マルコム・ターンブル

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マルコム・ブライ・ターンブル
Malcolm Bligh Turnbull
生年月日 (1954-10-24) 1954年10月24日(69歳)
出生地 オーストラリアの旗 オーストラリア
ニューサウスウェールズ州シドニー
出身校 シドニー大学
オックスフォード大学
所属政党 自由党
配偶者 ルーシー・ヒューズ
子女 2人

オーストラリアの旗 オーストラリア
29代目首相
在任期間 2015年9月15日 - 2018年8月24日
国王
総督
エリザベス2世
ピーター・コスグローブ

在任期間 2008年9月16日 - 2009年12月1日
2015年9月14日 - 2018年8月24日
副党首 ジュリー・ビショップ
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マルコム・ブライ・ターンブル英語: Malcolm Bligh Turnbull1954年10月24日 - )は、オーストラリア政治家。第29代オーストラリア首相オーストラリア自由党前党首。

経歴[編集]

2004年10月、シドニーの東部郊外のウェントワース選挙区 (Division of Wentworth) から下院議員に選出された。

政界に入る前は法廷弁護士投資銀行家、オーストラリア共和制運動(Australian Republican Movement) のリーダーだった。

2007年11月の連邦選挙で与党保守連合が敗北したとき、環境大臣 (Federal Minister for Environment and Water Resources; 環境水資源の連邦大臣) であった。

2007年12月、ジョン・ハワード引退後の党首選挙でブレンダン・ネルソンに僅差で敗れ、保守連合の財政スポークスマン(影の内閣財務大臣)となった。

2008年9月、党首選挙にてネルソンを破り自由党党首に就任。翌2009年、党首選挙でトニー・アボットに党首の座を譲ったものの小差であり、国民の間での支持率は高いままだった[1]。2013年9月に発足したアボット政権では通信大臣に就任。

2015年になってアボットの経済政策や指導力に対する疑問が高まり、首相や与党の支持率は低下していた[2]。これを政権奪取の好機と見たターンブルは、アボットに対して退陣を迫り[3]、通信大臣を辞任。代わりに党首選挙を実施するようアボットに要求し、9月14日に実施された選挙に54対44で勝利。自由党党首に返り咲き[1]、翌15日に首相に就任した[4]

2015年12月、2018年1月に来日。

2017年、休暇中に船外機付きボートを操縦する姿が新聞に掲載されたが、後日、救命胴衣を着けていなかったことがニューサウスウェールズ州条例に抵触したとして、同州より250オーストラリアドルの罰金を科せられている[5]

2018年、総選挙を翌年に控えた中で支持率低迷に悩まされ与党内で不満が強まっていった。8月21日の自由党党首選ではピーター・ダットン英語版内相に勝利したものの僅差で、その後も与党内の不満は収まらず閣僚10名が辞任を表明する事態となり[6]、24日には党首解任案が提出され辞任に追い込まれた[7]

政策・主張[編集]

所属するオーストラリア自由党保守系の政党であるが、ターンブル自身はリベラル派であるとされており、本人も2015年の党首選挙後の会見の中で「本当の意味でのリベラルな政府を目指す」と述べている[8]

オーストラリアにおける共和制導入を支持しており[9] [10]、 アボット前首相が復活させた「ナイト」と「デイム」の称号についても時代遅れであるとして授与の廃止を発表した[11]。しかし、エリザベス女王(当時)や英国王室との関係は良好だった。

ターンブルは中国について「オーストラリアと抗日で戦った最も長い同盟国だ」と述べ、最大の貿易相手国である中国を最重視する親中派と見られている[12]。一方で、日米豪印の枠組みを継続させ、中国がオーストラリア国内で権益買収の動きを見せた際は反対するなど、あくまで豪州の国益を棄損しない限り中国の台頭を歓迎する「現実主義的」親中の立場であると一部から評価されることもある[13]。ただし、中国によるダーウィン港英語版の99年租借を認めたことは駐留拠点が近い米国から苦言を呈されることもあった[14]

2015年12月18日に来日。首相就任後の東アジアで最初の訪問国に日本を選んだ[15]安倍晋三首相との会談では、日本の捕鯨に対して深い失望を伝える一方、日本の平和安全法制の支持、自衛隊オーストラリア軍の共同訓練の推進を表明し、中国に対しては南シナ海での埋め立ての停止を求めることで一致し、東シナ海での動きに強い反対を示した[16]

2017年1月28日2016年アメリカ合衆国大統領選挙により誕生したトランプ大統領と電話会談を行い、オバマ政権との間で結んだ難民の受け入れに関する合意を履行するように迫った[17]

2016年オーストラリア海軍の次期主力潜水艦建造をめぐりフランス企業を選定。アタック級潜水艦の建造計画がスタートした。しかし2021年に入るとオーストラリアはアメリカとの関係を重視してフランスとの契約を破棄してアメリカ製原子力潜水艦の導入を決定。フランスとの契約を主導していたターンブルは強く現体制を非難した[18]

家族・親族[編集]

息子は、中国政府のアドバイザーとして活躍していた中国共産党党員結婚している[19]

出典[編集]

  1. ^ a b “豪新首相にターンブル氏 党首選を買って出たアボット氏敗れる、内閣刷新へ”. 産経新聞. (2015年9月14日). https://www.sankei.com/article/20150914-6DBFUN7EWFP6PCMXRQFTZRZSJU/ 2015年9月14日閲覧。 
  2. ^ “求心力低下の豪アボット首相、内閣改造観測を否定”. ロイター (ロイター). (2015年9月11日). http://jp.reuters.com/article/2015/09/11/australia-politics-idJPL4N11H1NG20150911 2015年9月14日閲覧。 
  3. ^ “豪与党自由党が14日に党首選、アボット首相再選に自信”. ロイター (ロイター). (2015年9月14日). http://jp.reuters.com/article/2015/09/14/australia-politics-election-abbott-idJPKCN0RE0TB20150914 2015年9月14日閲覧。 
  4. ^ “オーストラリア ターンブル首相が就任”. NHK. (2015年9月15日). オリジナルの2015年9月15日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150915130536/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150915/k10010235471000.html 2015年9月15日閲覧。 
  5. ^ ターンブル豪首相、休暇中に罰金 救命胴衣着けずボート操船産経新聞社・産経ニュース(2017年12月30日)2018年1月20日閲覧
  6. ^ 豪首相、党首再選も閣僚10人辞意で危機深刻化”. www.afpbb.com. 2020年2月25日閲覧。
  7. ^ 豪で首相交代、支持率落ち込み与党内で「反乱」」『BBCニュース』、2018年8月24日。2020年2月25日閲覧。
  8. ^ “豪首相交代 対日関係の行方に注目”. NHK. (2015年9月15日). http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150915/k10010234681000.html 2015年9月15日閲覧。 
  9. ^ “豪首相、ナイトの爵位廃止 前首相の復活決定覆す”. 日本経済新聞. (2015年11月2日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM02H4Q_S5A101C1FF8000/ 2015年11月16日閲覧。 
  10. ^ “豪で君主制廃止論再燃? 首相「女王退位後に共和制移行を」”. AFPBB News. (2016年12月19日). https://www.afpbb.com/articles/-/3111776 2018年1月2日閲覧。 
  11. ^ “ナイトの称号、「時代遅れ」で廃止に オーストラリア”. CNN Japan. (2015年11月3日). http://www.cnn.co.jp/world/35072902.html 2015年11月16日閲覧。 
  12. ^ “【豪首相交代】安倍首相の「最高の友」降板 中国を「抗日戦の同盟者」としたターンブル氏就任で日豪蜜月どう変わる?(2/4ページ)”. 産経ニュース. (2015年9月15日). https://www.sankei.com/article/20150915-FDDU4DQBDRKALERCH5MJRD5N3Y/2/ 2015年9月15日閲覧。 
  13. ^ “【豪首相交代】安倍首相の「最高の友」降板 中国を「抗日戦の同盟者」としたターンブル氏就任で日豪蜜月どう変わる?(3/4ページ)”. 産経ニュース. (2015年9月15日). https://www.sankei.com/article/20150915-FDDU4DQBDRKALERCH5MJRD5N3Y/3/ 2015年9月15日閲覧。 
  14. ^ “豪、中国企業に北部ダーウィンの港湾を99年間貸与 海兵隊駐留の米国は反発”. 産経ニュース. (2016年3月31日). https://www.sankei.com/article/20160331-XGBVXCULNJIAJCLITHFLU5MZUA/ 2018年2月9日閲覧。 
  15. ^ “最初は中国でなく日本に…豪新首相、18日来日”. 読売新聞. (2015年12月14日). https://web.archive.org/web/20151214032803/http://www.yomiuri.co.jp/politics/20151213-OYT1T50010.html 2015年12月19日閲覧。 
  16. ^ “日豪首脳会談 首相、潜水艦の共同開発働き掛け”. 東京新聞. (2015年12月19日). http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201512/CK2015121902000146.html 2015年12月19日閲覧。 
  17. ^ トランプ氏、豪首相との電話会談を「最悪」と打ち切り=米紙 BBC(2017年2月2日)2018年1月20日閲覧
  18. ^ 潜水艦建造で現政権批判 核拡散防止上の課題指摘―豪前首相”. 時事通信社 (2021年9月30日). 2021年9月30日閲覧。
  19. ^ 「豪新首相、バランス外交へ――前政権の『親日』修正どこまで」『日本経済新聞』46557号、日本経済新聞社、2015年9月27日、15面。

外部リンク[編集]

公職
先代
トニー・アボット
オーストラリアの旗 オーストラリア連邦首相
第29代:2015 - 2018
次代
スコット・モリソン
党職
先代
ブレンダン・ネルソン英語版
トニー・アボット
オーストラリア自由党党首
第14代:2008年 - 2009年
第16代:2015年 -
次代
トニー・アボット
スコット・モリソン