マーシャル・ロー (映画)

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マーシャル・ロー
The Siege
監督 エドワード・ズウィック
脚本 ローレンス・ライト
メノ・メイエス
エドワード・ズウィック
原案 ローレンス・ライト
製作 リンダ・オスト
エドワード・ズウィック
製作総指揮 ピーター・シンドラー
出演者 デンゼル・ワシントン
アネット・ベニング
ブルース・ウィリス
音楽 グレーム・レヴェル
撮影 ロジャー・ディーキンス
編集 スティーヴン・ローゼンブラム
配給 20世紀フォックス
公開 アメリカ合衆国の旗 1998年11月6日
日本の旗 2000年4月15日
上映時間 116分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $70,000,000[1](概算)
興行収入 世界の旗 $116,672,912[1]
アメリカ合衆国の旗 $40,981,289[1]
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マーシャル・ロー』(原題:The Siege)は、1998年に製作・公開されたアメリカ映画

邦題の「マーシャル・ロー (martial law)」 は「戒厳」の意味。また原題の"siege"は「包囲」を意味し、戒厳の前提状態の一つである「合囲状態」を意味するフランス語の「Etat de siege」に通じる。

概要[編集]

ニューヨークで大規模なテロが多発した時、警察FBI軍隊はそれにどう対処するべきか、自由の意味、の価値などを説いている。この映画はあくまでも仮定の元で製作されているが、後述の通りアメリカ同時多発テロ事件がニューヨークで発生した。

デンゼル・ワシントンエドワード・ズウィックとの、3度目のコラボレーション作品であり、DVDの特典映像であるメイキング・オブ・マーシャル・ローでは、彼ら2人のお互いに対する思いや作品に傾ける熱意について詳しく語られている。

ストーリー[編集]

時は湾岸戦争が終結してから数年が経過した現代。クリントン政権下のアメリカを震撼させる一大事件が発生した。サウジアラビアのアメリカ海兵隊駐留基地が爆弾テロに遭い、大勢の海兵隊員が死亡するという事態に対し、クリントン大統領は記者会見でアメリカ国民に対しこう宣言した。「我々は、国民を守ります」と。しかしその言葉は、大統領の知らないところで実行されていた。

爆弾テロの首謀者はシーク(教主)ことアフメッド・ビン・タラール(Sheik Ahmed Bin Talal)。そのシークが乗る自動車をアメリカ軍の偵察衛星が監視し、進路上にある村では現地人に成りすましたアメリカ陸軍の特殊部隊が待ち構えていた。そして彼らは自動車を襲い、護衛を殺してシークを拉致し、証拠隠滅のため自動車を爆破して去った。それから程なくして、某所の獄中にいたシークを見つめる一人の男。彼こそ独断でシークの拉致を計画した、陸軍のウィリアム・デヴロー将軍であった。

その少し後のアメリカ。その一角にアラブ系移民が住み、モスクやコーランが存在する町、ニューヨークでFBI特別捜査官アンソニー・ハバード、人呼んでハブと相棒のフランク・ハダッドはバスが何者かに乗っ取られ、乗客を人質に取って立て篭もったとの報を受け、現場へ急行した。先んじて現場へ到着した爆弾処理班の隊員がケーブル式の小型カメラで車内を覗くと、何と爆弾が起動し人質が悲鳴を上げる姿が。しかし爆発は起こらず、バスの車内、そして傷一つなくバスから降りてきた乗客達は全員青いペンキまみれになっただけだった。その知らせに驚くハブとフランクだが、自分達が到着するより早く姿を消した犯人が残したメッセージを入手する。それは「彼を解放しろ。我々の最初で最後のメッセージだ」という、一見意味不明なもので、ハブの同僚たちは「彼」が指しているのが「クリントン?」と冗談交じりの推測をしたり、青いペンキを派手に撒いただけの事件を捜査する必要があるのか疑問を口にするが、ハブは犯人がバスを乗っ取ってから捜査当局が現場へ到着するのにかかる時間を計算して姿を消したり、不吉な内容のメッセージを残す手口からこれがプロの犯行と見抜く。だがその直後、警察でもFBIでもない人物が乗客から話を聞いているとの報告が入る。

報告を受けたハブがやって来た、バスやペンキ爆弾が運ばれた証拠品の調査施設では、一人の女性が爆弾を調べていた。先に来ていた同僚は彼女を「CIA臭い」と説明。ハブが彼女に話しかけると彼女は「NSCのエリース・クラフト、FBIに捜査協力の電話を入れた」と言うが、電話の覚えがないハブは即座に嘘だと見抜き、意趣返しに「僕はコリン・パウエルだ」と名乗ると、同僚に彼女を尾行するよう命じる。その後、フランクの掴んだ情報をもとに不審な中東からの入国者を尾行するが、同僚のヘマのせいで気付かれ、その入国者は逃走の末突然現れた車に乗せられ消えた。そして、車の居場所を突き止めて乗り込んだハブたちが見たものは、エリースや何人もの男達に捕まっていた例の入国者だった。ハブはエリース達を逮捕する一方、入国者を取り調べるが、有力な情報は得られず、エリース達も何かを隠したまま釈放という運びとなった。

警告後最初のテロは、またも乗客満載のバスだった。ハブはフランクやエリースと共に現場に到着するが、エリースは犯人の狙いはマスコミが大勢集まった前で、人質ごと自爆する気だと言い、直ちに犯人を射殺するべきと訴えるが、彼女を信じきれないハブはそれを拒否し、現場到着まで時間がかかる交渉人を待たずに自分が交渉人となり、フランクを通訳にして人質となった乗客から子供を解放するよう言い、解放させる事に成功する。そして次に老人を解放させようとし、開いたドアから老人達が降りてきたその瞬間バスは人質もろとも爆発した。ハブは爆風で後ろに飛ばされ軽傷を負うが、目の前に転がる老人達の死体を見て何としても事件を解決すると誓い、直後の捜査会議では「事件解決まで家には帰るな。食事はジャンク・フードで我慢しろ。自分のあらゆる情報源を絞り上げたり、金を握らせてでも情報を集めろ。とにかく精力的な捜査を」と力説した。やがて、爆弾を調べた結果先のサウジアラビアの一件で使用された物と同一と判明。犯人自身もバスの乗客と共に爆死したが、他にも仲間がいる可能性が否定できない中、犯人が既に当局の危険人物リストに記載されていながら、学生ビザでアメリカへ入国していたことが判明する。これに対して、FBIは捜査を進めるがエリースは容疑者の1人として挙がったサミールが、弟がシークの一味になって映画館で自爆テロをした人間ながら、危険を冒して情報提供者であることを説明した。実はエリースとサミールは恋人同士で、サミールへの疑惑を解かずに監視を続けていたハブとフランクは2人が抱き合う姿を、赤外線カメラ越しに見ながら「ポルノより過激だ」と呟くのだった。

捜査を進めるハブ達だが、彼のオフィスに陸軍のデヴロー将軍が来る。捜査状況を自分も大統領も気にしていると言う彼に対してハブは犯人の狙いがシークではないかと問うが、デヴローは「それはありえない。私のところに届いた報告によると、彼は中東で何者かに暗殺された」と答える。さらにハブはエリースの考える危険性についても問うが「あの女はマヌケだ。シークとシマウマの区別もつかない」と酷評する。そして去り際にエリースと遭遇するが、「やあエリース、会えてうれしいよ」と愛想笑いを浮かべて去っていった。やがて犯行グループが潜んでいると思しきアパートが見つかり、ハブはエリースと一緒に中へ入るが礼状を判事が発行するのを待つと言うハブに対し、中東のテロリストはそれを待つようなマヌケじゃないから一刻も早く踏み込んで射殺すべしと言うが、管理人室の前で待っていたフランクは既に礼状を手にしていた。さっそく捜査に取り掛かるハブは管理人から問題の犯人グループは3人のアラブ人で一部屋を共有しており、食事は毎食デリバリーのピザだという事を聞き出し、一計を案じる。ピザの宅配人を装ったハブの同僚がピザの箱を届けると、用心深い犯人の1人はピザの箱を床に置き、代金を受け取ったらさっさと帰るよう言う。言われた通りにした同僚は「ニューヨークの犯罪は、5%減ったんだぜ」と悪態をつきながら去るが、その後ろには小型の攻城鎚を手にしたハブと、屋内突入準備を終えた完全武装の同僚達がいた。ピザの到着に喜ぶ犯人たちが食べようと箱を開けた途端、中に入っていた非殺傷の閃光爆弾が爆発し、これに合わせてハブは攻城鎚でドアを破る。犯人たちは閃光で目をやられながらも銃で応戦するが、最後には全員射殺され、室内にあった大量の爆発物も確保に成功する。

勝利に喜ぶ一同はエリースを伴って行きつけの店へと行き、フランクはエリースにCIA絡みの質問をするが、逆にエリースは中東の人々に対して「最悪の環境で生きる、素晴らしい人々」と称える発言をしてごまかした。やがてハブはエリースとダンスを踊るのだが、突如起きた振動に踊るのを止める。振動の正体はニューヨークのセレブで返っていたブロードウェイの劇場が爆破されたもので、駆けつけたハブ達の目の前では、片腕を失ったドレス姿の女性が倒れた。この事態に対し、ハブはアラブ系移民の団体の代表も出席する、ニューヨークの各団体の代表者会議に出席し、アラブ系移民の団体の代表はこれからも捜査協力をすると明言するが、その最中に急報が届く。アラブ系のテロリストが単身で拳銃と爆弾を手に小学校へ侵入し、教室に立てこもったのだ。現場に着いたハブとエリースはたまたまその場に居合わせ拳銃を所持していた生徒の母親が撃たれて死に、犯人は爆弾を体に巻きつけ、起爆スイッチを手にしていると聞く。その時、報道ヘリの爆音が現場に響いた。先のバスの事態が繰り返されると直感したハブは拳銃を手に単身教室へ突入し、犯人を射殺した。

何人もの死者を出した一連のテロにより、ニューヨークを含むアメリカ全土は混乱の中へと進んでいた。小学校の件では全土の小学生の登校率が、保護者層の不安からガタ落ちし、ハブとフランクが街中を歩いていると突如近くのバスから爆音が鳴るが、ただのエンジントラブルにもかかわらず、誰もが皆爆弾テロに遭遇したような表情を浮かべていた。この様な中、大統領補佐官はデヴロー将軍を怪しみ、質問をぶつけるが、「大統領補佐官が、私と大統領との間に割り込むのか?シークに関しては大統領は何も知らない」と返したことで、補佐官はデヴローの独断専行に気付く。その後、大統領が出席予定の会議の席ではまだ大統領が到着する前からハブやデヴロー達出席者の間で議論が交わされていたが、出席者の一人が「この際戒厳令を発令し、軍をニューヨークに派遣してはどうか?」と発言するや、ハブは「そんなことをすればテロリストは警戒して地下にもぐり、発見できなくなります」と反論。デヴローも「完全武装の歩兵がコンビニの前に立てば迫力はあるが、テロの捜査は捜査機関に任せるべきで、戒厳令には反対です」と言う。そんな中、今回の事態に備えて会議にある人物が呼ばれたとの説明が始まる。かつて湾岸戦争時に中東の現地でフセインの失脚工作に関わり、中東のテロリスト事情にも詳しい「CIAのシャロン・ブリッジャー」として出てきたのはエリースその人だった。ハブが予感した通り、彼女の名前も肩書きも偽物だったのだ。シャロンは言う。

「近年のテロリストは一つの大きな組織ではなく、いくつもの細胞から構成されており、それぞれが独断で動いています。ある細胞がニューヨークでバスを乗っ取り、自爆テロを実施しました。それを見た別の細胞が、今度はまた別の事件を起こすのです。もはやシークの様な大物の手で全てがコントロールされているのではありません」

その言葉を裏付けるかのごとく、別のグループの一員はあろうことかFBIのオフィスも入っている連邦政府ビルに向かって、爆弾を満載したバンで突入し、ビルを崩すほどの大爆発で600名以上の犠牲者を生みだした。会議に出席していたハブやテロの直前にビルを出ていたフランクなど何人かは難を逃れたが、同僚にも犠牲者が出てショックを受けるハブは、新たな捜査拠点にした自宅でシャロンが渡した新しい資料にも八つ当たりする始末。そのような中、ついに大統領はニューヨークに戒厳令を発令し、デヴロー将軍が率いる大部隊を派遣する。デヴローの指揮の元、ニューヨーク市内を銃を構えた兵隊が列をなして闊歩しM1戦車が通りを走る、非日常的な光景。そしてデヴローは背広でも制服でもなく野戦服姿でマスコミに対し、「我々はテロリストを発見すべく全力を尽くす。テロリストは目立たぬよう自分達と同じアラブ系移民に紛れているはず。それが考えられるのはエスニックな空気が漂うブルックリンだ」と宣言し、現地では多くのアラブ系移民の若者が兵士達の手で片っ端から連行されていった。

デヴローの行動が自分達の捜査の邪魔になると感じるハブはシャロンと共にデヴローの元に乗り込み、「戒厳令は反対だと言っていたはずでは?残念です」と訴えるが、「私の大統領への忠誠心を疑うのか?」と返され、ハブはデヴローが二枚舌の持ち主なのを実感する。シャロンもデヴローの尊大さを見て「なんて奴、自分の声にうっとり」と悪態をつく。このままだと本物のテロリストが逃亡する恐れがあると思い立った2人はなぜかフランクと連絡が取れない中サミールに揺さぶりをかけ、タリク・フセイニという自動車修理工場の工員が危険人物と聞き出す。そしてハブは同僚と共にフセイニの自動車工場へ乗り込み彼やその仲間を逮捕しようとするが、いざその瞬間デヴロー率いる部隊が現れ、降伏して出てこなければ攻撃すると通告する。これに同僚の1人が気を取られた隙にフセイニの仲間は爆弾で自爆。同僚が犠牲になるがこれを攻撃と捉えたデヴローは部下に発砲命令を出し、ヘリからはロケット弾が発射された。ハブはフセイニを連れて身を屈めて走り、「私はFBIの捜査官だ!」と叫んで銃撃を止めさせるが、フセイニの身柄を奪われる。

軍の司令部が置かれたスタジアムでハブはフランクを見つける。フランクの息子は自宅にいたが、踏み込んできた兵士によって連行され、フランクの妻がFBI捜査官の身内と説明しても無視されたのだ。ハブはフランクに解放を掛け合うと言うがフランクは「移民してから何年もまじめにやって来たのに、このザマだ」と吐き捨てると捜査官バッジを投げ捨てて去っていった。スタジアムの中でハブは陸軍情報部のチャドウッィク大佐にフランクの息子を解放するよう訴えるが、彼は黒人のハブに対し「君が解放しろと言うのはアラブ系だが、君はエチオピア系かね?」と返し、解放する気は無い。そしてハブはデヴローに先の工場の件はチャドウッィクに自分を監視させていたものだと抗議をするがデヴローの頭にあるのはフセイニからどうやって情報を聞き出すかのみ。全裸で室内の椅子に座らされたフセイニはシャロンに唾を吐いて反抗的な態度を示すが、ハブの前でデヴローとシャロンはどんな拷問が良いのか話し始める。それに憤りを覚えたハブは「これがまともな人間のすることか。テロリストと同じ真似をすれば、もう彼らの勝ちだ」と言うがデヴローの意志は変わらず、ハブを退室させて拷問を始める。途中で出てきたシャロンは悲鳴を上げるだけのフセイニの様子から「何も知らないのよ」と言うが、直後にデヴローがフセイニを撃ち殺す銃声が響いた。

大統領補佐官と密会したハブはシークがデヴローの独断で拉致されたと聞き、さらに政府内部ではシークの解放が必要だという意見も出ていると聞くが、既にテロを起こしたシークを解放すべきではないと反論する。そしてハブはシャロンがまだ何かを隠していると思い、全てを話すよう訴える。シャロンはかつて湾岸戦争フセインに対抗するため、シーク率いるイラク人抵抗グループを組織し、組織の若者達に盗聴や脅迫など自分の持つ技術を教え、サミールともその時からの仲であったが、やがてアメリカが方針を転換したことで組織に対する支援も打ち切られ、裏切ったわけではなかったものの結果として組織の人間は大勢が殺された。これに対してシャロンは少しでも多くの人を救おうと学生ビザの制度を利用し、サミールを含む何人もの人間がアメリカへ行けるようにしたのだった。しかしこれが全てではないとハブは既に気づいており、シャロンが初対面時に爆弾を調べていたことから、シャロンが爆弾についても教えていたと問いかけ、彼女はそれを認めた。そしてハブは言う。「彼らは君に教えられたことを、忠実に遂行している」

テロに対してアメリカ国民はアラブ系移民への差別意識を高め、一部ではアラブ系の商店主が暴漢に襲われて負傷する事件も起こっていたが、デヴローによる無差別なアラブ系の若者の強制連行がマスコミによって報道される中、次第に人々の意識は変わりつつあった。アラブ系の市民団体だけでなく、白人や黒人、アジア系の団体さえもがデヴローの蛮行に対し、デモを起こし始めていた。それはアメリカに生きる人々が人種や宗教の壁を越えて、一つになりつつあるのを意味していた。

一連のテロに終止符を打つと決意したハブは真っ先にフランクの自宅へ行き、自分の意志を伝えると彼が捨てた捜査官バッジを渡した。2人はシャロンを連れてサミールの元へ行き、サミールだけが接触している人物に、シャロンを直接会わせてもらうよう交渉して欲しいと持ちかけた。これまでシャロンはサミールの情報収集に同行しなかったが、それは少しでも尾行が疑われれば、サミールが容赦なく殺されるからであった。しかし時間的余裕がない今、シャロンは最悪自分も殺される覚悟で、サミールに同行するのを決意した。サミールは不安な表情を浮かべるが、彼らの考えを聞き入れた。

2人の安全のためにチャドウッィクの監視や追跡を無力化すべく、ハブとフランクは囮を使って追跡を撒くと、2人がまだいたサミールの部屋に突入する準備を進めていたチャドウィックとその部下達の元へと強行突入し、全員を逮捕した。フランクはFBIには無いがCIAにはあると思っていたマイクロウェーブ監視機の実物を見つけ、サミールの部屋を覗くが、2人は一足先に出た後だった。同僚達にチャドウィックらの連行を任せたハブとフランクはデモ隊であふれる街中を疾走する。

一方シャロンはサミールに連れられ、交渉先の沐浴場に着いた。沐浴場は無人だが、サミールはいずれ現れるとシャロンに告げる。だが、サミールは沐浴場のお湯で手を洗い出す。その様子に違和感を覚えたシャロンは真実に気付く。サミールの交渉相手は最初から存在せず、彼こそが最後の細胞その人だった。だが、拳銃を手にしたサミールを前に迂闊には動けないシャロンの前で、サミールは湯の中から爆弾を取り出す。これから爆弾テロをしようとしていると悟るシャロンはデモ隊の声を聴き、サミールに向けて「あの声が聞こえないの?あなた達を支持しているデモなのよ」と言うが、サミールは「彼等にも、生贄になってもらう」と決意を変えない。

そこに到着したハブとフランクは瞬時に事態を悟り拳銃をサミールに向けるが、サミールはシャロンに銃口を突きつけて射線上に身を置かせ、盾にする。ハブはサミールを射殺してでもテロを阻止しようとするが、隙を見いだせない。だが、シャロンがとっさにサミールを突き飛ばす。サミールは即座にシャロンを撃つが、ハブとフランクがサミールを撃ち、サミールは爆弾と共に湯の中へ転落して死んだ。重傷を負ったシャロンにハブとフランクは駆け寄るが傷は深く、ハブはシャロンに乞われるがまま、コーランの1節を唱え、シャロンは安らかな表情を浮かべて息を引き取った。

最期の細胞の死をもってテロが終わったと確信したハブはフランクたちを連れて、デヴローの元へと乗り込み、判事が発行した2枚の礼状を見せる。片方はデヴローがこれまで連行したアラブ系の若者達を解放せよとのもの、そしてもう片方はフセイニ殺害の罪に対するデヴローの逮捕状であった。だがこれに対しデヴローは素直に従わず、自分を逮捕しようとするハブ達に対して、攻撃態勢に入るよう部下達に命じる。一触触発の事態の中、ハブは人々の自由や権利が、自分達やその祖先が戦ったことによって得られ、今の人々が不当な暴力や拷問を受けない権利を得られたのだと説く。そして、デヴローが発砲命令を出せば、命令を出したデヴローはともかく若い兵士達は消えない傷を負うと訴えるにおよび、デヴローは銃口を下ろすよう命令した。

マスコミが見守る中でデヴローが連行される中、連行された若者達は全て解放され、フランクは自由になった息子と抱擁を交わした。そして、その背後では兵士達を乗せたトラックの車列が遠くへと去っていった。

この映画について[編集]

  • この映画は1998年に製作・公開されたが、現実に起こった2001年のアメリカ同時多発テロ事件と極めて酷似している内容となっている。例を挙げると、連続爆破テロの黒幕・実行犯がアラブ系ムスリムであったり、本来ならば無関係であるはずの一般のムスリムまでがスタジアムに隔離され、その中にはFBI捜査官を父に持つ13歳の少年までもが隔離の対象にされたり、とアメリカ同時多発テロ事件やその後のムスリム系アメリカ人の境遇に対する類似点が話題になった。そのため、同時テロ後に本作のDVDが多くレンタルされた。
  • 同時多発テロ事件後、日本ではTV放送が自粛される事となった[2]が、2006年11月に日本テレビの月曜映画枠において字幕版が放送された。
  • 物語の舞台がニューヨークであるため、当時まだ健在であった世界貿易センターのツインタワーが背景に映りこんでいるシーンがいくつかある。特に冒頭のブルックリンで発生したバスジャックの後、捜査官が倉庫に持ち込んだバスの調査を行うシーンでは、ロウワー・マンハッタンの遠景にツインタワーがはっきり見て取れる。
  • 本作はその内容上アメリカ軍の積極的な協力が得られなかったため、ニュース映像からの流用部分以外は戒厳出動した軍の装備は民間の大道具会社や個人のコレクターからの借用であり、将兵はほぼ全員がエキストラである。その為、公開当時の実際のアメリカ軍とは軍装や車両が多分に異なっており、実際のニュース映像の流用場面と映画のために撮影したシーンの間に統一感のない映像ができてしまった。軍用ヘリコプターなどの大型装備は、ズーウィック監督の前作『戦火の勇気』に参加したものと同じ車両やヘリコプターが登場している。
  • 本作では当時の大統領のビル・クリントンが登場するが、あくまでも既存のニュース映像の流用であるので、劇中の登場人物との共演シーンは一切ない。

キャスト[編集]

役名 俳優 日本語吹替
アンソニー・ハバード デンゼル・ワシントン 小山力也
エリース・クラフト/シャロン・ブリッジャー アネット・ベニング 塩田朋子
ウィリアム・デヴロー将軍 ブルース・ウィリス 磯部勉
フランク・ハダッド トニー・シャルーブ 田原アルノ
サミール・ナジデ サミ・ブアジラ 諸角憲一

スタッフ[編集]

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]