マンホールの蓋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
大阪府大阪市中央区にあるマンホールの蓋。大阪城がデザインされている。

マンホールの蓋(マンホールのふた、英語:manhole coverまたはmaintenance cover)は、マンホールあるいは排水ますの最上段に載置・嵌合される蓋あるいは蓋付枠である[1]。人が誤ってマンホールに落ちてしまうのを防ぐとともに関係者以外の進入を防ぐため、マンホールの開口部に嵌められた着脱可能な蓋を指す。

概要[編集]

プラハのマンホールの蓋
古代ローマ帝国の都市ウィンドボナ下水道に設置されていた砂岩製の蓋。

マンホールの蓋は通常50kg以上の重量があるが、これは、車両をはじめとする交通機関が蓋の上を通過する際、蓋に十分な重さがなければ、所定の位置から外れてしまう恐れがあるためである。そのためマンホールの蓋は強固かつ重量のある鋳鉄製であり、場合によっては表面をアスファルトコンクリートで固められていることもある。また、鋳鉄ならば比較的安価で製造できる。

蓋には通常、かぎ型のバールキーと呼ばれる工具を挿入して引き開けるための「摘み穴」が開けられている。専用のマンホールバールキーは特にこうした穴に引っかける目的で製造されている。

かつてインドはマンホールの蓋の製造において世界でも優位を占め、他の国々で運営している多くの製造会社が倒産に追い込まれた。これは、その極端に低い労働賃金が重い製品を船で輸送するコストさえも下回っていたことによる。

蓋は収集品としてはあまりに大きすぎるにも関わらず、その遍在と数多くの模様、表面に刻まれている記述や描写が、世界中で多くの人々を収集へと駆り立てている。日本では主に写真や写生によって蓋が“収集”される。

今日幾つかの地域では、ポリティカル・コレクトネスの観点から、「マンホール」という言葉は性差別的であると見なされ、他の言葉に言い換えられている。これまで使用していた「マンホール・カバー」の頭文字「MH」や「MHC」を残したいという意向もあることから、「メンテナンス・カバー」「メンテナンス・ハッチ」「メンテナンス・ハッチ・カバー」といった言葉へ置き換えられている。

その重量や扱いにくい性質にもかかわらず、マンホールの蓋は時折盗まれることがあり、特に金属の価格が上昇した際は、スクラップ部品として転売されてしまうことが多い。

水害の際には、マンホール内を通る水圧の影響によりマンホールの蓋が外れ、マンホール内に人が落ちてしまう二次災害が発生することがある。その対策として、大量の雨水が管内に流れ込んできたときでも空気の逃げ場ができるよう予めガス抜き用の穴が開けられているものもある[2]

国賓が来日する際には、治安対策として所管の警察によりマンホールの蓋に封印がされることがある。

形状とデザイン[編集]

イタリアローマにある四角い排水口の蓋。排水用の穴が目立つ。SPQRの文字が見える。

形状[編集]

マンホールの蓋には円形と角形がある[1]。円形が多く採用される理由として、以下が指摘されている[要出典]

  • マンホール開口部の丸い形状は、それを囲む地面の圧力に対して最も効率的な形状であるため、その丸い開口部の蓋が丸い様相を帯びるのは自然であるから。
  • 円筒状の穴は掘るのが容易なため。
  • 丸型の鋳造は水平の型押しロール機を使用して機械切断するのがより簡単だから。
  • 丸型の蓋は丸いマンホール穴に対して、うまくはまるように回転させる必要が無いから。
  • 人間の断面もやや丸い形をしているため。
  • 丸いマンホールの蓋の方が簡単に転がして移動できるから。
  • もし蓋が外れた他の形のマンホール上を自動車が通過すれば、鋭い角の部分が自動車のタイヤをパンクさせてしまう恐れがあるが、丸い形には角が無いため。
  • 文化的理由。
  • 円は定幅図形であるため、蓋がズレても穴に落ちてしまうことがないから。

これらの理由のうち最後のものは、マイクロソフト社の採用面接において「なぜマンホールの蓋は典型的に丸いのか」という質問の答えとして取り上げられたものだといわれている。ただし1966年刊行の『頭の体操』にも同じ問題が掲載されている。この設問は、“正しい答え”以上の回答が求められる質問にどう対応するのかをみる心理学的査定としての意味合いがあり、実践的・風刺的な答えから哲学的な答えまで、独創的な解釈を探そうとする姿勢が求められる。

排水口を兼ねた蓋は丸い形状のものもあるが、長方形(四角形)が一般的となっている。

アメリカ合衆国ニューハンプシャー州の都市ナシュアには、地下での流れの方向を指し示す三角形のマンホールの蓋があり、これはアメリカ国内でも独特のものと思われる。しかし、地元の鋳造場で生産された同市内にある三角形のマンホールの蓋は今や消えつつあり、こうした三角形の蓋は現代の安全基準に合わず、また、ある程度以上の大きさのものも見られない。

具象模様[編集]

上部に具象模様付きのデザインを施したものもある[1]

デザインマンホール[編集]

日本の多くの自治体ではその地域の名産や特色をモチーフにしているデザインマンホールが導入されている(色付きのものはカラーマンホールとも呼ばれる)。特に下水道関連のマンホールでは多種多様なデザインが見受けられる。

東京都下水道局のマンホール[編集]

2002年度に布設された合流管

東京都下水道局23区管轄において、2001年度以降に導入された新しいマンホールの蓋にはマンホールの固有番号および管きょ(下水道)の布設年度(西暦)が記されている。四つ並んでいるうちの一番左の数字は管理図内の人孔番号(01〜99)で黄色が合流管・汚水管、青色が雨水管というように区別されている。中央の二つが管理図内の固有記号(0Aのように数字とアルファベットの組み合わせ)で緑色のみ。一番右の数字は管きょ布設年度の西暦下二桁(00〜99)で黄色が1900年代1999年度まで)、青色が2000年代2000年度以降)というように区別されている。

下水道局では23区内の下水道管きょを管理図で把握しており、固有番号は管理図の番号・記号と対応している。なお、新しいマンホールの蓋の設置は、管きょの新設時や蓋の取り替え時などに行われる[3]

盗難[編集]

近年における鉄価格の高騰は、マンホールの蓋を含め、電柱や鉄道の線路など多くの鉄製品の再利用や盗難を促進する結果となった。中国政府はマンホールの蓋の窃盗を減らすべく奮闘し、2004年に24000件を数えた蓋の年間窃盗件数を、その翌年に4000件にまで減らすことに成功した。

逸話[編集]

スロバキアの首都ブラチスラヴァにあるマンホールの蓋と作業員を模ったオブジェ。

レーシングカーは蓋を持ち上げられるか[編集]

現代のレーシングカーは、その空気力学的な力によりかなりの真空状態を作り出し、マンホールの蓋をも地面から持ち上げる。そのため都市部でのレース中は、マンホールの蓋は競技車両を損傷から守るため溶接される。1990年カナダモントリオールで行われたスポーツカー世界選手権レース中、ヘスス・パレハが乗るポルシェ962に前方の車の地面効果によって持ち上げられたマンホールの蓋が衝突、パレハのシャシーは炎上・全損した。

蓋は宇宙空間で最初の人工物か[編集]

都市伝説においては、マンホールの蓋が1950年代の地下核実験中に、爆風の圧力のためシャフトから猛スピードで発射され、第一宇宙速度を超えて宇宙空間に飛び出したという話がある。この話は1957年8月27日プラムボブ作戦中に実際に起こった事件に基づいたもので、実験中に重い鋼鉄板が試験シャフトからものすごい速さで吹き飛び、その後再び発見されることは無かったという事例だった。その鋼鉄板が本当に大気圏を飛び出していったかどうかは定かではない。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b c 意匠分類定義カード(L2) 特許庁
  2. ^ 引用エラー: 無効な <ref> タグです。 「dougu」という名前の引用句に対するテキストが指定されていません
  3. ^ マンホールのふたが変わります-固有のマンホール番号を付けました-(東京都下水道局 平成13年(2001年) 3月26日)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]