ポリ乳酸

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ポリ乳酸の構造

ポリ乳酸(ポリにゅうさん、polylactic acid、polylactide、PLA)は、乳酸エステル結合によって重合し、長くつながった高分子である。ポリエステル類に分類される。現在、農産物由来の持続可能な素材として注目を集めている。

種類[編集]

乳酸は1つの不斉炭素を持ち、L 体と D 体の2種が存在する。L 体のみを重合させたものはポリ-L-乳酸 (poly-L-lactic acid, PLLA)、D 体のみを重合させたものはポリ-D-乳酸 (poly-D-lactic acid, PDLA) と呼ばれる。これらはその立体配置により、互いに逆回りのらせん構造をとることが知られている。

PLLA と PDLA を混合したものは、そのらせん構造がうまく噛み合って耐熱性の高い樹脂となることが知られている。これをステレオコンプレックス型ポリ乳酸 (SC-PLA) と呼ぶ。

分子鎖の中に D・L 両方の乳酸が混在するものも知られている。ランダムな重合体はポリ-DL-乳酸 (poly-DL-lactic acid, PDLLA) と呼ばれるが、結晶性が低く実用的でない。D 体と L 体が交互につながったもの、ブロック重合したものなども合成され、研究が進められている。

性質[編集]

生分解性[編集]

ポリ乳酸は環境中の水分により加水分解を受け低分子化され、微生物などにより最終的には二酸化炭素にまで分解される。こうした性質を持つ生分解性プラスチックの中でも、ポリ乳酸は最も研究・実用化が進んでいる高分子である。

土中や水中では数年は安定だが、堆肥の中では、約1週間で分解される。農業用に、マルチシートハウス用のフィルムとして、ホビー分野では屋外用BB弾(通称バイオ弾)として実用化されているほか、繊維製品、光ディスク包装用フィルム、レジ袋などに応用研究・試験が進んでいる。

ただし、誤解してはならないのはポリ乳酸が通常の環境で直ちに生分解を始めるわけではない。上述のように堆肥の中等の特に微生物が豊富な環境でなければ、一般の合成樹脂と同様にほぼ安定である[要出典]。従い、家電の外装の素材(ラジオ・携帯電話ほか)としても、利用実績がある。

ポリ乳酸の製品は徐々に増えつつあるが、「廃棄時」においてポリ乳酸の特性を生かした処理法(堆肥の中に入れて生分解させる)がなされている例はほとんどなく、一般の合成樹脂同様に焼却処理されるのが通例である。このようにマテリアルフローが従前のままであれば「生分解性」自体が、製品への環境配慮の付与になっているかは自明であるとはいいがたい状況にある。

カーボンニュートラルな合成樹脂[編集]

上記のように、ポリ乳酸が生分解性を持つゆえに環境配慮に優れているという言説は現在では下火になっており、代わりに脚光を浴びているのがカーボンニュートラルという特性である。

ポリ乳酸は植物起源の素材から合成できるバイオプラスチックの一つである。ブドウ糖(グルコース)・砂糖(スクロース)などに乳酸菌を作用させると、その発酵作用により乳酸が得られる。原料となる糖類はジャガイモトウモロコシなどから得られるデンプンに酵素(アミラーゼなど)を作用させる、あるいはサトウキビなどから抽出することにより大量に得られる。

ポリ乳酸は微生物によって最終的に二酸化炭素へ分解されて大気中に放出されるが、植物は大気中の二酸化炭素を吸収してデンプンを合成しているため、トータルで見て地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の量を増やすことがない。こうした性質は「カーボンニュートラルである」といわれ、現在注目を集めている。

ただしポリ乳酸の合成の際にもある程度のエネルギーを必要とし、石油など化石燃料を必要とする。このためポリ乳酸を真の意味でカーボンニュートラルと呼んでよいかは若干の議論があり、カーボンニュートラルを考慮してもポリスチレンに比べて排出される二酸化炭素が多いとの見方も存在する[1]

合成法[編集]

ラクチドを経由する方法と、直接重合による手段とが知られている。

ラクチド法[編集]

乳酸を加熱脱水重合すると低分子量のポリ乳酸が得られるが、これは分子が短すぎるためプラスチックとしては役に立たない。このオリゴマーをさらに減圧下加熱分解することにより、乳酸の環状二量体であるラクチドが得られる。ラクチドは金属塩の触媒存在下で容易に重合し、ポリ乳酸を与える。

触媒としては、毒性の低いオクタン酸スズ(II)がよく用いられる。この他アルミニウムランタノイドのイソプロポキシド、亜鉛の塩なども重合活性がある。

直接重合[編集]

ジフェニルエーテルなどの溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させることによって直接ポリ乳酸が得られる。この他溶融法などによる合成法も研究されている。

脚注[編集]