過する。口が大きいので、誤ってプランクトン以外の生物を飲み込んでしまうこともある。

プランクトンを食べる大型のサメは本種の他には、同じネズミザメ目のウバザメと、最大のサメであるジンベイザメの3種である。巨大な体を維持するためにプランクトンを餌にするようになったのは、クジラと同じ大型海洋動物故の選択だったといえる。

昼は水深100mから200m程度のところにおり、夜間に浅いところまで浮上してくるとされる。腹部が白いことで、深海魚特有のカウンターシェーディング効果については疑問視されている。

発見[編集]

福岡に打ち上げられていたメガマウスの標本
正面から見た口

1976年ハワイ沖の海底ケーブルに絡まっていた雄個体が発見されたのが最初である。新種のサメとわかったが、それ以降は数年に一度のペースでしか見つからず「幻のサメ」といわれた。日本では1984年静岡県で、浜辺に打ち上げられた個体が見つかったのが最初である。

捕獲及び目撃例は世界的に見ても極めて少なく、深海に生息することから死体が漂着するのも極めてまれで、未解明な部分が多い。雌個体は北半球でしか見つかっていない。

深海に生息し、大型であることから、本種にはダルマザメによる皮膚の食害跡も見られるほか、2011年に三重県沖で発見された個体には、寄生性カイアシ類が付着していた。

なお、本種はめったに取れないことと、肉質は水っぽく不味で、食用としては不向きとされる[3]

日本での主な捕獲記録[編集]

1994年11月29日
福岡市東区和白浜。メスの個体(死体)が漂着しているのを、バードウォッチングをしていた人物が発見した[4]。メスのメガマウスは世界で初めてということもあり注目されたが、子供は見つからなかった。
2013年現在も、マリンワールド海の中道においてホルマリン標本が展示されている。
2003年8月7日
静岡県御前崎市御前崎沖の駿河湾。巻き網で捕獲。体長4.6 m、体重460 kgオスの個体だった。
沼津港に水揚げされた後、東海大学海洋学部が解剖を実施。その後、東海大学海洋科学博物館において剥製が展示されている。
2005年1月23日
三重県度会郡紀勢町錦沖。巻き網で体長5.28 mのメスの個体が捕獲。
鳥羽水族館で剥製が展示されている。
2006年5月
神奈川県湯河原町沖の相模湾。体長5.6 m、体重1,200 kgのメスの個体。定置網にかかって死亡していた。
京急油壺マリンパーク(神奈川県三浦市)で解剖された。2007年4月19日から、標本として展示されている。
2007年6月7日
静岡県賀茂郡東伊豆町北川沖の相模灘。定置網でメスが混獲。
連絡を受けた下田海中水族館の職員が確認。輸送方法や飼育環境の準備を整えることができないため、飼育は断念。今後の調査のために標識をつけて放流した。
海中で元気に泳ぐ姿の撮影に成功したのは世界で2例目、日本では初めて[5]
2007年7月9日
茨城県東沖700 km。巻き網船が体長約4 m、体重450 kgのメスの個体を漁獲。
11日に石巻魚市場宮城県石巻市魚町)に水揚げされた。日本では12例目、世界では40例目となる[6]
2011年1月14日
三重県尾鷲市沖合500 m。14日早朝、約5 mの個体が生きたまま定置網にかかっているのが発見された。
15日朝に大阪市の水族館が引き取りに来るまで網に入れたまま泳がせていたが、同日午前6時ごろにいなくなっているのが確認された。網が破られた形跡はなく、網の上を乗り越えたとみられる。
鳥羽水族館によると、生きたまま展示されれば世界初だったという[7]

脚注[編集]

  1. ^ Compagno, L.J.V. 2005. Megachasma pelagios. In: IUCN 2011. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2011.1. <www.iucnredlist.org>. Downloaded on 08 July 2011.
  2. ^ Megachasma pelagios Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2011.FishBase. World Wide Web electronic publication. www.fishbase.org, version (06/2011).
  3. ^ 仲谷一宏著 『サメのおちんちんはふたつ』 2003年8月 築地書館 ISBN4-8067-1270-1
  4. ^ (株)海の中道海洋生態科学館. “博多湾にメガマウス座礁” (日本語). 2010年7月3日閲覧。
  5. ^ 生体のメガマウスが混獲されました!” (2007年6月11日). 2008年4月8日閲覧。
  6. ^ 三陸河北新報社 (2007年7月18日). “サメ希少種メガマウス水揚げ”. 2008年5月11日閲覧。
  7. ^ 朝日新聞社 (2011年1月14日). “希少サメ「メガマウス」逃げられた 尾鷲・九鬼町沖”. 2012年3月10日閲覧。

関連項目[編集]