ヴェルナー・ヘルツォーク

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ヴェルナー・ヘルツォーク
Werner Herzog
Werner Herzog
本名 Werner Stipetić
生年月日 (1942-09-05) 1942年9月5日(81歳)
出生地 ナチス・ドイツの旗 ドイツ国ミュンヘン=オーバーバイエルン大管区ミュンヘン
国籍 ドイツの旗 ドイツ
職業 映画監督脚本家オペラ映画監督
活動期間 1962年 -
配偶者 Martje Grohmann (1967年 - 1987年
Christine Maria Ebenberger (1987年 - 1994年
レナ・ヘルツォーク (1999年 - )
主な作品
監督
アギーレ/神の怒り
カスパー・ハウザーの謎
ノスフェラトゥ
ヴォイツェク
フィツカラルド
コブラ・ヴェルデ英語版
グリズリーマン
戦場からの脱出
バッド・ルーテナント
狂気の行方
アラビアの女王 愛と宿命の日々
出演
アウトロー
マンダロリアン
製作
アクト・オブ・キリング
 
受賞
カンヌ国際映画祭
審査員特別グランプリ
1975年カスパー・ハウザーの謎
監督賞
1982年フィツカラルド
国際映画批評家連盟賞
1975年『カスパー・ハウザーの謎』
エキュメニカル審査員賞
1975年『カスパー・ハウザーの謎』
功労賞
2017年
ヴェネツィア国際映画祭
国際映画批評家連盟賞
2005年The Wild Blue Yonder
ベルリン国際映画祭
銀熊賞(審査員特別賞)
1968年生の証明
ヨーロッパ映画賞
生涯貢献賞
2019年
全米映画批評家協会賞
ドキュメンタリー映画賞
2005年グリズリーマン
2011年世界最古の壁画洞窟 3D 忘れられた夢の記憶
ニューヨーク映画批評家協会賞
ドキュメンタリー映画賞
2005年『グリズリーマン』
2011年『世界最古の壁画洞窟 3D 忘れられた夢の記憶』
ロサンゼルス映画批評家協会賞
ドキュメンタリー映画賞
2005年『グリズリーマン』
2011年『世界最古の壁画洞窟 3D 忘れられた夢の記憶』
その他の賞
備考
第60回ベルリン国際映画祭 審査委員長(2010年)
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ヴェルナー・ヘルツォークWerner Herzog、本名: Werner Stipetić、1942年9月5日 - ) は、ドイツ映画監督脚本家オペラ演出家ヴィム・ヴェンダースライナー・ヴェルナー・ファスビンダーらと並んでニュー・ジャーマン・シネマの代表的な監督である。怪優クラウス・キンスキーを起用した作品でも有名。

来歴[編集]

1942年9月5日ドイツ人の父ディートリヒとクロアチア人の母エリーザベトとの間にミュンヘンで生まれ[1]バイエルン州の田舎で育つ。13歳からの一時期、ミュンヘンのアパートでクラウス・キンスキーと共同生活をしていた[要出典]。キンスキーは後にヘルツォークの多くの作品で主演を務めることになる。その後、ミュンヘン大学で歴史とドイツ文学を学んだ後、奨学金を得てアメリカに渡り、ピッツバーグデュケイン大学で学んだ[2]

1962年に短編『Herakles』を製作して映画監督としてデビュー。1968年には初の長編『生の証明』を発表。第18回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員特別賞)を受賞した[3]

1972年、キンスキーを初めて起用し、エル・ドラード発見を目指す16世紀の南米探検隊を描いた『アギーレ/神の怒り』を発表。翌1973年第26回カンヌ国際映画祭の監督週間部門に出品された[4]。また、2005年にはタイム誌の「歴代映画ベスト100」の一本に選出された[5]1974年19世紀に実在したとされる青年カスパー・ハウザーを描いた『カスパー・ハウザーの謎』を発表。翌1975年第28回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した[6]1977年ベルリンからアメリカへ移住した男たちを描いた『シュトロツェクの不思議な旅』を発表。タオルミナ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した[7]1979年F・W・ムルナウ監督の『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922年)をリメイクした『ノスフェラトゥ』を発表。第29回ベルリン国際映画祭に出品された[8]。本作ではキンスキーの他にイザベル・アジャーニブルーノ・ガンツを起用している[9]。また、同年にはゲオルク・ビューヒナー未完の戯曲を映画化した『ヴォイツェク』を発表。第32回カンヌ国際映画祭に出品され、エヴァ・マッテスが助演女優賞を受賞した[10]

1982年、オペラハウスの建設のためにアマゾン川を航海する男を描いた『フィツカラルド』を発表。第35回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した[11]1984年にはオーストラリアの原住民アボリジニの姿を映した『緑のアリが夢見るところ』を発表。1987年には5度目のキンスキー起用となった『コブラ・ヴェルデ』を発表した。

1991年、登山家ラインホルト・メスナーの原案を元にした『彼方へ』を発表。第48回ヴェネツィア国際映画祭金オゼッラ賞を受賞した[12]。以後、1990年代は主にドキュメンタリーテレビ映画を製作する。1999年には5度に渡って主演に起用したクラウス・キンスキーについてのドキュメンタリー『キンスキー、我が最愛の敵』を発表した。本作ではヘルツォーク自身の他にクラウディア・カルディナーレミック・ジャガーらが出演している[13]

2001年第二次世界大戦前のポーランドを舞台にした『神に選ばれし無敵の男』を発表。10年ぶりの劇映画製作となった。本作ではティム・ロスを主演に起用している。2005年、その2年前に死去したグリズリーの保護活動家ティモシー・トレッドウェルの姿を映したドキュメンタリー『グリズリーマン』を発表。第71回ニューヨーク映画批評家協会賞第31回ロサンゼルス映画批評家協会賞などでドキュメンタリー映画賞を受賞した[14]。また、本作は初のアメリカでの製作となった。同年にはSF風の作品『The Wild Blue Yonder』が第62回ヴェネツィア国際映画祭のオリゾンティ部門に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞している。2009年ニコラス・ケイジを主演に起用し、アベル・フェラーラ監督の『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』(1992年)をリメイクした『バッド・ルーテナント』、デヴィッド・リンチを製作総指揮に迎えた『狂気の行方』を発表。ともに第66回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門に出品された[15]

2010年ショーヴェ洞窟壁画を映した3Dドキュメンタリー『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』を発表。同年、第60回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門の審査員長を務めた[16]2013年、第66回ロカルノ国際映画祭で名誉豹賞を受賞した[17]2014年ニコール・キッドマンを主演に、イラク王国の建国に携わったガートルード・ベルの伝記映画『アラビアの女王 愛と宿命の日々』を発表した[18]。2017年現在、D・B・C・ピエールの小説『ヴァーノン・ゴッド・リトル―死をめぐる21世紀の喜劇』を原作とした『Vernon God Little』を製作している[19]

作品[編集]

監督[編集]

長編劇映画およびドキュメンタリーのみ記載。その他に短編やテレビ映画も多数製作。
  • 生の証明 Lebenszeichen (1968年)
  • 小人の饗宴 Auch Zwerge haben klein angefangen (1971年)[20]
  • 蜃気楼 Fata Morgana (1971年)
  • 闇と沈黙の国 Land des Schweigens und der Dunkelheit (1971年) ドキュメンタリー
  • アギーレ/神の怒り Aguirre, der Zorn Gottes (1972年)
  • 跳躍の孤独と恍惚 Die große Ekstase des Bildschnitzers Steiner (1972年) ドキュメンタリー
  • カスパー・ハウザーの謎 Jeder für sich und Gott gegen alle (1974年)
  • ガラスの心 Herz aus Glas (1976年)
  • シュトロツェクの不思議な旅 Stroszek (1977年)
  • ラ・スフリュール、起こらざる天災の記 La Soufrière - Warten auf eine unausweichliche Katastrophe (1977年) ドキュメンタリー
  • ノスフェラトゥ Nosferatu: Phantom der Nacht (1979年)
  • ヴォイツェク Woyzeck (1979年)
  • フィツカラルド Fitzcarraldo (1982年)
  • 緑のアリが夢見るところ Wo die grünen Ameisen träumen (1984年)
  • コブラ・ヴェルデ Cobra Verde (1987年)
  • フランス人、ゴール人 Les Gaulois (1988年) オムニバス『パリ・ストーリー』の一篇
  • Echos aus einem düsteren Reich (1990年) ドキュメンタリー
  • 彼方へ Cerro Torre: Schrei aus Stein (1991年)
  • 問いかける焦土 Lektionen in Finsternis (1992年) ドキュメンタリー[21]
  • Glocken aus der Tiefe - Glaube und Aberglaube in Rußland (1993年) ドキュメンタリー
  • Little Dieter Needs to Fly (1997年) ドキュメンタリー
  • キンスキー、我が最愛の敵 Mein liebster Feind (1999年) ドキュメンタリー
  • 神に選ばれし無敵の男 Invincible (2001年)
  • 失われた一万年 Ten Minutes Older: The Trumpet (2002年) オムニバス『10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス』の一篇
  • Wheel of Time (2003年) ドキュメンタリー
  • The White Diamond (2004年) ドキュメンタリー
  • The Wild Blue Yonder (2005年)
  • グリズリーマン Grizzly Man (2005年) ドキュメンタリー
  • 戦場からの脱出 Rescue Dawn (2007年)
  • 世界の果ての出会い Encounters at the End of the World (2008年) ドキュメンタリー
  • バッド・ルーテナント Bad Lieutenant: Port of Call New Orleans (2009年)
  • 狂気の行方 My Son, My Son, What Have Ye Done (2009年)
  • ハッピー・ピープル タイガで暮らす一年 Happy People: A Year in the Taiga (2010年) ドキュメンタリー。ドミトリー・ワシュコフと共同監督
  • 世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶 Cave of Forgotten Dreams (2010年) ドキュメンタリー
  • Into the Abyss (2011年) ドキュメンタリー
  • アラビアの女王 愛と宿命の日々 Queen of the Desert (2015年)[22]
  • Vernon God Little (未定)

出演[編集]

日本公開作品のみ記載。

製作[編集]

著作[編集]

  • 氷上旅日記 ミュンヘン‐パリを歩いて(1978年)、藤川芳朗訳、白水社(1993年、新版2022年)

脚注[編集]

  1. ^ Werner Herzog Comes Out of the Cave”. 2014年8月29日閲覧。
  2. ^ Short Bio”. 2014年8月29日閲覧。
  3. ^ Prizes & Honours 1968”. Berlinale. 2014年8月29日閲覧。
  4. ^ 樋口泰人著『カンヌ映画祭の50年』(1998年)P.171より。
  5. ^ Aguirre: The Wrath of God (1972) ALL-TIME 100 Movies”. Time. 2014年8月20日閲覧。
  6. ^ Jeder für sich und Gott gegen alle”. Cannes. 2014年8月29日閲覧。
  7. ^ Stroszek (1977) Awards”. IMDb. 2014年8月29日閲覧。
  8. ^ Programme 1979”. Berlinale. 2014年8月29日閲覧。
  9. ^ Nosferatu: Phantom der Nacht (1979)”. IMDb. 2014年8月29日閲覧。
  10. ^ Woyzeck”. Cannes. 2014年8月20日閲覧。
  11. ^ Fitzcarraldo”. Cannes. 2014年8月20日閲覧。
  12. ^ Cerro Torre: Schrei aus Stein (1991) Awards”. IMDb. 2014年8月29日閲覧。
  13. ^ Mein liebster Feind - Klaus Kinski (1999)”. IMDb. 2014年8月29日閲覧。
  14. ^ Grizzly Man (2005) Awards”. IMDb. 2014年8月29日閲覧。
  15. ^ Venezia 66”. Biennale. 2014年8月29日閲覧。
  16. ^ Werner Herzog to be President of the Jury of the 60th Berlinale”. Berlinale. 2014年8月29日閲覧。
  17. ^ Pardo d’onore Swisscom Werner Herzog”. Pardolive. 2014年8月29日閲覧。
  18. ^ Queen of the Desert ~ The Film”. 2014年8月29日閲覧。
  19. ^ Werner Herzog to bring Vernon God Little to the big screen”. 2014年8月29日閲覧。
  20. ^ 小人の饗宴
  21. ^ 問いかける焦土
  22. ^ “ヴェルナー・ヘルツォーク、「アラビアの女王」ニコール・キッドマンの役作り絶賛”. 映画ナタリー. (2017年1月4日). https://natalie.mu/eiga/news/215517 2017年1月5日閲覧。 

外部リンク[編集]