マイケル・サンデル
マイケル・サンデル(英: Michael J. Sandel、1953年3月5日 - )は、アメリカ合衆国の政治哲学者、コミュニタリアン。ハーバード大学教授。コミュニタリアニズム(共同体主義)の代表的論者。論述の特徴は共通善を強調する点にある。また共和主義者を名乗ることも増えている。
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[編集] 来歴
ミネアポリス生まれ。1975年にブランダイス大学卒業後、ローズ奨学生としてオックスフォード大学ベリオール・カレッジで学びPh.D.(博士号)を取得。オックスフォード大学での指導教授はチャールズ・テイラー、ロナルド・ドウォーキン、アラン・モンテフィオーレ。1980年からハーヴァード大学政治学部教授。日本生まれのアメリカの社会学者キク・アダット(Kiku Adatto; 日本名だが、日系でもアジア系でもない)と結婚し2男をもうける。サンデルは思想的にコミュニタリアンの立場をとっており、テイラー、アラスデア・マッキンタイア、ウォルツァーらと共にジョン・ロールズを批判したことでも有名である。
民主党のクリントンから要請されて意見具申をした。2002年から2005年まで、ジョージ・W・ブッシュ大統領が設置した生命倫理委員会(The President's Council on Bioethics)の委員を務めた。
[編集] ハーバード白熱教室
『ハーバード白熱教室』(Justice with Michael Sandel)は、WGBHが制作したサンデルの「政治哲学」講義を収録したテレビ番組。ハーヴァード大学の授業がメディアに公開されるのは初となる。講義では例題や実例を提示しつつ、学生に難題を投げかけ議論を引き出し、自身の理論を展開する。
日本では日本語版として、NHK教育テレビで2010年4月4日から6月20日まで毎週日曜18時から放送された。2ヶ国語放送で副音声は英語原音。各レクチャーの後に友人の千葉大学教授の小林正弥による解説が挿入された。2010年8月に来日し、同月25日に東京大学、安田講堂で『ハーバード白熱教室@東京大学 日本で正義の話をしよう』が収録され、9月26日のETV特集で90分編集版が、また10月4日と11日の2週に分けて教育テレビで120分編集版が放送、10月17日にはインタビューも交えた『ハーバード白熱教室の衝撃』も放送。2010年11月21日より日本各地の大学で行われている講義を取り上げる『白熱教室JAPAN』が放送されている。
[編集] 講義内容
| 話数 | 主題 | レクチャー | 特記事項 | 日本語版初回放送日 |
|---|---|---|---|---|
| 第1回 | 殺人に正義はあるか | 1 犠牲になる命を選べるか 2 サバイバルのための「殺人」 |
トロッコ問題 ジェレミー・ベンサム ミニョネット号事件 |
2010年4月4日 |
| 第2回 | 命に値段をつけられるのか | 1 ある企業のあやまち 2 高級な「喜び」 低級な「喜び」 |
ジョン・スチュアート・ミル フォード・ピント事件 |
2010年4月11日 |
| 第3回 | 「富」は誰のもの? | 1 課税に「正義」はあるか 2 「私」を所有しているのは誰? |
ロバート・ノージック | 2010年4月18日 |
| 第4回 | この土地は誰のもの? | 1 土地略奪に正義はあるか 2 社会に入る「同意」 |
ジョン・ロック | 2010年4月25日 |
| 第5回 | お金で買えるもの 買えないもの | 1 兵士は金で雇えるか 2 母性売り出し中 |
徴兵制度 ベビーM事件 |
2010年5月2日 |
| 第6回 | 動機と結果 どちらが大切? | 1 自分の動機に注意 2 道徳性の最高原理 |
イマヌエル・カント | 2010年5月9日 |
| 第7回 | 嘘をつかない練習 | 1 「嘘」の教訓 2 契約は契約だ |
モニカ・ルインスキー事件 | 2010年5月16日 |
| 第8回 | 能力主義に正義はない? | 1 フェアなスタートは何か? 2 何が我々にふさわしい報いなのか? |
ジョン・ロールズ | 2010年5月23日 |
| 第9回 | 入学資格を議論する | 1 私がなぜ不合格? 2 最高のフルートは誰の手に |
アファーマティブアクション アリストテレス |
2010年5月30日 |
| 第10回 | アリストテレスは死んでいない | 1 ゴルフの目的は歩くこと? 2 奴隷制に正義あり? |
ケーシー・マーティン 奴隷制 |
2010年6月6日 |
| 第11回 | 愛国心と正義 どちらが大切? | 1 善と善が衝突する時 2 愛国心のジレンマ |
アラスデア・マッキンタイア ロバート・E・リー |
2010年6月13日 |
| 第12回 | 善き生を追求する | 1 同性結婚を議論する 2 正義へのアプローチ |
同性結婚 | 2010年6月20日 |
| ハーバード白熱教室@東京大学 | 1 イチローの年俸は高すぎる? 2 戦争責任を議論する |
イチローとバラク・オバマ 日本への原子爆弾投下 |
2010年9月26日 |
[編集] 声の出演
- 日本語版
| NHK教育テレビ 日曜18:00枠 | ||
|---|---|---|
| 前番組 | 番組名 | 次番組 |
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ハーバード白熱教室
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[編集] マイケル・サンデル 究極の選択
- マイケル・サンデル 究極の選択「大震災特別講義 〜私たちはどう生きるべきか〜」
2011年4月16日 21時 - 22時15分にNHK総合テレビで放送。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)について、東京、ボストン、上海の3つの地域から同時中継しディスカッションしていく内容。出演は高畑淳子、高田明、高橋ジョージ、石田衣良など。
- マイケル・サンデル 究極の選択「震災復興 〜誰が金を払うのか〜」
2011年9月10日 21時 - 22時15分にNHK総合テレビで放送。東日本大震災からの復興に関する補償問題などについて、東京、ハーバード大学、上海復旦大学の3か所から同時中継しディスカッションしていく内容。出演は森本正治、青木冨貴子、折原美樹など。
- マイケル・サンデル 究極の選択「ビンラディン殺害に正義はあるか」
2011年9月23日 22時 - 23時15分にNHK総合テレビで放送。テロリズムをテーマにし、2011年5月にアメリカ政府がオサマ・ビンラディンを殺害した事例、2005年6月にアフガニスタンでアメリカ軍兵士がテロリストへの通報を防ぐために民間人を殺害するか判断した事例などを引き合いにディスカッションが進められる内容。同時中継先および出演者は前回と一緒。なお、東海・北陸地方では以下の番組を放送するため、翌日の10:05 - 11:20に振替放送を行った。
- マイケル・サンデル 究極の選択「お金で買えるもの 買えないもの」
2012年2月18日 21時 - 22時15分にNHK総合テレビで放送。
[編集] 評価
[編集] ドイツ
- ドイツでは、いわゆるフランクフルト学派(アメリカ亡命を果たしたユダヤ人学者・ドイツ国内ユダヤ人サークル)の第2世代、とりわけハーバーマス(社会学者)が、サンデルの思想に共感を寄せた。そのためドイツでは、サンデルの著作もハーバーマスによって紹介されている[1]。
- 地域社会の公共性の基盤となる思想を米国から逆輸入し、サンデルらの主導するコミュニタリアニズムに頼ったドイツでは、フランクフルト学派の企図した通り、かつてテニアスが提唱した伝統的な「民族共同体」(Volksgemeinschaft) 的着想を破壊することに成功を収めた。しかし、ドイツの地域共同体からは自国の歴史・文化・伝統が失われた。そのため、価値の相対性を認めるコミュニタリアニズムの思想は、むしろ「人々の繋がり・関係性を破壊する」思想であり、「国内の政情を混乱に落としめる」ものとして警戒されている。
- ドイツの政治学者レーゼ=シェーファーは、移民が急速に増加する傾向にある現在、ハーバーマスが米国から輸入したコミュニタリアニズムが、米国的な文化多元主義の発想とジンテーゼを起こしつつあるとした上で、「共有されるべき価値基準を持たないまま様々な文化圏から多様な宗教や多元的な道徳観念が持ち込まれるならば、社会の内部に無数のゲットーが形成されてしまう。」と次のように結論している。
- 「(サンデル的なコミュニタリアニズムの発想は、わが国ドイツにおいて)集団的排斥主義を帰結しかねない。これは、集団個別主義/集団至上主義的なゲットーの形成、つまり、排他的で特殊な『市民感覚・市民感情』によって結ばれたゲットーの形成を促す。そのため、民主主義的な公共性そのものの崩壊をもたらしかねない。」
- "... Das Resultat wäre ein Gruppenautoritarismus, der bewirken würde, dass das demokratische Gemeinwesen zerfällt "in Kulturghettos der Kollektive, die jeweils ihren eigenen, d.h. partikularistischen 'Bürgersinn' haben."[2]
[編集] シンプソンズ
アニメ「シンプソンズ」の主役ホーマー・シンプソンが勤務する原子力発電所の上司モンティ・バーンズのモデルがサンデルではないかという噂が存在する。実際、同作の脚本にハーバード大出身の脚本家がスタッフとしてクレジットされており、バーンズ氏の身ぶり手ぶりがサンデルの講義の様子と酷似しているという噂を本人も知っているが「直接、問い合わせたことが無いので真相はわからない」と答えている[要出典]。
[編集] 著書
[編集] 単著
- Liberalism and the Limits of Justice, Cambridge University Press, 1982, 2nd ed., 1998.
- Democracy's Discontent: America in Search of a Public Philosophy, Harvard University Press, 1996.
- Public Philosophy: Essays on Morality in Politics, Harvard University Press, 2005.
- 『公共哲学――政治における道徳を考える』 (鬼澤忍訳、ちくま学芸文庫、2011年6月)
- The Case against Perfection: Ethics in the Age of Genetic Engineering, Harvard University Press, 2007.
- 『完全な人間を目指さなくてもよい理由――遺伝子操作とエンハンスメントの倫理』(林芳紀・伊吹友秀訳、ナカニシヤ出版、2010年)
- Justice: What's the Right Thing to Do?, Farrar Straus & Giroux, 2009.
- 『これからの「正義」の話をしよう いまを生き延びるための哲学』(鬼澤忍訳、早川書房、2010年、ISBN 978-4152091314)
[編集] ハーバード教室関連
- 『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業〈上・下〉』 (ISBN 9784152091680 & ISBN 9784152091697)
- NHK「ハーバード白熱教室」制作チーム、小林正弥、杉田晶子訳、早川書房、2010年
[編集] 編著
- Liberalism and its Critics, Blackwell, 1984.
- Justice: A Reader, Oxford University Press, 2007.
[編集] DVD
[編集] 日本語吹き替え版
- 『NHK DVD ハーバード白熱教室』
- DVDBOX - POBD-25901 / 単巻(全6巻) POBD-25008〜25013
- 2010年12月8日発売。BOX特典として『ハーバード白熱教室@東京大学』を収録。
[編集] ベースボールファンとして
サンデルは、アメリカ合衆国MLBのボストン・レッドソックスのファンとしても知られ、野球好きの顔を持っている。またかねてより日本野球にも興味を示していた。それを受けて日本のプロ野球球団の読売ジャイアンツが2011年3月25日の公式戦開幕試合(対横浜ベイスターズ戦/東京ドーム)の始球式ゲストとしてサンデルを招聘することを予定していた[3]。東日本大震災の発生によってこの開幕戦は中止となり、開幕自体が4月12日に延期された上、東京ドームでの試合も4月中には行われなかった(東日本大震災によるスポーツへの影響#プロ野球を参照)。
ジャーナリストや政治家志望だった若かりし頃に少年野球のコーチを務めており、自チーム選手のエラーをカバーしてアウトを捕った場合にスニッカーズをチーム全員に振舞ってインセンティブ(モチベーションの向上)を上げていたことが新聞記事に紹介された。
[編集] テレビ出演
- たけしのIQ200〜世界の天才が日本を救う〜(日本テレビ系、2011年2月21日、日本語吹替:山寺宏一)
[編集] 脚注
- ^ Michael J. Sandel: Plädoyer gegen die Perfektion-Mit einem Vorwort von Jürgen Habermas-, 2008
- ^ Walter Reese-Schäfer: "KOMMUNITARISMUS", Campus Verlag, 2000.
- ^ 『正義』の哲学者・サンデル氏が巨人開幕戦の始球式へ スポーツ報知 2011年3月5日閲覧
[編集] 外部リンク
- ハーバード白熱教室 - NHK
- ハーヴァード大学政治学部プロフィール(英語)
- "Justice with Michael Sandel"(英語) - 上の番組の英語版。すべて視聴できる。
- 「サンデル教授の個人レッスンを受けて来ました!」、「サンデルとの面会こぼれ話」 - 小川仁志のブログ