ボセオ

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ボセオの分布図:
  口語・文語両方がボセオ
  主に口語がボセオ
  口語にボセオとトゥテオ(tuteo)が併用
  ボセオなし
アルゼンチンブエノスアイレス看板の文「¿Querés cambiar? Vení a Claro.」(変えたいですか?クラロに来なさい!)のうち、querésとveníはボセオ的な使い方をしている(トゥテオではそれぞれquieres、venである)
ニカラグアマナグア国際空港。看板の文「Nicaragua se comunica con Vos」(ニカラグアはあなたとコミュニケーションします)には、contigo(túの再帰代名詞)の代わりにcon vosが用いられる
エルサルバドル看板の文「¡Pedí aquí tú fría!」(冷えたやつを注文せよ!)のうち、ボセオ的なpedí(トゥテオではpide)とtúが同時に使われている

ボセオ(voseo)とは、スペイン語において二人称単数の代名詞にtúの代わりにvosを用いることである。ラテンアメリカの一部で行われており、特にアルゼンチンウルグアイパラグアイ3カ国においては、ボセオが標準的な使い方である。"Vos"は伝統的なカスティリャのスペイン語では敬称として用いられ、二人称複数形("vosotros")の動詞の活用形と共に使用された。しかし、現在は親称ないしは蔑称として用いられる。ボセオの起源については、アンダルシア方言や、ガリシア語(アルゼンチン、パタゴニア地方のリオ・ガジェーゴスガリシア系移民が多い)など、諸説がある。

文法[編集]

動詞の活用は中世スペイン語における二人称複数形を原型とし、一部時制(直説法現在活用)においてtúとは異なる活用形を用いるのが普通である。つまり、活用語尾が-ades、-edes、-idesとなる形式で、母音間の有声破裂音dが消失したため、たとえば-ar動詞ではつづり字はtúに対する形式と同じになるが、アクセントはもともと活用語尾にあったため、dが消失したのちもアクセントは活用語尾に落ちる。

amar(愛する)の活用

(直説法現在)
amas
Vos amás
Vosotros amáis

上記の例はアルゼンチンの標準的な文法によるもの。Vosの活用形は地域によって異なり、ベネズエラでは"vos amáis"のようにvosotrosと同じ形を用いる。また、"vos amas"のようにtúと同じ活用形を用いる地域もある。

チリでは、「動詞ボセオ」という現象が見られる。つまりtúとvosの両方とも使われている(一般的にはtú)が、それに続く動詞はvosの活用形となっている。例えば、前述のamarの活用形はチリでtú amái(s)の方が一般的である。

用法[編集]

アルゼンチンで二人称単数はvosとusted(敬称)の二つが用いられる。 その他の地域ではtú, vos, ustedの3種類が用いられることも少なくなく、この場合、vosはtúよりも砕けた表現として、ごく親しい人に限って、または蔑称として用いられる。ボセオの地域のひとつであるコスタリカでは(親しい人に対しても)ほとんどの場合ustedを使い、túもほとんど使わない上、vosの使用頻度もアルゼンチンよりはるかに限定的で、個人差によりvosを使ったり使わなかったりする。

ラテンアメリカでは二人称複数は親称・敬称の区別無くustedesを使い、vosotrosはボセオの有無にかかわらず全域でほとんど用いられない。

他言語での類例[編集]

過去、敬称として用いられたが、現在では親称ないしは蔑称に変化した二人称代名詞として、日本語には「貴様」が存在する。

関連項目[編集]