ベーシックインカム

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ベーシックインカム(basic income)とは最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で定期的に支給するという構想[1][2][3][4]基礎所得保障基本所得保障国民配当[5]とも、また頭文字をとってBIともいう。フィリップ・ヴァン・パレースが代表的な提唱者であり、弁護者である。しかし少なくとも18世紀末に社会思想家のトマス・ペインが主張していたとされ[6]1970年代ヨーロッパで議論がはじまっており、2000年代になってからは新自由主義者を中心として、世界と日本でも話題にのぼるようになった[7][8][9][10][11][12]

概説[編集]

国民最低限度の生活を保障するため、国民一人一人に現金を給付するという政策構想。生存権保証のための現金給付政策は、生活保護や失業保険の一部扶助、医療扶助、子育て養育給付などのかたちですでに多くの国で実施されているが、ベーシックインカムでは、これら個別対策的な保証ではなく包括的な国民生活の最低限度の収入(ベーシック・インカム)を補償することを目的とする。

包括的な現物給付の場合は配給制度であり、国民全員に無償で現金を給付するイメージから共産主義社会主義的と批判されることがあるが、ベーシックインカムは自由主義資本主義経済で行うことを前提にしている。

新自由主義論者からの積極的意図には、ベーシック・インカムを導入するかわりに、現行制度における行政担当者による恣意的運用に負託する要素が大きい生活保護・最低賃金・社会保障制度などに含まれる不公正や逆差別といった問題を解消し、問題の多い個別対処的福祉政策や労働法制を「廃止」しようという考えが含まれる。

一方で、この考え方・思想に対しては古代ローマにおけるパンとサーカスの連想から「国民精神の堕落」など倫理的な側面から批判されることがある。所得給付の額次第では給付総額は膨大なものになり、国庫収入と給付のアンバランスが論じられたり、税の不公平や企業の国際競争力の観点が論じられることもある。

メリット[編集]

ベーシックインカムは、年金・雇用保険・生活保護などの社会保障制度、公共事業を縮小することにより、「小さな政府」を実現するのに役立つといわれている[7][8][9][2][3][11]

また、最低限の生活を保障という点から、企業は雇用調整を簡単に行うことができるようになり、雇用の流動性が向上し[8][9]、新産業創出などの効果があるという意見がある[7][3][11]

貧困対策[編集]

ベーシックインカムの基本的な目標は一定の所得を無条件で保障することで、すべての国民が最低限以上の生活を送れるようにすることである[13]。ワーキングプア問題への処方箋として期待する向きもある。ワーキングプアは、自己の年収が200万円を下回る貧困層の立場に置かれているものの、辛うじて生活保護を要するほど困窮した立場にはないとして、従来の社会保障制度では救済されない。日本にベーシックインカムを導入すれば、ワーキングプアにも社会保障を受ける機会を提供できるとされる[要出典]

少子化対策[編集]

ベーシックインカムは負の所得税と異なり、世帯ではなく個人を単位として給付される。子供を増やすことは世帯単位での所得増加に繋がるため、少子化対策となりうるという考えがある[14]

地方の活性化[編集]

ベーシックインカムの給付額は生活に必要な最低限といわれることが多い。全国一律であると仮定した場合、物価の安い地方に生活する動機付けになるという意見がある。

社会保障制度の簡素化[編集]

現在ある複数の年金制度、ハンディキャップを負った人のための保障、失業保険、生活保護など種々の社会保障制度のうち、失業保険、生活保護、および基礎的な年金などベーシックインカムで代替できるものは一本化し、他を補助的に導入することで簡素化されると予想される[要出典]。これにより最近特に問題になっている生活保護の不正受給問題が解決できる[要出典]

行政コストの削減[編集]

社会保障制度を簡素化する場合において、それらの運用コストは簡素化に応じて削減される。これはベーシックインカムの導入目的の一つでもある。さらにベーシックインカム実現への課題の一つである財源問題を(他の手段によることなく)同時に解決可能との意見もある[15]

また、現行の生活保護や雇用調整助成金では働かない状態を維持するため受給の条件に合わせる人がいる、負の動機付けや、交渉や制度の利用の得手、不得手から、適切な可否判断が難しいという意見がある。

労働意欲の向上[編集]

現在の年金生活保護の制度には所得制限があり、働いて収入を得ると年金や生活保護の減額や支給停止が行われ収入が減少するため労働意欲の低下をまねいている。さらに真面目に働くより、全く働かず生活保護に頼るほうが収入が多くなる逆転現象が発生するため[16]、現在の年金や生活保護の制度は更なる労働意欲の低下をまねいている。

一方ベーシックインカムは所得制限がないため、働けば働くほど収入が増える。そのため労働意欲が向上するという意見がある[16]

景気回復[編集]

ベーシックインカムは貨幣を国民に直接給付する形式の景気対策という考えもある[誰?]。 税金を財源としたとき、高所得者より低所得層の方が財を購入する傾向が高いという仮定において、高所得者の貯蓄から消費に回される貨幣の割合を増やすことになる。

余暇の充実[編集]

ベーシックインカムにおいて、労働は、最低限度の生活を起始点として、必要な分だけ賃金を得る方式であるという考えがある。この前提では仕事と余暇の割り当てを自由に行えるという点から、多様な生き方を認めるという思想とも取れるという意見がある。

景気刺激策という観点では、余暇を楽しむ選択をした人々がさまざまな財を購入してくれる場合に、その効果は高いという意見がある。生産力の上昇を見込んだ上で、資本主義経済において、常に需要を確保する必要があると仮定すると、マクロ経済的にはよい状態になるという意見がある。

公共投資は景気刺激効果をもたらし[17]GDP上昇に繋がる。 ベーシックインカムはこれらの景気刺激効果と変わらなくても、国民総幸福 のような指標では差が生じるという意見がある。 #景気刺激策としての効果参照。

ワークシェアリングによって、同時に雇用の形式も多様化している方が制度的な整合性がよいという意見がある。

非正規雇用問題の緩和[編集]

正社員という制度が、同じ労働を行う非正社員との間の、賃金や社会保障における格差を生んでいるという考えがある。例えば、非正社員等のワーキングプアは正社員とは違って給与が比較的安い上、国民健康保険や住民税について、前年の年収に基づいた査定がなされて支払う金額が乱高下する。また、ワーキングプアの多くは雇用が不安定であることから、正社員のように給与所得控除など各種の減免措置を受ける機会が乏しい。そのため、比較的裕福な正社員に比べ、ワーキングプアの方がより高い税率で課税されかねない悲惨な現状がある。これを是正する方策として、ベーシックインカムの導入は有効である。また、企業の体力という視点から、現実的には雇用の流動性、生活保障という2つの側面を切り離し、ワークシェアリング、ベーシックインカムという形で組み合わせた場合、正規雇用を増やす政策よりも、企業の負担を軽減するという効果が期待されるという意見がある[誰?]

犯罪の減少[編集]

貧困が直接的にも間接的にも犯罪の多くを生み出しているので、ベーシックインカムの導入によって犯罪率が減少するといった議論がある[誰?]

ブラック企業の矯正[編集]

所得が保証されれば劣悪な労働環境で無理に奴隷労働する必要がなくなるため、違法行為グレーゾーンを含む劣悪な労働環境で労働者を働かせているブラック企業の悪しき企業文化を矯正できるという意見がある[誰?]

産業空洞化の防止[編集]

所得が保証されれば最低賃金の必要が無くなるので、最低賃金制度を撤廃でき、その結果、海外の安い労働力にも対抗できるようになり、産業空洞化を防ぐ事ができるという意見が有る[誰?]

消費税の逆進性の解消[編集]

ベーシックインカムを導入することによって消費税の逆進性が解消される試算がある[誰?]。試算によると高所得者(年収1億円、年間支出2000万円)と低所得者(年収300万円、年間支出200万円)では高所得者から低所得者に年間90万円の所得移転がなされると同時に、ベーシックインカムを導入によって消費増税をしたにもかかわらず低所得者の所得が増えていることがわかる[18][要高次出典]

失敗を恐れずに経済活動できる[編集]

現在の社会制度の下では起業に失敗すると経済的に困難な状況に陥るが、ベーシックインカムが導入されていれば、もともと最低限の生活は保障されているため失敗を恐れる必要がなくなるという意見が有る[誰?]

課題と批判[編集]

財源の確保[8][12]や、「はたらかない生き方」を許容できるのか[9]といった課題があげられている[19][10][2]

財源の不安[編集]

ベーシックインカムはその莫大な財源をどこに求めるのかという点がつねに議論の的となる。これについては#財源案を参照。

精神論的なもの[編集]

勤労美徳
一つは、労働は対価だけではなく成長や学習の場で、そこに参加しない動機付けを与えるのはよくないという考え(これについては「生きがいの喪失・閉塞感」も参照)。また聖書からよく引用される「働かざる者食うべからず[20]という労働の対価以外の所得を否定する考えで、定額給付金、子供手当て、または各種配当金などの不労所得を否定する考え方に収斂するという意見もある。
財源との関係での精神論
財源の種類については#財源案参照。
財源を#税収でおこなう場合、労働と貨幣の給付が非常に強く結びついている人に対し、納めた税金を働かない人間が消費することへの同意を得る事は難しいという意見と、その一方で、人権思想に基づいた考えや、#景気刺激策としての効果としての側面から同意が得られる可能性があるという意見がある。また、財源を#貨幣発行益で実行する場合、納税された税金以外の大量の貨幣を政府が発行することに違和感を覚える人が現れるという意見もある。
犯罪の増加
刑務所に入ったあとでも生活の維持が容易になるため、刑罰による犯罪の抑止効果が減少するという意見がある。
生きがいの喪失・閉塞感
勤労美徳と関係するが、労働は対価だけを目的とするのではなく生きがいを提供するという機能も持つため、目標を喪失する個人が大量に現れるという意見がある[要出典]。逆に、ベーシックインカムは働くことを抑制するわけではなく、今まで通り働くのも選択肢の一つだという考えがある[要出典]
#余暇の充実も参照。
非労働者の海外脱出
包括的な所得保障は年齢を問わず労働放棄を招き、また給付が国籍や居住証明を対象とした恩給型給付であるばあい、書類上の給付条件を満たした労働放棄者が物価の安い海外へと離散することを助長する可能性がある。

使用方法に関連するもの[編集]

消費者金融の担保になる
ベーシックインカムが消費者金融からの借金や賭博に使われ[13]、貧しい人がさらに借金を膨らませるという意見がある。
資金の国外流出
将来への不安から外資系の保険会社へ支払うことによる流出、宣伝や知名度に秀でた大企業の製品に消費が集中し、国際的な経済の中央集権化が進行するという意見がある。
但しこの指摘は、地域通貨で解決するのではないかと云う意見もある。
地球資源・環境の破壊
人々がより多くのお金を手にすることで、家電などの買い換えサイクルが加速し、資源の枯渇、環境破壊が進むという意見がある。
詐欺
近年問題となっている年金詐欺(家族の死亡を隠し年金を騙し取る犯罪)と同種の詐欺があらゆる年齢で発生する懸念がある。
反社会的勢力の資金源
暴力団等、反社会的勢力の構成員にも給付されれば、それらの資金源となる恐れがある。

経済学的なもの[編集]

経費膨張の法則[21]
国家の経費はつねに膨張の圧力にさらされており、歳費削減問題は国庫の恒常問題である。主権者は国庫からの恩恵よりも国庫に対する義務をつねに過大に感じており、このことが財政需要を拡大させる。17世紀イギリスのウィリアム・ペティの時代から、国家経費の膨張あるいは冗費節減が指摘されてきた。アドルフ・ワーグナーによれば、戦争や大不況、大災害など社会的動乱により「人々は平時には容認できないと考えていた租税水準と収入増加の方法を危機時には認めるようになり、この容認は動乱自体が収束しても存続する。」その結果、動乱が過ぎると支出は下落しているのにも関わらず政府はこれまで必要とされながらも増税をしてまでは行わなかった諸政策の実施を図るようになり、結果として高い水準での財政支出構造が維持される(転移効果)とする。
所得の海外移転
外国との交易を前提にベーシックインカムを導入した場合、安くて品質の確かな海外製品の購入に一部の所得給付が向かうことで、内需の海外移転が発生し国内景気の刺激効果が低減する。この場合、日本政府の税収入を利用することで海外の雇用を維持していることになる。
これは一国だけでベーシックインカムを導入することの難しさを示唆しており、他国との税制との関係をみながら調整する必要がある。消費税(売上税)を税源としてベーシックインカムをおこなう場合、所得の海外移転については中立的である。
最低限必要な労働や労働の効率性
過酷な条件下での労働に関して就労人口が極端に減ってしまい社会が崩壊する、また、厳しい労働条件を強制できないことが社会全体の効率性を落とすという考えがある。反対に、ベーシックインカムは市場原理が働く前提下での制度のため、過酷な条件でも必要な仕事であれば賃金が増すため、賃金を目当てにその仕事をおこなう人が現れるという意見がある。
勤労意欲の低下
労働者の勤労意欲が低下し、無責任になる動機付けが起こるという考えがある[22]。また、経営者が安易に解雇を行う、ベーシックインカムの分だけ給与を減額するという意見があり、一方で雇用の流動性の上昇から労働者が流出するのを防ぐため給与水準は維持、もしくは上昇するという考えもある。
#非正規雇用問題の緩和#景気刺激策としての効果も参照
信用取引の限度枠の低下
銀行や信販企業が提供するクレジットカードやローンの限度枠は、利用者の年収や信用情報を参考にして決定されるが、ベーシック・インカム導入によって利用者がいつ雇用先から解雇されるかわからない状態になったとすれば、限度枠の査定に影響が出る可能性がある。
ベーシックインカムは安定した収入と見なせる一方で、低い収入は限度枠を下げかねない。限度枠が下がった場合、残額の一括返済を求められたり、新規のローンが組めなくなる事態もあり得る。住宅ローンや教育ローンなど抱えている家庭がある中、ベーシックインカムが個人の信用や負債に与える影響に対する議論は不十分である。

現行制度との兼合い[編集]

ベーシックインカムによる生活保護や公的扶助など福祉水準の低下
ベーシックインカムによって形式的に最低限の収入を保証された場合、それ以上の公的扶助を行うことは困難になる。必要に応じて更なる扶助も行えなくなることから、福祉水準の低下を危ぶむ見方もある。収入状況や保有資産の状況に関係なく平等に現金が給付されるため公的分配の平等性は確保されるが、制度設計によっては健康状態や困窮状態に関わらず給付が一律となるため社会的公正はかえって阻害される可能性がある。一方で行政コストは低下することが期待できるため全体での給付水準は上昇する可能性がある。
また、生活保護では級地制度など柔軟な対応が出来るが、原則一律に実施されるベーシックインカムではそれが不可能で地域によっては生活水準を下げてしまうという批判もある。
在日外国人特別永住者など日本国籍を持たない住民の取扱い
ベーシックインカムの給付対象について日本国民に限定しない場合、国庫収支が十分に計算できない状態で日本国内に移民が殺到し、国庫財政が破綻するという意見がある。
反対に、日本国民(日本国籍保有者)のみを対象とした場合、非対象者には納税義務だけが存在しベーシックインカムを受けられないことが問題になるという意見がある。これに対しては、それにも関わらず日本にきて就労する外国籍労働者がいるならば納得づくであり問題がないとの反論もある。他方、特別永住者にはこうした反論が成り立たず人道上の政治問題あるいは在日特権とみなされる逆差別的な優遇が生じるという見方も存在する。

財源案[編集]

山崎元の試算によれば年金生活保護雇用保険児童手当や各種控除をベーシックインカムに置き換えることで、1円も増税することなく日本国民全員に毎月に4万6000円のベーシックインカムを支給することが可能であるとする。具体的には日本社会保障給付費は平成21年度で総額99兆8500億円であり、ここから医療の30兆8400億円を差し引くと69兆円となる、これを人口を1億2500万人として単純に割ると月額4万6000円となる[23]小沢修司も月額5万円程度のベーシックインカム支給ならば増税せずに現行の税制のままで可能と試算している[24]

ベーシックインカムの支給額は月額5万~10万円程度で議論されることが多く様々な財源案が提起されている。一方で多くの提案の背景には租税徴収確保主義("集めれば良い")があり、民主主義と財産権の観点から課税の正当性を記述する必要がある(目的税)。たとえば受益が課税の正当性の根拠だと安直に短絡している議論もあり、公的分配の背景に財産権の公的侵害があるばあい、公平・公正の観点から、慎重かつ明確に政策目的とその限界が記述されるべきものである(租税法律主義租税公平主義)。

税収[編集]

所得税」、「消費税」、「環境税」、「相続税」などが挙げられる。ゲッツ・W・ヴェルナーは、ベーシックインカムを導入するとともに所得税や法人税を廃止し、消費税に一本化すべきと主張している。

ベーシックインカムの導入は納税者番号制度(あるいはSocial Security number)を前提としており、従来の家計単位での所得申告方式ではなく個人単位での包括的な所得把握が前提となる。税務上、あるいは福祉給付の観点では、データ処理が一元化され非常に扱いやすく制度の簡素化をもたらす。この際に税制の方の簡素化も同時に唱えられることがある。

消費税(売上税)については課税の逆進性が最大の論点であり、所得税や相続税については最高税率にいたるまでの税率の高さの略奪性が論点となる。一般に消費税は年間所得額の少ない中低額所得者に高額所得者と同じ税率を求めるため担税応分が多くなる。一方で年間所得については所得税の段階で高額所得者との間ですでに社会的再分配や社会的公正の議論が達成されているとも言える。高額所得者の場合、消費性向が低所得者より低いとされ、日本の2002年の総務省「家計調査」にもとづく勤労者世帯の所得階級別消費税負担率と所得税負担率の計測によれば、所得がもっとも低い分類階層においては所得の2.8%にあたる消費税を負担しており、これは最高所得分類階層のそれが2.1%であったことから逆進性の存在が確認できる。所得税については負担率が4%に対し最高所得階層では12%であり累進的である。もっともこの種の議論は一時点での所得を念頭にしていることが多く、少子化時代における税負担の衡平性を考えるさいにはとくに生涯所得に対する負担の公平性に気を配る必要があり、引退して勤労所得がない人の担税能力が勤労世帯より貧しいとは限らず、消費税を社会保障財源として考えるさいには逆進性を一時点の所得水準で計測することには問題があるともいえる[25]

富裕層の貯蓄投資にかかわる別途収入については収入の問題であり消費税の議論とは無関係である。また不動産取得税や株式・債券などからの配当や賃料など、あるいは売買差益に対する課税により補正されている。日本の場合、譲渡益税や配当課税については総合課税方式が本則(所得扱いとして累進税率が適用される)であるが、対象により20%の分離課税も可能であり、また上場株式(持分量による)や公募株式投信などの場合さらに軽減税率が適用されている。高額受贈者相続人には贈与税相続税が課せられる。

資産格差の是正を目的に相続・贈与税の極端な強化がしばしば提言されるが[26]、現在の社会経済体制を前提とすれば、公平性のあくなき貫徹というだけではなく他の税との差はあれども効率性その他の要因を配慮する余地がある。とくに自営業の再生産が維持できるインセンティブは必要である[27]。社会主義では遺贈が法的に存在していないかのような誤解があるが旧ソビエト、ベトナム、中国でも相続権は存在しており、土地所有形態や課税体系と税率の問題である。とくに中国では2012年現在でも相続税(遺産税)は存在しない。課税についてはさまざまな節税策や租税回避脱税行為などが不公正としてしばしば論じられる。

政府紙幣[編集]

中央銀行とは別に政府紙幣を発行する案。いわゆるヘリコプターマネーの一種。通貨は本来、市中の要請に対して中央銀行が貸し出しているものであり、貸し出し残高が市中流通量、また通貨の価値は「借り手側の信用」(すなわち市中の信用力)により保証されている。政府紙幣は「政府の信用」(徴税権や国庫財産)を担保として政府みずからが紙幣を作り使用するものである。これをベーシックインカムの財源に充てよとする主張である。

事例としては軍票など過去に事例があり、徴税権や国庫財産に見合う程度の流通量を適切に管理できれば問題ないが、消費や投資に回らない場合、景気刺激効果は通常の通貨発行と同等となってしまうため、使用期限付き政府紙幣の提案などが行われている。歴史上しばしば発行された軍票は戦争の終結とともに必ず現金通貨で回収されており、恒常的な財源として政府紙幣の継続的な発行政策が成功した歴史的事例はない[28]。しかしながら、通貨のもつ本質的な機能の一部(貯蓄性)を巧妙に回避し消費を刺激するために「期限付き紙幣」を導入することは経済学的に魅力的な提案と評価されている

主な反論としては、結局のところ長期国債の日銀引受(財政法5条違反)を巧妙に回避しているにすぎず、税収と給付の本質的なアンバランスの解決になっていないとするものがある。

通貨発行益[編集]

また、貨幣発行益を財源としベーシックインカムを実施せよとの主張もある。これは1920年代のC.H.ダグラスによる「社会信用論」を起源とし、現在の日本では関曠野や白崎一裕が提唱している。この主張は文字通り、信用の裏づけなく政府紙幣を発行し所得給付に充てよとするものである。

貨幣発行益を財源としてベーシックインカムを実施する場合、新たな増税が必要ないという考えであり、また同時にインフレーションが起こるという意見である(インフレーション税)。インフレーション税の場合わざわざ政府紙幣を発行する必要はなく、恒常的に長期国債を累積的に発行し、それを中央銀行に引き受けさせても良い。

国宗浩三によれば[29]、通貨発行益の増大を行政府がはかったばあい、誘惑に負けて巨額の貨幣発行を行うことの経済的帰結は明らかであり、インフレの発生、インフレ率の高騰、それに伴う経済社会の混乱である。またインフレは貨幣需要をへらすため(通貨保有による「課税」を逃れるため)、結局は通貨発行益を減らすことになるとする。一方で、とくに開発途上など持続的な経済成長をともなく経済においては、経済の成長に伴う貨幣需要に見合っただけの通貨を追加的に供給することにおいては、通貨発行はインフレの要因にはならず税源としての通貨発行益が期待できるとする。経済にはタダ飯(フリーランチ)は無いのが普通であるが、経済成長に伴う通貨発行益は数少ない例外であり、通貨発行益を主な財源としてあてにするのは大きな間違いであるが、経済成長が続くかぎり(とくに発展途上国にとっては)安定的な補助的財源としては優秀なものだとする。中国の経済構造はこの点で特筆すべきものがあり、中国政府の財政における通貨発行益は非常に高く、GDP比5%を超えている。しかしインフレ税に頼る比率は約3割にすぎず、7割は成長にともなう果実としての通貨発行益である。ただしこれが今後も続くかどうかと言う点については慎重であるべきで、経済システムが成熟するにしたがって貨幣選好は低下し相対的な貨幣発行益は減少する可能性がある。

振り替え案[編集]

無税国家論[編集]

松下幸之助の提唱した無税国家方式。現行の財政予算使いきり方式ではなく各年度「貯蓄」してゆき、その貯蓄運用により税を補填するとするもの。たとえば政府系ファンド方式はこれにあたる。マクロ経済の観点では他国(外部)利害を前提としており、国益論における貿易黒字政策にあたる。また外部を想定しない経済においては課税方式の「名づけ方」の差異であって、例えば議会が企業の株式を40%取得することと、同企業に対して純利益の40%に法人税を課することは純利益の分配の観点からは同値である。この場合、「税率が高い国(領域)が豊かである」との命題と同等の主張を含んでいる可能性がある。また基金の市中での運用が成功することを前提とした議論であり、公的年金基金や外国為替資金特別会計などの運用状況から課題が容易ではないことが推測される。

景気刺激策としての効果[編集]

ベーシックインカムの導入による景気刺激効果が期待できるという意見がある。

高所得層よりも低所得層の方が消費性向が高く、所得を消費に回す率が高いため国民経済全体としての消費需要が高まり、景気が活性化するとする。累進課税方式の場合は、所得の再分配機能から高所得層から低所得層への所得移転が起きるため、この効果はより大きくなる。売上税(消費税)を財源とする場合、各所得階層間の再分配機能はより緩やかになり、消費性向による刺激効果も限定的となる。このため所得制限つきベーシックインカム論や品目別売上税率の設定などが提案されている。前者については制限水準近傍での勤労者のモラルハザードが発生する可能性がある。

貨幣発行益が財源の場合、高所得層も低所得層も所得が増大するので、どちらの消費需要も高まるという意見がある。しかし日本のように高度に金融資本の発展した経済ではインフレ税(信用の裏づけの無い通貨による景気刺激策)そのものは荒唐無稽な思考実験に近い論述であり、一部の論者の経済学的思考実験にとどまっている。インフレ税採用の宣言により従来の発行済み国債の価値は経時的に低減してゆくことになるため、信用秩序に与える影響は予測できない。インフレ税導入論の背後には日本経済破局論や根拠のない略奪税(租税徴収確保主義)の主張が含まれている可能性がある。

ただし、類似の論調としては、政府短期証券を累次発行し為替介入を続け、円売り外債買いをつづけることで恒常的な通貨売り(インフレ)をもたらし、かつ外債運用益を財源にすべしとの案も提案されている(政府系ファンド論)。もっとも2009年現在での外貨準備運用はせいぜい年2.9兆円程度[30]であり、しかも受け取りは外貨建てであり財源として期待できる規模は限定的である。また恒常的な自国通貨売りは典型的な近隣窮乏化策であるため、IMFを始めとする従来の国際自由貿易体制に許容される可能性は低い(ないしは対象国から対抗介入され無効化される可能性がある)。

ケインズ経済学の知見では、技術進歩や資本蓄積によって、生産力が十分に高まった先進国の経済では、潜在的な供給量が常に過剰であり、需要不足ゆえの失業が常に生じる[17]。この場合、消費の呼び水となるベーシックインカムは雇用拡大の有力な手段に成りうる。

日本における動向[編集]

日本でベーシックインカム導入をマニフェストに盛り込んでいる政党は生活の党緑の党グリーンズジャパン新党日本である[31][32][16]

生活の党2013年参院選公約にて「税財源の最低保障年金と社会保険の所得比例年金の構築により、年金制度一元化を図る」「社会保障制度を見直し、公平・公正な所得再分配を行い、貧困、低所得層への給付を適切化する。また、ベーシックインカム制度の導入を検討する」と記載している[31]。また前身政党である旧国民の生活が第一は2012年11月25日に発表した第2次基本政策検討案にて「ベーシックインカムの導入を検討する」としていた[33]

緑の党グリーンズジャパンは2013年参院選公約にて「最低賃金・生活保護・基礎年金の拡充で年間200万円の最低所得保障を実現し、将来的なベーシック・インカムの導入に向けた制度設計に取り組む」と記載している[32]

新党日本はベーシックインカム導入を公約にしている[16]。なお新党日本はベーシックインカムに関する公約の量が多いため詳細は新党日本#ベーシックインカムを参照。

維新の党は基本政策にて「給付付き税額控除制度の導入を通じた最低生活保障(ミニマムインカム)の実現。」と記している[34]。また維新の党に合流した旧結いの党は主要政策にて「「給付付き税額控除」によりミニマムインカム(最低生活保障)を担保。」と記されており旧結いの党の主張が概ね維新の党に引き継がれた形となっている[35]。また関連政党である大阪維新の会は維新八策の最終案にて「ベーシックインカム的な考え方」の検討と記されておりベーシックインカムそのものの導入ではなく「資産・所得制限のある年金制度」と「現物支給中心の生活保護」を導入するとしている[36][37]橋下代表も「現金を一律に給付するわけではない」と明言しており本項で解説するベーシックインカムと大阪維新の会のベーシックインカムは大きく異なっているため注意が必要である[38]。なお関連政党である旧日本維新の会の2013年参院選公約にはベーシックインカムに関する記述はない[39]

みんなの党は2013年参院選公約にて「年金は積立方式への移行を検討」「低所得者層への給付つき税額控除方式を導入。また生活保護制度の不備・不公平、年金制度との不整合等の問題を段階的に解消し、最終的には基礎年金と生活保護を統合したミニマムインカムを創設する」と記載しているが、このミニマムインカムはベーシックインカムとは異なり全国民に無条件で現金を支給することが記載されていない[40]。みんなの党所属議員も「ミニマムインカムとベーシックインカムは違います」と述べている[41]

内閣総理大臣の答弁[編集]

鳩山由紀夫総理[編集]

2010年2月26日の衆議院予算委員会で新党日本田中康夫代表が鳩山総理大臣にベーシックインカムの検討を求めた際に、鳩山総理は「検討されるべき」と発言したがその後に「今の政府の考え方の中に必ずしも埋め込まれていないことも事実でございます」と答弁をした[42]

菅直人総理[編集]

2011年1月27日の衆議院本会議で同じく新党日本の田中康夫代表が菅総理大臣にベーシックインカムの検討を求めたが、菅総理は「大変、ある意味、田中さんのすばらしい感性に基づく御意見でありまして十分これからの政権運営に参考にさせていただきたい」と答弁をした [43]

2010年参院選政党所属候補者に対する意識調査[編集]

2010年第22回参議院議員通常選挙に立候補した候補者に対して、ベーシックインカムに関する意識調査が行われた[44]

この調査から同じ政党にベーシックインカム賛成派と反対派の両方が所属していることがわかる。

2010年参院選政党所属候補者に対するベーシックインカムに関する意識調査
政党名 ベーシックインカムに賛成 ベーシックインカムに反対 どちらともいえない
民主党 9人 5人 11人
自由民主党 4人 14人 2人
公明党 4人 2人 1人
みんなの党 12人 1人 1人
日本共産党 11人 7人 28人
社会民主党 7人 2人 0人
国民新党 1人 1人 1人
たちあがれ日本 2人 4人 0人
新党改革 0人 1人 0人
合計 50人 37人 44人

民主党と共産党は検討中などの理由でどちらともいえないと回答する候補者が多い。

選挙結果はベーシックインカム賛成派が16人当選(うち民主党5人、自民党2人、公明党4人、みんなの党3人、社民党1人、たちあがれ日本1人)、反対派が18人当選(うち民主党4人、自民党12人、公明党1人、みんなの党1人)となりほぼ同数となった。

どちらともいえないと回答した候補者は11人当選(うち民主党7人、公明党1人、みんなの党1人、共産党2人)した。

新党日本はこの選挙には参加していないため今回の調査対象となっていない。元新党日本副代表で、民主党比例代表で立候補し1位当選となった有田芳生は以前からのベーシックインカム推進論者である。

ベーシックインカムに近い制度の導入例[編集]

ベーシックインカムに類似した給付を実施している国は少数だが存在する。そのいずれも天然資源の輸出による外貨収入を配分・給付するものであり、勤労所得で財政収支を均衡させている先進国および中進国で恒常的に制度化している例はない。以下の制度は年齢制限があったり、支給される金額が多すぎるまたは少なすぎるなど新党日本緑の党グリーンズジャパンのベーシックインカムと異なる点があるが、ベーシックインカムに近い制度が実際に導入されている。

  • 日本定額給付金。2009年自民党の麻生政権で実施。原則給付対象者1人につき12,000円の給付を一回限り行うもの。ただし「選挙の票目的のバラマキ」と批判され単回の実施に留まる。
  • 日本の2010年6月から2011年9月までの子ども手当。(2011年10月以降の子ども手当は民主党自民党公明党の3党合意により、ベーシックインカム的な要素が少なくなっている。さらに2012年6月以降はこれに所得制限が加わりベーシックインカムとはかけ離れた制度になる[45]
  • ナミビアのOtjivero-Omitara村の60歳以下の住人930人が対象。
  • ブラジルサンパウロ州のカチンガ・ヴェーニョという100人程度の農村。

以下の4つの制度は天然資源を財源にしているため持続可能性は低い。そのため資源の枯渇と同時に制度の維持が困難になる。

  • アラスカの『アラスカ・パーマネント・ファンド(アラスカ永久基金)』。レベルの実施。潤沢な天然資源から得られる税収を財源としている。2011年度の支給額は一人当たり年1174ドル(約91900円)[46]
  • モンゴルの『人間開発手当て』。主に鉱物などの天然資源の輸出による税収を財源としている。
  • イランの『現金補助金』。石油輸出による税収を財源としている。
  • ナウル - リンの産出により全年齢層に年金支給されていた。ただし現在は天然資源の枯渇により維持できず制度自体が破綻している。

ベーシックインカムを支持している政党[編集]

グローバルグリーンズに加盟している環境政党がベーシックインカムを支持していることが多い。日本の緑の党グリーンズジャパンもグローバルグリーンズに加盟している。

各国の海賊党がベーシックインカムを支持していることが多い。

韓国では民主労総進歩新党、旧社会党、旧民主労働党などの左派勢力がベーシックインカムを支持している。これは日本の連合日本共産党社民党などの左派勢力がベーシックインカムに反対していることとは対照的である。

ベーシックインカムを支持している著名人[編集]

類似した制度[編集]

負の所得税[編集]

負の所得税もベーシックインカムと似たような効果を持つ政策であり、実施に当たっては単位が個人ではなく、世帯ごとと構想されることが多い。所得を低く申告して給付を受けようとするインセンティブが働くため、所得申告の際の不正行為を防がなければならない分、行政コストはより掛かるという意見がある[誰?]

給付付き税額控除[編集]

低所得者に税の還付をする制度。

ミニマムインカム[編集]

みんなの党のアジェンダに記載されている政策で具体的な内容はアジェンダには全く記載されていないが、みんなの党衆議院議員柿沢未途の発言によると「最低生活費をまず算定し、収入との差額を給付する形」「無条件での一律の現金支給であるべきではない」としており生活保護負の所得税に近い主張をしている[40][64]

2013年秋、スイスでベーシックインカムの導入を訴える10万人の署名が集まり、その可否を問う国民投票が行われる予定であると報道されたが[65]、その一連の報道の中ではミニマムインカムとベーシックインカムは同じ意味で用いられた。

しかし結いの党ではミニマムインカムと給付付き税額控除を同じ意味で用いられておりミニマムインカムがどのような政策を指すかは定まっていない[35]

ベーシックインカムと他の現金支給型の制度との比較[編集]

下の表はベーシックインカムとの類似点を緑色、相違点を赤色で表記している。子ども手当が次第にベーシックインカムからかけ離れた制度になっていく様子がわかる。なお表のベーシックインカムは新党日本および緑の党グリーンズジャパンの公約、ミニマムインカムはみんなの党の公約の内容である。

ベーシックインカムと他の現金支給型の制度との比較[66][67]
ベーシックインカム
新党日本および緑の党グリーンズジャパンの公約)
ミニマムインカム
みんなの党の公約)
負の所得税 給付付き税額控除 定額給付金 子ども手当
2010年6月~2011年9月の制度
子ども手当
2011年10月~2012年5月の制度
児童手当
2012年6月以降の制度
年金 生活保護 失業保険
支給単位 個人 不明 世帯 世帯 個人 個人世帯、両方に解釈できる。(金額の計算は個人単位であるが支給先は子供の親・監護者である) 世帯
(世帯の構成で支給額が異なる・支給先は子供の親・監護者である)
世帯
(世帯の構成で支給額が異なる・支給先は子供の親・監護者である)
世帯
(世帯の構成で支給額が異なる)
世帯
(世帯の構成で支給額が異なる)
世帯
(世帯の構成で支給額が異なる)
所得制限
資力調査
なし 不明(※あり) あり あり なし なし なし あり あり あり あり
年齢制限 なし 不明 なし なし あり
(年齢によって給付額が異なる)
あり あり
(年齢制限がさらに強化されている)
あり
(年齢制限がさらに強化されている)
あり あり あり
(年齢によって給付額が異なる)
職種制限 なし 不明 なし なし なし なし なし なし あり(職業によって給付額が異なる) なし あり(非正規雇用の場合は
条件によって支給されない)
保険料の支払 なし 不明 なし なし なし なし なし なし あり なし あり
支給時期 定期的(毎月や毎日など) 不明 確定申告の事後、年に1回 確定申告の事後、年に1回 1回しか支給されない 定期的(4ヶ月ごと) 定期的(4ヶ月ごと) 定期的(4ヶ月ごと) 定期的 定期的 一定の期間しか支給されない
支給額の一律性 一律(大金持ちも低所得者も同額) 不明(※一律ではない
(所得が少ないほど支給額が多い・働くと支給額が減らされる))
一律ではない
(所得が少ないほど支給額が多い・働くと支給額が減らされる)
一律ではない
(所得ごとに複雑に支給額を設定する)
一律ではない 一律(大金持ちも低所得者も同額) 一律ではない 一律ではない 一律ではない 一律ではない 一律ではない
労働と収入の逆転現象の有無 なし
(働けば働くほど収入が増える)
不明 なし
(働けば働くほど収入が増える)
あり
(働くと逆に収入が減る場合がある)
なし
(働けば働くほど収入が増える)
なし
(働けば働くほど収入が増える)
なし
(働けば働くほど収入が増える)
あり
(働くと逆に収入が減る場合がある)
あり
(働くと逆に収入が減る場合がある)
あり
(働くと逆に収入が減る場合がある)
あり
(働くと逆に収入が減る場合がある)
裁量行政の有無 なし 不明 なし なし なし なし なし なし あり
(第三者委員会の裁量によって消された年金の照合結果が異なる)
あり
(支給するかどうかは職員の裁量に任されている)
あり
(詳細な支給内容は職員の裁量に任される場合がある)

※はみんなの党衆議院議員柿沢未途の発言を基にした内容

社会思想との関係[編集]

自由主義[編集]

基本的人権、生存権といった自然権がベーシックインカム配布の根拠とされる。たとえば経済的自由主義者のフリードリヒ・ハイエクは「組織化されたコミュニティの内部で自らを養うことができない人々に助力の手を差し伸べることは、全員の道徳的義務と感じられるかもしれない。最低所得がなんらかの理由で市場で十分な生活費を稼げなかった人々すべてに対して【市場外】から提供される場合、これは自由の制限にいたることもないし、法の支配と対立することもない。」とし法の支配との整合性の観点から最低限度の生活保障を提唱した。ハイエクは具体的な市場過程への政府の介入については終始一貫して拒絶し続けたが、市場過程の前提となるノモスの法(部族社会的な法)型のルール設計についてはその晩年において許容するようになった[68]

右派と左派の呉越同舟[編集]

ベーシックインカム賛成者には一般的に中道右派政党が主張する新自由主義派と中道左派政党が主張する福祉重視派の両者がおり、右派と左派の両方にベーシックインカム賛成者がいる[69]

実際に、日本の2010年の参院選において、最右派政党であるたちあがれ日本の議員や右派政党である自民党の議員、左派政党の社民党の議員がベーシックインカム賛成派として右派左派関係なく当選している[44]

功利主義[編集]

社会学者大澤真幸によれば、ベーシックインカムは「修正版功利主義」を体現する原理とみなすことができるという。功利主義とは、「最大多数の最大幸福」を目標として社会設計を行う思想であるが、「最大多数」と「最大幸福」という2つを同時に達成しようとすると「幸福の総和さえ大きくなれば個人の権利は軽視される」という難点が生じる。そこで目標を「最大多数の一定幸福」というように切り替えた修正版の功利主義を考えれば、最低限の生活水準をおくれるだけの資金(=一定幸福)を無条件に国民全員へ(=最大多数)給付するベーシックインカムの思想と結びつくことになる。[70]

ワークシェアリング[編集]

ワークシェアリングは人々の間で労働を分け合う制度であるが、ベーシックインカムとワークシェアリングを組み合わせる提案も見られる。個人から見ると働き方の自由化、企業から見ると雇用の多様化を実現できる。個人(雇われる側)がワークシェアリングに反対する理由は主に収入である[71]。仕事をシェアすることで労働時間は減るが、それだけ一人一人の収入も減ることになる。しかし、ベーシックインカムで収入が下支えされれば、仕事をシェアしてもよいと考える人は増えるであろう。一方、企業(雇う側)の反対理由の一つは、雇用者を増やすことで社会保障費がかさむことである[72]。これもベーシックインカムによりクリアできる可能性がある[73]。ワークシェアリングを社会全体に普及させるには法による制度化が必要であるが、制度を適用するに当たっては個人の意思を尊重すべきである。できるだけ多くの人に仕事を分け与えようとフルタイムで働きたい者にまでワークシェアリングを強制される可能性もある。ベーシックインカムは自由主義・資本主義経済の下で行うことを前提としている。

関連文献・記事[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ もり・ひろしは5万円-8万円程度としている。もり・ひろし (2009年10月23日). “「ベーシックインカム」〜就労を問わない大胆な「所得保証」とは?”. 日経BPネット. 日経BP社. pp. p. 1. 2009年11月28日閲覧。
  2. ^ a b c “政府の年金運用は間違い 全員に毎月8万円一律に配れ(インタビュー「若者を棄てない政治」第2回/元ライブドア社長・堀江貴文さん)”. J-CASTニュース (ジェイ・キャスト). (2009年8月18日). http://www.j-cast.com/2009/08/18047581.html 2009年11月28日閲覧。 
  3. ^ a b c 藤沢数希 (2009年8月1日). “ベーシックインカムの財源”. ニュースブロガー (ライブドア). http://news.livedoor.com/article/detail/4278095/ 2009年11月28日閲覧。 
  4. ^ 山森亮 2009, pp. 21-22.
  5. ^ 関曠野title=「生きるための経済― なぜ、所得保証と信用の社会化が必要か ―」第2回ベーシック・インカム入門の集い講演録、2009年3月8日2010年8月29日閲覧
  6. ^ 山森亮 2009, pp. 151-152.
  7. ^ a b c もり・ひろし (2009年10月23日). “「ベーシックインカム」〜就労を問わない大胆な「所得保証」とは?”. 日経BPネット. 日経BP社. pp. p. 2. 2009年11月28日閲覧。
  8. ^ a b c d アイゾック (2009年10月1日). “生活費がもらえる「ベーシック・インカム」とは?”. 日経トレンディネット. 日経BP社. 2009年11月28日閲覧。
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  10. ^ a b 白石浩介 (2009年2月27日). “ベーシック・インカムの課題”. MRI TODAY. 三菱総合研究所. 2009年11月28日閲覧。
  11. ^ a b c “ベーシックインカムの地下茎”. 山陰中央新報. (2009年2月2日). http://www.sanin-chuo.co.jp/column/modules/news/article.php?storyid=509808034 2009年11月28日閲覧。 
  12. ^ a b 土井彰 (2009年3月7日). “定額給付金をベーシック・インカム(最低保障)に”. JANJAN (日本インターネット新聞). http://www.news.janjan.jp/government/0903/0903068828/1.php 2009年11月28日閲覧。 
  13. ^ a b ベーシック・インカム・実現を探る会 『ベーシック・インカムがわかる本 Q&A入門編』 ベーシック・インカム・実現を探る会、ベーシック・インカム・実現を探る会。
  14. ^ 橋本努 『自由の社会学 』 エヌ・ティ・ティ出版、2010年、170頁。ISBN 978-4757142572
  15. ^ 第174回国会衆議院予算委員会2010年2月26日議事録 (PDF)”. 新党日本. 2010年10月20日閲覧。
  16. ^ a b c d e 2009年に行われた第45回衆議院議員総選挙において。ベーシックインカムについて”. 新党日本. 2010年10月20日閲覧。
  17. ^ a b J.M.ケインズ 『雇用・利子および貨幣の一般理論』 塩野谷祐一訳、東洋経済新報社(原著1995年3月)。ISBN 9784492312186。「社会が豊かになればなるほど、現実の生産と潜在的な生産との間の差はますます拡大する傾向にあり、したがって経済体系の欠陥はますます明白かつ深刻なものとなる」
  18. ^ 山野車輪&古谷経衡のオタベリ~今考えるベーシックインカム~3/3”. 2012年8月18日閲覧。
  19. ^ もり・ひろし (2009年10月23日). “「ベーシックインカム」〜就労を問わない大胆な「所得保証」とは?”. 日経BPネット. 日経BP社. pp. p. 3. 2009年11月28日閲覧。
  20. ^ この聖書内の「働かざる者」とは主に莫大な資産を所有、運用して利ざやを得ている者を指している。
  21. ^ 「「経費膨張の法則」に関する研究について」吉田義宏(広島経済大学創立二十周年記念論文集、広島県大学共同リポジトリ)[1]
  22. ^ 小沢修司 『「持続可能な福祉社会」とベーシック・インカム』 p. 60。
  23. ^ 山崎元 (2012-03-21). “「ベーシックインカム」の誤解を解く|山崎元のマルチスコープ”. ダイヤモンド・オンライン. http://diamond.jp/articles/-/16672 2012年3月22日閲覧。. 
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  26. ^ 例えばブロガープログラマ小飼弾は、相続税を100%とすることによって死者の遺産を全て回収し、それを財源としてベーシックインカムを給付するという構想(社会相続)を新しい社会モデルの一要素として提示している。小飼弾 『働かざるもの、飢えるべからず。』 サンガ、2009年、38-43頁など。ISBN 978-4904507391
  27. ^ 江見康一「書評・高山憲之『不平等の経済学』東洋経済新報社」(季刊社会保障研究vol.16,No.1)[3]
  28. ^ 「恒常的な通貨」として提案・導入された事例はある。またシンガポールのように政庁が中央銀行をかねている場合、事実上の政府紙幣となっている。詳細は政府紙幣を参照。
  29. ^ 「通貨発行益(シニョリッジ)と途上国財政」国宗浩三(『開発途上国と財政問題』調査研究報告書 アジア経済研究所 2008 年)[4]
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  44. ^ a b 立候補者意識調査「ベーシック・インカム導入に 」 - 参議院選挙2010”. livedoor ニュース. 2011年1月3日閲覧。
  45. ^ "児童手当復活、年収960万円で所得制限 負担大幅増も"”. 朝日新聞. 2011年10月7日閲覧。
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  48. ^ "Bedingungsloses Grundeinkommen - Piratenpartei Österreichs"”. 2014年3月11日閲覧。
  49. ^ "Das bedingungslose Grundeinkommen - Initiative i922 - Liquid · Piratenpartei Österreichs"”. 2014年3月11日閲覧。
  50. ^ "KPÖ: grundeinkommen"”. 2014年3月11日閲覧。
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  59. ^ 最大の社会保障はベーシックインカムであり、貧困をなくすことが福祉の基本。最低賃金・生活保護費並みの金額(毎年100万円以上)を全住民に支給することを目指す。資本主義が成熟すると行き着くところは貧富の差でありそれを超えるために均等に金持ちであろうが、貧困者であれ、同じように分配する。そして、資本の循環をつくっていく。格差に苦しんでいる離島から実施することで、若者が島で暮らすことができるようになる。ベーシックインカムをまず沖縄で取り入れ日本からまったく新しい世界を作っていく。県が独自に使える沖縄振興一括交付金や沖縄にカジノを作ることができればカジノの利益を財源にするとしている。
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  62. ^ “沖縄知事選公約くらべ読み:「離島振興」” (日本語). (2014年11月4日). http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=89248 2014年11月19日閲覧。 
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  66. ^ 立岩真也・斉藤拓『ベーシックインカム-分配する最小国家の可能性-』 青土社、2010年、325頁。ISBN 978-4791765256
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  69. ^ 塩倉裕 (2010年12月18日). “〈回顧2010・論壇〉ネットの公論空間 産声あげる”. asahi.com (朝日新聞社). http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201012180140.html 2011年1月2日閲覧。 
  70. ^ 大澤真幸 『「正義」を考える―生きづらさと向き合う社会学』 NHK出版、2011年、75-76頁。ISBN 978-4140883396
  71. ^ 例えば「ILO駐日事務所メールマガジン・トピック解説」第86号[5]
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  73. ^ 法人税を引き上げてベーシックインカムの財源に充てる案があるが、その場合は、企業の負担は変わらないかむしろ増えることになる。

参考文献[編集]

  • 岡野内正「地球人手当の理論序説--グローバル・ベーシック・インカム論批判のために」、『社会志林』第57巻第1号、法政大学社会学部学会、2010年9月、 15-40頁、 NAID 40017366039
  • 「福祉社会の経済学 ベーシック・インカムの実行可能性」吉原直毅(一橋大学経済研究所 経済セミナー2009/2・3日本評論社)[8]
  • 「熟議民主主義とベーシック・インカム」田村哲樹(早稲田政治経済学雑誌NO.357,2004)[9]
  • 「基本所得についての予備的な考察」石垣建志(茨城大学人文学部紀要 社会科学論集2009.01)[10]
  • 「認知資本主義-ポスト・フォーディズムにおける新たな労働-」内藤敦之(大月短期大学 第13回進化経済学会岡山大会セッションB1 2009.3.28)[11][12]
  • 「スティグマを伴わない社会保障の実現」小沢修司(京都府立大学教授 情報労連REPORT2006.1.2)[13]
  • 「ワーキングプア増加と社会保障制度改革」中村実(野村総合研究所2008.9)[14]
  • 「経済危機克服のための「有識者会合」議事録」内閣府政策統括官付(2009年3月16日)[15]
  • 「ワーキングプア」伊藤元重ほか(総合研究開発機構(NIRA)政策レビュー March 2008 No.24)[16]
  • 「貧困にどう立ち向かうか:一ツ橋エコノミストの提言」北村行伸(一橋大学機関リポジトリ 2009-12-02)[17]
  • 「格差ではなく貧困の議論を」湯浅誠(南山大学『社会と倫理』第21号2007年)[18][19]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]