マウザー M1918

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Mauser M1918
Mauser Tank-Gewehr M1918.jpg
Mauser M1918
種類 対戦車ライフル
製造国 ドイツの旗 ドイツ帝国
設計・製造 マウザー
仕様
口径 13 mm
銃身長 0.98 m (短銃身型:0.88 m)
ライフリング 4条右回り
使用弾薬 13.2 mm TuR
装弾数 1発
作動方式 ボルトアクション
全長 0.98 m (短銃身型:0.88 m)
重量 15.8 kg (二脚除く)
銃口初速 805 m/s
最大射程 500 m
有効射程 100 m
歴史
設計年 1916-1918年
製造期間 1918年
配備期間 1918年
配備先 ドイツ帝国
関連戦争・紛争 第一次世界大戦
製造数 15,800 挺
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マウザー M1918[1]タンクゲヴェールM1918ドイツ語Mauser Tankgewehr M1918)は、ドイツの開発した対戦車兵器である。

概要[編集]

第一次世界大戦の際に開発された、世界初の対戦車ライフルであり、現代の対物ライフル(anti-materiel rifle:アンチマテリアルライフル)の始祖である。

装甲貫徹力は距離65 mで25 mmと、当時の英仏戦車の装甲を余裕で撃ちぬく威力があったが、後の対戦車ライフル同様、貫通後に乗員などに当たらなければ致命的な損害は与えられなかった。また、歩兵用小銃を単純に大型化した構造のために反動制御性等に支障が多く、実用性に問題があったが、それでも手榴弾地雷などを用いた決死の肉薄攻撃に比べれば遥かに有用性はあり、最終的に15,800挺が生産されて使用された。

第一次大戦後、ドイツはベルサイユ条約により大口径の小銃の保有は禁止されたが、M1918は使用弾薬と共に大量に倉庫に保管され続けており、1925年の段階で確認されただけでも約800挺が保管されていた。ナチスドイツ軍は新型の対戦車ライフルを開発して装備したため、M1918は再軍備後の制式兵器としては使われていないが[2]、予備兵器を動員したものとして第二次世界大戦末期に使用された例がある、とする文献もある。

開発[編集]

1916年ドイツ軍はイギリス軍の投入した新兵器である戦車の脅威に直面した。手榴弾地雷、工兵用爆薬を用いた肉薄攻撃は危険も大きく、火器による遠距離からの対抗手段が求められ、ドイツ軍ではタングステンを弾芯に用いた小銃用徹甲弾を開発して使用したが、連合軍側の戦車も、今後は装甲厚を増加させた新型が多数投入されることは確実とされ、歩兵用小銃の7.92mm口径を上回る大口径徹甲弾とそれを用いる火器が必要と結論された。

これに従い、マウザー社に歩兵用の大口径対戦車ライフルの開発が依頼された。使用弾薬の口径について13mmと15mmのどちらを選択するべきか、という点について結論が得られぬまま開発は進められたが、マウザー社では暫定的にポルテ社(Polte Armaturen- und Maschinenfabrik OHG)との共同開発により13 mm×92 セミリムド[3]の開発を進め、1917年12月には口径は13mmと決定され、まずは可能な限り早くこれを使用する小銃を開発・製造して前線に投入すること、及びこの弾薬を使用する機関銃を開発して実用化することが求められた[4]

1918年1月10日には新型弾薬が完成、直ちにこれを使用する小銃が製作された。「T-Gewehr」(Tank-Gewehr:戦車小銃の意)と仮称されたこの小銃は当時のドイツ軍の主力歩兵銃であるGew98の設計をほぼそのまま拡大したもので、重量は約17 kgあり、この重量を支えるためにMG 08/15機関銃用の二脚が装備されていた。原型の図面の数値を変更しただけに等しいこともあり、T-Gewehrは約10日後の1月19日には完成して最初の試射が行われた。試験の結果は軍の担当者を満足させるもので、実用試験を待たずに即座に30,000挺が発注されている。

1918年3月初頭には最初の生産分が前線に送られ、実用に際しても問題は無いとの報告が送られた。同年3月31日、T-Gewehrは「Mauser Tankgewehr M1918」として正式に採用された。マウザー社には「可能な限り早急に大量生産し供給せよ」との通達が出されたが、弾薬も含めて本格的な生産体制が整ったのは同年5月のことである。

実戦運用の結果から大きな問題とされた、反動の大きさと連続射撃能力の不足(装弾数の少なさ)を解消するため、銃床にスプリングを用いた反動緩和装置を備え、5発入りの弾倉を装備する改良型が開発されたが、試作品が完成したのは1918年の秋のことで、程なく戦争が終結してしまったため、試作のみに終わった。

構成[編集]

鹵獲したM1918を持つ英連邦軍(ニュージーランド軍)の兵士。人間と比較したその巨大さがわかる。
(1918年8月26日の撮影)

マウザーM1918は前述のようにGew98のボルト部分を7.92mm弾用から13mm弾用に拡大し、それに合わせて各部の寸法を大型化したもので、原型の曲銃床に加えて拳銃型銃把(ピストルグリップ)を付け、専用の二脚[5]が装備されている他は曲銃床型のボルトアクションライフルと全く同じ機構の銃である。

想定最大有効射程は500m、装甲貫通能力は公式の試験によれば250mで角度0度の鋼鉄板に対して25mmである[6]

ボルトアクション方式の小銃をそのまま大型化したデザインであるため、発射時の強烈な反動は射撃手の肩にそのまま伝わることになり、銃をしっかりと保持していないと反動を受け止めきれずに大きく跳ね上がる銃により負傷する危険があり、その強烈な反動から「Zweishuss Gewehr英語:two shot rifle):二発撃てる小銃、の意)」とも呼ばれた。これは「一発目を右肩で構えて撃つと右肩を壊し、二発目で左肩で構えて撃つので左肩も壊し、結果、二発しか撃てない」という意味である。これは比喩にしても、実際に肩を痛める兵士は多く、正しく構えても数発の射撃で頭痛か眩暈に襲われたという。

なお、あまりに長大で扱いづらいために、銃把と二脚を外して銃身を10cmほど縮めた短縮形も現地製造されたが、原形以上に反動の制御が難しく、実用性は低かった。

脚注[編集]

  1. ^ 日本では独特の訛った発音でモーゼル M1918とも呼ばれる。
  2. ^ ナチス政権下での再軍備後に開発された新型対戦車ライフル、PzB38は口径7.92mmで、弾薬の直接の互換性はないが、「訓練用」として13mmx92弾を使用できる銃身が用意されていた。
  3. ^ なお、第二次世界大戦で用いられた航空機銃として有名なドイツのMG131やそのライセンス生産品である日本の二式十三粍旋回機銃に使われていたのは13 mm×64 ベルテッド弾で、別物である。
  4. ^ 13 mm×92弾を使用する機関銃はMG08重機関銃を拡大したものとして設計・開発され、1918年8月に「MG18」として完成したが、程なく戦争が終結したため、実戦には投入されなかった。
  5. ^ 当初はMG08/15機関銃用の二脚、もしくは三脚架及び橇としても使用できる四脚銃架が転用される予定であったが、いずれも実射の結果問題を生じたため、各部が強化された新設計の専用二脚が装備された。
  6. ^ 実戦での運用結果によれば実際の有効射程は300m以下で、動く目標に対して確実に命中させ、且つ装甲を貫通できるには100mが限度であったとされる。

参照元[編集]

関連項目[編集]