ポモルニク型エアクッション揚陸艦

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ポモルニク型エアクッション揚陸艦
ポモルニク型エアクッション揚陸艦
艦級概観
艦種 エアクッション揚陸艦
就役期間 1988年 - 就役中
性能諸元
排水量 基準:415 t
満載:550 t
全長 57.3m
全幅 25.6m
吃水 2m
機関 クズネツォフ NK-12MV
ガスタービンエンジン (11,836hp)
5基
推進用プロペラ 3基
浮上用リフトファン 2基
速力 最大: 63kt
航続距離 540km (55kt巡航時)
乗員 31名(将校4名、准尉7名)
兵装 AK-630 30mmCIWS 2基
140mm22連装ロケット弾発射機 2基
9K310-1または9K34
近SAM 4連装発射機
4基
搭載量 歩兵360名、または主力戦車(MBT)3両あるいは歩兵戦闘車8両(BTR)とその搭乗員80名

ポモルニク型エアクッション揚陸艦(ポモルニクがたエアクッションようりくかん : Pomornik-class Landing Craft Air Cushion)は、ソヴィエト/ロシア海軍エアクッション揚陸艦である。

名称[編集]

ポモルニク型(Pomornik)はNATOコードネームであり、ソ連海軍の計画名は12322型エアクッション小型揚陸艦“ズーブル”Малые десантные корабли на воздушной подушке проекта 12322 "Зубр")である。NATO名のポモルニクとはトウゾクカモメの意であり、ソビエト/ロシア名の"Зубр"とはヨーロッパバイソンの意である。

概要[編集]

ポモルニク型はエアクッション揚陸艦艇としては世界最大で、150tのペイロードを持ち、400平方メートルの広さの車両甲板[1]を有する。車両搭載用のランプは艦首にあり、1隻に戦車なら3両、歩兵戦闘車なら8両を搭載することができる[1]LCACのように母船である揚陸艦から海浜に車両等を運搬する装備である「揚陸艇」ではなく、洋上を高速自力航行して戦車揚陸艦のようにビーチングして揚陸を行う、単艦運用される大型の揚陸艇である[1]

ただし、本型はアメリカ海軍の大型揚陸艦のように長距離渡洋侵攻を目指したものではなく、米露の地理条件の相違により、本型の運用が想定されているのは内海や近距離での作戦である。その進出能力は300海里(540km)程度であり、LCAC同様、海況(シーステート)にも制約を受ける。ただし、速度は圧倒的に速く、ドック型揚陸艦の最高速度は20kt台であるが、ポモルニク型は60kt超であり、ドック型揚陸艦の3倍も速い。シーステート4でも30kt超の速度を出すことができる[1]

ガスタービンエンジンを5基搭載し、2基がリフトファンに用いられ、3基が推進用として艦の後上部のダクテッドファンに連結されている[1]。推進用ファンは可変ピッチ4翅で直径が5.5mもあり、艦の左舷・中央線・右舷に位置している[1]

運用[編集]

本型の特徴はその作戦速度と重武装にある。本型の最高速度は63kt(約113km/h)に達し、直接ビーチングして一挙に揚陸できる。出港から揚陸・展開までが通常の海輸の倍以上の速度で行なわれるため、その速度を生かした迅速な侵攻が可能である。単に迅速な奇襲性のみを追求するのであれば空挺降下・空中機動にまさるものはない。しかし、第二次世界大戦のいくつかの作戦で教訓が得られている通り、空挺部隊は一般に軽装備に留まらざるを得ず、戦闘能力とりわけ火力と装甲防御を欠くために、重装備を備えた敵防御部隊に対しては脆弱になる。

それに対して本型は、空挺よりはやや遅いものの、重いが強力な第三世代主力戦車が運べるのである。本型6隻で主力戦車(MBT)18両の戦車中隊ないし、MBT12両、歩兵戦闘車16両からなる機甲中隊を空挺降下にわずかに遅れて投入可能である。そのため、味方主力部隊が揚陸・合流するまで、空挺部隊より遥かに強力な重装備によって、敵の猛反撃に耐えて要衝を占拠維持することを期待されるのである。また、空挺と組み合わせて、揚陸艦隊本隊に先立つ先遣部隊として味方空挺部隊降下の1-2時間後に救援合流する事もできるし、敵の背後に機甲中隊を揚陸する事も可能である。

また、予想される対艦ミサイル等の攻撃に対しては自衛用のAK-630 30mmCIWS 2基、イグラ-M地対空ミサイル四連装発射機 4基があり、敵残存火点からの砲撃に対しては、多連装ロケット発射装置による概略位置への面制圧で、着上陸部隊に火力支援を与えることもできる。こうした特性をポモルニク型に与えた東側の運用構想は、西側には類例の無いものである。

本型はホバークラフトと空挺の複合による電撃的な着上陸という東側独自の揚陸ドクトリンを反映した装備であると言えよう。

ギャラリー[編集]

同型艦[編集]

ロシア海軍[編集]

バルチック艦隊所属

  • MDK-50「エヴゲーニイ・コチェシュコフ」
  • MDK-94「モルドーヴィヤ」

ウクライナ海軍[編集]

ウクライナ海軍は黒海艦隊所属のポモルニク型全艦を編入したが、2005年を以って全艦が稼動状態からはずれ、2008年には最後まで残っていたドネーツィクの退役が調印されている。

ギリシャ海軍[編集]

中国人民解放軍海軍[編集]

  • 3325
  • 建造中
  • 建造中
  • 建造中

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f 多田智彦「沿岸海域中心の作戦がもたらした戦闘・揚陸・輸送艦の速力革命 50ノット超高速艦艇の出現」、『軍事研究』、ジャパン・ミリタリー・レビュー、2011年3月、 180-191頁。

外部リンク[編集]

関連項目[編集]