マーシャル (アンプ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
マーシャルのギターアンプ、アンプヘッドとAキャビネットの2段スタック
ジェフ・ハンネマン(スレイヤー)のマーシャル・ウォール (3段×6列のキャビネット)

マーシャル (Marshall) は、イギリスのマーシャル・アンプリフィケーション (Marshall Amplification) 社が保有する、エレクトリックギターベースアンプなどのブランド。

創業者ジム・マーシャル英語版にちなむ。イーリング・ロンドン特別区ハンウェルで創業、現在の本社および工場の所在はバッキンガムシャーミルトン・キーンズ

特徴[編集]

プロ向けからアマチュア向けと、幅広い価格帯と用途に合わせたアンプを製造している。特に2段・3段に積み上げられたセパレート式大型アンプ(スタックアンプ)の製造メーカーとして知られている。セパレート式アンプの他にも、コンボ式アンプ、エフェクターも製造している。

アンプの特徴としては、真空管を利用した暖かみのあるディストーション系の歪みが得意。また、高音と低音に伸びがあり、中域が豊かな傾向がある。大音量アンプの代名詞的存在で、多くのミュージシャンに愛用されている。

歴史[編集]

ジム・マーシャル自身もミュージシャンであり、戦後間もないロンドンでドラマー兼ヴォーカリストとして活躍した。その後自身のドラム教室を開き、多くの生徒を集め人気を博していた[1]。その生徒達の要望に応える形で、1960年に小売店「マーシャル・ショップ」を開業。当初はドラム専門のショップであったが、生徒達が今度はドラマー以外のバンドメイトも連れてくるようになった[2]。更に彼らの要望に応えるため、アンプも取り扱う事となった。1962年には、フェンダー・ベースマン(英語版)を手本にして最初の自社製作アンプ「JTM45」を開発し、アーティスト達の注目を浴びる。

その後、ロックミュージックの大衆化によってアンプの大音量、大型化の要求が強まった。特に熱心だったのが、ザ・フーピート・タウンゼントで、彼は最初、直径12インチ(約30cm)のスピーカーを8個入れた縦長のキャビネットの製作を提案した。しかし、それは重量が重く大型のため、機材の運搬に手間が掛かり[3]、不評であった。その解決策として、マーシャル社は12インチスピーカーを4個入れたキャビネットを2台重ねて使うことを発案する。これにより、同等の効果が得られ、運搬や設置の労力も減らされることとなった。さらに、その上にアンプ部を重ね、3段積みとした独特のスタイル[4]は「マーシャル・スタック」とも呼ばれ、自社のトレードマークになった。

その後、ジミ・ヘンドリックスエリック・クラプトンジミー・ペイジリッチー・ブラックモアなど、著名なミュージシャンが次々とマーシャル社のアンプを使用し、ステージ後方に壁のように置かれたアンプ・キャビネット群は、「マーシャル・ウォール」、「マーシャルの壁」などと呼ばれ、ロックバンドの一つのスタイルとして定着した。

マーシャル氏は2012年4月5日に88歳で死去した。

主なアンプ機種[編集]

JTM45
初期型。オリジナルは45Wの設計。
1959
もしくはSuper Leadとも。上記「マーシャル・スタック」のスタイルはこの機種で確立された。一時期プレキシグラスのパネルが使用された事から「Plexi」の愛称がある。50Wもしくは100W。
1962および1961
アンプ・スピーカー一体型のコンボ式。「Blues Breakers」の愛称があるが、これはジョン・メイオールの同名アルバム(Beno Albumという呼び方もある)でエリック・クラプトンギブソン・レスポールと当アンプのコンビネーションを使用、これが後のロック・サウンドのお手本となった為。
Major
もしくは200とも。200Wの超・大音量仕様。独特の見た目から「Pig」の愛称がある。リッチー・ブラックモアが使用。
JCM800
Rose-Morris社(後述)との契約が終了した1981年に新時代モデルとして発表。スラッシュザック・ワイルドらが使用。
JCM900
後期型のJCM800に「ハイ・ゲイン回路」を追加したもの。これはユーザの間でJCM800をハイ・ゲイン仕様に改造する事、もしくは前段にオーヴァードライヴ・ペダルを咬ます事が流行していた事に対する回答。あくまで「回路」の追加であり、アンプそのものがハイ・ゲイン化されたわけではない。1999年まで製造。
JCM2000
1997年より製造のJCM後継モデル。
JVM
現行のフラッグシップモデル。

国際展開[編集]

マーシャル社は1966年よりRose-Morris社との15年間の販売代理店契約を結んだ。この時期イギリス国外ではマーシャル製品は非常に高価だったが、これはこの会社が自社マージンのために55%も価格に上乗せをした為であった。また当時「Unit 1」、「Unit 2」、「Unit 3」と言った呼び名で販売されたが、これはアンプヘッドとキャビネットの組み合わせセットに対して命名されたもの。

日本における輸入代理店は、株式会社ヤマハミュージックジャパン(会社サイト日本語版マーシャルサイト)。マーシャル社公認の博物館「マーシャル・ミュージアム・ジャパン」(公式サイト)が山口県に2012年5月3日開館した。

エピソード[編集]

  • 1983年8月24日、ALFEE(現在のTHE ALFEE)の初の日本武道館公演で、ステージバックにマーシャル・ウォールを構築した際には、日本中の楽器店からマーシャルのキャビネットが消えたと言われた。ライブの模様は、ライブDVDや書籍にて確認することができる。
  • 1984年のロック・コメディ映画『スパイナル・タップ』では「ボリュームの目盛りが11まであるアンプ」が登場し、ナイジェル・タフネル演ずる主人公が「俺のマーシャルは特注で他のより1目盛り分ボリュームが大きい」と自慢する。記者から「そもそもの設計でボリュームの10を大きい音にするのとどう違いがあるんだ?」とツッコミを入れられ、返答に窮するというシーンがあり、英語圏では「弾かなくても永遠にサステインするレスポール」ギャグ、「タグ付き・未使用・フェンダー・ベースVI」ギャグと共に非常に有名。

参考文献[編集]

  • デイヴ・ハンター『真空管ギター・アンプ実用バイブル ベスト・サウンドを手に入れるために 歴史と仕組み、選び方と作り方』(DU BOOKS、2014年)ISBN 978-4-925064-73-6

脚注・出典[編集]

  1. ^ ロックンロールを教える教室は少なかったため。教え子にミッチ・ミッチェル等がいる。
  2. ^ この中にはリッチー・ブラックモアピート・タウンゼンドらも含まれた。これも同じく当時のロンドンはジャズ・ビッグバンドが主流で、ロックンロールを演奏する非常に若くて所持金の少ないミュージシャン達を殆どの店が冷遇した為。
  3. ^ 大人二人がかりでようやく動かせるかどうか、という重さであった。
  4. ^ 上から順にアンプヘッド、Aキャビ(Angled Cabinet)、Bキャビ(Base Cabinet)と呼ばれる。"Angled Cabinet"とはその名の通り、前面に角度が付けられており、横から見た際にヘッドに向かって細くなっていくというデザイン。当初は見た目を重視した為の設計だったが、Aキャビ上部のスピーカー2個が上を向く為、客席後部まで音が届くという利点が得られた。

外部リンク[編集]