ホンハブ

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ホンハブ
Habu-pitviper.jpg
ホンハブ
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: 有鱗目 Squamata
亜目 : ヘビ亜目 Serpentes
: クサリヘビ科 Viperidae
亜科 : マムシ亜科 Crotalinae
: ハブ属 Protobothrops
: ホンハブ P.flavoviridis
学名
Protobothrops flavoviridis
(Hallowell, 1861)
和名
ハブ
ホンハブ
英名
Okinawa habu
Yellow spotted lance-head snake
Yellow spotted pit viper

ホンハブ(本波布、Protobothrops flavoviridisシノニムTrimeresurus flavoviridis)は、クサリヘビ科ハブ属に分類されるヘビ。単にハブとも呼ばれる。日本本土では最大の毒蛇であり、かつ、もっとも危険な毒蛇のひとつである。

目次

[編集] 解説

[編集] 形態

ホンハブの頭部 この個体は眼線を始め紋様がやや薄い

ホンハブは最大全長250cm。通常は100 - 150cm程度だが、2011年10月12日に沖縄本島北部の恩納村で体長242cm・体重2.8kg程度の個体が、また奄美大島では2009年7月16日に体長226cm・体重3.15kg、胴回りの最大周が約20cmの個体が捕獲されている。ハブ属内でも大型であり、要因として本種の生息地にナメラ属が分布しなかったことにより本種がその生態的地位(ニッチ)を占めたとする説もある。体色や斑紋には地域変異がある。種小名flavoviridisは「黄緑」の意。

[編集] 生態

夜行性で、昼間は地面に空いた穴の中等で休む。平地から山地森林草原水辺農地に棲む。地表でも樹上でも活動する。ネズミを追って、人家周辺にも入り込む。沖縄式の墓は、石垣を高く積み、藪や森の近くに作られるので、ハブがよく棲み着くと言われる。実際に発見される場としては、サトウキビ畑も多い。サトウキビ畑は、年に一回の刈り取り以外は高い草に覆われ、外部からハブが侵入する機会が多い。これをすべて刈り取るので、その際に発見される。ただし、サトウキビ畑で常時生活しているものではなく、本島南部のように、森林も藪も少なくて一面にサトウキビ畑という環境では、ハブの出現は少なくなる。

性質は非常に攻撃性が強く、ピット器官で感知したものには即座に襲いかかる。攻撃時には体の2/3ほども伸ばして毒牙を立てる。このしなるのように俊敏なハブの攻撃は、現地の人は「ハブに打たれる」と称しているほどである。

食性は動物食で、哺乳類、小型鳥類トカゲカエル等を食べるが、ハトウサギを捕食することも出来る。特異例としてネコを捕食していた事例も確認されている。特にネズミを好んで捕食し、ハブの獲物の大半がネズミであるとも言われる。繁殖形態は卵生で、7月に1回に5 - 15個の卵を産む。繁殖期にはオス同士でからみつきあい争う(コンバット)。メスは出産直後から、しばらくの間は卵を守る。

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毒性は出血毒で、咬まれた直後から細胞組織破壊が始まるため、患部は大きく腫れ上がり、激痛を伴う。毒の回りは遅く、じわじわと組織を破壊しながらゆっくりと全身に回っていく。ハブの毒は元々獲物消化する消化酵素であるためで、組織の破壊とはすなわちタンパク質の分解である。呑み込む前から消化を始めることによって、獲物を消化管内に留める時間を短縮することができるのである。

かつては咬まれたら助からないと言われるほどの危険なヘビであったが、血清治療の発達により、今では死亡率は1%以下にまで改善されている。人里離れた野外で咬まれた場合には、血清治療が間に合わない危険性がある。実際、戦後に琉球大学生物学助手が離島でハブに咬まれ死亡している。ハブの毒は筋肉や血管を破壊する出血毒であり、命を取り留めても、筋肉組織を大きく損傷して身体機能が失われるなどの重い後遺症が残る場合がある。

奄美群島のハブと沖縄諸島のハブは毒性等が異なり、奄美のハブが強いといわれているが、毒性そのものではニホンマムシの方が強いとされる。ニホンマムシの場合は体が小柄で、毒の注入量はハブほどではないので、ハブほど注視されてはいない。

[編集] 天敵

ハブの天敵としては、猛禽類イタチなどがある。その中でもマングースがハブの天敵として有名であるが、野生化したマングースが積極的にハブを捕食している信憑性のあるデータは確認されていない。ハブは夜行性であり、昼行性のマングースは自然界においてはハブの天敵とはならない。

[編集] 分布

日本奄美大島枝手久島加計呂麻島請島与路島徳之島伊平屋島伊江島水納島瀬底島古宇利島屋我地島沖縄本島藪地島浜比嘉島平安座島宮城島(うるま市・大宜味村両方とも)、伊計島渡嘉敷島渡名喜島奥武島久米島の計22島に生息する。)固有種

[編集] 分布の特異性

ハブは南西諸島において、飛び石状の特異な分布をしていることが知られている。北からトカラ列島に近縁種のトカラハブが、奄美群島沖縄諸島にはハブとヒメハブが、八重山諸島にはサキシマハブが生息するが、宮古諸島には生息しない。奄美大島徳之島沖縄本島にはハブがいるが、その間の沖永良部島与論島には生息しない。沖縄本島周辺では、伊江島伊平屋島には生息するが、その間の伊是名島にはいない。久米島渡名喜島には生息し、粟国島にはいない。慶良間諸島でも、渡嘉敷島には生息するが、座間味島にはいないなど、近接した島でも生息する島と生息しない島が分かれている。

この理由について、現在考えられているのは、間氷期の海進の影響である。南西諸島の島々は、大きく分けて隆起石灰岩からなる標高の低い島と、火成岩からなる標高の高い島があり、低い方の島は、最高部でも標高が100mほどしかない。そこで、以下のような仮説が立てられる。

  1. 氷河期に陸続きであった琉球列島に、ハブ類が分布を広げた。
  2. 氷期が終わり、海面が上がり、島々が孤立。
  3. さらに海水面が上昇し、低い島は水没、陸上動物は全滅した。
  4. 海水面が下がると低い島も顔をだすが、ハブは渡ってこられない。

ヒメハブがいるのにハブがいない島、その逆にハブはいるが、ヒメハブはいない島などもあり、詳細については問題もある。おおざっぱに言えば、ハブのいない島は標高の低い島であり、固有種も少ない傾向がある。

[編集] 人との関係

沖縄・奄美の農家にとっては、害獣であるネズミを退治してくれるという意味ではハブは非常に重要な存在となっている。『完本 毒蛇』(小林照幸著 文春文庫)では、ハブについて、「毒さえなければ、ハブほど役に立つ動物はいない」。という記述があるほどである。ネズミを追って人家に侵入することもあり、人の生活の中で接する機会は多いので、最も危険な毒蛇の一つに数えられている。また、ハブには非常に強い攻撃性があるために森林への立ち入りが恐れられ、結果的に琉球列島の森林環境を良好に保ってきたとも言われている。

戦後、沖縄本島の各所に駐留している在日米軍沖縄駐留部隊にとってもハブは大きな脅威であり、"Habu"という和名は在日米軍内でも本種を指す単語として通じる程である。また"Habu"(もしくは"Have")はアメリカ空軍でも航空機のニックネームに用いられており、ロッキード社製の超音速戦略偵察機SR-71 ブラックバード嘉手納基地に配備された際には"Habu Plane"(ハブ・プレーン)のニックネーム(兼、秘匿名称)が、同じくロッキード社が開発した世界初の実用ステルス戦闘機F-117 ナイトホークの飛行空力実験機には"Have Blue"(ハヴ・ブルー)のコード・ネームが用いられている。

TVドラマ版『男はつらいよ』では、車寅次郎はハブ獲り名人となって一旗上げることを目指して奄美大島に渡り、ハブに咬まれて死亡した、という最終回となっている。

[編集] ハブ酒

奄美大島のハブ酒(奄美観光ハブセンター、2009年7月)
上述の2009年7月16日捕獲個体が漬けられている

ハブを漬けた酒の品種。ベースは奄美大島・徳之島の黒糖焼酎、沖縄の泡盛、鹿児島の芋焼酎などである。漢方由来のマムシ酒と同じく薬酒の一種とされるが、科学的根拠はない。

ハブ酒

[編集] 参考文献

  • 『原色ワイド図鑑3 動物』、学習研究社、1984年、146頁。
  • 『爬虫類・両生類800図鑑 第3版』、ピーシーズ、2002年、328頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 両生類はちゅう類』、小学館、2004年、135頁。

[編集] 関連項目

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