ペニー・レイン

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ペニー・レイン
ビートルズシングル
A面 ストロベリー・フィールズ・フォーエバー(両A面)
リリース
規格 7インチシングル
録音
ジャンル
時間
レーベル
作詞・作曲 レノン=マッカートニー
プロデュース ジョージ・マーティン
ゴールドディスク
後述を参照
チャート最高順位
後述を参照
ビートルズ シングル U.K. 年表
ビートルズ シングル U.S. 年表
ビートルズ シングル 日本 年表
マジカル・ミステリー・ツアー 収録曲
ストロベリー・フィールズ・フォーエバー
(B-2)
ペニー・レイン
(B-3)
ベイビー・ユーアー・ア・リッチ・マン
(B-4)
ミュージックビデオ
「Penny Lane」 - YouTube
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ペニー・レイン」(Penny Lane)は、ビートルズの楽曲である。1967年2月に「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」との両A面シングルとして発売された。レノン=マッカートニー名義となっているが、主にポール・マッカートニーによって書かれた楽曲。歌詞は、メンバーの故郷であるリヴァプールにあるペニー・レインをモチーフとしたもので、同時期にジョン・レノンが書いた「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」に触発されて書いたとされている。

ビートルズがアルバム『リボルバー』完成後に初めてレコーディングした楽曲で、アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』に収録される予定だったが、レーベル側が新しいシングルを要求したことにより、同時期に制作されていた「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」と共にシングルとして発売され、アルバムからは省かれた。なお、アメリカではシングルで発売された後に、キャピトル編集盤『マジカル・ミステリー・ツアー』に収録された。

ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500では280位にランクされている[7]

背景[編集]

歌詞に登場する床屋のトニー・スレイヴィン(角の白い看板)

歌詞は、リヴァプールにあるペニー・レイン北緯53度23分20.2秒 西経2度54分55.0秒 / 北緯53.388944度 西経2.915278度 / 53.388944; -2.915278 (ペニー・レイン))がモチーフになっている。同時期にジョン・レノンは幼少期に遊びに行っていた孤児院「ストロベリー・フィールド」をモチーフとした「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」を制作しており、この「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」に触発されて作ったとされている[注釈 1][9]。「ペニー・レイン」の作詞はレノンも手伝っており、1970年のインタビューで、「銀行があった場所は路面電車の車庫になってて、みんなそこで待ってて、そばには査察官が立ってて、遠くには消防車が通って…そんな子供時代の記憶を呼び戻したんだ」とコメントしている[10]

レノンの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」に比べると、非常にポップに仕上がっていて好対照をなしている。曲中で歌われる床屋や街角の銀行(現在はロイズTSB銀行)は健在で、何の変哲もない小さな通りながらもビートルズゆかりの地や名所として人気が高い。プロモーション・ビデオでもペニー・レインの映像が見られるが、ビートルズのメンバーが映っているシーンはロンドンのストラトフォードにあるエンジェル・レイン周辺と、ケント州セヴノークスノール・ハウスを囲むノール・パーク英語版の2か所で撮影している[11]

歌詞に「A four of fish and finger pie(4個入りのフィッシュ&フィンガー・パイ)」というフレーズがあるが、これはリヴァプールで使われているスラングで、「A four of fish」は「4ペンス分のフィッシュ・アンド・チップス」、「finger pie」は「ティーンエイジャー同士の性的な関係」を表している[12]。音楽評論家のイアン・マクドナルド英語版は、このフレーズはレノンのアイデアであると推測している[13]

レコーディング[編集]

「ペニー・レイン」のレコーディングは、1966年12月29日にEMIレコーディング・スタジオのスタジオ2で開始された[14]。この時期のマッカートニーは、ザ・ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』に影響されており、「すごくクリーンに録音すること」を目指していた[15]

マッカートニーは、4トラック・レコーダーのそれぞれのトラックに鍵盤パートを録音した。トラック1が基本的なリズムを奏でるピアノ、トラック2がVOX製のギターアンプに繋いでリバーブをかけたピアノ、トラック3がホンキートンクを彷彿させるピアノの音色、トラック4がトラック2と同様にギターアンプに繋いだハーモニウムという構成になっている[16]。12月30日にリダクションされ、マッカートニーとレノンのリード・ボーカルが録音された。なお、このボーカルは、テープ・レコーダーの回転数を下げて録音された[16]

1967年1月4日、ビートルズにとって新年最初のセッションとなったこの日は、レノンによるピアノとジョージ・ハリスンによるリードギターがオーバー・ダビングされた。この日にはマッカートニーによるリード・ボーカルもオーバー・ダビングされたが、翌日に録り直されている。1月6日にリンゴ・スターによるドラム、マッカートニーによるベース、レノンによるリズムギターのほか、ハンドクラップ英語版コンガハーモニー・ボーカル、ピアノがオーバー・ダビングされた[17]

1月9日に外部ミュージシャンによる4本のフルート木管楽器ブラス・セクションが加えられた[18]。スコアはジョージ・マーティンによるもので、メロディー・ラインについてマッカートニーがいくつかアイデアを出している[16]

1月10日にスキャット・ハーモニーとハンドベルがオーバー・ダビングされ、1月12日に2回目の外部ミュージシャンによって2本のトランペット、2本のオーボエ、2本のコーラングレ、そしてダブルベースが加えられた[18]

ピッコロトランペット・ソロ[編集]

マッカートニーは、この時点で曲の仕上がりに物足りなさを感じていた。そんな中、BBCによるクラシック・コンサートの中継で、「ブランデンブルク協奏曲第2番ホ長調」におけるデヴィッド・メイスン英語版によるピッコロトランペットの演奏に興味を示した[18]。1月17日、メイスンをレコーディングに招き、この曲の特徴ともいえるピッコロトランペット・ソロを録音した[19]。この演奏で、デヴィッドに対して27ポンド10シリングが支払われた[18]

プロモーション・フィルム[編集]

ビートルズは、1965年以降イギリスのテレビ番組に直接出演して演奏することを避けることを目的に、プロモーション・フィルムを制作して各テレビ局に配布していた[20]

「ペニー・レイン」のプロモーション・フィルムは、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」と共に、ミュージック・ビデオとして認知されるようになった最初の例の1つとなった[21]。プロモーション・フィルムの監督は、スウェーデンのテレビディレクター、ピーター・ゴールドマンが務め、トニー・ブラムウェルによって制作された[22]。プロモーション・フィルムには、ペニー・レイン行きの46番バス、ロータリー交差点の真ん中に位置している待合室、白い馬に乗った消防士などリヴァプールで撮影された映像が含まれているが、ビートルズのメンバーが映っているシーンはロンドン東部のストラトフォードにあるエンジェルレーンで撮影された[23]。また、フィルムにはメンバーが乗馬する様子(2月5日に撮影)[24][25]ケント州セブンノークスのノール・パークで撮影された映像も含まれている[25]

リリース、文化的影響など[編集]

「ペニー・レイン」と「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」は、前作『エリナー・リグビー / イエロー・サブマリン』と同じく、両A面シングルとして発売された[26][27][28]。このシングルは、アメリカでは1967年2月13日[29]、イギリスでは同月17日に発売された[30]。シングル盤は、初めてビートルズのメンバーの写真を使ったオリジナル・スリーブが使われた作品となり[26][31]、裏面には各メンバーの幼年期の写真が使用された。シングル盤は『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー / ペニー・レイン』は、全英シングルチャートにおいてエンゲルベルト・フンパーディンクの『リリース・ミー』に次ぐ第2位となり[32]、首位獲得を逃した。一方、アメリカでは本作の単独A面で発売され、1967年3月18日付のBillboard Hot 100で1位を獲得[33]。『ビルボード』誌の1967年度年間ランキングでは第55位[34]。『キャッシュボックス』誌では最高位2週連続第1位、年間ランキング45位を獲得した[35]。イギリスでは、キャピトル・レコードが発行したプロモーション用シングル盤に収録された「ペニー・レイン」は、ピッコロトランペットによるコーダが加えられたミックスになっている。このプロモーション用シングル盤は、発行数が少ないことからビートルズのグッズで最も価値のある品となっている。このミックスは、1980年に発表された『レアリティーズ Vol.2』や2017年に発売された『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド (スーパー・デラックス・エディション)』のディスク6に収録されている[36]

1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー2』には、間奏が管楽器による合奏になっていて、ピッコロトランペットによるコーダが継ぎ足された音源が収録された[37]

2015年に再発売された『ザ・ビートルズ1』や2017年に発売された『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド 50周年記念エディション』にはジャイルズ・マーティンによってリミックスされたものが収録されている。また、後者にはアウトテイクも収録されている。

メロディ・メーカー英語版』誌は、本作の管楽器のパートを「綺麗なアレンジ」とし、「感傷的な雰囲気を帯びたこの楽曲は、ビートルズがはっきりと覚えているリヴァプールの通りの切迫していて、カラフルで鮮明な思い出の中にゆっくりと組み立てられた」と評している[38]

ペニー・レインの標識

本作のヒットにより、ペニー・レインの道路標識の盗難および訪れたファンによる落書きが多発し、一部では標識はとりやめになりペンキで描かれるようになった[39]

2004年に『ローリング・ストーン』誌が発表した「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500」では第456位[40]、2006年に『モジョ』誌が発表した「The 101 Greatest Beatles Songs」では第9位にランクインした[41]

ラトルズが1978年に発表した楽曲「Doubleback Alley」は、本作のパロディとなっている[42]

クレジット[編集]

※出典[43]

ビートルズ
外部ミュージシャン

チャート成績[編集]

週間チャート[編集]

チャート (1967年) 最高位
オーストラリア (Go-Set National Top 40)[44] 1
オーストリア (Ö3 Austria Top 40)[45] 5
ベルギー (Ultratop 50 Wallonia)[46] 1
ベルギー (Ultratop 50 Flanders)[47] 4
カナダ トップシングルス (RPM)[48] 1
オランダ (Dutch Top 40)[49] 1
オランダ (Single Top 100)[50] 1
アイルランド (IRMA)[51]
2
ニュージーランド (Listener Chart)[52] 1
UK シングルス (Official Charts Company)[53] 2
US Billboard Hot 100[33] 1
US Cash Box Top 100[54] 1
西ドイツ (Musikmarkt Hit-Parade)[55] 1
チャート(1987年) 最高位
UK シングルス (Official Charts Company)[56] 65
チャート(2010年) 最高位
オランダ (Single Top 100)[57] 98

年間チャート[編集]

チャート (1967年) 順位
Canada Top Singles (RPM)[58] 21
US Billboard Hot 100[59] 55
US Cash Box[60] 45

認定[編集]

国/地域 認定 認定/売上数
アメリカ合衆国 (RIAA)[61] Gold 1,000,000^

* 認定のみに基づく売上数
^ 認定のみに基づく出荷枚数

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ちなみに、1965年に発表されたレノン作の「イン・マイ・ライフ」のオリジナルの歌詞には、ペニー・レイン(通り)への言及が含まれており[8]、同作のレコーディングが始まったのと同じ時期のインタビューでマッカートニーは、「いつかペニー・レインについての曲を書きたい」と語っている。

出典[編集]

  1. ^ Ingham 2006, p. 195.
  2. ^ Heylin 2007, p. 153.
  3. ^ Philo 2014, p. 119.
  4. ^ Willis 2014, p. 220.
  5. ^ Courrier 2009, p. 157.
  6. ^ Simonelli 2013, p. 106.
  7. ^ The 500 Greatest Songs of All Time” (英語). Rolling Stone (2021年9月15日). 2021年12月21日閲覧。
  8. ^ Turner 2012, p. 106.
  9. ^ Everett 1999, p. 84.
  10. ^ MacDonald 2005, p. 222.
  11. ^ The Beatles – Strawberry Fields Forever and Penny Lane (1967)”. Kent Film Office. 2018年10月12日閲覧。
  12. ^ Mann, Brent (2005). Blinded By the Lyrics: Behind the Lines of Rock & Roll's Most Baffling Songs. New York, NY: Kensington Publishing Corp.. p. 171 
  13. ^ MacDonald 2005, p. 222fn.
  14. ^ Lewisohn 1998, p. 91.
  15. ^ Paul McCartney Waxes Nostalgic, Gets Kaleidoscopic on ‘Penny Lane’: The Story Behind Every ‘Sgt. Pepper’ Song”. Ultimate Classic Rock (2017年5月17日). 2019年5月15日閲覧。
  16. ^ a b c Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band Super Deluxe Edition (booklet). The Beatles. London: Apple Records. 2017. p. 91.
  17. ^ Lewisohn 1998, p. 92.
  18. ^ a b c d Lewisohn 1998, p. 93.
  19. ^ Ingham, Chris (2003). The Rough Guide to the Beatles. Rough Guides. p. 245. ISBN 1-84353-140-2. https://books.google.com/books?id=htl2U1fPq8QC&pg=PA245 
  20. ^ Austerlitz 2007, p. 18.
  21. ^ Austerlitz 2007, pp. 17–18, 19.
  22. ^ Winn 2009, p. 85.
  23. ^ Wawzenek, Bryan (2017年3月11日). “How the Beatles' 'Penny Lane' and 'Strawberry Fields Forever' Videos Changed Everything”. Ultimate Classic Rock. 2021年4月5日閲覧。
  24. ^ Miles 2001, p. 255.
  25. ^ a b Ingham 2006, p. 165.
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  27. ^ Rodriguez 2012, p. 196.
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  29. ^ Castleman & Podrazik 1976, pp. 61–62.
  30. ^ Miles 2001, p. 257.
  31. ^ Rodriguez 2012, p. 199.
  32. ^ Rodriguez 2012, p. 198.
  33. ^ a b The Hot 100 Chart”. Billboard (1967年3月18日). 2020年10月1日閲覧。
  34. ^ Top 100 Hits of 1967/Top 100 Songs of 1967”. musicoutfitters.com. 2019年5月16日閲覧。
  35. ^ The Cash Box Year-End Charts: 1967”. Cashbox Archives (2016年3月4日). 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月16日閲覧。
  36. ^ Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band Super Deluxe Edition (CD sleeve). The Beatles. London: Apple Records. 2017.
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  39. ^ Turner 2012, pp. 132–133.
  40. ^ Womack 2016, p. 391.
  41. ^ Harris, John (March 2007). “The Day the World Turned Day-Glo”. Mojo: 80. 
  42. ^ Womack 2014, p. 724.
  43. ^ MacDonald 2005, pp. 221–223.
  44. ^ Go-Set Australian Charts - 19 April 1967”. poparchives.com.au (1967年4月19日). 2020年8月5日閲覧。
  45. ^ "Austriancharts.at – The Beatles – Penny Lane" (in German). Ö3 Austria Top 40. 2020年8月5日閲覧。
  46. ^ "Ultratop.be – The Beatles – Penny Lane" (in French). Ultratop 50. 2020年10月1日閲覧。
  47. ^ "Ultratop.be – The Beatles – Penny Lane" (in Dutch). Ultratop 50. 2020年8月5日閲覧。
  48. ^ "Top RPM Singles: Issue 10048." RPM. Library and Archives Canada. 2020年8月5日閲覧。
  49. ^ "Nederlandse Top 40 – The Beatles" (in Dutch). Dutch Top 40. 2020年10月1日閲覧。
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  51. ^ The Irish Charts - Search Results - Penny Lane”. Irish Singles Chart. 2022年3月27日閲覧。
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  53. ^ "Official Singles Chart Top 100". UK Singles Chart. 2020年8月5日閲覧。
  54. ^ |CASH BOX Top 100 Singles - Week ending March 25, 1967”. Cash Box magazine (1967年3月25日). 2020年8月5日閲覧。
  55. ^ Offizielle Deutsche Charts” (Enter "Beatles" in the search box) (German). GfK Entertainment Charts. 2020年8月5日閲覧。
  56. ^ "Official Singles Chart Top 100". UK Singles Chart. 2020年10月1日閲覧。
  57. ^ "Dutchcharts.nl – The Beatles – Penny Lane" (in Dutch). Single Top 100. 2020年10月1日閲覧。
  58. ^ RPM 100 Top Singles of 1967”. RPM. Library and Archives Canada. 2016年8月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月5日閲覧。
  59. ^ “Top Records of 1967 – Hot 100”. Billboard 79 (52): 42. (December 30, 1967). https://books.google.com/books?id=aSgEAAAAMBAJ. 
  60. ^ The Cash Box Year-End Charts: 1967”. Cashbox Archives. 2020年8月5日閲覧。
  61. ^ "American single certifications – The Beatles – Penny Lane". Recording Industry Association of America. 2020年8月5日閲覧

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

先代
Billboard Hot 100 ナンバーワンシングル
1967年3月18日(1週)
次代