ポルシェ・917

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ガルフ・オイルカラーの917K(グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにて)

ポルシェ917Porshe 917 )はポルシェが開発し、1969年から使用したプロトタイプレーシングカーFIA国際メーカー選手権のグループ4(スポーツカークラス)に合わせてわずか10ヶ月で開発され、ホモロゲーション取得のためクローズドボディの25台が生産され140,000ドイツ・マルクで市販された。

のちにはカナディアン-アメリカン・チャレンジカップ用にオープンボディのポルシェ917PAスパイダー、ポルシェ917/10スパイダー、ターボチャージャーを搭載したポルシェ917/10K、ポルシェ917/30Kが製造された。ターボチャージャー搭載のポルシェ917/10K、ポルシェ917/30Kは圧倒的な強さを誇った。

目次

初期型の概要 [編集]

917(1969年ニュルブルクリンク1000km)

マシン開発の経緯 [編集]

1968年、ポルシェは国際メーカー選手権にグループ6(3リッター以下)の908を投入した。しかし、グループ4(5リッター以下)のフォード・GT40と勝ち星こそほぼ互角であったが、力負けしたという印象があった。

1969年よりグループ4規定が緩和され、1年間の生産義務台数が50台から25台に半減された。ポルシェはこのノルマであれば達成可能であると判断し、ライバルと同じ土俵で勝負するため、排気量約5,000ccの917を設計・製造し1969年3月ジュネーヴ・モーターショーで発表した。

エンジン [編集]

917Kの910/10型F12エンジン

新設計の空冷ボアφ85×ストローク66mm、4,494cc水平対向12気筒912型エンジンで、当初から520馬力/8,000rpm、46kgm/6,800rpmを発揮した。水平対向6気筒エンジンを2基直列につないでその中心から出力を取り出す構成の「センターテイクオフ方式」を採用した。この構成はクランクシャフトの長さを短くできねじりに対して強くなる利点があり、この手法はポルシェではNA3,500ccのF1時代にV12フットワークに供給したエンジンや、メルセデスの耐久レース車C291などに採用例があるが、重量増を招き、かつ補機が上に乗るため目論見ほど重心を低くすることはできず、ポルシェ917以外では成功しなかった。

冷却ファンはクランク中央からギア駆動されるFRP製ファンにより所要馬力17英馬力、エンジン回転数が8,400rpmの時7,400rpmで回転し、2400L/秒の空気を送風するという。

1971年には、カナディアン-アメリカン・チャレンジカップ(Can-Am)向けの917PAスパイダー向けに、更なる高出力化を狙った6.6L/750馬力の水平対向16気筒エンジンも試作されたが、エンジンの全長が長くなった事でシャーシ全体を延長する必要が生じた為に、運動性の悪化を招いた事や、後発の912型エンジンにターボチャージャーを追加した912/10型エンジンが、このF16エンジンよりも高出力であった事から、実践投入は行われることなく終わった。

シャーシ [編集]

ポルシェ908と同様のアルミ合金パイプによるスペースフレームを採用し、フレーム自体の重量はわずか47kgに過ぎない。サスペンションスプリング、ステアリングラック・アンド・ピニオン、ブレ−キハブはチタン製、ブレーキディスクはベリリウム製。

バリエーション [編集]

917LH (4.9L)
917LH (4.9L)
917K
917K
917/20
917/20
917PA
917PA
917/10K
917/10K
917/30
917/30

国際メーカー選手権 [編集]

917LH [編集]

1969年のル・マン24時間レースで登場したロングテールタイプ。LHはドイツ語で「尾が長い」(Lang Heck )の意。直線の長いサルト・サーキットでの走行安定性向上を狙い、通常のボディよりリアオーバーハングを490mm延長してある。

1970年にはJWオートモーティブの助言により4,907ccで575-590英馬力/8,400rpmにパワーアップした。1971年にはリアボディカウルのリアホイールハウスに空力性能向上を目指したスパッツを取り付けた。

917K [編集]

1970年より単に917と呼ばれていたショートテール版に917Kの形式名が付与された。"K"はドイツ語で「短い」(Kurz )の意。前年度のマシンからボディフォルムを一新し、ポルシェ伝統のクーペフォルムからボディ後端を跳ね上げてダウンフォースを確保する斬新なリアカウルに変更。このリアカウル変更に伴いフロントカウル形状も左右スクエアな形状に変更して、仰角変化によるダウンフォース変化を少なく抑えるようにした。エンジンはLHと同じく4,907cc、トランスミッションは4速マニュアルに換装した。

1971年には4,998ccで630馬力のエンジンを搭載。リアカウルエンドに垂直フィンを設置してダウンフォースによる整流効果を狙い、ストレート走行時のハンドリング安定性とトップスピードの引き上げが図られた。

917/20 [編集]

空気抵抗削減を狙い、ワイドボディを採用した実験的モデル。大柄な外見から「雌豚ベルタ」(Berta the Sow )というあだ名が付けられた。1971年のル・マン24時間レースに出走した時にはボディ全体がピンク色に塗装され、各所に豚肉の部位が表記された。

カナディアン-アメリカン・チャレンジカップ [編集]

917PAスパイダー [編集]

カナディアン-アメリカン・チャレンジカップ用オープンボディで、908スパイダーと同様のカウルを使用したグループ7版。エンジンは917と同じ4,494ccだが590英馬力/8,500rpmにパワーアップされ、ボディーは740kgに軽量化されている。"PA"は、ポルシェ・アウディの略で、当時のアメリカのポルシェの販売網は両車を一緒に扱っていた。

917/10スパイダー [編集]

カナディアン-アメリカン・チャレンジカップ用オープンボディ。4,998ccで630馬力のエンジンを搭載。

917/10K [編集]

カナディアン-アメリカン・チャレンジカップ用オープンボディで、空冷水平対向12気筒DOHC4,998ccにターボチャージャーを付けて900-1000馬力を発揮するエンジンを搭載。前年の917/10とノーズ上面のカーブ形状が異なりフロントラジエーターの開口部を大きくすると同時にリアウイングを使用しターボ付きエンジンの発生する強力な出力に合ったダウンフォースを確保した。ターボチャージャー搭載車に付与された"K"は、ドイツ語で「過給機」(Kompressor )の意。

917/30K [編集]

カナディアン-アメリカン・チャレンジカップ用オープンボディで、1,100馬力を発揮する空冷水平対向12気筒DOHC5,374ccのターボチャージャー付エンジンを搭載。前年度の917/10Kの進化版。

その他 [編集]

917/16スパイダー [編集]

1971年にカナディアン-アメリカン・チャレンジカップ参戦を睨み試作された水平対向16気筒を搭載したもの。912/10ターボエンジンの成功により、実戦投入はされなかった。現在、シュトゥットガルトポルシェミュージアムに現存機が展示されている。

レース戦績 [編集]

1969年
国際メーカー選手権への参戦初年度は主戦の908と併用されつつ、実戦で開発が続けられた。当初はエンジンパワーにシャーシが追いつかずハンドリングに問題があり、最終戦オーストリアの1勝に終わった。
カナディアン-アメリカン・チャレンジカップには、シリーズ後半戦から917PAスパイダーで参戦。ポルシェのディーラーチームとして出場し、ジョー・シフェールがシリーズ総合4位を獲得した。
1970年
国際メーカー選手権でのワークス参戦を休止。前年までフォード陣営にいたジョン・ワイヤー率いるJWオートモーティブと提携し、レース活動を委託した。また、セミワークス的なポルシェ・コンストルクチオネン・ザルツブルクからも参戦した。JWオートモーティブによりショートテールの917Kに改良されたのが功を奏し、国際メーカー選手権のチャンピオンシップ獲得。ル・マン24時間レースではポルシェにとって初めての総合優勝を果たした。
1971年
国際メーカー選手権では前年度に引き続き、マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得した。連覇を果たしたル・マン24時間レースでは、走行距離5,335.313Kmを達成。この記録は2010年に塗りかえられるまで39年の間最長であった。
また917/10スパイダーをロジャー・ペンスキー・レーシングに委託してカナディアン-アメリカン・チャレンジカップにも参戦。優勝はできなかったが、シフェールがシリーズ総合4位を獲得した。
1972年
メーカー選手権が世界メーカー選手権への名称変更に伴い、車両規定が3,000cc以下に変更になり、917は世界メーカー選手権に参戦できなくなった。そのためカナディアン-アメリカン・チャレンジカップへ集中して参戦するようになった。ターボチャージャーを搭載した917/10Kを投入し、ジョージ・フォルマーが5勝してシリーズチャンピオンを獲得した。
1973年
カナディアン-アメリカン・チャレンジカップシリーズ用に917/10Kより大幅に馬力を増大させたポルシェ917/30Kを追加。マーク・ダナヒューが全8戦中6勝しシリーズチャンピオンを獲得した。残りの2勝も917/10Kが挙げ、シリーズ完全制覇を成し遂げた。
しかし、翌年から燃費に関するレギュレーション変更が行われることになり、ポルシェはシリーズからの撤退を決め、917のレース活動も最後となった。

日本での戦績 [編集]

脚注 [編集]


参考文献 [編集]

  • Racing On 2008年2月号 特集:ポルシェ モータースポーツ」 イデア 2008年
  • 小林彰太郎『世界の自動車-5 ポルシェ』二玄社
  • 『われらがポルシェ ポルシェなんでも事典』講談社

関連項目 [編集]

ポルシェ A.G. 車両年表 1960年-
タイプ 1960年代 1970年代 1980年代 1990年代 2000年代 2010年代
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3
911(スポーツ) 901 930 964 993 996 997 991
スポーツ
356 928
エントリー 912 →E 924 924S 968 ケイマン(987c) →(981c)
914 944 ボクスター(986) →(987) →(981)
セダン パナメーラ
SUV カイエン(955) →(957) →(958)
高性能車 550 904 959 カレラGT
コンセプトカー: 356/1 | 114 | 695 | 901 | EA266 | 989 | パナメリカーナ | 918
モータースポーツ: 64 | 360 | 550 | 718 | 787 | 804 | 904 | 906 | 907 | 908 | 909 | 910 | 914-6 GT | 917 | 934 | 935 | 936 | 953 | 956 | 961 | 962 | GT1 | WSC95 | RSスパイダー
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